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社説一覧

  • これは、論点すり替え

     論点の目先のすり替え、そう感じる津南町議会の動きだ。NGP津南の売却問題。そもそも論は債務超過にある津南町観光拠点をどう再生するかだ。そのため町議会は、10年の賃貸借契約が切れる9月末以降の新たな経営者を探す補正予算を可決した。
     だが、22日の議員グループの町申し入れは、現経営会社の従業員雇用や取引企業の保全を理由に、「町が優先交渉するイントランスを売却先とは認められない」と、採決権議員の半数超の6議員が町に進言した。議決権を持つ議員、これは「我々の言うことを聞かないと議案を否決する」、暗に示唆している行為だ。
     津南町に必要と町議会も認める観光拠点のNGP津南の、経営継続への取り組みが主題。それを脇に置き住民不安や業者不安を煽る議員グループの言動は理解に苦しむ。いや、議決権を持つ議員としての自覚を疑う。
     議会はチェック機関であると共に、調査権を有し、議員発議できる。応札2社に議会全体でどう動いたのか。「我々は何も聞かされていない」と調査権を放棄したかのような言動もあるが、守秘義務で限られた情報だが、このネット社会、独自調査で相当なる情報が取れ、この業界は業者間の情報探知力は高く、関係筋に問えば確度の高い情報資料は容易に集められる。
     観光事業は格段に様変わりしている。大手民間が全面に出てイケイケどんどんの時代ではなく、ファンド形成し、そこに民間資本を投入、事業化への道筋をつけ、可能性のリサーチにより事業進出する手法だ。今回のNGP津南も同じ、その可能性が判断基準だ。
     議員グループの言動は事の本質ではなく、桑原悠町政への不信任表明だ。
     混迷する津南町。イメージ重視する観光事業者は、当然ながら近づかず、NGP津南を求める事業者も撤退を考える。事の本質はどこにあるのか、それは津南町のためになるか、だろう。

    2025年8月30日号

  • 『住民判定人』で行政事業検証を

     「自分ごと化会議」は、全国150を超える自治体で実施している。言葉の通り、「自分ごと」として自分が暮らす市町村の行政事業を見直し、検証し、新たな事業化を行政に提言していく、あるいは住民主導で事業を実現に導く、その声の総まとめ機関だ。
     行政事業の見直しは全国の市町村で、大小や濃淡はあるが機会を捉え検証を行っている。十日町市は総合計画の実施状況見直しを毎年行い、津南町も総合振興計画の見直しと共に自律計画の定期的な検証を行う。栄村も総合振興計画の見直しと共に毎年ローリング的に村事業を検証している。
     知られるのは鳥取県琴浦町。前町長の山口秀樹さんは語る。隣の米子市でも同様な取り組みを導入するため、「自分ごと化会議インよなご」を立ち上げ、有権者2千人対象に『市民判定人』を公募。やってみたいと21人が名乗り出て、市事業の見直し・検証に取り組んだ。2千人の20人余は1%だが、この自主的な手上げに意味がある。先ずは生活に密着の路線バス補助金をテーマにした。運行補助で年間2億円を市財政から支出している事業を検証。公共交通の維持運営に悩む多くの自治体共通の悩みでもある。
     赤字路線バスは高齢化社会の「命の足」、財政支出止む無しが実情。だが山口さんは「自分ごと化会議」で『市民判定人』に問うた。改善すべき・現事業を核に改善・現行通りの3視点で判定。市民は「赤字を単純補填せず企業努力を促すインセンティブ(報酬)を設け、路線ルートを再度市民と協議…」など「住民判定」した。妻有の自治体でも取り組むが、「住民目線」の判断を議会・議員に委ねているのが現状だ。
     「自分ごと」、住民がそう考える『危機感』をどう促すか、行政運営のセンスと感度が問われる。津南町のニュー・グリーンピア津南問題は、まさに「住民目線」が問われている。

    2025年8月23日号

  • 十日町市176人、津南町23人、栄村7人

     これは危機的な数字だ。出生数の激減は、その自治体の深刻な未来を示すデータでもある。人口4万6千人余の十日町市。今年1月から8月上旬までの出生数は91人。残る4ヵ月余で出生数がどこまで伸びるかだが、前年2024年の176人を上回るのは難しいだろう。津南町の昨年1年間の出生数は23人、栄村は7人、いずれも年間出生数の過去最低を更新している。数字データは、相当なる深刻度を我々住民に突き付けている。
     この人口問題と並行論議される未婚者社会の進行。時の政権は、この論議でたびたび性差問題を俎上に上げ、ジェンダー論議に抵触する言葉を持ち出し、批判の的になる。一方で現実を直視すると、さらに深刻度が増す事態を直視せずにはいられない。
     今年2025年、5年に一度の国勢調査の年だ。前回2020年調査で表出した実態は、前々回2015年調査をさらに上書きする深刻度を示した。国勢調査からは様々なデータが読み取れるが、人口減少に直結するのが「未婚者」の推移。このデータを5年毎に比較すると、その割合は急上昇している。2020年データでは、十日町市・津南町・栄村の単純平均だけでも30代男性未婚者は約45%、40代は約40%と高い比率を占めている。一方で、20代~40代の女性人口の減少も注目すべきデータだ。この年代の女性人口の減少は、未婚者増加に直結しているともいえる。
     「人口問題は行政運営の根本課題」と言われる通り、市町村運営の要点は人口政策である。だが、考えてしまう。十日町市から津南町に10人が移り住むと、それぞれ10人減、10人増だ。だが広域の妻有エリアで増減はない。同じ事がこの国全体に言えるのではないか。膨らんだ行政需要を整理する時期に来ている、その視点がこれからの人口政策ではないのか。

    2025年8月16日号

  • 民意はどこへ行った

     春の十日町市長選、市議選、先の参院選、示された「民意」はどこへ行ったのか。政局によっては年内に衆院選があるかもだ。来年の津南町長選は6月。選挙は「民主主義のコスト」だが、心身とも多大なコストをかけて民意が表出されるが、その「民意」は選挙結果と共に…では困る。選ばれた人たち、選良は選挙結果で示された民意を具現化するのが第一の責務だが、同時にその時々の検証が必要だろう。
     十日町市長選。市政史上初の5期の関口芳史市長。新潟県市長会の会長に就き、今後北信越市長会のトップも回ってくるだろう。そうなると全国市長会の役職も就いてくる。5期目は「外交」が多いのか。JR東との10年契約は「事もなく」継続され、引き出した「JR東・データセンター」計画への電力供給が視野に入る。その安定電力の供給に上がる「蓄電所」構想。すでに大手企業が乗り出す蓄電所計画だ。経産省バックアップで事業化が全国で進み、その情報をいち早く察知した関口市長らしい、狼煙(のろし)上げだ。 
     その先に見ているのは『持続可能な自治体・十日町市づくり』なのか。人口減少と少子化で今後の自治体運営は容易ではない。財源確保をどうするか、自治体トップの多くが頭を悩ます。十日町市はJR東という「最強のパートナー」を得ている。共生策を盛り込んだ『覚書』は、弱小自治体の十日町市がJR東という国内トップ企業と「運命共同体」で歩む約束手形でもある。
     一方の津南町。桑原悠町長は来年7月8日、2期の任期満了。6月の町長選に臨むが、直面するニュー・グリーンピア津南問題は、相当なる大きな課題になっている。選択の方向性とその具体化に難題が表出し始め、対応の如何によっては、さらに混乱が増す情勢だ。津南町の初心は『農を以って立町の基と為す』、その原点回帰も、選択肢の一つになってきている。

    2025年8月9日号

  • 「8月ジャーナリズム」

     「8月ジャーナリズム」。戦後80年の今年、この言葉をさらに目にし、耳にするだろう。「8月15日」を意識する世代は、歳月と共に薄れてきているが、決して忘れてはならない歴史の刻印である。それをどうメディアは記録し、伝えていくのか、その時々のマスコミ人に課せられた責務でもある。
     なぜ、8月になると「戦争」記事が多く出るのか…、戦争はいまも世界のどこかで人殺し行為が行われ、何の罪もない多くの子たちの命が奪われている。その通りだ。紙面、TV、ネットなど発達したメディア社会では、瞬時にその惨状が世界に発信され、まさにライブ感覚の「戦争」がそこにある。
     だが、それは「傍観者である自分」がここに居る、ことである。その悲惨な映像を見て「自分はなにが出来るのか」であろう。戦後80年、毎年めぐる「あの日、あの時」を考え、受け止めることは、二度と…につながる継続すべき反省の刻印なのだろう。
     忘れられない言葉がある。1985年から始めた本紙・戦争体験記「語り継がねば」の取材で出会った当時70代の女性。自慢の兄を戦地で亡くした。戦闘機の空中戦の最中、撃ち落され海に没した。自分が目撃したわけではないが、兄の最期をそう聞かされ、それを信じてきた。「夏の空を飛行機が飛んで行くと、空に向かって『畜生、畜生』と叫んでいた母の姿がいまも忘れられない」。心魂の言葉、それは80年を経ても変わらないだろう。
     戦争反対、声高に叫ぶ声はどこまで届いているのだろう。「だが、言い続けなければ、必ずや『いつか来た道』になってしまう」。戦後生まれが人口の9割を占める今、あの刻印をどう語り継いでいけるのか、考える夏がまた来た。
     「8月ジャーナリズム」は時として揶揄される言葉だが、それでも「8月」は、意識すべき「歴史の刻印」であり、いまも続く戦争への「反戦」だ。

    2025年8月2日号

  • 世情が変る、「空恐ろしさ」

     何かが動き始めているのか、いや、すでに世情が変り始めているのか、参院選結果に「空恐ろしさ」を感じる。「有権者が抱く日常生活の不安を訴え、支持を伸ばした」、それが参政党。だがここに「ポピュリズム」が加わると、事はそう簡単ではない。『日本人ファースト』を掲げる政党だ。「賃金が増えないのは…」「雇用が伸びないのは…」「日本人の労働を奪っているのは…」など選挙中に飛び交った参政党の言葉、さらには支持者と見られるネットでの言葉。これは「排外主義」ではないのか。
     手法が似ていると感じた。あのトランプ言動だ。対立をあおり「敵」を作ることで原因の所在を意識させ、その対処療法に掲げる日本人ファースト。分かりやすい論法ではあるが、これこそポピュリズムではないか。本来、大衆迎合主義と和訳される言葉だが、負の側面と共に「正の側面」もある。日常生活に不満を抱く大衆が一つの課題に対し声を上げる。それに呼応する人の輪が増え、体制転換の状況を創り出す政治運動でもある。だが、今回の参政党の言動には「負」を感じる。
     法律を定める国会に、その政党が議席を得た事実は相当に大きい。まして議員立法を提案できる議席数だ。参院議員の任期は6年間、これも大きい。「いつあってもおかしくない」と常套文句が並ぶ衆院選が、この国の民意が出る、まさに正念場になるだろう。それほどの「空恐ろしさ」を感じる今回の参院選だ。
     今年、5千万人を超えると見られるインバウンド。並行して外国から就労を求めてくる人も多い。その最中の参院選だった。結果、排外主義が支持された形は、この国の将来をどう変えていくのだろう。十日町市9・33%、津南町は8・13%、栄村では6・62%の得票率の参政党。比例区では3、4番手の得票だ。有権者の「良識」が問われる、そんな国になってきた。

    2025年7月26日号

  • ラストチャンス、なのか

     津南町の命運がかかっている、過言だろうか。広域観光を支えて来たニュー・グリーンピア津南。開業から40年余、歴史はその存在を無情にも晒している。国の年金福祉事業団が潤沢な年金資金を使い、全国10数ヵ所に開業した保健保養リゾートホテル。運営は財団法人年金保養協会、いわば国直営的な経営。だが時代は激変、年金資金の見通しが厳しくなり、全国の施設は売却、閉鎖に追い込まれ、地域の観光拠点となっていたグリーンピア津南は、地元津南町が2億2500万円で購入。建設事業費265億円余、施設面積376㌶余の買い物だった。
     津南町は公設民営の運営方式を導入し、経営者はその時々代わったが津南高原開発が10年ごとの賃貸借契約で運営。その10年期限は9月末で満了。債務超過の現会社、頼みの金融機関もお手上げ状態のなか経営が続き、その負債総額は8億円を超えている。       
     9月末で契約が切れる。津南町は引き続き観光事業の拠点とするため、経営を受ける事業体を探すため、コンサル会社にリサーチと選定準備事業を委託。その結果2社が応札し、先週末、1社との交渉開始を決めた。その民間・イントランスは世界的なホテル展開の「インターコンチネンタルホテルグループ(IHG)」誘致を進めているという。まさにビッグネームだ。
     これは津南町にとって、ラストチャンスなのか、である。建設から40年余経過の施設ながら、それを取り巻く自然環境は「超1級品」と評価されている立地。津南町は交渉を成就させたい意向だが、売却には町の財産を普通財産に変更する必要があり、その許可の場が町議会。これをチャンスと取るか、土地売却は問題と疑義を示すか、9月にそれが決まる。
     あの時…と歳月の経過後、その選択の是非を振り返る歴史的な決断になるだろう。ラストチャンス、だろう。

    2025年7月19日号

  • 「再生二期作」、コメづくり革命か

     「再生二期作」。二期作は小学校の社会で習い、コメづくりを年に2回行うことは知っていたが、「再生」が付く二期作とは…。先週全国紙で大きく扱われ、今週は経済紙・日経に出ていた。それだけ産業構造に大きく影響する取り組みなのだろう。特にコメ価格高騰の昨今では、コメというキーワードだけで注目する世情だ。
     再生とは、一度の田植えでその年、二度の収穫をするコメづくりだ。説明されれば、なるほど…と思う。事実、ここ妻有地方の水田でもこの光景はよく見る。収穫の秋。稲刈りが終わった田んぼ、その上を赤とんぼが舞う頃になると刈り取った稲株から新たな稲(ひこばえ)が伸び、年によっては稲穂をつけ再び実入りする。このイネの特性を活用したのが「再生二期作」。春の田植えは一度。だが、収穫は二度できるという超コストパフォーマンスのコメづくりだ。
     実はこの再生二期作、先進地は中国という。一度の田植えで二度収獲する、それを専門的に研究し、システム化まできているという。日本はまだ研究が緒についたばかりで、本格研究はこれからだという。このメリットは大きい。高額なコメづくり農業機械が二度使える。結果、生産コストが下がり、利幅が増えることになる。
     先週5日の朝日新聞で紹介の再生二期作は、福島県の専業農業者の取り組み。1回目の稲刈りは8月中に行い、新米が8月に流通する。二回目は11月頃という。品種は農研機構が開発の「にじのきらめき」。暑さに強く、食味もコシヒカリ並みという。栽培ポイントは切り株を長めに残すこと。長めの切り株で稲穂の結実が早まるという。さらに研究が進めば、この再生二期作は、いまのコメづくりを革命的に変えるかもしれない。
     日進月歩、様々な分野の技術革新は早い。まさに、コメづくり革命か。

    2025年7月12日号

  • そして、また10年が始まった

     大きな節目だったJR東・宮中取水ダムの水利権更新は、「なにごともなく」、7月から新たな許可期間の10年が始まった。なにごともなく、ではないのかどうか、この10年間が検証してくれるだろう。
     更新期が迫るなかでの十日町市長選は、相当なるタイミングだった。市長候補2人による公開討論では、現職の実績を新人が「上書き修正」する場面が多く、誰の実績なのかという疑問符が付いたまま、投票日を向かえた。結果は市政史上最多の5選。この市長選からJR東とのこの先10年の「覚書」締結までの間、水利権更新に関わるいくつかの言葉が表出している。
     先ずは関口市長から「蓄電所」の言葉が出て、さらに「電気を買わせていただく」。建設から100年近く経過するも、なお現役で発電し続ける発電所は「コストが低い電気」を生み出している。それを「安価」で買う、それが関口市長の言葉。では、買った電気を何に使うのか。今度はJR東・喜㔟社長から「データセンター」という言葉が出た。これらのキーワードをつなぐと、見えてくる構図がある。
     低コストで生まれる電気を安価で求める十日町市。それを蓄電所で電気を蓄え、施設冷却が必要なデータセンターに供給、売るという流れが見えてくる。買った電気の事業化である。
     これが実現すれば、十日町市はJR東が宮中取水ダムからの水で千手発電所で発電し続ける限り、永劫的に「電気事業による利益」を得ることができる。これが7月から始まった「新たな10年」の成果なのか。
     勝手なシナリオは、得てして的外れの場合が多い。だが、これまでトップから出たキーワードをつなぐと見えてくるシナリオの一つだ。「したたか」の言葉は良い意味であるが、日本のトップ企業、JR東という心強いパートナーを十日町市が得ている事実は、大きい。

    2025年7月5日号

  • どうするグリーンピア

     津南町が岐路に立つ。観光の拠点、ニュー・グリーンピア津南の行方だ。9月30日で賃貸借契約が満了し、10月からの新たな経営者が決まっていない。残る3ヵ月、カウントダウンを刻む音が、日ごとその切迫感を増している。今月中に「優先交渉権を付与」すると方針を示す桑原悠町長。その相手は2社あり、どちらにするか選考協議の日々なのだろう。
     「津南町からグリーンピアがなくなったら、本当に何もなくなる」、住民の一致する思いだろう。だが、建設・開業から40年を経る観光拠点は、その広大な自然は魅力だが、ホテル棟など観光施設は「40年を経た中古物件」。この施設を引き続き津南観光のために使いたい、そう手を上げている2社は、相当なる覚悟なのだろう。
     その一つ、現在の経営法人・津南高原開発は株主総会を24日開いた。第21期の決算は質疑もなく承認された。その他で説明に立った樋口明社長は、9月末以降を視野に出席株主に経過説明した。賃貸借契約の『施設修繕は経営法人が行う』内容に疑義を述べ、「社会通念上、それでは経営できない」とこの10年間、何度も施設所有の津南町に求めた経過を話す。「契約更新が出来なかった場合…」、さらに踏み込んだ言葉を株主に話し、相当なる覚悟で臨んでいる姿勢を見せている。
     10月以降の経営体選択は「二者択一」なのか、である。どちらかに優先交渉を絞り込み、売却土地など具体的な交渉に入るが、この主導権は明らかに応札した民間にある。AがダメならBで、そんな単純な選択になるのだろうか。今回の「交渉」はすべて秘匿義務を課すなかで進み、外野論議は推測の域を出ないのが現実だ。
     今回の決定は、津南町にとって相当なる岐路になるだろう。その岐路の先をどう読み込み、政策決定するか、決断の日は迫っている。

    2025年6月28日号

  • これは、論点すり替え

     論点の目先のすり替え、そう感じる津南町議会の動きだ。NGP津南の売却問題。そもそも論は債務超過にある津南町観光拠点をどう再生するかだ。そのため町議会は、10年の賃貸借契約が切れる9月末以降の新たな経営者を探す補正予算を可決した。
     だが、22日の議員グループの町申し入れは、現経営会社の従業員雇用や取引企業の保全を理由に、「町が優先交渉するイントランスを売却先とは認められない」と、採決権議員の半数超の6議員が町に進言した。議決権を持つ議員、これは「我々の言うことを聞かないと議案を否決する」、暗に示唆している行為だ。
     津南町に必要と町議会も認める観光拠点のNGP津南の、経営継続への取り組みが主題。それを脇に置き住民不安や業者不安を煽る議員グループの言動は理解に苦しむ。いや、議決権を持つ議員としての自覚を疑う。
     議会はチェック機関であると共に、調査権を有し、議員発議できる。応札2社に議会全体でどう動いたのか。「我々は何も聞かされていない」と調査権を放棄したかのような言動もあるが、守秘義務で限られた情報だが、このネット社会、独自調査で相当なる情報が取れ、この業界は業者間の情報探知力は高く、関係筋に問えば確度の高い情報資料は容易に集められる。
     観光事業は格段に様変わりしている。大手民間が全面に出てイケイケどんどんの時代ではなく、ファンド形成し、そこに民間資本を投入、事業化への道筋をつけ、可能性のリサーチにより事業進出する手法だ。今回のNGP津南も同じ、その可能性が判断基準だ。
     議員グループの言動は事の本質ではなく、桑原悠町政への不信任表明だ。
     混迷する津南町。イメージ重視する観光事業者は、当然ながら近づかず、NGP津南を求める事業者も撤退を考える。事の本質はどこにあるのか、それは津南町のためになるか、だろう。

    2025年8月30日号

  • 『住民判定人』で行政事業検証を

     「自分ごと化会議」は、全国150を超える自治体で実施している。言葉の通り、「自分ごと」として自分が暮らす市町村の行政事業を見直し、検証し、新たな事業化を行政に提言していく、あるいは住民主導で事業を実現に導く、その声の総まとめ機関だ。
     行政事業の見直しは全国の市町村で、大小や濃淡はあるが機会を捉え検証を行っている。十日町市は総合計画の実施状況見直しを毎年行い、津南町も総合振興計画の見直しと共に自律計画の定期的な検証を行う。栄村も総合振興計画の見直しと共に毎年ローリング的に村事業を検証している。
     知られるのは鳥取県琴浦町。前町長の山口秀樹さんは語る。隣の米子市でも同様な取り組みを導入するため、「自分ごと化会議インよなご」を立ち上げ、有権者2千人対象に『市民判定人』を公募。やってみたいと21人が名乗り出て、市事業の見直し・検証に取り組んだ。2千人の20人余は1%だが、この自主的な手上げに意味がある。先ずは生活に密着の路線バス補助金をテーマにした。運行補助で年間2億円を市財政から支出している事業を検証。公共交通の維持運営に悩む多くの自治体共通の悩みでもある。
     赤字路線バスは高齢化社会の「命の足」、財政支出止む無しが実情。だが山口さんは「自分ごと化会議」で『市民判定人』に問うた。改善すべき・現事業を核に改善・現行通りの3視点で判定。市民は「赤字を単純補填せず企業努力を促すインセンティブ(報酬)を設け、路線ルートを再度市民と協議…」など「住民判定」した。妻有の自治体でも取り組むが、「住民目線」の判断を議会・議員に委ねているのが現状だ。
     「自分ごと」、住民がそう考える『危機感』をどう促すか、行政運営のセンスと感度が問われる。津南町のニュー・グリーンピア津南問題は、まさに「住民目線」が問われている。

    2025年8月23日号

  • 十日町市176人、津南町23人、栄村7人

     これは危機的な数字だ。出生数の激減は、その自治体の深刻な未来を示すデータでもある。人口4万6千人余の十日町市。今年1月から8月上旬までの出生数は91人。残る4ヵ月余で出生数がどこまで伸びるかだが、前年2024年の176人を上回るのは難しいだろう。津南町の昨年1年間の出生数は23人、栄村は7人、いずれも年間出生数の過去最低を更新している。数字データは、相当なる深刻度を我々住民に突き付けている。
     この人口問題と並行論議される未婚者社会の進行。時の政権は、この論議でたびたび性差問題を俎上に上げ、ジェンダー論議に抵触する言葉を持ち出し、批判の的になる。一方で現実を直視すると、さらに深刻度が増す事態を直視せずにはいられない。
     今年2025年、5年に一度の国勢調査の年だ。前回2020年調査で表出した実態は、前々回2015年調査をさらに上書きする深刻度を示した。国勢調査からは様々なデータが読み取れるが、人口減少に直結するのが「未婚者」の推移。このデータを5年毎に比較すると、その割合は急上昇している。2020年データでは、十日町市・津南町・栄村の単純平均だけでも30代男性未婚者は約45%、40代は約40%と高い比率を占めている。一方で、20代~40代の女性人口の減少も注目すべきデータだ。この年代の女性人口の減少は、未婚者増加に直結しているともいえる。
     「人口問題は行政運営の根本課題」と言われる通り、市町村運営の要点は人口政策である。だが、考えてしまう。十日町市から津南町に10人が移り住むと、それぞれ10人減、10人増だ。だが広域の妻有エリアで増減はない。同じ事がこの国全体に言えるのではないか。膨らんだ行政需要を整理する時期に来ている、その視点がこれからの人口政策ではないのか。

    2025年8月16日号

  • 民意はどこへ行った

     春の十日町市長選、市議選、先の参院選、示された「民意」はどこへ行ったのか。政局によっては年内に衆院選があるかもだ。来年の津南町長選は6月。選挙は「民主主義のコスト」だが、心身とも多大なコストをかけて民意が表出されるが、その「民意」は選挙結果と共に…では困る。選ばれた人たち、選良は選挙結果で示された民意を具現化するのが第一の責務だが、同時にその時々の検証が必要だろう。
     十日町市長選。市政史上初の5期の関口芳史市長。新潟県市長会の会長に就き、今後北信越市長会のトップも回ってくるだろう。そうなると全国市長会の役職も就いてくる。5期目は「外交」が多いのか。JR東との10年契約は「事もなく」継続され、引き出した「JR東・データセンター」計画への電力供給が視野に入る。その安定電力の供給に上がる「蓄電所」構想。すでに大手企業が乗り出す蓄電所計画だ。経産省バックアップで事業化が全国で進み、その情報をいち早く察知した関口市長らしい、狼煙(のろし)上げだ。 
     その先に見ているのは『持続可能な自治体・十日町市づくり』なのか。人口減少と少子化で今後の自治体運営は容易ではない。財源確保をどうするか、自治体トップの多くが頭を悩ます。十日町市はJR東という「最強のパートナー」を得ている。共生策を盛り込んだ『覚書』は、弱小自治体の十日町市がJR東という国内トップ企業と「運命共同体」で歩む約束手形でもある。
     一方の津南町。桑原悠町長は来年7月8日、2期の任期満了。6月の町長選に臨むが、直面するニュー・グリーンピア津南問題は、相当なる大きな課題になっている。選択の方向性とその具体化に難題が表出し始め、対応の如何によっては、さらに混乱が増す情勢だ。津南町の初心は『農を以って立町の基と為す』、その原点回帰も、選択肢の一つになってきている。

    2025年8月9日号

  • 「8月ジャーナリズム」

     「8月ジャーナリズム」。戦後80年の今年、この言葉をさらに目にし、耳にするだろう。「8月15日」を意識する世代は、歳月と共に薄れてきているが、決して忘れてはならない歴史の刻印である。それをどうメディアは記録し、伝えていくのか、その時々のマスコミ人に課せられた責務でもある。
     なぜ、8月になると「戦争」記事が多く出るのか…、戦争はいまも世界のどこかで人殺し行為が行われ、何の罪もない多くの子たちの命が奪われている。その通りだ。紙面、TV、ネットなど発達したメディア社会では、瞬時にその惨状が世界に発信され、まさにライブ感覚の「戦争」がそこにある。
     だが、それは「傍観者である自分」がここに居る、ことである。その悲惨な映像を見て「自分はなにが出来るのか」であろう。戦後80年、毎年めぐる「あの日、あの時」を考え、受け止めることは、二度と…につながる継続すべき反省の刻印なのだろう。
     忘れられない言葉がある。1985年から始めた本紙・戦争体験記「語り継がねば」の取材で出会った当時70代の女性。自慢の兄を戦地で亡くした。戦闘機の空中戦の最中、撃ち落され海に没した。自分が目撃したわけではないが、兄の最期をそう聞かされ、それを信じてきた。「夏の空を飛行機が飛んで行くと、空に向かって『畜生、畜生』と叫んでいた母の姿がいまも忘れられない」。心魂の言葉、それは80年を経ても変わらないだろう。
     戦争反対、声高に叫ぶ声はどこまで届いているのだろう。「だが、言い続けなければ、必ずや『いつか来た道』になってしまう」。戦後生まれが人口の9割を占める今、あの刻印をどう語り継いでいけるのか、考える夏がまた来た。
     「8月ジャーナリズム」は時として揶揄される言葉だが、それでも「8月」は、意識すべき「歴史の刻印」であり、いまも続く戦争への「反戦」だ。

    2025年8月2日号

  • 世情が変る、「空恐ろしさ」

     何かが動き始めているのか、いや、すでに世情が変り始めているのか、参院選結果に「空恐ろしさ」を感じる。「有権者が抱く日常生活の不安を訴え、支持を伸ばした」、それが参政党。だがここに「ポピュリズム」が加わると、事はそう簡単ではない。『日本人ファースト』を掲げる政党だ。「賃金が増えないのは…」「雇用が伸びないのは…」「日本人の労働を奪っているのは…」など選挙中に飛び交った参政党の言葉、さらには支持者と見られるネットでの言葉。これは「排外主義」ではないのか。
     手法が似ていると感じた。あのトランプ言動だ。対立をあおり「敵」を作ることで原因の所在を意識させ、その対処療法に掲げる日本人ファースト。分かりやすい論法ではあるが、これこそポピュリズムではないか。本来、大衆迎合主義と和訳される言葉だが、負の側面と共に「正の側面」もある。日常生活に不満を抱く大衆が一つの課題に対し声を上げる。それに呼応する人の輪が増え、体制転換の状況を創り出す政治運動でもある。だが、今回の参政党の言動には「負」を感じる。
     法律を定める国会に、その政党が議席を得た事実は相当に大きい。まして議員立法を提案できる議席数だ。参院議員の任期は6年間、これも大きい。「いつあってもおかしくない」と常套文句が並ぶ衆院選が、この国の民意が出る、まさに正念場になるだろう。それほどの「空恐ろしさ」を感じる今回の参院選だ。
     今年、5千万人を超えると見られるインバウンド。並行して外国から就労を求めてくる人も多い。その最中の参院選だった。結果、排外主義が支持された形は、この国の将来をどう変えていくのだろう。十日町市9・33%、津南町は8・13%、栄村では6・62%の得票率の参政党。比例区では3、4番手の得票だ。有権者の「良識」が問われる、そんな国になってきた。

    2025年7月26日号

  • ラストチャンス、なのか

     津南町の命運がかかっている、過言だろうか。広域観光を支えて来たニュー・グリーンピア津南。開業から40年余、歴史はその存在を無情にも晒している。国の年金福祉事業団が潤沢な年金資金を使い、全国10数ヵ所に開業した保健保養リゾートホテル。運営は財団法人年金保養協会、いわば国直営的な経営。だが時代は激変、年金資金の見通しが厳しくなり、全国の施設は売却、閉鎖に追い込まれ、地域の観光拠点となっていたグリーンピア津南は、地元津南町が2億2500万円で購入。建設事業費265億円余、施設面積376㌶余の買い物だった。
     津南町は公設民営の運営方式を導入し、経営者はその時々代わったが津南高原開発が10年ごとの賃貸借契約で運営。その10年期限は9月末で満了。債務超過の現会社、頼みの金融機関もお手上げ状態のなか経営が続き、その負債総額は8億円を超えている。       
     9月末で契約が切れる。津南町は引き続き観光事業の拠点とするため、経営を受ける事業体を探すため、コンサル会社にリサーチと選定準備事業を委託。その結果2社が応札し、先週末、1社との交渉開始を決めた。その民間・イントランスは世界的なホテル展開の「インターコンチネンタルホテルグループ(IHG)」誘致を進めているという。まさにビッグネームだ。
     これは津南町にとって、ラストチャンスなのか、である。建設から40年余経過の施設ながら、それを取り巻く自然環境は「超1級品」と評価されている立地。津南町は交渉を成就させたい意向だが、売却には町の財産を普通財産に変更する必要があり、その許可の場が町議会。これをチャンスと取るか、土地売却は問題と疑義を示すか、9月にそれが決まる。
     あの時…と歳月の経過後、その選択の是非を振り返る歴史的な決断になるだろう。ラストチャンス、だろう。

    2025年7月19日号

  • 「再生二期作」、コメづくり革命か

     「再生二期作」。二期作は小学校の社会で習い、コメづくりを年に2回行うことは知っていたが、「再生」が付く二期作とは…。先週全国紙で大きく扱われ、今週は経済紙・日経に出ていた。それだけ産業構造に大きく影響する取り組みなのだろう。特にコメ価格高騰の昨今では、コメというキーワードだけで注目する世情だ。
     再生とは、一度の田植えでその年、二度の収穫をするコメづくりだ。説明されれば、なるほど…と思う。事実、ここ妻有地方の水田でもこの光景はよく見る。収穫の秋。稲刈りが終わった田んぼ、その上を赤とんぼが舞う頃になると刈り取った稲株から新たな稲(ひこばえ)が伸び、年によっては稲穂をつけ再び実入りする。このイネの特性を活用したのが「再生二期作」。春の田植えは一度。だが、収穫は二度できるという超コストパフォーマンスのコメづくりだ。
     実はこの再生二期作、先進地は中国という。一度の田植えで二度収獲する、それを専門的に研究し、システム化まできているという。日本はまだ研究が緒についたばかりで、本格研究はこれからだという。このメリットは大きい。高額なコメづくり農業機械が二度使える。結果、生産コストが下がり、利幅が増えることになる。
     先週5日の朝日新聞で紹介の再生二期作は、福島県の専業農業者の取り組み。1回目の稲刈りは8月中に行い、新米が8月に流通する。二回目は11月頃という。品種は農研機構が開発の「にじのきらめき」。暑さに強く、食味もコシヒカリ並みという。栽培ポイントは切り株を長めに残すこと。長めの切り株で稲穂の結実が早まるという。さらに研究が進めば、この再生二期作は、いまのコメづくりを革命的に変えるかもしれない。
     日進月歩、様々な分野の技術革新は早い。まさに、コメづくり革命か。

    2025年7月12日号

  • そして、また10年が始まった

     大きな節目だったJR東・宮中取水ダムの水利権更新は、「なにごともなく」、7月から新たな許可期間の10年が始まった。なにごともなく、ではないのかどうか、この10年間が検証してくれるだろう。
     更新期が迫るなかでの十日町市長選は、相当なるタイミングだった。市長候補2人による公開討論では、現職の実績を新人が「上書き修正」する場面が多く、誰の実績なのかという疑問符が付いたまま、投票日を向かえた。結果は市政史上最多の5選。この市長選からJR東とのこの先10年の「覚書」締結までの間、水利権更新に関わるいくつかの言葉が表出している。
     先ずは関口市長から「蓄電所」の言葉が出て、さらに「電気を買わせていただく」。建設から100年近く経過するも、なお現役で発電し続ける発電所は「コストが低い電気」を生み出している。それを「安価」で買う、それが関口市長の言葉。では、買った電気を何に使うのか。今度はJR東・喜㔟社長から「データセンター」という言葉が出た。これらのキーワードをつなぐと、見えてくる構図がある。
     低コストで生まれる電気を安価で求める十日町市。それを蓄電所で電気を蓄え、施設冷却が必要なデータセンターに供給、売るという流れが見えてくる。買った電気の事業化である。
     これが実現すれば、十日町市はJR東が宮中取水ダムからの水で千手発電所で発電し続ける限り、永劫的に「電気事業による利益」を得ることができる。これが7月から始まった「新たな10年」の成果なのか。
     勝手なシナリオは、得てして的外れの場合が多い。だが、これまでトップから出たキーワードをつなぐと見えてくるシナリオの一つだ。「したたか」の言葉は良い意味であるが、日本のトップ企業、JR東という心強いパートナーを十日町市が得ている事実は、大きい。

    2025年7月5日号

  • どうするグリーンピア

     津南町が岐路に立つ。観光の拠点、ニュー・グリーンピア津南の行方だ。9月30日で賃貸借契約が満了し、10月からの新たな経営者が決まっていない。残る3ヵ月、カウントダウンを刻む音が、日ごとその切迫感を増している。今月中に「優先交渉権を付与」すると方針を示す桑原悠町長。その相手は2社あり、どちらにするか選考協議の日々なのだろう。
     「津南町からグリーンピアがなくなったら、本当に何もなくなる」、住民の一致する思いだろう。だが、建設・開業から40年を経る観光拠点は、その広大な自然は魅力だが、ホテル棟など観光施設は「40年を経た中古物件」。この施設を引き続き津南観光のために使いたい、そう手を上げている2社は、相当なる覚悟なのだろう。
     その一つ、現在の経営法人・津南高原開発は株主総会を24日開いた。第21期の決算は質疑もなく承認された。その他で説明に立った樋口明社長は、9月末以降を視野に出席株主に経過説明した。賃貸借契約の『施設修繕は経営法人が行う』内容に疑義を述べ、「社会通念上、それでは経営できない」とこの10年間、何度も施設所有の津南町に求めた経過を話す。「契約更新が出来なかった場合…」、さらに踏み込んだ言葉を株主に話し、相当なる覚悟で臨んでいる姿勢を見せている。
     10月以降の経営体選択は「二者択一」なのか、である。どちらかに優先交渉を絞り込み、売却土地など具体的な交渉に入るが、この主導権は明らかに応札した民間にある。AがダメならBで、そんな単純な選択になるのだろうか。今回の「交渉」はすべて秘匿義務を課すなかで進み、外野論議は推測の域を出ないのが現実だ。
     今回の決定は、津南町にとって相当なる岐路になるだろう。その岐路の先をどう読み込み、政策決定するか、決断の日は迫っている。

    2025年6月28日号