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妻有新聞掲載記事一覧

  • 熊鍋と冬の秋山郷撮影ツアー

    小林 幸一(津南案内人)

     森宮交通さんの冬の秋山郷撮影ツアーのガイドとして2日間同行しました。今回の参加者は2年前に同じ企画で参加されたリピーターの方々と香港からの初めての参加者でした。
     初めての外国人の参加でちょっと不安もあり、急きょ翻訳アプリを入れましたが、ほとんど日本語で通じました。
     今回は2年前の参加者が多かったので前回とは違う撮影地に案内しました。まずは池田の池から見玉不動尊七段の滝、見倉ではバスから降り歩いて木々に薄っすらと積もった降りたての雪を撮りました。私たちには見慣れた景色でも運がよくないとなかなか撮れない光景です。
     今回の宿は江戸時代に鈴木牧之が小赤沢で泊まった苗場荘で、当時と同じ茅葺屋根の梁や柱が見られ、牧之の描いた地炉の挿絵の複写が飾ってありました。
     食事会場には他の撮影グループもいて、壁には熊の皮が吊るされ、熊鍋を中心とした料理で写真談議に花を咲かせました。
     2日目は屋敷の布岩から上野原、穴藤のつり橋など雪の上を歩くことが多かったのでしっかりと踏み固めたのですが、香港からの参加者が雪を踏み抜き転んでなかなか歩けないのです。面白がって転んでいるのかもしれませんが、雪が良い思い出になっていることでしょう。
     帰りの車中で津南・秋山郷の四季の写真を見た方から、残雪と芽吹きの撮影がしたいという新たな予約が入ました。そこまで雪が残っているか? 雪が重要なアイティムになっています。

    2024年3月9日号

  • 『生きる力、これでしょ』

    南雲真樹さん(1983年生まれ)

     この春、七度目の米作りだ。耕作放棄田は茅など茫々の草だらけだったが、すべて手作業で除去。米作りもすべて手作業。「当たり前、これが普通だと思う。化学肥料や農薬を使うことで、大事なものを失っていることは、今の人たちが罹る病気を見れば分かるはず」。
    「そもそも生きるために必要なものは何か。その大切なものは皆が大事にする。だが、今はお金に振り回されている。生きる力とは、なにかでしょ」。
     横浜生まれ、横浜育ち。「こうじゃなければならない」的な『予定調和』の生き方を嫌い、5回ほど行ったインド滞在で『人間くささ、人間として』の観念的な体験、ガンジス川源流までの徒歩行など、その後の生き方に影響している。生きるために必要なもの、その一つの米作りをしたいと。「呼んでいた」、全く知らない十日町に7年前に移り住んだ。いまは松代・仙納に妻と暮らす。
     どこへ行くにも一緒の相棒はあひるの「チャイ」。全て手作りの米、地元の清水、松之山温泉で作る塩、生きる力を商品化している。『あひる屋』を掲げ口コミ販売。今月17日に十日町駅「コンコース・マルシェ」で販売する。  
     無農薬・無化学肥料の米『玄天快氣』(げんてんかいき)。「今の日本は全て出来レースの世界。取り繕いやうわべだけの世界であり、まさに原点回帰が求められている。これほどの消費社会、いいかげんに消費者は気づくべきだ」。販売は『量り売り』をする。「一人の一歩は小さな一歩だが、皆で踏み出せば大きな一歩になる」。
     春からの米作り。すでに残雪を割り、天水田に水を貯め始めている。「この先、なにが起きるか分からない、そのアクシデントが面白い」。
    ◆バトンタッチします。
     「会田法行さん」

    2024年3月9日号

  • 「溜息」の先に見える地方政治

     この見開き紙面の左側、オピニオンの見出し『はあ~(溜息)、この国はどうなっているの』、怒りを通り越し、溜息連発になってしまっている実感だ。そんな正義感はない、と連日TVや新聞などメディアで流れる政権不信の根源をスルーしている方々にとって、この溜息は聞こえているだろうか。
     歴史に「If」はないが、この政情で『解散・総選挙』を行い、それでも政権が維持できたなら、もうこの国はそれだけの国になってしまった、といえる。ドイツに抜かれGDP4位に転落などは、政情とは直接関係ないだろうが、そうだよなぁと妙に納得してしまう。そんな国になってしまった。
     我々が納めた税金が、地方交付税という名に変わり、地方自治体に「戻ってくる」財源のウエイトが年々増している自治体が多い。新年度予算で見ると、十日町市は134億9400万円(歳入比38・7%)、津南町は35億5千万円(同46・3%)、栄村は16億9千万円(同49・6%)。この比率は今後さらにアップしていくだろう。自主財源の減少と反比例する割合増の地方交付税だ。
     「厳しい財政事情」、この言葉が自治体で語られる頻度が増し、特に最近、「数年後には立ち行かなくなる」とまで公言するトップが出始めている。3月定例議会で津南町の桑原悠町長は、まさにこの言葉を何度も述べ、財政運営の危機感を出している。一方で、ふるさと納税が潤沢に集まり、和歌山・北山村では人口4百人余ながら、ふるさと納税により12億円の基金創設が実現し、「使途が悩み」などと文字通り嬉しい悲鳴になっているようだ。
     こうなると、国を頼りの地方政治はもはや限界にあるといえる。これほど「政権不信」が増すなかでは、地方政治の連携が要になる。パートナーだろう。民間企業、地方自治体、その仲間を見つけられるかどうかだ。

    2024年3月9日号

  • 「魚沼ブラザーズ」の挑戦、もっと『魚沼コシ』を

    津南・南魚沼・魚沼・長岡の若手稲作経営者

    全国の米コンに出品、「ライバルだが、情報共有で向上を」

    魚沼米の品質向上をと、ライバルであり仲間である30~40代男女を中心とした農業グループ「魚沼ブラザーズ」(村山周平会長、13人)。昨年末に米・食味分析鑑定コンクールの津南町開催など受け、新たに独自の「第1回最高米グランプリin魚沼」を先月19日、塩沢公民館で実施。メンバーが食味コンなどの全国コメ品評会で出品し入賞した魚沼米や県外産米2品目を合わせ14検体を食味審査。講師に食味コン審査員を務めるパナソニック炊飯部職員を招き、自分たちが作った魚沼米を評価し合った。村山会長(32、津南町・ゆきやまと農場)は「この会は美味しいお米を作ることが共通認識。施肥設計など情報共有、良いコメを作る想いを共有しながら、メンバーの魚沼米が様々なコンテストでトップ10に入るようにしていきたい」と話している。

    2024年3月2日号

  • 「議会を身近に」、フリートーク好評

    津南町議会、初の「だんだん懇談会」

    今月10日も、以降毎月10日開催

     昨秋の改選で「定数12」となった津南町議会。議会を身近に感じるようにと、議会だよりの刷新、さらに2~4月の毎月10日に町中心部の大割野商店街まちなかオープンスペースだんだんを使った「だんだんよくする津南町議会懇談会」を初企画。初回の先月20日は午前10時~午後6時の間に30人余の町民が来訪し議員と意見交換。流れは途切れず、ほとんどの議員が昼食を取る時間がないほどで盛況。次回は今月10日に行う。

    2024年3月2日号

  • 理想やゴール目標が高すぎるのでは

    「幸せを感じる」ひとりの時間を作る

     前回、「幸せの順番」についてお話しました。今回はその続き、「幸せを感じるために」についてお話します。
     私の勤めている医院は産婦人科が専門ですが、日々さまざまな年代の方の気持ちの不調についてご相談を受けます。理由はいろいろで、友人や家族との人間関係、学校の先生との人間関係、職場の人間関係、過重労働、元々のコミュニケーション能力の低さによる社会への適応障害、自身の病気、更年期のゆらぎ、認知症のはじまりとして、愛する人との死別などで、そして症状としては気持ちが沈む、というものです。
     私もうつ病の既往があるのでよく分かりますが、気持ちが沈んでいる時は自分が幸せから世界で一番遠い存在であると感じます。そして幸せそうにしている人を見ると、余計に自分はどうしてこんなに不幸なのか、と感じます。
     気持ちが落ち込むという状況は、自分以外の誰かがこの世にいるために生じると思います。世界に自分一人しかおらず毎日好きなように過ごせたとしたら、一人ぼっちで寂しいという気持ちさえ持たなければとても幸せで、気分が沈むということはないのではないかと思います。
     ですから、まずは「幸せを感じる」ためには、自分と他人を比べない、他人がどう思おうと自分の幸せを自分の時間を追求する、5分でいいので一人の時間を作る、というのが大事なのかなと思います。
     また、以前、テレビで精神腫瘍医の清水研さんとSUPER EIGHTの安田章大さんが対談をしていたのを見たのですが、そこで清水さんが日常の中での「Must(マスト、「~しなければならない」という意味)を捨てる」と気持ちが楽になる、という話をしていて、とても共感しました。
     精神腫瘍医とは、がん患者及びその家族の精神心理的な苦痛の軽減および療養生活の質の向上を目的とし、薬物療法のみならず、がんに関連する苦悩などに耳を傾ける等、専門知識、技能、態度を用いて、誠意をもった診療に積極的にあたる意思を有した精神科医・心療内科医のことを指します。
     自分もそうですが、気持ちの余裕がなくなってくると、あれをしなくちゃ、これをしなくちゃ、という気持ちで物事をこなしてしまいがちになります。
     たとえば夕飯の支度一つであっても、「疲れてるのに、夕飯の支度をしないといけない」と思いながら作るのと、「疲れて帰ってくるみんなが、美味しい美味しいと言って食べてくれるような夕飯をつくっちゃうぞ~!」と思いながら作るのでは、全然大変さも楽しさも違うのが分かると思います。
     逆に言えば、気持ちに余裕がなくなってしまっているのは、やろうとしていることのハードルが自分にとっては高いのかもしれません。
     夕飯を作ることに気持ちの余裕が持てないのは、食事を作ること自体が苦手なのに「夕飯を作るのはお母さんがやるのが当然」と思っていませんか? 疲れているのに「夕飯のおかずは3品作らないとダメ」「必ず食事は手作りでないとダメ」と思っていませんか? 自分がこうしたい! と思う理想はあるかもしれませんが、その理想やゴール目標が高すぎると幸せを感じることから遠ざかる可能性があるのではないかなと思います。そして、そのハードルの高さにご自分で気づいていない人が多いのが事実です。
     そうはいっても「幸せを感じられない!」という方は是非お気軽にご相談くださいね。(たかき医院・仲栄美子医師)

    2024年3月2日号

  • 『ここ松代には全てがあります』

    中村 紀子さん(1974年生まれ)

     仕事や旅で30ヵ国余を巡った。「その国、その国の良さがありましたが、ここに来たら、その良さのすべてがあり、『出会った』という感じです」。早期退職した2022年、大地の芸術祭で訪れた十日町。印象は「こんな良いところがあるんだ」。暮らしてみたいと検索すると『竹所シェアハウス』を知り、生活を始める。それはカール・
    ベンクスさんとの出会いでもあった。
     「いつか本当に好きになったところで暮らしたい」、その思いは飼料用微生物を扱う仕事で外国を転々とする中で募っ
    ていった。だが、生まれ育った新潟県内には目が向かなかった。その契機になったのが大地の芸術祭。さらにカールさんの存在。「ここに住み続けたい」、その思いが増した。
     古民家を雰囲気たっぷりのゲストハウスに改修し、カールさんが運営していた宿『カールベンクス古民家ゲストハウス』を昨年12月引き継いだ。
     1927年建築、まもなく百年を迎える古民家はカールさんの手により、太い梁、漆喰の壁など伝統の和を生かし、そこにドイツ風のヨーロピアン雰囲気を取り入れ、「和を感じ、洋を感じ、なんとも居心地が良い空間です」。2階のゲストルーム2室は、松代の自然と生活が体感できる雰囲気たっぷりの空間だ。
     「人と人の出会いですね。自然はもちろんですが、ここに暮らす人たちの温かさがいいですね。芸術祭で様々な方が訪れているためでしょうか、ここの人たちはいつも温かく付き合っていただき、その雰囲気がとても居心地の良さを出していますね」。さらに「私はここへ来て地域の人に本当にお世話になったので、今後は自分の事業以外でも地域のお役に立てる存在になりたいです」。
    ◆バトンタッチします。
     「南雲真樹さん」

    2024年3月2日号

  • 言説に流されず、だめはダメ

    内憂と外患、今日も悶々と

    斎木 文夫 (年金生活者)

     これを書いている2月28日、自民党の裏金問題をめぐる衆院政倫審が全面公開で開かれることになった。出席者は6人。森、二階、萩生田、下村各氏の出番はない。
     1人1時間くらいの言い訳をさせて、何も明らかにならずに、予算案がスーと通るようになったら、この国ダメだわ。
     今回の政倫審は派閥パーティー裏金に限っているが、茂木氏後援会では2016年~19年の使途不明金が1億2千万円以上、20年~22年の使途不明金が9400万円との報道もある(2月26日『毎日』)。
     茂木氏の資金管理団体から後援会に多額の寄付が流れ、その先が使途不明となっている。資金管理団体と後援会の住所、会計責任者は同一であっても、後援会は政治資金規正法で言う「国会議員関係政治団体」でないから、法的にはお金の使途を明らかにする必要はない。「脱法的行為で悪質だ」と専門家は言う。
     これは、茂木氏だけではなく、自民党だけでもないような気がする。誰か、ぜんぶ調べて明らかにしてもらえないものか。ダメな奴はぜんぶ落としてやる。ことは単純だ。落としてやればいいのだ。
     ロシアのウクライナ侵攻から2年。ウクライナの苦戦は続き、西側諸国の支援疲れも表面化してきた。もしロシアが勝ったら、また、プーチンは核使用をチラつかせており、日本もオンブしている核抑止力という約束事が吹き飛んだら、今の国際秩序は崩壊してしまう。
     もう一つの戦争、イスラエルのパレスチナ自治区侵攻にあたって、アメリカのイスラエル寄りの態度が事態をややこしくしている。
     2つの戦争を前に、日本はどうすべきか。だが、日本の政府与党にそんな力はない。では、私たちはどうしたらよいのか。いくらニュース番組の解説を聞いても、本を読んでも、議論をしても、簡単に答えは出ない。悶々とする毎日だ。
     「お前が心配する必要はない」とそしられるのは承知の上だ。でも、私たちのあらゆる生活場面は政治と関わりがあり、地方政治と中央政治、国内政治と国際政治はつながっているというのが私の考えだ。心配せずにはいられない。
     答えの出ない中、右か左か、簡単で分かりやすい言説に流されるのはやめようと思う。「多様性」にカヅケて「誰がどう考えたっていいじゃないか」と開き直り、思考を停止し、分断を容認することもだ。今は毎日悶々としているのが、私には似合っている。

    2024年3月2日号

  • 高倉山と結東集落

    照井 麻美(津南星空写真部)

     「ゴールデンカムイ」という映画はご覧になりましたか? 明治時代の北海道を舞台にした漫画が原作の映画なのですが、実は津南町にある「見玉公園」がロケ地となっており、冒頭のシーンで数カット見玉公園だと分かる形で使われています。
     私は見玉公園からも見える中津川流域の柱状節理が好きで、今回は見玉よりもう少し上流にある高倉山と結東集落の景色をお届けします。
     撮影時期は去年の2月26日で、東秋山林道に入り見倉集落に到着する手前で撮影しました。例年3月を目の前にすると雪も落ち着き、気持ちがいい晴れの日が続くようになり、雪が積もっていると岩肌の陰影がはっきりと見えるようになり、この時期しか見られない光景を目の当たりにすることができました。
     ふり返ってみると去年の今頃は結東の観測地点で積雪が2mあり、道路の両脇には高い雪壁ができていましたが、今年は去年のおよそ半分です。
     すでに地面の見えた所からはフキノトウが顔を出し始め、雪の季節が少なくて少し寂しいような気もしていますが、気温も高く暖かな日差しを感じると春が待ち遠しくなるのでした。

    2024年3月2日号

  • インバウンドは「雪」

     雪を求める外国からの観光客が目立つようになっている。週末に限らず平日も越後湯沢駅ではその姿が見られ、十日町雪まつりでも外国からの来訪者が見られた。関口市長はさらなるインバウンドを視野に、取り組みを始めている。だが、外国観光客が求める『雪国』と受入れ側の「もてなし」に差異が生じているのでは、と感じる場面に出くわした。「この雪像はどうやって造るのか」、このストレートな疑問に、十日町雪まつりは応えていないのではないか。出来上がった雪像を前に説明したところで、初めての雪国来訪者には、その感覚は実感として分からない。といって、数日間の雪像づくりの短縮版は出来ない。知恵の出し所だろう。
     美術館や博物館には、その企画展に関係した15分ほどの動画コーナーがある。雪像づくりに導入出来ないか。加えて雪像コンテストと合わせ、雪像づくり記録動画をコンテスト応募に義務付け、最優秀賞・優秀賞作品は1年間、市博物館や十日町駅、市役所、JR協力を得て大宮駅サイネージで動画公開など副賞を付ける。「どうやって造るの」に応えることができるのでは。
     さらに、惜しまれつつ2020年に歴史に幕を下ろした『大白倉バイトウ』は、これこそ雪国伝統だろう。あの規模の「炎」を見ることは地元でもなくなり、まして雪に映える「炎の柱」は間違いなく外国観光客の心を捉えるだろう。それも「神聖な炎」として。継続の課題はいくつも上げられるが、その困難性のハードルを乗り越えるのが地域力をバックアップする行政。その行政を資金支援するのは「とおかまち応援団」の民間事業者ではないか。
     雪国観光は確実にインバウンドの誘因要素だ。十日町雪まつりの伝統は「市民手づくりの雪まつり」。ならばその手作り感を前面に出してはどうか。そこに「雪まつり発祥の地」のプライドが再興するだろう。

    2024年3月2日号

  • 熊鍋と冬の秋山郷撮影ツアー

    小林 幸一(津南案内人)

     森宮交通さんの冬の秋山郷撮影ツアーのガイドとして2日間同行しました。今回の参加者は2年前に同じ企画で参加されたリピーターの方々と香港からの初めての参加者でした。
     初めての外国人の参加でちょっと不安もあり、急きょ翻訳アプリを入れましたが、ほとんど日本語で通じました。
     今回は2年前の参加者が多かったので前回とは違う撮影地に案内しました。まずは池田の池から見玉不動尊七段の滝、見倉ではバスから降り歩いて木々に薄っすらと積もった降りたての雪を撮りました。私たちには見慣れた景色でも運がよくないとなかなか撮れない光景です。
     今回の宿は江戸時代に鈴木牧之が小赤沢で泊まった苗場荘で、当時と同じ茅葺屋根の梁や柱が見られ、牧之の描いた地炉の挿絵の複写が飾ってありました。
     食事会場には他の撮影グループもいて、壁には熊の皮が吊るされ、熊鍋を中心とした料理で写真談議に花を咲かせました。
     2日目は屋敷の布岩から上野原、穴藤のつり橋など雪の上を歩くことが多かったのでしっかりと踏み固めたのですが、香港からの参加者が雪を踏み抜き転んでなかなか歩けないのです。面白がって転んでいるのかもしれませんが、雪が良い思い出になっていることでしょう。
     帰りの車中で津南・秋山郷の四季の写真を見た方から、残雪と芽吹きの撮影がしたいという新たな予約が入ました。そこまで雪が残っているか? 雪が重要なアイティムになっています。

    2024年3月9日号

  • 『生きる力、これでしょ』

    南雲真樹さん(1983年生まれ)

     この春、七度目の米作りだ。耕作放棄田は茅など茫々の草だらけだったが、すべて手作業で除去。米作りもすべて手作業。「当たり前、これが普通だと思う。化学肥料や農薬を使うことで、大事なものを失っていることは、今の人たちが罹る病気を見れば分かるはず」。
    「そもそも生きるために必要なものは何か。その大切なものは皆が大事にする。だが、今はお金に振り回されている。生きる力とは、なにかでしょ」。
     横浜生まれ、横浜育ち。「こうじゃなければならない」的な『予定調和』の生き方を嫌い、5回ほど行ったインド滞在で『人間くささ、人間として』の観念的な体験、ガンジス川源流までの徒歩行など、その後の生き方に影響している。生きるために必要なもの、その一つの米作りをしたいと。「呼んでいた」、全く知らない十日町に7年前に移り住んだ。いまは松代・仙納に妻と暮らす。
     どこへ行くにも一緒の相棒はあひるの「チャイ」。全て手作りの米、地元の清水、松之山温泉で作る塩、生きる力を商品化している。『あひる屋』を掲げ口コミ販売。今月17日に十日町駅「コンコース・マルシェ」で販売する。  
     無農薬・無化学肥料の米『玄天快氣』(げんてんかいき)。「今の日本は全て出来レースの世界。取り繕いやうわべだけの世界であり、まさに原点回帰が求められている。これほどの消費社会、いいかげんに消費者は気づくべきだ」。販売は『量り売り』をする。「一人の一歩は小さな一歩だが、皆で踏み出せば大きな一歩になる」。
     春からの米作り。すでに残雪を割り、天水田に水を貯め始めている。「この先、なにが起きるか分からない、そのアクシデントが面白い」。
    ◆バトンタッチします。
     「会田法行さん」

    2024年3月9日号

  • 「溜息」の先に見える地方政治

     この見開き紙面の左側、オピニオンの見出し『はあ~(溜息)、この国はどうなっているの』、怒りを通り越し、溜息連発になってしまっている実感だ。そんな正義感はない、と連日TVや新聞などメディアで流れる政権不信の根源をスルーしている方々にとって、この溜息は聞こえているだろうか。
     歴史に「If」はないが、この政情で『解散・総選挙』を行い、それでも政権が維持できたなら、もうこの国はそれだけの国になってしまった、といえる。ドイツに抜かれGDP4位に転落などは、政情とは直接関係ないだろうが、そうだよなぁと妙に納得してしまう。そんな国になってしまった。
     我々が納めた税金が、地方交付税という名に変わり、地方自治体に「戻ってくる」財源のウエイトが年々増している自治体が多い。新年度予算で見ると、十日町市は134億9400万円(歳入比38・7%)、津南町は35億5千万円(同46・3%)、栄村は16億9千万円(同49・6%)。この比率は今後さらにアップしていくだろう。自主財源の減少と反比例する割合増の地方交付税だ。
     「厳しい財政事情」、この言葉が自治体で語られる頻度が増し、特に最近、「数年後には立ち行かなくなる」とまで公言するトップが出始めている。3月定例議会で津南町の桑原悠町長は、まさにこの言葉を何度も述べ、財政運営の危機感を出している。一方で、ふるさと納税が潤沢に集まり、和歌山・北山村では人口4百人余ながら、ふるさと納税により12億円の基金創設が実現し、「使途が悩み」などと文字通り嬉しい悲鳴になっているようだ。
     こうなると、国を頼りの地方政治はもはや限界にあるといえる。これほど「政権不信」が増すなかでは、地方政治の連携が要になる。パートナーだろう。民間企業、地方自治体、その仲間を見つけられるかどうかだ。

    2024年3月9日号

  • 「魚沼ブラザーズ」の挑戦、もっと『魚沼コシ』を

    津南・南魚沼・魚沼・長岡の若手稲作経営者

    全国の米コンに出品、「ライバルだが、情報共有で向上を」

    魚沼米の品質向上をと、ライバルであり仲間である30~40代男女を中心とした農業グループ「魚沼ブラザーズ」(村山周平会長、13人)。昨年末に米・食味分析鑑定コンクールの津南町開催など受け、新たに独自の「第1回最高米グランプリin魚沼」を先月19日、塩沢公民館で実施。メンバーが食味コンなどの全国コメ品評会で出品し入賞した魚沼米や県外産米2品目を合わせ14検体を食味審査。講師に食味コン審査員を務めるパナソニック炊飯部職員を招き、自分たちが作った魚沼米を評価し合った。村山会長(32、津南町・ゆきやまと農場)は「この会は美味しいお米を作ることが共通認識。施肥設計など情報共有、良いコメを作る想いを共有しながら、メンバーの魚沼米が様々なコンテストでトップ10に入るようにしていきたい」と話している。

    2024年3月2日号

  • 「議会を身近に」、フリートーク好評

    津南町議会、初の「だんだん懇談会」

    今月10日も、以降毎月10日開催

     昨秋の改選で「定数12」となった津南町議会。議会を身近に感じるようにと、議会だよりの刷新、さらに2~4月の毎月10日に町中心部の大割野商店街まちなかオープンスペースだんだんを使った「だんだんよくする津南町議会懇談会」を初企画。初回の先月20日は午前10時~午後6時の間に30人余の町民が来訪し議員と意見交換。流れは途切れず、ほとんどの議員が昼食を取る時間がないほどで盛況。次回は今月10日に行う。

    2024年3月2日号

  • 理想やゴール目標が高すぎるのでは

    「幸せを感じる」ひとりの時間を作る

     前回、「幸せの順番」についてお話しました。今回はその続き、「幸せを感じるために」についてお話します。
     私の勤めている医院は産婦人科が専門ですが、日々さまざまな年代の方の気持ちの不調についてご相談を受けます。理由はいろいろで、友人や家族との人間関係、学校の先生との人間関係、職場の人間関係、過重労働、元々のコミュニケーション能力の低さによる社会への適応障害、自身の病気、更年期のゆらぎ、認知症のはじまりとして、愛する人との死別などで、そして症状としては気持ちが沈む、というものです。
     私もうつ病の既往があるのでよく分かりますが、気持ちが沈んでいる時は自分が幸せから世界で一番遠い存在であると感じます。そして幸せそうにしている人を見ると、余計に自分はどうしてこんなに不幸なのか、と感じます。
     気持ちが落ち込むという状況は、自分以外の誰かがこの世にいるために生じると思います。世界に自分一人しかおらず毎日好きなように過ごせたとしたら、一人ぼっちで寂しいという気持ちさえ持たなければとても幸せで、気分が沈むということはないのではないかと思います。
     ですから、まずは「幸せを感じる」ためには、自分と他人を比べない、他人がどう思おうと自分の幸せを自分の時間を追求する、5分でいいので一人の時間を作る、というのが大事なのかなと思います。
     また、以前、テレビで精神腫瘍医の清水研さんとSUPER EIGHTの安田章大さんが対談をしていたのを見たのですが、そこで清水さんが日常の中での「Must(マスト、「~しなければならない」という意味)を捨てる」と気持ちが楽になる、という話をしていて、とても共感しました。
     精神腫瘍医とは、がん患者及びその家族の精神心理的な苦痛の軽減および療養生活の質の向上を目的とし、薬物療法のみならず、がんに関連する苦悩などに耳を傾ける等、専門知識、技能、態度を用いて、誠意をもった診療に積極的にあたる意思を有した精神科医・心療内科医のことを指します。
     自分もそうですが、気持ちの余裕がなくなってくると、あれをしなくちゃ、これをしなくちゃ、という気持ちで物事をこなしてしまいがちになります。
     たとえば夕飯の支度一つであっても、「疲れてるのに、夕飯の支度をしないといけない」と思いながら作るのと、「疲れて帰ってくるみんなが、美味しい美味しいと言って食べてくれるような夕飯をつくっちゃうぞ~!」と思いながら作るのでは、全然大変さも楽しさも違うのが分かると思います。
     逆に言えば、気持ちに余裕がなくなってしまっているのは、やろうとしていることのハードルが自分にとっては高いのかもしれません。
     夕飯を作ることに気持ちの余裕が持てないのは、食事を作ること自体が苦手なのに「夕飯を作るのはお母さんがやるのが当然」と思っていませんか? 疲れているのに「夕飯のおかずは3品作らないとダメ」「必ず食事は手作りでないとダメ」と思っていませんか? 自分がこうしたい! と思う理想はあるかもしれませんが、その理想やゴール目標が高すぎると幸せを感じることから遠ざかる可能性があるのではないかなと思います。そして、そのハードルの高さにご自分で気づいていない人が多いのが事実です。
     そうはいっても「幸せを感じられない!」という方は是非お気軽にご相談くださいね。(たかき医院・仲栄美子医師)

    2024年3月2日号

  • 『ここ松代には全てがあります』

    中村 紀子さん(1974年生まれ)

     仕事や旅で30ヵ国余を巡った。「その国、その国の良さがありましたが、ここに来たら、その良さのすべてがあり、『出会った』という感じです」。早期退職した2022年、大地の芸術祭で訪れた十日町。印象は「こんな良いところがあるんだ」。暮らしてみたいと検索すると『竹所シェアハウス』を知り、生活を始める。それはカール・
    ベンクスさんとの出会いでもあった。
     「いつか本当に好きになったところで暮らしたい」、その思いは飼料用微生物を扱う仕事で外国を転々とする中で募っ
    ていった。だが、生まれ育った新潟県内には目が向かなかった。その契機になったのが大地の芸術祭。さらにカールさんの存在。「ここに住み続けたい」、その思いが増した。
     古民家を雰囲気たっぷりのゲストハウスに改修し、カールさんが運営していた宿『カールベンクス古民家ゲストハウス』を昨年12月引き継いだ。
     1927年建築、まもなく百年を迎える古民家はカールさんの手により、太い梁、漆喰の壁など伝統の和を生かし、そこにドイツ風のヨーロピアン雰囲気を取り入れ、「和を感じ、洋を感じ、なんとも居心地が良い空間です」。2階のゲストルーム2室は、松代の自然と生活が体感できる雰囲気たっぷりの空間だ。
     「人と人の出会いですね。自然はもちろんですが、ここに暮らす人たちの温かさがいいですね。芸術祭で様々な方が訪れているためでしょうか、ここの人たちはいつも温かく付き合っていただき、その雰囲気がとても居心地の良さを出していますね」。さらに「私はここへ来て地域の人に本当にお世話になったので、今後は自分の事業以外でも地域のお役に立てる存在になりたいです」。
    ◆バトンタッチします。
     「南雲真樹さん」

    2024年3月2日号

  • 言説に流されず、だめはダメ

    内憂と外患、今日も悶々と

    斎木 文夫 (年金生活者)

     これを書いている2月28日、自民党の裏金問題をめぐる衆院政倫審が全面公開で開かれることになった。出席者は6人。森、二階、萩生田、下村各氏の出番はない。
     1人1時間くらいの言い訳をさせて、何も明らかにならずに、予算案がスーと通るようになったら、この国ダメだわ。
     今回の政倫審は派閥パーティー裏金に限っているが、茂木氏後援会では2016年~19年の使途不明金が1億2千万円以上、20年~22年の使途不明金が9400万円との報道もある(2月26日『毎日』)。
     茂木氏の資金管理団体から後援会に多額の寄付が流れ、その先が使途不明となっている。資金管理団体と後援会の住所、会計責任者は同一であっても、後援会は政治資金規正法で言う「国会議員関係政治団体」でないから、法的にはお金の使途を明らかにする必要はない。「脱法的行為で悪質だ」と専門家は言う。
     これは、茂木氏だけではなく、自民党だけでもないような気がする。誰か、ぜんぶ調べて明らかにしてもらえないものか。ダメな奴はぜんぶ落としてやる。ことは単純だ。落としてやればいいのだ。
     ロシアのウクライナ侵攻から2年。ウクライナの苦戦は続き、西側諸国の支援疲れも表面化してきた。もしロシアが勝ったら、また、プーチンは核使用をチラつかせており、日本もオンブしている核抑止力という約束事が吹き飛んだら、今の国際秩序は崩壊してしまう。
     もう一つの戦争、イスラエルのパレスチナ自治区侵攻にあたって、アメリカのイスラエル寄りの態度が事態をややこしくしている。
     2つの戦争を前に、日本はどうすべきか。だが、日本の政府与党にそんな力はない。では、私たちはどうしたらよいのか。いくらニュース番組の解説を聞いても、本を読んでも、議論をしても、簡単に答えは出ない。悶々とする毎日だ。
     「お前が心配する必要はない」とそしられるのは承知の上だ。でも、私たちのあらゆる生活場面は政治と関わりがあり、地方政治と中央政治、国内政治と国際政治はつながっているというのが私の考えだ。心配せずにはいられない。
     答えの出ない中、右か左か、簡単で分かりやすい言説に流されるのはやめようと思う。「多様性」にカヅケて「誰がどう考えたっていいじゃないか」と開き直り、思考を停止し、分断を容認することもだ。今は毎日悶々としているのが、私には似合っている。

    2024年3月2日号

  • 高倉山と結東集落

    照井 麻美(津南星空写真部)

     「ゴールデンカムイ」という映画はご覧になりましたか? 明治時代の北海道を舞台にした漫画が原作の映画なのですが、実は津南町にある「見玉公園」がロケ地となっており、冒頭のシーンで数カット見玉公園だと分かる形で使われています。
     私は見玉公園からも見える中津川流域の柱状節理が好きで、今回は見玉よりもう少し上流にある高倉山と結東集落の景色をお届けします。
     撮影時期は去年の2月26日で、東秋山林道に入り見倉集落に到着する手前で撮影しました。例年3月を目の前にすると雪も落ち着き、気持ちがいい晴れの日が続くようになり、雪が積もっていると岩肌の陰影がはっきりと見えるようになり、この時期しか見られない光景を目の当たりにすることができました。
     ふり返ってみると去年の今頃は結東の観測地点で積雪が2mあり、道路の両脇には高い雪壁ができていましたが、今年は去年のおよそ半分です。
     すでに地面の見えた所からはフキノトウが顔を出し始め、雪の季節が少なくて少し寂しいような気もしていますが、気温も高く暖かな日差しを感じると春が待ち遠しくなるのでした。

    2024年3月2日号

  • インバウンドは「雪」

     雪を求める外国からの観光客が目立つようになっている。週末に限らず平日も越後湯沢駅ではその姿が見られ、十日町雪まつりでも外国からの来訪者が見られた。関口市長はさらなるインバウンドを視野に、取り組みを始めている。だが、外国観光客が求める『雪国』と受入れ側の「もてなし」に差異が生じているのでは、と感じる場面に出くわした。「この雪像はどうやって造るのか」、このストレートな疑問に、十日町雪まつりは応えていないのではないか。出来上がった雪像を前に説明したところで、初めての雪国来訪者には、その感覚は実感として分からない。といって、数日間の雪像づくりの短縮版は出来ない。知恵の出し所だろう。
     美術館や博物館には、その企画展に関係した15分ほどの動画コーナーがある。雪像づくりに導入出来ないか。加えて雪像コンテストと合わせ、雪像づくり記録動画をコンテスト応募に義務付け、最優秀賞・優秀賞作品は1年間、市博物館や十日町駅、市役所、JR協力を得て大宮駅サイネージで動画公開など副賞を付ける。「どうやって造るの」に応えることができるのでは。
     さらに、惜しまれつつ2020年に歴史に幕を下ろした『大白倉バイトウ』は、これこそ雪国伝統だろう。あの規模の「炎」を見ることは地元でもなくなり、まして雪に映える「炎の柱」は間違いなく外国観光客の心を捉えるだろう。それも「神聖な炎」として。継続の課題はいくつも上げられるが、その困難性のハードルを乗り越えるのが地域力をバックアップする行政。その行政を資金支援するのは「とおかまち応援団」の民間事業者ではないか。
     雪国観光は確実にインバウンドの誘因要素だ。十日町雪まつりの伝統は「市民手づくりの雪まつり」。ならばその手作り感を前面に出してはどうか。そこに「雪まつり発祥の地」のプライドが再興するだろう。

    2024年3月2日号