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妻有新聞掲載記事一覧

  • 当世新入社員事情、「耐え忍ぶ」は、今は昔

    退職手続き代行業

    松崎 房子 (元ゆずり葉編集委員)

     この春、三番目の孫が社会人になった。先年就職した初孫も、二番目もそれぞれらしい職に就くことができ、じじ・ばばも一安心した。近頃のニュースを聞くと、最近は短期間で就職した企業を辞し、転職する傾向が強いとか? しかも、その手続きを代行する企業もあるという。
     本人はもちろん、代行する企業も、退職を告げられる企業も、あれこれ斟酌することなく、極めてビジネスライクに手続するのみ。これには唖然とした。更に一度ご縁のできた企業に、定年まで勤め上げるなーんて考えている人は殆どいない。
    そんな折、四六時中つけているラジオから『ああ、上野駅』の歌が流れてきた。♬どこかに故郷の香りを乗せて、入る列車の懐かしさ…♬
    〈金の卵〉ともてはやされ、その実、安い労働力として使い捨てられた中卒の子どもたち。
     中学生の頃、同級生が夜勤明けで倒れ亡くなった。義務教育も終えぬうちから、多くの弟妹や、病身の母親のために働いていたのだそうだ。
     そして私自身の就職は、戦後15年位は経ってはいたが、まだまだ厳しい状況だった。それでもどの企業も経営状態の如何にかかわらず、新卒はたとえ一人でも採用して育て上げる風潮だった。おかげで片親だった私も採用してくれた会社があった。
     電話を取るのは新入社員の仕事と決まっていたのに、家に電話はなかったので、電話が怖くて取れなかった。事ある毎に厳しく躾けられ、その上司に当てつけで、目の前で首を吊ってやる! と思ったほど。でも直後上司はショックでもそのうち忘れ去る。片や私は死んでしまう。そんなことはダメだ、ダメだ。ものになったかどうかは疑問だが、その後は何かにつけて色々任せていただいた。
     我慢と耐え忍ぶのが精一杯であった昔。世の中が大きく変化し、いろんなノウハウがある。我々世代には想像すらできない方法で、働き方も大きく変わった。新入社員だけでなく、大人たちも副業が認められている企業が少なくないとか。
     生涯をかけて会社を支える社員もいない、生涯をかけて面倒を見てくれる企業もない、いや出来なくなったのだろう。
     数十年経ったとはいえ、やりたくない事、避けたい事をしないで済むのは、不要なエネルギーを使わないことのほうが、今どきなのかな?  昔人間には首をかしげることばかりだ。

    2024年5月18日号

  • ホンドキツネ

    南雲 敏夫(県自然観察指導員)

     今回は久々に昼間にキツネの写真が撮れた。夜行性のキツネが日中に姿を見せるのはあまりないが、この日は天気も良いし、ちょうど春うららのような気温と雰囲気であった。
     動物たちもやはり長い冬の厳しい期間を耐えて暖かくなると油断するのかは分からないが、山からの農道を楽しそうにスキップしながら下りてくるのを確認、キツネ当人は嬉しそうにスキップしていたのかはわからないけれど…、見ていてそんな感じに受けた。
     急いで車を止めてカメラ持ってそっと陰から近づいて撮影。
     一瞬、こちらを見ていたがなんとか2回シャッターを切った途端にキツネは「あっ見つかった…」と思ったのか猛ダッシュで逃げて行った。
     わずかの時間でもこういう場面での動物たちとのやりとりはとても楽しい時間。
     このキツネ、イヌ科だと知っている人は案外と少ない。もちろんタヌキもイヌ科、だから犬の病気が流行ると野生のキツネやタヌキも被害を受ける事になる。 

    2024年5月18日号

  • 平和な「縄文」、写真で世界発信

    笹山縄文の里事務局長 野沢恒雄さん

    第25回笹山縄文市は来月2日

     世界各地で人権無視の戦争や紛争が続いているなか「戦争や環境破壊とは無縁の縄文時代こそ平和と持続可能な社会では。世界に発信すべきこと」と話すNPO『笹山縄文の里』の野沢恒雄事務局長。笹山から出土した国宝・火焔型土器のレプリカを用いて「縄文の魅力を感じてほしい」と独自の世界を写真で発信している。国宝・火焔型土器と笹山遺跡をアピールする「笹山縄文市」は今年25回の節目を迎え来月2日に開く。

    2024年5月18日号

  • 6月議会、どうする原発問題

     3月議会では、十日町市、津南町の両議員は「原発問題」をスルーした。市長、町長に問う姿はなかった。来月の6月定例議会が迫るなか、その題材を提供してくれたのが新潟日報社だ。12日と14日の新聞で県内30市町村長に東京電力・柏崎刈羽原発再稼働のアンケート回答を掲載している。読者の多くが注視したことだろう。ここで紹介するには、新潟日報社の許可が必要であり、見逃した読者は図書館などで見てもらいたい内容だ。
     再稼働を論議するテーブルの一つは、県内全市町村でつくる「原子力安全対策に関する研究会」。代表幹事は長岡市・磯田達伸市長だ。その研究会が3ヵ月ぶりに今月10日、長岡市で開かれた。十日町市、津南町の担当者も出席した。この席で代表幹事の磯田市長は、冬期の原発事故のシミュレーションの必要性を強調したという。この事はこれまで何度も関係者が国に、県に進言していることで、それでも新潟県の全市町村を代表する代表幹事があえて言わなければならない、この現実にこそ、大きな問題を含むのではないか。
     それは、県内全市町村が「我が事」として原発問題とどう向き合っているかの問題でもある。地元選出で7期の尾身孝昭県議の県政報告会見での言葉は、新たな視点を提供した。だが、「再稼働の是非の責任」の所在があいまいになりかねない要素を含む。東京電力・柏崎刈羽原発が作る電気の消費地は関東エリアの首都圏。「その住民、自治体が、原発で作る電気が必要なのか、必要ではないのか、そこが再稼働の是非になる」。一理ある論点だが、国の法制度では立地自治体、新潟県の判断を求めている。その裏付けとして首都圏に「是非」を問う、という論点だが…。
     県内市町村長のアンケート回答は、その限られた字数からも、受けとめ感度が伝わってくる。6月議会は、その論点の論議の場だ。

    2024年5月18日号

  • サイクルトレイン、「妻有は好適地」

    駅中温泉、現代アート、新幹線アクセス

    飯山線沿線地域活性化協議会で積極PRを

    自転車をそのまま鉄道の車内に持込みできるサービス「サイクルトレイン」。全国で導入や実証が始まるなか、JR東日本・飯山線(延長96・7㌔)では、長野市の豊野駅―栄村森宮野原駅間で昨秋から始まり、今春も4月5日~6月30日まで行っている。地方鉄道の赤字経営が課題となるなか、増加傾向にある自転車愛好家層に向け、飯山線と現代アートや温泉を組み合わせることができる妻有地域の可能性は高い。

    2024年5月11日号

  • 「通い農」で交流人口増

    荒廃地復活、世田谷「チーム用賀の棚田」誕生

    協力隊・星裕方さん

     関係人口増をめざす「通い農」の新たな取り組みが始まっている。東京・世田谷区の地域コミュニティ「チーム用賀」。用賀の地の住民や働く者、用賀で働く人など縁ある方が集まり活動。十日町市松代地域での棚田体験活動を行い、「自分たちの田んぼを持ちたい」という意見が出るなか、チーム用賀所属で松代在住の地域おこし協力隊・星裕方さん(30)と市松代支所が連携。里山と都市との交流拠点・松代棚田ハウス付近で、耕作放棄地になっていた棚田2枚(約7百平方㍍)を復元。「チーム用賀の棚田」と名づけ今春から水田整備から田植え、稲刈りなど一連の水田作業体験を始めている。星さんは「通い農を通し、まず週末農業体験に来てもらう形を作るきっかけにし、さらなる関係人口拡大に繋げたい」と話している。

    2024年5月11日号

  • 春に用心、「不審者の季節」

    合言葉は『いかのおすし』

    Vol 97

     春ですね。ゴールデンウィークも良い天気で、少し暑いくらいでしたが、本当に気持ちの良いお休みを過ごしました。これだけ天気が良いとウキウキしてきて、どこかに出かけたくなりますよね。
     そんな春といえば、前回は木の芽どきの話をしました。今回は「春は変質者や不審者が増える」とよく聞きますが、本当のことなのか、について。 私が小学生の頃(すでに時は35~40年昔にさかのぼりますが)は、春先には県外ナンバーの「当たり屋」に気をつけろ、という話をたびたび耳にしたことがあったように記憶しています。
     さて、「不審者」という定義を「痴漢、露出、声掛け、つきまとい、盗撮、のぞき、暴行、強迫、危険物所持など」とした場合に、とある会社が警察からの情報をもとに分析を行ったところ、やはり4~5月から不審者情報の報告数が増加し始めるのが分かったそうです。理由としては、不審者も春はお出かけ気分になるからなのではないか、とか。
     ちなみに、春の時期に見られる「不審者からの声掛け」のパターンとしては、「何歳? 何年生?」「お母さんが病院に運ばれた。今すぐ来て。いいから来て」「お母さんが死んじゃった。お父さんは会社にいるから乗って」「さわってくれたら、100円上げる。」「パンツの色は何色?」「トイレについてきて」「一緒に写真を撮ろう/写真を撮ってもいい?」「お菓子をあげるからおいで」「(お金を支払うから)下半身を見てほしい」だそうです。十日町市内でもここ数年、写真を撮る不審者がたびたび目撃されていますが、特に春は注意が必要なのかもしれません。
     この原稿を書くために小学生の娘に不審者の話をしていたら、「『いかのおすし』だよ!」と自慢げに鼻を鳴らしながら教えてくれたので、小さなお子さんのいらっしゃる方はもうとっくに知っておられるかと思いますが、あげておきますね。
    〇知らない人にはついて「いか」ない
    〇声をかけられても車には「の」らない
    〇知らない人に連れていかれそうになったら「お」おごえを出す
    〇声をかけられたり追いかけられたりしたら「す」ぐに逃げる
    〇怖いことにあったり見たりしたら、すぐに大人に「し」らせる
     これが『いかのおすし』です。若干無理やりな感じもしますが、頭のどこかに入れていただいて、お子さんと一緒にそのつど声に出して復唱してくださいね。
     以前埼玉に住んでいたころですが、ファミレスに友人と入ったときにパソコンをうっかり車の中に置いていってしまったところ、鍵を開けられパソコンを盗まれるという災難に遭いました。ウキウキしているとうっかりが生じます。
     大事なものからは手を離さないようにお気を付けください。そしてうっかりといえば、病院受診の際は保険証を持って出たか、保険証の有効期限は大丈夫か、を必ず確認してくださいね。(たかき医院・仲栄美子院長)

    2024年5月11日号

  • 『サッカーに、農業に、芸術祭に』

    小林舞さん(1990年生まれ)

     真っ青な空に真っ赤な『鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館』が映える。大地の芸術祭の人気拠点の十日町市鉢には、芸術祭開催年ではない年もたくさんの人が訪れる。運営スタッフのひとり。横浜から移り住み5年目の春を迎えた。小林さんにはもう一つの顔がある。「動く大地の芸術祭作品」である女子サッカー『FC越後妻有』
    のゴールキーパーだ。今日11日、松本市でリーグ3戦目を松本山雅レディースと対戦。これまで負けていないが「どのチームもレベルを上げています。アウェイですが、妻有の皆さんの応援を受け、勝ちにいきます」。

     妻有の地に至るプロセスを振り返ると「引き寄せられる」繋がりを感じる。横浜の進学高時代、172㌢余の長身を生かしハンドボールのキーパーで活躍。クラスメイトの多くは「有名難関大学をめざすなか、私は部活に集中でしたから、志望大学には残念ながら…でした」。
     幼少期から小学、中学時代、両親とミュージカルや映画などによく行った。母は中学時代、ミュージカル劇団に所属しており、我が娘も生の舞台の鑑賞に連れて行った。「そうした下地があったんでしょうか。志望大学に入れず浪人時代、『自分が本当にやりたいことは?』と疑問を抱き、その時、母から日藝(日本大学藝術学部)のことを聞き、方向転換しました」。そのアドバイスを受け、日大藝術学部映画学科監督コースに入った。
     小さな頃から見て来た舞台や映画、その分野への関心は大学進学と共にさらに増し、在学中は様々な映像製作や美術系に取り組む。越後妻有で開く大地の芸術祭を知り「こへび隊に入りたい、とずっと思っていましたが、なかなか実現できませんでした」。
     日藝の卒業作品は、自分のオリジナル脚本『坊ダンス』。お寺の息子と教会の娘の恋バナ。ロミオとジュリエットをベースに、30分のミュージカル作品を仕上げた。子どもから大人までキャスト30人ほど。卒業後、東京の映画制作会社に入り美術スタッフで働く。
     「4年ほど在職し、その後フリーランスになったんですが、その時、芸術祭のこへび隊に入り初めて妻有を訪れました。人が良く、この空気感が最高で、いい所だなぁ、が実感でした」。
     
     事はそこからとんとん拍子で進んだ。こへび隊で、まつだい農舞台で働く時、女子サッカーのFC越後妻有選手募集のチラシを見た。「地元スタッフの樋口さんに話すと、俺が監督に話してやるとなり、すぐに監督から連絡が来て、ハンドボールをしていたんですが…と話したんですが、やってみようよ、とすぐにメンバー入り、なにかに引っ張られるようでした」。
     その練習拠点、奴奈川キャンパスで、大地の芸術祭に作品出展している日藝の鞍掛純一教授と出会う。「学生時代、芸術祭に関わっておられることは知っていましたが、お会いしたことはなかったです」。これも巡りあわせか。

     FC越後妻有は、小林さん入団時には6人、いまは12人の選手に。FC越後妻有は、存在そのものが大地の芸術祭作品であり、その活動は「まつだい棚田バンク」など地元農業を手伝いながら、芸術祭スタッフとして拠点作品の運営に関わり、さらにサッカーのリーグ戦に参戦するという文字通りオールラウンドプレイの「女子サッカーチーム」。一昨年は2部リーグ初優勝、昨年は北信越女子サッカーリーグ3位と、上位の常連チームになっている。毎週4日、それぞれの仕事を終え、練習に集まる。ホームグラウンドは奴奈川キャンパスのグラウンド。試合では地元応援団オリジナルの応援旗がなびき、これもオリジナルな応援歌がグラウンドに響く。

     サッカーも初めて、農業も初めて、妻有も初めて。「でも、初めては面白いです。年に一度くらい横浜に帰りますが、ここに来ると落ち着きますね。友だちも両親も来てくれます。こちらでは知り合いがどんどん広がっていき、こちらがホームになりつつあります」。

    ◆バトンタッチします。
     「北野一美さん」

    2024年5月11日号

  • 「よくわからない、どちらともいえない」、無関心層が問題

    5月3日、憲法記念日

    村山朗 (会社員)

     好天に恵まれたきものまつり。まだコロナが2類から5類に移行する直前だった昨年に比べると人出が何倍も増した気がします。往時にくらべ着物姿はほんとに少なくなった感があります。1970年代後半にきものまつりが誕生した時の「着物を着て楽しむ祭り」の趣旨は薄れても、キッチンカーや様々な飲食スタンド、各所で行われた音楽演奏など家族づれで楽しめる春の一大イベントに変身したことは歓迎すべきことだと思います。着物姿が殆どいないじゃないか、などと野暮なことは言いっこなし。
     閑話休題、5月3日は憲法記念日。ある調査では憲法を変えたほうが良い、という意見がかつてより増えてきたという結果が出ていましたが、よくわからない、どちらともいえない、という答えも多数を占めていました。 
     日本の憲法は世界の中でも、戦争放棄をしているまれな憲法だ、と言われてきましたが、この平和条項は世界の憲法でも大多数の国が採用しているそうです。わが国でも憲法解釈で自衛権としての戦争は認められるということらしいです。らしいというのは明記されていないからです。自衛隊の存在も明記されていません。
     こんな不完全な憲法を77年も放置してきた立法府の怠慢の原因は国民の多数を占める「よくわからない、どちらともいえない」という無関心層のせいではないでしょうか。災害となれば自衛隊を頼るくせに、明記していない憲法を変えるな、と叫ぶ一部の人たちも同様です。
     自民党が自壊しているというのに、護憲派の立憲民主党の支持率は一向に上向きません。改憲であれ、護憲であれ、国会で議論もしないというのはとてもおかしな話しです。各政党の案を公開し議論したうえで国民投票をする、という手順を早急に踏んでもらいたいです。議論に入るのをサボタージュしている政党は、国民投票で負けるからとでも思っているのでは、と勘繰りたくなります。 
     そうはいっても改憲派がドイツは何回も改憲した、と引き合いに出す同じ敗戦国のドイツ基本法と日本国憲法の建付けはまったく違うので、同じ土俵に上がるのは無理があります。
     アメリカの占領下にバタバタと作られたわが国の現行憲法は、改憲が難しい憲法です。しかしながら、現在の我が国を取り巻く安全保障環境は20世紀とは比較できないほど厳しさを増しています。少なくとも入隊に際して「命を賭してでも国を守る」と誓った人たちの存在を、憲法に明記すべきではないでしょうか。

    2024年5月11日号

  • ヤマナラシ綿毛

    中沢 英正(県自然観察保護員)

     5月初めの晴れた日、宙を舞うたくさんの綿毛を見ることがある。タンポポのとはちょっと違う、それを飛ばしているのは「ヤマナラシ」という樹木の仕業である。
     この樹木はヤナギの仲間で、高さ20メートル、径50センチほどになる。すっくと立つ樹姿がいい。
     花をつけるのは3月、まだ降雪のある頃だ。雌花と雄花があり、別々の株につく。雌花は新葉が広がる頃に結実し、綿毛をまとった種子を飛ばすのである。
     種子の寿命は短く、数日程度といわれている。一本の雌株から夥しい数の種子が飛び立つが、運命は風任せなのである。
     そこで、この樹木は確実性の高い繁殖手段も生み出した。地中にのびた根から芽を出して(根萌芽)新株を増やす方法だ。6月頃、親株の周りに幼株がポツポツと顔を出す。
     大仕事を終えたこの樹木は、夏には大きな木陰と、葉をすり合わせて作り出す音(山鳴らし)で涼しさを提供してくれる。

    2024年5月11日号

  • 当世新入社員事情、「耐え忍ぶ」は、今は昔

    退職手続き代行業

    松崎 房子 (元ゆずり葉編集委員)

     この春、三番目の孫が社会人になった。先年就職した初孫も、二番目もそれぞれらしい職に就くことができ、じじ・ばばも一安心した。近頃のニュースを聞くと、最近は短期間で就職した企業を辞し、転職する傾向が強いとか? しかも、その手続きを代行する企業もあるという。
     本人はもちろん、代行する企業も、退職を告げられる企業も、あれこれ斟酌することなく、極めてビジネスライクに手続するのみ。これには唖然とした。更に一度ご縁のできた企業に、定年まで勤め上げるなーんて考えている人は殆どいない。
    そんな折、四六時中つけているラジオから『ああ、上野駅』の歌が流れてきた。♬どこかに故郷の香りを乗せて、入る列車の懐かしさ…♬
    〈金の卵〉ともてはやされ、その実、安い労働力として使い捨てられた中卒の子どもたち。
     中学生の頃、同級生が夜勤明けで倒れ亡くなった。義務教育も終えぬうちから、多くの弟妹や、病身の母親のために働いていたのだそうだ。
     そして私自身の就職は、戦後15年位は経ってはいたが、まだまだ厳しい状況だった。それでもどの企業も経営状態の如何にかかわらず、新卒はたとえ一人でも採用して育て上げる風潮だった。おかげで片親だった私も採用してくれた会社があった。
     電話を取るのは新入社員の仕事と決まっていたのに、家に電話はなかったので、電話が怖くて取れなかった。事ある毎に厳しく躾けられ、その上司に当てつけで、目の前で首を吊ってやる! と思ったほど。でも直後上司はショックでもそのうち忘れ去る。片や私は死んでしまう。そんなことはダメだ、ダメだ。ものになったかどうかは疑問だが、その後は何かにつけて色々任せていただいた。
     我慢と耐え忍ぶのが精一杯であった昔。世の中が大きく変化し、いろんなノウハウがある。我々世代には想像すらできない方法で、働き方も大きく変わった。新入社員だけでなく、大人たちも副業が認められている企業が少なくないとか。
     生涯をかけて会社を支える社員もいない、生涯をかけて面倒を見てくれる企業もない、いや出来なくなったのだろう。
     数十年経ったとはいえ、やりたくない事、避けたい事をしないで済むのは、不要なエネルギーを使わないことのほうが、今どきなのかな?  昔人間には首をかしげることばかりだ。

    2024年5月18日号

  • ホンドキツネ

    南雲 敏夫(県自然観察指導員)

     今回は久々に昼間にキツネの写真が撮れた。夜行性のキツネが日中に姿を見せるのはあまりないが、この日は天気も良いし、ちょうど春うららのような気温と雰囲気であった。
     動物たちもやはり長い冬の厳しい期間を耐えて暖かくなると油断するのかは分からないが、山からの農道を楽しそうにスキップしながら下りてくるのを確認、キツネ当人は嬉しそうにスキップしていたのかはわからないけれど…、見ていてそんな感じに受けた。
     急いで車を止めてカメラ持ってそっと陰から近づいて撮影。
     一瞬、こちらを見ていたがなんとか2回シャッターを切った途端にキツネは「あっ見つかった…」と思ったのか猛ダッシュで逃げて行った。
     わずかの時間でもこういう場面での動物たちとのやりとりはとても楽しい時間。
     このキツネ、イヌ科だと知っている人は案外と少ない。もちろんタヌキもイヌ科、だから犬の病気が流行ると野生のキツネやタヌキも被害を受ける事になる。 

    2024年5月18日号

  • 平和な「縄文」、写真で世界発信

    笹山縄文の里事務局長 野沢恒雄さん

    第25回笹山縄文市は来月2日

     世界各地で人権無視の戦争や紛争が続いているなか「戦争や環境破壊とは無縁の縄文時代こそ平和と持続可能な社会では。世界に発信すべきこと」と話すNPO『笹山縄文の里』の野沢恒雄事務局長。笹山から出土した国宝・火焔型土器のレプリカを用いて「縄文の魅力を感じてほしい」と独自の世界を写真で発信している。国宝・火焔型土器と笹山遺跡をアピールする「笹山縄文市」は今年25回の節目を迎え来月2日に開く。

    2024年5月18日号

  • 6月議会、どうする原発問題

     3月議会では、十日町市、津南町の両議員は「原発問題」をスルーした。市長、町長に問う姿はなかった。来月の6月定例議会が迫るなか、その題材を提供してくれたのが新潟日報社だ。12日と14日の新聞で県内30市町村長に東京電力・柏崎刈羽原発再稼働のアンケート回答を掲載している。読者の多くが注視したことだろう。ここで紹介するには、新潟日報社の許可が必要であり、見逃した読者は図書館などで見てもらいたい内容だ。
     再稼働を論議するテーブルの一つは、県内全市町村でつくる「原子力安全対策に関する研究会」。代表幹事は長岡市・磯田達伸市長だ。その研究会が3ヵ月ぶりに今月10日、長岡市で開かれた。十日町市、津南町の担当者も出席した。この席で代表幹事の磯田市長は、冬期の原発事故のシミュレーションの必要性を強調したという。この事はこれまで何度も関係者が国に、県に進言していることで、それでも新潟県の全市町村を代表する代表幹事があえて言わなければならない、この現実にこそ、大きな問題を含むのではないか。
     それは、県内全市町村が「我が事」として原発問題とどう向き合っているかの問題でもある。地元選出で7期の尾身孝昭県議の県政報告会見での言葉は、新たな視点を提供した。だが、「再稼働の是非の責任」の所在があいまいになりかねない要素を含む。東京電力・柏崎刈羽原発が作る電気の消費地は関東エリアの首都圏。「その住民、自治体が、原発で作る電気が必要なのか、必要ではないのか、そこが再稼働の是非になる」。一理ある論点だが、国の法制度では立地自治体、新潟県の判断を求めている。その裏付けとして首都圏に「是非」を問う、という論点だが…。
     県内市町村長のアンケート回答は、その限られた字数からも、受けとめ感度が伝わってくる。6月議会は、その論点の論議の場だ。

    2024年5月18日号

  • サイクルトレイン、「妻有は好適地」

    駅中温泉、現代アート、新幹線アクセス

    飯山線沿線地域活性化協議会で積極PRを

    自転車をそのまま鉄道の車内に持込みできるサービス「サイクルトレイン」。全国で導入や実証が始まるなか、JR東日本・飯山線(延長96・7㌔)では、長野市の豊野駅―栄村森宮野原駅間で昨秋から始まり、今春も4月5日~6月30日まで行っている。地方鉄道の赤字経営が課題となるなか、増加傾向にある自転車愛好家層に向け、飯山線と現代アートや温泉を組み合わせることができる妻有地域の可能性は高い。

    2024年5月11日号

  • 「通い農」で交流人口増

    荒廃地復活、世田谷「チーム用賀の棚田」誕生

    協力隊・星裕方さん

     関係人口増をめざす「通い農」の新たな取り組みが始まっている。東京・世田谷区の地域コミュニティ「チーム用賀」。用賀の地の住民や働く者、用賀で働く人など縁ある方が集まり活動。十日町市松代地域での棚田体験活動を行い、「自分たちの田んぼを持ちたい」という意見が出るなか、チーム用賀所属で松代在住の地域おこし協力隊・星裕方さん(30)と市松代支所が連携。里山と都市との交流拠点・松代棚田ハウス付近で、耕作放棄地になっていた棚田2枚(約7百平方㍍)を復元。「チーム用賀の棚田」と名づけ今春から水田整備から田植え、稲刈りなど一連の水田作業体験を始めている。星さんは「通い農を通し、まず週末農業体験に来てもらう形を作るきっかけにし、さらなる関係人口拡大に繋げたい」と話している。

    2024年5月11日号

  • 春に用心、「不審者の季節」

    合言葉は『いかのおすし』

    Vol 97

     春ですね。ゴールデンウィークも良い天気で、少し暑いくらいでしたが、本当に気持ちの良いお休みを過ごしました。これだけ天気が良いとウキウキしてきて、どこかに出かけたくなりますよね。
     そんな春といえば、前回は木の芽どきの話をしました。今回は「春は変質者や不審者が増える」とよく聞きますが、本当のことなのか、について。 私が小学生の頃(すでに時は35~40年昔にさかのぼりますが)は、春先には県外ナンバーの「当たり屋」に気をつけろ、という話をたびたび耳にしたことがあったように記憶しています。
     さて、「不審者」という定義を「痴漢、露出、声掛け、つきまとい、盗撮、のぞき、暴行、強迫、危険物所持など」とした場合に、とある会社が警察からの情報をもとに分析を行ったところ、やはり4~5月から不審者情報の報告数が増加し始めるのが分かったそうです。理由としては、不審者も春はお出かけ気分になるからなのではないか、とか。
     ちなみに、春の時期に見られる「不審者からの声掛け」のパターンとしては、「何歳? 何年生?」「お母さんが病院に運ばれた。今すぐ来て。いいから来て」「お母さんが死んじゃった。お父さんは会社にいるから乗って」「さわってくれたら、100円上げる。」「パンツの色は何色?」「トイレについてきて」「一緒に写真を撮ろう/写真を撮ってもいい?」「お菓子をあげるからおいで」「(お金を支払うから)下半身を見てほしい」だそうです。十日町市内でもここ数年、写真を撮る不審者がたびたび目撃されていますが、特に春は注意が必要なのかもしれません。
     この原稿を書くために小学生の娘に不審者の話をしていたら、「『いかのおすし』だよ!」と自慢げに鼻を鳴らしながら教えてくれたので、小さなお子さんのいらっしゃる方はもうとっくに知っておられるかと思いますが、あげておきますね。
    〇知らない人にはついて「いか」ない
    〇声をかけられても車には「の」らない
    〇知らない人に連れていかれそうになったら「お」おごえを出す
    〇声をかけられたり追いかけられたりしたら「す」ぐに逃げる
    〇怖いことにあったり見たりしたら、すぐに大人に「し」らせる
     これが『いかのおすし』です。若干無理やりな感じもしますが、頭のどこかに入れていただいて、お子さんと一緒にそのつど声に出して復唱してくださいね。
     以前埼玉に住んでいたころですが、ファミレスに友人と入ったときにパソコンをうっかり車の中に置いていってしまったところ、鍵を開けられパソコンを盗まれるという災難に遭いました。ウキウキしているとうっかりが生じます。
     大事なものからは手を離さないようにお気を付けください。そしてうっかりといえば、病院受診の際は保険証を持って出たか、保険証の有効期限は大丈夫か、を必ず確認してくださいね。(たかき医院・仲栄美子院長)

    2024年5月11日号

  • 『サッカーに、農業に、芸術祭に』

    小林舞さん(1990年生まれ)

     真っ青な空に真っ赤な『鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館』が映える。大地の芸術祭の人気拠点の十日町市鉢には、芸術祭開催年ではない年もたくさんの人が訪れる。運営スタッフのひとり。横浜から移り住み5年目の春を迎えた。小林さんにはもう一つの顔がある。「動く大地の芸術祭作品」である女子サッカー『FC越後妻有』
    のゴールキーパーだ。今日11日、松本市でリーグ3戦目を松本山雅レディースと対戦。これまで負けていないが「どのチームもレベルを上げています。アウェイですが、妻有の皆さんの応援を受け、勝ちにいきます」。

     妻有の地に至るプロセスを振り返ると「引き寄せられる」繋がりを感じる。横浜の進学高時代、172㌢余の長身を生かしハンドボールのキーパーで活躍。クラスメイトの多くは「有名難関大学をめざすなか、私は部活に集中でしたから、志望大学には残念ながら…でした」。
     幼少期から小学、中学時代、両親とミュージカルや映画などによく行った。母は中学時代、ミュージカル劇団に所属しており、我が娘も生の舞台の鑑賞に連れて行った。「そうした下地があったんでしょうか。志望大学に入れず浪人時代、『自分が本当にやりたいことは?』と疑問を抱き、その時、母から日藝(日本大学藝術学部)のことを聞き、方向転換しました」。そのアドバイスを受け、日大藝術学部映画学科監督コースに入った。
     小さな頃から見て来た舞台や映画、その分野への関心は大学進学と共にさらに増し、在学中は様々な映像製作や美術系に取り組む。越後妻有で開く大地の芸術祭を知り「こへび隊に入りたい、とずっと思っていましたが、なかなか実現できませんでした」。
     日藝の卒業作品は、自分のオリジナル脚本『坊ダンス』。お寺の息子と教会の娘の恋バナ。ロミオとジュリエットをベースに、30分のミュージカル作品を仕上げた。子どもから大人までキャスト30人ほど。卒業後、東京の映画制作会社に入り美術スタッフで働く。
     「4年ほど在職し、その後フリーランスになったんですが、その時、芸術祭のこへび隊に入り初めて妻有を訪れました。人が良く、この空気感が最高で、いい所だなぁ、が実感でした」。
     
     事はそこからとんとん拍子で進んだ。こへび隊で、まつだい農舞台で働く時、女子サッカーのFC越後妻有選手募集のチラシを見た。「地元スタッフの樋口さんに話すと、俺が監督に話してやるとなり、すぐに監督から連絡が来て、ハンドボールをしていたんですが…と話したんですが、やってみようよ、とすぐにメンバー入り、なにかに引っ張られるようでした」。
     その練習拠点、奴奈川キャンパスで、大地の芸術祭に作品出展している日藝の鞍掛純一教授と出会う。「学生時代、芸術祭に関わっておられることは知っていましたが、お会いしたことはなかったです」。これも巡りあわせか。

     FC越後妻有は、小林さん入団時には6人、いまは12人の選手に。FC越後妻有は、存在そのものが大地の芸術祭作品であり、その活動は「まつだい棚田バンク」など地元農業を手伝いながら、芸術祭スタッフとして拠点作品の運営に関わり、さらにサッカーのリーグ戦に参戦するという文字通りオールラウンドプレイの「女子サッカーチーム」。一昨年は2部リーグ初優勝、昨年は北信越女子サッカーリーグ3位と、上位の常連チームになっている。毎週4日、それぞれの仕事を終え、練習に集まる。ホームグラウンドは奴奈川キャンパスのグラウンド。試合では地元応援団オリジナルの応援旗がなびき、これもオリジナルな応援歌がグラウンドに響く。

     サッカーも初めて、農業も初めて、妻有も初めて。「でも、初めては面白いです。年に一度くらい横浜に帰りますが、ここに来ると落ち着きますね。友だちも両親も来てくれます。こちらでは知り合いがどんどん広がっていき、こちらがホームになりつつあります」。

    ◆バトンタッチします。
     「北野一美さん」

    2024年5月11日号

  • 「よくわからない、どちらともいえない」、無関心層が問題

    5月3日、憲法記念日

    村山朗 (会社員)

     好天に恵まれたきものまつり。まだコロナが2類から5類に移行する直前だった昨年に比べると人出が何倍も増した気がします。往時にくらべ着物姿はほんとに少なくなった感があります。1970年代後半にきものまつりが誕生した時の「着物を着て楽しむ祭り」の趣旨は薄れても、キッチンカーや様々な飲食スタンド、各所で行われた音楽演奏など家族づれで楽しめる春の一大イベントに変身したことは歓迎すべきことだと思います。着物姿が殆どいないじゃないか、などと野暮なことは言いっこなし。
     閑話休題、5月3日は憲法記念日。ある調査では憲法を変えたほうが良い、という意見がかつてより増えてきたという結果が出ていましたが、よくわからない、どちらともいえない、という答えも多数を占めていました。 
     日本の憲法は世界の中でも、戦争放棄をしているまれな憲法だ、と言われてきましたが、この平和条項は世界の憲法でも大多数の国が採用しているそうです。わが国でも憲法解釈で自衛権としての戦争は認められるということらしいです。らしいというのは明記されていないからです。自衛隊の存在も明記されていません。
     こんな不完全な憲法を77年も放置してきた立法府の怠慢の原因は国民の多数を占める「よくわからない、どちらともいえない」という無関心層のせいではないでしょうか。災害となれば自衛隊を頼るくせに、明記していない憲法を変えるな、と叫ぶ一部の人たちも同様です。
     自民党が自壊しているというのに、護憲派の立憲民主党の支持率は一向に上向きません。改憲であれ、護憲であれ、国会で議論もしないというのはとてもおかしな話しです。各政党の案を公開し議論したうえで国民投票をする、という手順を早急に踏んでもらいたいです。議論に入るのをサボタージュしている政党は、国民投票で負けるからとでも思っているのでは、と勘繰りたくなります。 
     そうはいっても改憲派がドイツは何回も改憲した、と引き合いに出す同じ敗戦国のドイツ基本法と日本国憲法の建付けはまったく違うので、同じ土俵に上がるのは無理があります。
     アメリカの占領下にバタバタと作られたわが国の現行憲法は、改憲が難しい憲法です。しかしながら、現在の我が国を取り巻く安全保障環境は20世紀とは比較できないほど厳しさを増しています。少なくとも入隊に際して「命を賭してでも国を守る」と誓った人たちの存在を、憲法に明記すべきではないでしょうか。

    2024年5月11日号

  • ヤマナラシ綿毛

    中沢 英正(県自然観察保護員)

     5月初めの晴れた日、宙を舞うたくさんの綿毛を見ることがある。タンポポのとはちょっと違う、それを飛ばしているのは「ヤマナラシ」という樹木の仕業である。
     この樹木はヤナギの仲間で、高さ20メートル、径50センチほどになる。すっくと立つ樹姿がいい。
     花をつけるのは3月、まだ降雪のある頃だ。雌花と雄花があり、別々の株につく。雌花は新葉が広がる頃に結実し、綿毛をまとった種子を飛ばすのである。
     種子の寿命は短く、数日程度といわれている。一本の雌株から夥しい数の種子が飛び立つが、運命は風任せなのである。
     そこで、この樹木は確実性の高い繁殖手段も生み出した。地中にのびた根から芽を出して(根萌芽)新株を増やす方法だ。6月頃、親株の周りに幼株がポツポツと顔を出す。
     大仕事を終えたこの樹木は、夏には大きな木陰と、葉をすり合わせて作り出す音(山鳴らし)で涼しさを提供してくれる。

    2024年5月11日号