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妻有新聞掲載記事一覧

  • アートや国宝、「地域資源」土産化

    Kikko Craft 山崎喜久一郎さん

    「水鏡」マグネットなど好評

     大地の芸術祭9回展が13日開幕。早くも賑わいを見せている。全国から年間35万人余りが訪れている清津峡渓谷トンネルの芸術祭作品『水鏡』。「地元から清津峡、そして妻有をアピールする土産品を」と取り組み、エントランスで販売し人気を呼んでいるのが大地の芸術祭実行委承認の木製マグネット『Tunnel of Light(水鏡)』だ。製作しているのは球形スピーカーで注目を集めているKikko Craft(山崎喜久一郎代表、キッコ・クラフト)。球形製造技術を生かし安々と模造できない木工品にしている。山崎さん(65)は3Dプリンターを駆使して国宝・火焔型土器のレプリカなどにも取り組んでおり、「妻有地域には土産にできる題材が山ほどある。多くの人が研究して製品化してほしい。それが地域のアピールにもつながるはず」と呼びかけている。

    2024年7月20日号

  • 県教委の3ヵ年計画、津南中等の今後は

     この3年間で中学卒業生が803人、さらに8年後には2885人減少する新潟県。県教委は今月初め、2024年から向こう8年間の中学卒業生数の推移を公表した。これは県立高校等再編整備計画、いわゆる3ヵ年計画だ。衝撃的な減少数だ。全県ではこの3年間で全日制学級を12学級減少の計画。全県6エリアごとに再編計画を示すが、数字以上に厳しい現実が、各エリアの地元にあることが読み取れる。
     魚沼エリア(十日町市・南魚沼市・魚沼市・津南町・湯沢町)。この3年間で減少は100人余。学級減は2クラスと県教委は示している。来年2025年度は再編整備の対象高校はないが、2026年度には十日町高校に大学進学重視の「学究型コース」を設ける。ただ十高は来年2025年度に1学級減となり、その翌年2026年度から学究型コースを新設し、学級は1学年5クラスに戻る。だが次年2027年度は普通学級が1クラス減となり、全体学級は1学年4クラス編成になる。かつての8クラス編成から見ると、半減になる厳しい現実になっている。
     この学究型コース。進学重視と県教委は示すが、同じエリアに県内有数の国公立大進学の実績を積む津南中等教育学校がある。県教委は3ヵ年計画では県立中高一貫校について「中等教育のあり方について検討する」と抽象的な方針を示す。先の検討段階では『県立中高一貫校の役割は終わった』と言い切ったが、津南中等の県内トップクラスの国公立大進学の現状を見れば、そう軽々に津南中等の今後には触れられないはずだ。だが、地元から、そう言わせない発信がないのはなぜか。
     妻有エリア内に、高校再編への多様な声がある。だが、それは一つとして公式的な発言や示された言葉は出ていない。失礼ながら「コソコソ言ってないで、堂々と述べよ」だ。それが議論のスタートではないか。

    2024年7月20日号

  • 「なぜ国でないのか」

    県境39㌔間の直轄化求める

    千曲・信濃川

     全国的にもまれな「中抜け区間」となっている1級河川「千曲川―信濃川」の飯山市湯滝から十日町市宮中取水ダム間(39・65㌔)の国直轄編入を求める流域自治体で作る「千曲川、信濃川(飯山・中里間)直轄河川編入連絡協議会」(会=江沢岸生飯山市長)総会を4日、津南町の「雪国」で開き、江沢会長は「国による河川管理の一元化は極めて重要であり、早急に国直轄編入を進める必要がある」と同協議会の要望運動をさらに進める方針を述べた。

    2024年7月13日号

  • 「命の拠点」、安心支える地域医療

    十日町市支援事業で「ほり内科クリニック」、来月開院

     医師不足が深刻度を増す十日町医学圏に新たな地域医療を支える拠点がまたひとつ加わる。県立十日町病院に勤務していた内科医が独立、8月1日に十日町市山本町に『ほり内科クリニック』を開院する。院長は堀好寿医師(よしひさ、45)。今年3月に閉院した大熊内科医院を引き継ぐ形で施設を改修した。十日町市が医療施設の整備、診療体制の継続確保などに取り組む医師らに補助金を交付する『十日町市医療施設設備等支援事業』の支援も開業を後押し、同事業による独立開業は4医院目で、持続可能な地域医療を支える大きな力になっている。堀医師は「十日町病院時代、スタッフが医師を支えてくれる姿勢に感動した。十日町で頑張ろうという気持ちになった」と十日町病院での経験が十日町市に根を下ろす要因になったと話す。昨年11月の村岡整形外科クリニックに続き、豪雪地域の地域医療に新たな「命の拠点」が誕生する。住民の「暮らしの安心感」が増すことになる。

    2024年7月13日号

  • 「多様性という時代を、どう考えるか」

    栁 拓玖さん(2001年生まれ)

     「この先、どうなっていくのか」。自分の中にある率直な心情だ。それは、少子化が進み高齢化がますます進む地に暮らす今であり、人口減少がさらに進むであろう現実であり、人と人が殺し合う世界の動きであり、沸騰していると表現される最近の地球環境である。
     「そんなに大きいことを言っているわけではありませんが、正直、この先、どうなっていくんだという思いです」。

     2000年世代は、社会との関係性で一番刺激を受ける時期にコロナ禍が重なり、将来を見据えた行先の進路変更を余儀なくされたり、対面授業ができず画面越しのオンラインになり、生身の人間同士の付き合いが希薄になった時間を過ごし、いまも影響を受け続けている世代でもある。
     「多様性の時代は、なんでもありの時代でもあり、そうではない時代でもあると思います。あれもこれも多様性という言葉に組み込まれているようにも感じます」。
     その端的な事例が「結婚」という形のあり方への疑問。「家族のあり方そのものが変わってきている気がします。将来は子どもの世話になるから我が子が必要という考えは世代によって違うし、自分たちの世代はそういう考えにはなっていないでしょう。だから結婚という形ではなく、パートナーについても形にこだわらない、いろいろな形があって良いと考えています。それも多様性ということなんでしょうね」。
     さらに大きな要因もある。それは経済的なこと。「結婚は1プラス1は2ですが、その先に子どもが加わると、それが5にも6にでもなります。それほど経済的な面が大きくなっているのが、今ではないでしょうか」。所得格差は、その先の格差を生み出し、まさに「この先、どうなっていくのか」の疑問符はさらに膨らむことになる。

     中学3年間、吹奏楽部でバスクラリネットを担当したが、「女子の強さを思い知ったので、高校では女子がいないサッカーをやりました」。
    世代間というより性差ギャップを思い知った思春期だった。専門学校で調理師資格を取得したが、別の道に進む。いま社会人として働きながら「AI分野への関心が高まっています。もっと専門的なスキルを身に付けていきたい。これからどんな時代になるか、そのためにもAI分野は必要になると思っています」。
     休日は長岡のバッティングセンターなどが入る長岡ドームに友だちと行く。「ストレス発散になりますね」。仲間たちとの時間を大切にする。
     いよいよ大地の芸術祭が13日開幕。「受け入れ側という感覚です。外国からの人たちが増えてきているようですね」。その外国の在り様にも目が向く。「混沌としている世の中で、これからどういう方向に向かっていくのか、誰にも分からない不安があります。それは戦争ばかりではなく、平均気温がどんどん高くなっているなか、まさにこの先、どうなるのか、ですね」。
     さらに「特に人口減少は深刻ですね。結婚の必要性が薄くなり、子どもが生まれない世になれば、ますます人口が減少します。ほんと、この先、どうーなっていくの、ですね」。

    ▼バトンタッチします。
     山本陽向子さん

    2024年7月13日号

  • 有権者の進化、勇気ある有権者の一人街宣

    東京都知事選

    藤ノ木信子 (清津川に清流を取り戻す会)

     七夕の夜に開票が行われた東京都知事選は考える点が多かった。都民ではないので外野からの感想だけど少し書いてみようと思う。
     当初から当選する気のない候補者乱立や掲示板ジャックなど「人としてどうなの?」と理解が追い付かない私は遅れている? らしい東京現象で選挙戦は始まった。
     選挙中、「候補者が肉声で思いを伝えないと気持ちが動かないよ」と考えている私は、もはや旧人類? と思ったのがAIやZOOM記者会見だ。これからの選挙ではテクノロジーを駆使した一方通行の手法が多用されるんだろうか。AI百合子は誰に話しかけているの?
     開票すると、全く顔を出さずSNS発信だけで11万票を得た候補者があった。えっ? と思うけど街頭演説でなく、スマホの中の見えない存在が若者の支持を得ている。 次点で165万票を集めた石丸氏は動画配信のファン層と若年浮動票をがっちり掴んだ。言動が面白ければいいエンターテイメントの様で、私にはとても短絡的に見える。 
     若い人は今までのバチバチの政策論争には近寄らないが、簡単で分かりやすく相手を批判してくれる等身大の候補者には共感する。
     私の世代と異なるやり方で違う世界線で推し活選挙? が進んでいる。政策を戦わすのでなく、マウントを取り相手を打ち負かせばいい、切り取りの民主主義、それを興味本位に持ち上げる報道…私的にとても危ういものを感じる。
     この後の衆議院選挙もこの流れは加速していくんだろうか。投票率は上がったが、結果は知名度と組織票をがっちり持っている現職が当選、都民の選択となった。(小池さん、8年前の公約「2030年までに原発ゼロ」を達成して下さいね)というわけで、私自身が歳をとったことを思い知らされた都知事選だった。
     だがこの選挙で成長した人もいる。一人街宣という個人が立ち上がる勇気あるムーブメントで、プラカードを持って一人で駅や街角に立って選挙への関心を深めようとした人が多く現れた。候補者ではなく有権者が主役として動き出したことが進化だと思う。
     この人達の心は今後もっと大きくなってほしい。テレビで言ってるから、偉い人がやることだから、専門家が考えたからと鵜呑みにしないでほしい。はて? と思うことは一人一人が自分で情報を集め、学び、考え、判断し、行動してほしい。
     思考停止して傍観したり、多数に合わせて依存するだけでは見えない景色がここにある。
     だから私ももの言う「老婆心ながら」でありたいと思う。

    2024年7月13日号

  • 豪雪地のニホンヤモリ

    南雲 敏夫(県自然観察指導員)

     あるホテルから「ヤモリが数年前から住んでいて夏場は良く出てくるよ」って連絡をもらった。
     最初は半信半疑だったが現物を確認するとやはりニホンヤモリそのもの…普通こんな豪雪地の山間部にはいないと思っていたのだが。
     新潟県内では柏崎や出雲崎、糸魚川などの古くから商船が出入りする港町などでは船荷などに入り込んであちこちの港などに運び込まれる事が多いと言う。
     ではなぜこんな豪雪地にいたかと思うと、予想ではあるが、ホテルのリフォームなどで大量の資材が運び込まれた時にその中にいたのではないかと思う。
     夜行性の動物で人家など人の生活圏にすみつき、天井や壁などに張り付いて生活しているのが見られる。特に夜間にガラス窓に集まる昆虫などを捕食して生活している。人とうまく共存していて野外では姿を見るのまれである。
     漢字で書くと「家守」と書き、家を守る動物としても有名で、見つけてもそっとしておいてあげたい。

    2024年7月13日号

  • こだわり「マッサンブレンド」、人気ジワリ

    津南町 内山政徳さん

    コーヒーどっぷり6年、イベント出店も

     豊かな香り、甘味・酸味など複雑な味が人を魅了してやまないコーヒー。妻有地域に、どっぷりはまった人がいる。ネットを中心に自家焙煎ブレンド販売を手がける『マッサンコーヒー』の内山政徳さん(33、津南町正面)。地区内外のカフェに自身オリジナルブレンドを提供したりと、活躍の幅を広げている。「自分で作るコーヒーは甘さを出すようにし、究極の普段飲みがめざしている味。世界で一番美味しいコーヒーを追求したい」。将来の夢は自分の店を持つことだ。

    2024年7月13日号

  • 「注目主義の選挙」、大衆迎合を危惧

     これも「劇場型」なのだろう。換言すれば「注目至上主義のSNSの世界観が公共空間にあふれ出てしまった選挙」。役者の言葉より、舞台のパフォーマンスぶりに目が、耳がいき、「面白そうだ」と魅かれ…投票につながった、これが都知事選から見える一つの側面だ。政を託す選択の選挙が、政治を見世物として操る術を選ぶ選挙に、これも都知事選の結果から見えてくる。
     この「注目至上主義選挙」が次期衆院選にどう影響するかだ。本号オピニオン・藤ノ木信子氏が指摘する。今回の都知事選の得票モデルを次期衆院選に持ち込まれたら、選挙は「選ぶ選挙」から「パフォーマンスの良し悪し」を選ぶ、文字通りの祭になってしまう。 
     都知事選結果を招いたのは「有権者の劣化」、とは言い過ぎだろうか。だが、その背後には「庶民の声を拾えない政党への不信感」がある。積み重なる政治不信、言い逃れのその場しのぎが、無所属を掲げた候補を2番手に押し上げたのは事実だろう。
     だが、考えたいのはその中身だ。ネット選挙を全面展開した無所属新人は、得票で2番になったが、それは「大衆迎合型の政治手法。厳しい言葉で批判し、論破する姿をSNSに晒すことで、庶民の鬱積を晴らしてくれる、と思わせる手法」だった。選ぶ選挙から「不満をぶつける」投票行動になっている現実を都知事選で見た思いだ。これも率直な投票行動であるのは事実だろう。
     さらに、政党政治への辟易感が、既成政党への嫌悪感として増幅し、無所属を標榜した若い候補に集まった、端的に見る都知事選の構図だ。
     今回の都知事選は今後全国である「選挙」に大きく影響するだろう。有権者の1票は大きい。だが有権者の目を引く「注目主義選挙」が横行する危惧を抱く。手段を選ばない関心集めの選挙手法、そこには「政治」がないからだ。有権者意識がさらに問われる。

    2024年7月13日号

  • 日本橋から321㌔歩く

    十日町市 金子信義さん

    18日間徒歩の旅、「人の情け感じた」

     古来から十日町は織物産地で、江戸時代には徳川将軍家にも商品を納めていた。昔の人のように江戸から越後まで歩いてみようと、金子信義さん(75)は五街道の起点、東京の日本橋を先月3日に出発し、十日町市妻有町東の自宅には20日到着。家族や友人が待ち受け「おかえりなさい」の横断幕を張ってクラッカーを鳴らし、花束を渡して18日間をかけた321㌔踏破を祝福した。

    2024年7月6日号

  • アートや国宝、「地域資源」土産化

    Kikko Craft 山崎喜久一郎さん

    「水鏡」マグネットなど好評

     大地の芸術祭9回展が13日開幕。早くも賑わいを見せている。全国から年間35万人余りが訪れている清津峡渓谷トンネルの芸術祭作品『水鏡』。「地元から清津峡、そして妻有をアピールする土産品を」と取り組み、エントランスで販売し人気を呼んでいるのが大地の芸術祭実行委承認の木製マグネット『Tunnel of Light(水鏡)』だ。製作しているのは球形スピーカーで注目を集めているKikko Craft(山崎喜久一郎代表、キッコ・クラフト)。球形製造技術を生かし安々と模造できない木工品にしている。山崎さん(65)は3Dプリンターを駆使して国宝・火焔型土器のレプリカなどにも取り組んでおり、「妻有地域には土産にできる題材が山ほどある。多くの人が研究して製品化してほしい。それが地域のアピールにもつながるはず」と呼びかけている。

    2024年7月20日号

  • 県教委の3ヵ年計画、津南中等の今後は

     この3年間で中学卒業生が803人、さらに8年後には2885人減少する新潟県。県教委は今月初め、2024年から向こう8年間の中学卒業生数の推移を公表した。これは県立高校等再編整備計画、いわゆる3ヵ年計画だ。衝撃的な減少数だ。全県ではこの3年間で全日制学級を12学級減少の計画。全県6エリアごとに再編計画を示すが、数字以上に厳しい現実が、各エリアの地元にあることが読み取れる。
     魚沼エリア(十日町市・南魚沼市・魚沼市・津南町・湯沢町)。この3年間で減少は100人余。学級減は2クラスと県教委は示している。来年2025年度は再編整備の対象高校はないが、2026年度には十日町高校に大学進学重視の「学究型コース」を設ける。ただ十高は来年2025年度に1学級減となり、その翌年2026年度から学究型コースを新設し、学級は1学年5クラスに戻る。だが次年2027年度は普通学級が1クラス減となり、全体学級は1学年4クラス編成になる。かつての8クラス編成から見ると、半減になる厳しい現実になっている。
     この学究型コース。進学重視と県教委は示すが、同じエリアに県内有数の国公立大進学の実績を積む津南中等教育学校がある。県教委は3ヵ年計画では県立中高一貫校について「中等教育のあり方について検討する」と抽象的な方針を示す。先の検討段階では『県立中高一貫校の役割は終わった』と言い切ったが、津南中等の県内トップクラスの国公立大進学の現状を見れば、そう軽々に津南中等の今後には触れられないはずだ。だが、地元から、そう言わせない発信がないのはなぜか。
     妻有エリア内に、高校再編への多様な声がある。だが、それは一つとして公式的な発言や示された言葉は出ていない。失礼ながら「コソコソ言ってないで、堂々と述べよ」だ。それが議論のスタートではないか。

    2024年7月20日号

  • 「なぜ国でないのか」

    県境39㌔間の直轄化求める

    千曲・信濃川

     全国的にもまれな「中抜け区間」となっている1級河川「千曲川―信濃川」の飯山市湯滝から十日町市宮中取水ダム間(39・65㌔)の国直轄編入を求める流域自治体で作る「千曲川、信濃川(飯山・中里間)直轄河川編入連絡協議会」(会=江沢岸生飯山市長)総会を4日、津南町の「雪国」で開き、江沢会長は「国による河川管理の一元化は極めて重要であり、早急に国直轄編入を進める必要がある」と同協議会の要望運動をさらに進める方針を述べた。

    2024年7月13日号

  • 「命の拠点」、安心支える地域医療

    十日町市支援事業で「ほり内科クリニック」、来月開院

     医師不足が深刻度を増す十日町医学圏に新たな地域医療を支える拠点がまたひとつ加わる。県立十日町病院に勤務していた内科医が独立、8月1日に十日町市山本町に『ほり内科クリニック』を開院する。院長は堀好寿医師(よしひさ、45)。今年3月に閉院した大熊内科医院を引き継ぐ形で施設を改修した。十日町市が医療施設の整備、診療体制の継続確保などに取り組む医師らに補助金を交付する『十日町市医療施設設備等支援事業』の支援も開業を後押し、同事業による独立開業は4医院目で、持続可能な地域医療を支える大きな力になっている。堀医師は「十日町病院時代、スタッフが医師を支えてくれる姿勢に感動した。十日町で頑張ろうという気持ちになった」と十日町病院での経験が十日町市に根を下ろす要因になったと話す。昨年11月の村岡整形外科クリニックに続き、豪雪地域の地域医療に新たな「命の拠点」が誕生する。住民の「暮らしの安心感」が増すことになる。

    2024年7月13日号

  • 「多様性という時代を、どう考えるか」

    栁 拓玖さん(2001年生まれ)

     「この先、どうなっていくのか」。自分の中にある率直な心情だ。それは、少子化が進み高齢化がますます進む地に暮らす今であり、人口減少がさらに進むであろう現実であり、人と人が殺し合う世界の動きであり、沸騰していると表現される最近の地球環境である。
     「そんなに大きいことを言っているわけではありませんが、正直、この先、どうなっていくんだという思いです」。

     2000年世代は、社会との関係性で一番刺激を受ける時期にコロナ禍が重なり、将来を見据えた行先の進路変更を余儀なくされたり、対面授業ができず画面越しのオンラインになり、生身の人間同士の付き合いが希薄になった時間を過ごし、いまも影響を受け続けている世代でもある。
     「多様性の時代は、なんでもありの時代でもあり、そうではない時代でもあると思います。あれもこれも多様性という言葉に組み込まれているようにも感じます」。
     その端的な事例が「結婚」という形のあり方への疑問。「家族のあり方そのものが変わってきている気がします。将来は子どもの世話になるから我が子が必要という考えは世代によって違うし、自分たちの世代はそういう考えにはなっていないでしょう。だから結婚という形ではなく、パートナーについても形にこだわらない、いろいろな形があって良いと考えています。それも多様性ということなんでしょうね」。
     さらに大きな要因もある。それは経済的なこと。「結婚は1プラス1は2ですが、その先に子どもが加わると、それが5にも6にでもなります。それほど経済的な面が大きくなっているのが、今ではないでしょうか」。所得格差は、その先の格差を生み出し、まさに「この先、どうなっていくのか」の疑問符はさらに膨らむことになる。

     中学3年間、吹奏楽部でバスクラリネットを担当したが、「女子の強さを思い知ったので、高校では女子がいないサッカーをやりました」。
    世代間というより性差ギャップを思い知った思春期だった。専門学校で調理師資格を取得したが、別の道に進む。いま社会人として働きながら「AI分野への関心が高まっています。もっと専門的なスキルを身に付けていきたい。これからどんな時代になるか、そのためにもAI分野は必要になると思っています」。
     休日は長岡のバッティングセンターなどが入る長岡ドームに友だちと行く。「ストレス発散になりますね」。仲間たちとの時間を大切にする。
     いよいよ大地の芸術祭が13日開幕。「受け入れ側という感覚です。外国からの人たちが増えてきているようですね」。その外国の在り様にも目が向く。「混沌としている世の中で、これからどういう方向に向かっていくのか、誰にも分からない不安があります。それは戦争ばかりではなく、平均気温がどんどん高くなっているなか、まさにこの先、どうなるのか、ですね」。
     さらに「特に人口減少は深刻ですね。結婚の必要性が薄くなり、子どもが生まれない世になれば、ますます人口が減少します。ほんと、この先、どうーなっていくの、ですね」。

    ▼バトンタッチします。
     山本陽向子さん

    2024年7月13日号

  • 有権者の進化、勇気ある有権者の一人街宣

    東京都知事選

    藤ノ木信子 (清津川に清流を取り戻す会)

     七夕の夜に開票が行われた東京都知事選は考える点が多かった。都民ではないので外野からの感想だけど少し書いてみようと思う。
     当初から当選する気のない候補者乱立や掲示板ジャックなど「人としてどうなの?」と理解が追い付かない私は遅れている? らしい東京現象で選挙戦は始まった。
     選挙中、「候補者が肉声で思いを伝えないと気持ちが動かないよ」と考えている私は、もはや旧人類? と思ったのがAIやZOOM記者会見だ。これからの選挙ではテクノロジーを駆使した一方通行の手法が多用されるんだろうか。AI百合子は誰に話しかけているの?
     開票すると、全く顔を出さずSNS発信だけで11万票を得た候補者があった。えっ? と思うけど街頭演説でなく、スマホの中の見えない存在が若者の支持を得ている。 次点で165万票を集めた石丸氏は動画配信のファン層と若年浮動票をがっちり掴んだ。言動が面白ければいいエンターテイメントの様で、私にはとても短絡的に見える。 
     若い人は今までのバチバチの政策論争には近寄らないが、簡単で分かりやすく相手を批判してくれる等身大の候補者には共感する。
     私の世代と異なるやり方で違う世界線で推し活選挙? が進んでいる。政策を戦わすのでなく、マウントを取り相手を打ち負かせばいい、切り取りの民主主義、それを興味本位に持ち上げる報道…私的にとても危ういものを感じる。
     この後の衆議院選挙もこの流れは加速していくんだろうか。投票率は上がったが、結果は知名度と組織票をがっちり持っている現職が当選、都民の選択となった。(小池さん、8年前の公約「2030年までに原発ゼロ」を達成して下さいね)というわけで、私自身が歳をとったことを思い知らされた都知事選だった。
     だがこの選挙で成長した人もいる。一人街宣という個人が立ち上がる勇気あるムーブメントで、プラカードを持って一人で駅や街角に立って選挙への関心を深めようとした人が多く現れた。候補者ではなく有権者が主役として動き出したことが進化だと思う。
     この人達の心は今後もっと大きくなってほしい。テレビで言ってるから、偉い人がやることだから、専門家が考えたからと鵜呑みにしないでほしい。はて? と思うことは一人一人が自分で情報を集め、学び、考え、判断し、行動してほしい。
     思考停止して傍観したり、多数に合わせて依存するだけでは見えない景色がここにある。
     だから私ももの言う「老婆心ながら」でありたいと思う。

    2024年7月13日号

  • 豪雪地のニホンヤモリ

    南雲 敏夫(県自然観察指導員)

     あるホテルから「ヤモリが数年前から住んでいて夏場は良く出てくるよ」って連絡をもらった。
     最初は半信半疑だったが現物を確認するとやはりニホンヤモリそのもの…普通こんな豪雪地の山間部にはいないと思っていたのだが。
     新潟県内では柏崎や出雲崎、糸魚川などの古くから商船が出入りする港町などでは船荷などに入り込んであちこちの港などに運び込まれる事が多いと言う。
     ではなぜこんな豪雪地にいたかと思うと、予想ではあるが、ホテルのリフォームなどで大量の資材が運び込まれた時にその中にいたのではないかと思う。
     夜行性の動物で人家など人の生活圏にすみつき、天井や壁などに張り付いて生活しているのが見られる。特に夜間にガラス窓に集まる昆虫などを捕食して生活している。人とうまく共存していて野外では姿を見るのまれである。
     漢字で書くと「家守」と書き、家を守る動物としても有名で、見つけてもそっとしておいてあげたい。

    2024年7月13日号

  • こだわり「マッサンブレンド」、人気ジワリ

    津南町 内山政徳さん

    コーヒーどっぷり6年、イベント出店も

     豊かな香り、甘味・酸味など複雑な味が人を魅了してやまないコーヒー。妻有地域に、どっぷりはまった人がいる。ネットを中心に自家焙煎ブレンド販売を手がける『マッサンコーヒー』の内山政徳さん(33、津南町正面)。地区内外のカフェに自身オリジナルブレンドを提供したりと、活躍の幅を広げている。「自分で作るコーヒーは甘さを出すようにし、究極の普段飲みがめざしている味。世界で一番美味しいコーヒーを追求したい」。将来の夢は自分の店を持つことだ。

    2024年7月13日号

  • 「注目主義の選挙」、大衆迎合を危惧

     これも「劇場型」なのだろう。換言すれば「注目至上主義のSNSの世界観が公共空間にあふれ出てしまった選挙」。役者の言葉より、舞台のパフォーマンスぶりに目が、耳がいき、「面白そうだ」と魅かれ…投票につながった、これが都知事選から見える一つの側面だ。政を託す選択の選挙が、政治を見世物として操る術を選ぶ選挙に、これも都知事選の結果から見えてくる。
     この「注目至上主義選挙」が次期衆院選にどう影響するかだ。本号オピニオン・藤ノ木信子氏が指摘する。今回の都知事選の得票モデルを次期衆院選に持ち込まれたら、選挙は「選ぶ選挙」から「パフォーマンスの良し悪し」を選ぶ、文字通りの祭になってしまう。 
     都知事選結果を招いたのは「有権者の劣化」、とは言い過ぎだろうか。だが、その背後には「庶民の声を拾えない政党への不信感」がある。積み重なる政治不信、言い逃れのその場しのぎが、無所属を掲げた候補を2番手に押し上げたのは事実だろう。
     だが、考えたいのはその中身だ。ネット選挙を全面展開した無所属新人は、得票で2番になったが、それは「大衆迎合型の政治手法。厳しい言葉で批判し、論破する姿をSNSに晒すことで、庶民の鬱積を晴らしてくれる、と思わせる手法」だった。選ぶ選挙から「不満をぶつける」投票行動になっている現実を都知事選で見た思いだ。これも率直な投票行動であるのは事実だろう。
     さらに、政党政治への辟易感が、既成政党への嫌悪感として増幅し、無所属を標榜した若い候補に集まった、端的に見る都知事選の構図だ。
     今回の都知事選は今後全国である「選挙」に大きく影響するだろう。有権者の1票は大きい。だが有権者の目を引く「注目主義選挙」が横行する危惧を抱く。手段を選ばない関心集めの選挙手法、そこには「政治」がないからだ。有権者意識がさらに問われる。

    2024年7月13日号

  • 日本橋から321㌔歩く

    十日町市 金子信義さん

    18日間徒歩の旅、「人の情け感じた」

     古来から十日町は織物産地で、江戸時代には徳川将軍家にも商品を納めていた。昔の人のように江戸から越後まで歩いてみようと、金子信義さん(75)は五街道の起点、東京の日本橋を先月3日に出発し、十日町市妻有町東の自宅には20日到着。家族や友人が待ち受け「おかえりなさい」の横断幕を張ってクラッカーを鳴らし、花束を渡して18日間をかけた321㌔踏破を祝福した。

    2024年7月6日号