ヤマナラシ綿毛

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中沢 英正(県自然観察保護員)

 5月初めの晴れた日、宙を舞うたくさんの綿毛を見ることがある。タンポポのとはちょっと違う、それを飛ばしているのは「ヤマナラシ」という樹木の仕業である。
 この樹木はヤナギの仲間で、高さ20メートル、径50センチほどになる。すっくと立つ樹姿がいい。
 花をつけるのは3月、まだ降雪のある頃だ。雌花と雄花があり、別々の株につく。雌花は新葉が広がる頃に結実し、綿毛をまとった種子を飛ばすのである。
 種子の寿命は短く、数日程度といわれている。一本の雌株から夥しい数の種子が飛び立つが、運命は風任せなのである。
 そこで、この樹木は確実性の高い繁殖手段も生み出した。地中にのびた根から芽を出して(根萌芽)新株を増やす方法だ。6月頃、親株の周りに幼株がポツポツと顔を出す。
 大仕事を終えたこの樹木は、夏には大きな木陰と、葉をすり合わせて作り出す音(山鳴らし)で涼しさを提供してくれる。