Category

社説一覧

  • なぜ動かなかった津南町

     逃がしたビジネスチャンスは大きいのではないか。良品計画ブランドの「無印良品」の直売店が今週26日、十日町クロステン内に開業した。その5日前、その無印良品の直売店は津南町にあった。それも国道117号沿い、ショッピングセンター内だ。68日の営業日数に約6600人が来訪し、それも県外からも来店していた。「津南店」は無印津南キャンプ場が開業するまでの限定店ではあったが、その場所は津南町観光協会事務局が入る場所でもあった。
     ここで大きな疑問が湧く。なぜ継続出来なかったのか。まして観光協会という来訪拠点であり、そこに良品計画の無印良品があることのメリットに、気付かなかったわけではないだろう。感度が鈍すぎる、のではないか。
     良品計画と連携協定を結ぶ十日町市。前回の大地の芸術祭への出展から、クロステン隣接のキナーレ回廊活用にも積極的だ。当然、十日町側からのアプローチがあり、それは事務レベルのことで、良品計画からの積極出展だろう。
     同様に連携協定を結ぶ津南町の場合、東日本最大級の無印良品津南キャンプ場の開業までの販売店出展は、キャンプシーズン前のPR拠点でもあったのだろう。津南町観光協会の事務局移転が決まった昨秋、移転するまでの空き施設を無印良品の商品販売に活用したい申出があり、わずか68日間だったが、津南町に無印良品「津南店」が誕生した。
     その効果は68日間で6600人余の来店があったことで明らかだ。期間限定ながら、その先の「継続」は、地元津南町の出番だったはず。アプローチがあったのか、知りたい。その「津南店」閉店の5日後、クロステン内に「十日町店」がオープン、この現実を津南町はどう受け止めているのか。逃がしたビジネスチャンスは、相当に大きい。民間との連携が、これからの自治体の命運を決める、そういう時代だ。

    2024年4月27日号

  • 1570人の村が問いかける

     明日投票の栄村は、人口1570人だが面積は日本国土の0・1%を占める広さだ。少子化・高齢化の冠詞が付く自治体、だが可能性という文字も併せ持つ。 人口密度の低さは、一方で過疎過密とは縁遠く、若いファミリーが求める「ゆったり暮らし」の地でもある。上信越国立公園を含み、その地の一部は原生自然環境保全地域に指定され、そのままの自然生態の保護が義務づけられている。日本百名山、二百名山、全国有数の豪雪地、1級河川の清流が2本も流れ、河川浸食が創り出した段丘地は肥沃の大地が広がる。
     これほどの地勢的な環境に人が1570人。何が足りていないのか、それが今度の村長選で問われている。
     明確だろう。暮らしやすさ、安心して暮らせる地だろう。暮らしと直結するのが医療福祉、さらに子育てを支える経済。多くの選挙で問われる政策的な争点だ。これは、当たり前のこと。選挙になり急浮上した課題ではない。だが、選挙になると政策の柱に据え、これもする、あれもする、それが選挙公約になっている。今度の栄村長選でも同じ傾向が見られ、村民・有権者の受け止めた「いつも同じ」なのだろう。
     限られた有権者数。それは「1票の顔が見える」こと。今回の現職、元職、いずれも現・元の村長肩書が付く候補同士の選挙だ。それは「浮動票のない選挙」でもある。元職が務めた4年前までの1期4年間、現職の4年前からの4年間、さて、なにが違い、どう変わり、なにが問われているのか、それが今度の栄村長選である。
     地方自治体の縮図、この国の20年先を行っている自治体などと形容される過疎・少子化・高齢化の自治体は全国にある。隣接の津南町もそうだろう、さらに十日町市も類似点は多い。小さな村のトップを選ぶ選挙は、実は時代の先を行っている自治体の選挙でもある。栄村の人たちは、何を選択するのか。

    2024年4月20日号

  • 政治不信、衆院選で審判を

     政治不信が深刻だ。衆院選はいつか、そんな話題が遠のきつつあるのは我々の「忘れ症」のせいか。いやいや、これだけ「茶番劇」を見せられると、いかに政治好きでも、いいかげんにせい! となるだろう。政権政党への政権不信が、いまでは対する野党への不信も募り、「政治不信」になってしまっている現実は、相当に根深い。
     新年度になり、何かしらの「期待感」が、桜前線の上昇と共にふんわりとこの国を包んでいるが、何も変わっていないのだ。「国民の生命と財産を守る」のが政治と教わったのは中学時代。いまもその大義は変らないはずだが、託せる政治が行われず、ひたすら「保身政治」がまかり通っている。これでは「政治への信頼を」などとは程遠い。
     選良と呼ばれる議員。新たなに南魚沼市・魚沼市・湯沢町が加わる新5区は、どうなっているのか。政治資金規正法違反で「戒告」処分を受けた自民の衆院現職・高鳥修一氏。公職選挙法違反で刑事告発された立憲の衆院現職・梅谷守氏。ここ5区はどうなるんですか、と問うても答えは返って来ないだろう。
     かつて「田中角栄」という政治家が、「この三国山脈をなくせば、この豪雪地域はこんなに雪が降らなくなる。出た残土は佐渡を陸続きにすればいい」。壮大な話だが、雪に苦しめられた雪国人たちは、その角さんに夢を託し、それに応え様々な雪国対策の法律を作った。なぜ、こうした政治家がいなくなったのか。住民に単に夢を売るだけでなく、それを目の前で実現してくれるのが政治家であり、それを継続するのが政治だろう。
     市町村長も政治家、市町村議員も政治家、だが、本当に政治家なのか、疑問符がいくつも付くトップ、議員が多くなったのは、我々のせいでもある。チェックの甘さ、出しっぱなし、その全てが我々の責任だが…、である。

    2024年4月13日号

  • 危うい、地方自治法改正

     またも「その他」の危うさが表出している。国と地方の関係を『対等』と法で規定する地方自治法。その改正案が今国会に提案された。改正案の中で『指示権』を拡大し、国の裁量を広げる余地を作った。それが『その他』。改正案では国が指示権を発動できる場面として「大規模な災害」「感染症の蔓延」「その他」とする。この「その他」は『国民の安全に重大な影響を及ぼす事態が発生し、または発生する恐れがある場合』と、字面は一般的な表現だが、それは逆に「国・政府の解釈による裁量部分が広がり『思いのまま』の指示権」となる怖れがある。相当なる危うさが秘められている。
     なぜ国・政府は地方自治法の改正に踏み切るのか。その説明では新型コロナウイルス感染拡大の時の国と地方の関係性から見える教訓を上げる。新型コロナ禍で地方が国方針に異を唱えたことが、改正論議を進め、首相の諮問機関で政権の後押し機関でもある地制調・地方制度調査会が昨年12月、「必要な指示を行えるように」と答申し、今国会への改正案提出となった。
     一方的な指示権ではないにしろ、事前に地方自治体の意見を聞くなど「適切な対応に努めなければならない」との文言はあるが、適切な対応とは、ここもかなり危うい。『その他』の範囲は政府の裁量にあり、相当に広い解釈が可能になっている。
     この国の危うさは、憲法の解釈を都合良く「拡大解釈」や「独自解釈」により、有事法制や最近の武器輸出など、法治国家を逆手にとった政策がまかり通っている現実にあり、相当に危うい。
     今国会に提案の地方自治法改正、これまでの「対等」から「上下・主従」を含ませた改正案である点は、とても看過できない。国政策をゴリ押ししたマイナンバー、その登録率を地方交付税交付に反映など、指示権につながる危うさだ。地方の声上げの時だ。

    2024年4月6日号

  • 原発論議がなかった3月議会

     新年度4月から自治体が使う事業予算を決める3月議会が終わり、区切りよく来週月曜、4月1日から新年度がスタートする。政治の行方も気になるが、新年度の最大課題は「原発再稼働の是非」だろう。新潟県の花角知事は「信を問う」と、辞職を視野に知事選で再稼働の是非を問い、新潟県の意志を示す方針のようだ。その根拠は? と問うだろうが、国の経産省の動き、立地自治体の柏崎市、刈羽村の両議会の再稼働要請の請願採択など、再稼働問題を前に進める動きが具体化し、その後ろで花角知事がタイミングを見ている、そんな景色が見えてくる。
     真っ先に動いたのは原発が立地する柏崎市議会と刈羽村議会。地元経済団体が提出した原発再稼働を求める請願を、両議会とも3月議会で賛成多数で採択している。県や県議会に対し、花角知事に対して「早く進めろ」というアピールか。一方、新潟県議会は3月に経産省幹部が知事と面談し、再稼働要請を促したが、県議からは「なぜこのタイミングなのか、まだ早い」と疑義の声が出た。だが、県民世論を相当意識した発言であり、「出来レース」の声もある。県議会、特に自民系勢力が心底そう思っているなら、原発事故時の避難計画の遅れ、さらに冬季の避難確保など疑義が多い課題に、真正面から取り組む発言をすべきだろう。
     原発30㌔のUPZ圏に入る十日町市、さらに隣接する津南町、栄村の3月議会では、原発論議は聞かれなかった。新年度、相当な確度で原発再稼働が重要案件になることが濃厚のなかでも、議会の場での議論がなかったのは、住民代表の議員の感度のボリュームの低さを問いたい。関口市長はこれまでの議会答弁で「積雪地に原発はそぐわない」など、踏み込んだ発言をしている。地方自治体からの発信が県を動かし、国の目を向ける契機になる。
     事は、間近に迫っている。

    2024年3月30日号

  • この数字、「子育てしたい」妻有なのか

     4月採用の新入社員給与を月額40万円とする、そんなニュースが流れた。どこの話? と大きな疑問符が浮かんだが、現実に今春のこの国の話だ。春闘で労組要求を上回る増額回答が次々と出ている現実を見ると、この新入社員の月額40万円は、そんなに現実離れしている数字でもなさそうだ。だが、かけ離れている現実がある。
     十日町商工会議所調査の「令和5年度・第45回会員企業賃金統計調査」結果報告書がある。会員事業所で従業員5人以上の対象341社調査に対し、168社(対象従業員2884人)が回答。ほぼ全ての業種を網羅しており、最終学歴別の平均賃金も出ている。
     2023年4月分数値を求めた。回答の全体平均に十日町地域の低賃金の現況が見える。年齢39歳~40歳男性平均月額23万3090円、同女性19万506円。数値に偏りがあるだろうが、相当な低水準だ。全体平均の年収では39歳~40歳男性404万6220円、女性298万6951円。業種による差異はあるだろうが、月額給与を抑え、その年の業績を賞与に反映している実情が見えてくる。だが、男女格差は歴然だし、子育て世代にとって、この低水準は教育費捻出に大きく影響し、家計の大きな課題になっていることがうかがえる。
     では、子育てで最も教育費がかかる49歳~50歳はどうか。全体平均年収は男性456万3771円、女性341万9144円。10年間で50万円余の増額に留まり、年間5万円ほどの増額だけ。これでは高校卒後の進学がかなり危うく、大学進学では奨学金を求める傾向が増えている実情が、そのまま数字に出ている。
     人口減少が深刻だ。「子育てしたい」自治体なのか、である。地域の部分的な調査データだが、この現実はまさに妻有の現実だ。地域経済のテコ入れが急務だ。経済政策が聞こえてこない。

    2024年3月23日号

  • 「なぜ…」「なぜ…」に見える行政施策

     『なぜ人口は減るのか』、「生まれる子が少ないから」、『なぜ生まれる子が少ないのか』、「結婚する人たちが減っているから」、『なぜ結婚する人たちが減っているのか』、「相手が見つからないから」、『なぜ相手が見つからないのか』、「見つからないものは、見つからないから」、『なぜ見つからないのか』、「だから、見つからないのは、見つからないんだよ」。会話の最後は、苛立ちの言葉になってしまった。「見つけられない」となると個人領域になるが、実態は「見つからない」ようだ。
     十日町市が事業化する「ハピ婚サポートセンター」に新年度4月から津南町も参加することになった。事業費を新年度予算に組み入れている。十日町市のハピ婚事業は、登録制ながら専任職員が登録希望者と数回面談し、親身になって「本気度」を聞き出しながら、一緒になって「出会い」から「成婚」まで導く事業で、情報管理を徹底し、専任職員の「守秘義務」を徹底することで、登録者との信頼関係のきずなを太くしている。
     一方で「出会いマッチングサイト」が全国的に流行っている。数十項目の登録を経て条件を絞り込み、その条件に合う異性を紹介するサイトで、最近、「サイトで知り合いました」と結婚まで至った例をよく聞く。その本音は「出会いまでのプロセスが面倒で、50項目もの条件を絞り込めば、理想に近い相手と出会うことができるのでは」とのことだが、ここでもAIが活躍しているようだ。
     冒頭の「なぜ…」「なぜ…」は、そのまま地元行政の政策に直結する。全国の人口減少自治体が同じ課題に直面している現実は、実はこの国の将来像に深刻に結び付いている。このまま人口減、出生数が減少すると、社会・生活のあらゆる分野に多大な影響を及ぼすのは明らかである。
     では、今から何ができるか。出来ること全てをやる、これしかない。

    2024年3月16日号

  • 「溜息」の先に見える地方政治

     この見開き紙面の左側、オピニオンの見出し『はあ~(溜息)、この国はどうなっているの』、怒りを通り越し、溜息連発になってしまっている実感だ。そんな正義感はない、と連日TVや新聞などメディアで流れる政権不信の根源をスルーしている方々にとって、この溜息は聞こえているだろうか。
     歴史に「If」はないが、この政情で『解散・総選挙』を行い、それでも政権が維持できたなら、もうこの国はそれだけの国になってしまった、といえる。ドイツに抜かれGDP4位に転落などは、政情とは直接関係ないだろうが、そうだよなぁと妙に納得してしまう。そんな国になってしまった。
     我々が納めた税金が、地方交付税という名に変わり、地方自治体に「戻ってくる」財源のウエイトが年々増している自治体が多い。新年度予算で見ると、十日町市は134億9400万円(歳入比38・7%)、津南町は35億5千万円(同46・3%)、栄村は16億9千万円(同49・6%)。この比率は今後さらにアップしていくだろう。自主財源の減少と反比例する割合増の地方交付税だ。
     「厳しい財政事情」、この言葉が自治体で語られる頻度が増し、特に最近、「数年後には立ち行かなくなる」とまで公言するトップが出始めている。3月定例議会で津南町の桑原悠町長は、まさにこの言葉を何度も述べ、財政運営の危機感を出している。一方で、ふるさと納税が潤沢に集まり、和歌山・北山村では人口4百人余ながら、ふるさと納税により12億円の基金創設が実現し、「使途が悩み」などと文字通り嬉しい悲鳴になっているようだ。
     こうなると、国を頼りの地方政治はもはや限界にあるといえる。これほど「政権不信」が増すなかでは、地方政治の連携が要になる。パートナーだろう。民間企業、地方自治体、その仲間を見つけられるかどうかだ。

    2024年3月9日号

  • インバウンドは「雪」

     雪を求める外国からの観光客が目立つようになっている。週末に限らず平日も越後湯沢駅ではその姿が見られ、十日町雪まつりでも外国からの来訪者が見られた。関口市長はさらなるインバウンドを視野に、取り組みを始めている。だが、外国観光客が求める『雪国』と受入れ側の「もてなし」に差異が生じているのでは、と感じる場面に出くわした。「この雪像はどうやって造るのか」、このストレートな疑問に、十日町雪まつりは応えていないのではないか。出来上がった雪像を前に説明したところで、初めての雪国来訪者には、その感覚は実感として分からない。といって、数日間の雪像づくりの短縮版は出来ない。知恵の出し所だろう。
     美術館や博物館には、その企画展に関係した15分ほどの動画コーナーがある。雪像づくりに導入出来ないか。加えて雪像コンテストと合わせ、雪像づくり記録動画をコンテスト応募に義務付け、最優秀賞・優秀賞作品は1年間、市博物館や十日町駅、市役所、JR協力を得て大宮駅サイネージで動画公開など副賞を付ける。「どうやって造るの」に応えることができるのでは。
     さらに、惜しまれつつ2020年に歴史に幕を下ろした『大白倉バイトウ』は、これこそ雪国伝統だろう。あの規模の「炎」を見ることは地元でもなくなり、まして雪に映える「炎の柱」は間違いなく外国観光客の心を捉えるだろう。それも「神聖な炎」として。継続の課題はいくつも上げられるが、その困難性のハードルを乗り越えるのが地域力をバックアップする行政。その行政を資金支援するのは「とおかまち応援団」の民間事業者ではないか。
     雪国観光は確実にインバウンドの誘因要素だ。十日町雪まつりの伝統は「市民手づくりの雪まつり」。ならばその手作り感を前面に出してはどうか。そこに「雪まつり発祥の地」のプライドが再興するだろう。

    2024年3月2日号

  • 盲点、未調査の海底活断層、原発に影響大

     日本活断層学会の会長・鈴木康弘氏(名古屋大減災連携研究センター教授)は、「過去100年の間で、日本で起きた活断層地震の最大規模が能登半島地震(マグニチュード7・6)だった」と、今年元日発生の地震を月刊誌・世界3月号の「能登半島地震と活断層」で述べている。
     この中で今回の地震を「想定外?」と大きな疑問符を付けている。その疑問符は、震源地の海底活断層において、産業技術総合研究所が認定していた海底活断層が、長さ20数㌔の短い断層としているのに対し、鈴木氏は今回の能登半島地震は「90㌔を超える長い活断層が活動した」と調査結果で指摘。この先には佐渡がある。つまり、柏崎刈羽原発の沖合に近い場所になり、認定されている海域の海底活断層への影響が視野に入り、原発と海底活断層の関係がクローズアップしている。
     原発と活断層は、原発建設前の立地場所問題の前から論議され、研究者によって見解の相違が起き、発電事業者は「影響はない」知見を取り上げ、原発事業を進めてきた歴史がある。今回の能登半島地震により、これまであまり詳細データがない海底活断層に関心が集まり、早急な調査が必要な事態になっている。詳細調査はこれからの原発が立地するのは海岸沿いだけに、海底部分の活断層の存在の有無が、原子力防災の大きな要素になっている。
     原子力防災の不備の一つは、事故時の避難方法にある。今冬は小雪で実感が湧きにくいが、ここ多雪地域の冬場の道路事情は「大雪が降ればひと昔前の世界」に様変わりする。無雪期には幹線道以外の農道や集落道も通れるが、雪が降ればそれらは通行不能、国県道など幹線道も車1台の立ち往生で、深刻な渋滞が発生する。とても避難どころではなくなる現実は、この雪国住人はよく知っている。だからこそ、絵空事の避難方法は、問題外なのである。

    2024年2月24日号

  • なぜ動かなかった津南町

     逃がしたビジネスチャンスは大きいのではないか。良品計画ブランドの「無印良品」の直売店が今週26日、十日町クロステン内に開業した。その5日前、その無印良品の直売店は津南町にあった。それも国道117号沿い、ショッピングセンター内だ。68日の営業日数に約6600人が来訪し、それも県外からも来店していた。「津南店」は無印津南キャンプ場が開業するまでの限定店ではあったが、その場所は津南町観光協会事務局が入る場所でもあった。
     ここで大きな疑問が湧く。なぜ継続出来なかったのか。まして観光協会という来訪拠点であり、そこに良品計画の無印良品があることのメリットに、気付かなかったわけではないだろう。感度が鈍すぎる、のではないか。
     良品計画と連携協定を結ぶ十日町市。前回の大地の芸術祭への出展から、クロステン隣接のキナーレ回廊活用にも積極的だ。当然、十日町側からのアプローチがあり、それは事務レベルのことで、良品計画からの積極出展だろう。
     同様に連携協定を結ぶ津南町の場合、東日本最大級の無印良品津南キャンプ場の開業までの販売店出展は、キャンプシーズン前のPR拠点でもあったのだろう。津南町観光協会の事務局移転が決まった昨秋、移転するまでの空き施設を無印良品の商品販売に活用したい申出があり、わずか68日間だったが、津南町に無印良品「津南店」が誕生した。
     その効果は68日間で6600人余の来店があったことで明らかだ。期間限定ながら、その先の「継続」は、地元津南町の出番だったはず。アプローチがあったのか、知りたい。その「津南店」閉店の5日後、クロステン内に「十日町店」がオープン、この現実を津南町はどう受け止めているのか。逃がしたビジネスチャンスは、相当に大きい。民間との連携が、これからの自治体の命運を決める、そういう時代だ。

    2024年4月27日号

  • 1570人の村が問いかける

     明日投票の栄村は、人口1570人だが面積は日本国土の0・1%を占める広さだ。少子化・高齢化の冠詞が付く自治体、だが可能性という文字も併せ持つ。 人口密度の低さは、一方で過疎過密とは縁遠く、若いファミリーが求める「ゆったり暮らし」の地でもある。上信越国立公園を含み、その地の一部は原生自然環境保全地域に指定され、そのままの自然生態の保護が義務づけられている。日本百名山、二百名山、全国有数の豪雪地、1級河川の清流が2本も流れ、河川浸食が創り出した段丘地は肥沃の大地が広がる。
     これほどの地勢的な環境に人が1570人。何が足りていないのか、それが今度の村長選で問われている。
     明確だろう。暮らしやすさ、安心して暮らせる地だろう。暮らしと直結するのが医療福祉、さらに子育てを支える経済。多くの選挙で問われる政策的な争点だ。これは、当たり前のこと。選挙になり急浮上した課題ではない。だが、選挙になると政策の柱に据え、これもする、あれもする、それが選挙公約になっている。今度の栄村長選でも同じ傾向が見られ、村民・有権者の受け止めた「いつも同じ」なのだろう。
     限られた有権者数。それは「1票の顔が見える」こと。今回の現職、元職、いずれも現・元の村長肩書が付く候補同士の選挙だ。それは「浮動票のない選挙」でもある。元職が務めた4年前までの1期4年間、現職の4年前からの4年間、さて、なにが違い、どう変わり、なにが問われているのか、それが今度の栄村長選である。
     地方自治体の縮図、この国の20年先を行っている自治体などと形容される過疎・少子化・高齢化の自治体は全国にある。隣接の津南町もそうだろう、さらに十日町市も類似点は多い。小さな村のトップを選ぶ選挙は、実は時代の先を行っている自治体の選挙でもある。栄村の人たちは、何を選択するのか。

    2024年4月20日号

  • 政治不信、衆院選で審判を

     政治不信が深刻だ。衆院選はいつか、そんな話題が遠のきつつあるのは我々の「忘れ症」のせいか。いやいや、これだけ「茶番劇」を見せられると、いかに政治好きでも、いいかげんにせい! となるだろう。政権政党への政権不信が、いまでは対する野党への不信も募り、「政治不信」になってしまっている現実は、相当に根深い。
     新年度になり、何かしらの「期待感」が、桜前線の上昇と共にふんわりとこの国を包んでいるが、何も変わっていないのだ。「国民の生命と財産を守る」のが政治と教わったのは中学時代。いまもその大義は変らないはずだが、託せる政治が行われず、ひたすら「保身政治」がまかり通っている。これでは「政治への信頼を」などとは程遠い。
     選良と呼ばれる議員。新たなに南魚沼市・魚沼市・湯沢町が加わる新5区は、どうなっているのか。政治資金規正法違反で「戒告」処分を受けた自民の衆院現職・高鳥修一氏。公職選挙法違反で刑事告発された立憲の衆院現職・梅谷守氏。ここ5区はどうなるんですか、と問うても答えは返って来ないだろう。
     かつて「田中角栄」という政治家が、「この三国山脈をなくせば、この豪雪地域はこんなに雪が降らなくなる。出た残土は佐渡を陸続きにすればいい」。壮大な話だが、雪に苦しめられた雪国人たちは、その角さんに夢を託し、それに応え様々な雪国対策の法律を作った。なぜ、こうした政治家がいなくなったのか。住民に単に夢を売るだけでなく、それを目の前で実現してくれるのが政治家であり、それを継続するのが政治だろう。
     市町村長も政治家、市町村議員も政治家、だが、本当に政治家なのか、疑問符がいくつも付くトップ、議員が多くなったのは、我々のせいでもある。チェックの甘さ、出しっぱなし、その全てが我々の責任だが…、である。

    2024年4月13日号

  • 危うい、地方自治法改正

     またも「その他」の危うさが表出している。国と地方の関係を『対等』と法で規定する地方自治法。その改正案が今国会に提案された。改正案の中で『指示権』を拡大し、国の裁量を広げる余地を作った。それが『その他』。改正案では国が指示権を発動できる場面として「大規模な災害」「感染症の蔓延」「その他」とする。この「その他」は『国民の安全に重大な影響を及ぼす事態が発生し、または発生する恐れがある場合』と、字面は一般的な表現だが、それは逆に「国・政府の解釈による裁量部分が広がり『思いのまま』の指示権」となる怖れがある。相当なる危うさが秘められている。
     なぜ国・政府は地方自治法の改正に踏み切るのか。その説明では新型コロナウイルス感染拡大の時の国と地方の関係性から見える教訓を上げる。新型コロナ禍で地方が国方針に異を唱えたことが、改正論議を進め、首相の諮問機関で政権の後押し機関でもある地制調・地方制度調査会が昨年12月、「必要な指示を行えるように」と答申し、今国会への改正案提出となった。
     一方的な指示権ではないにしろ、事前に地方自治体の意見を聞くなど「適切な対応に努めなければならない」との文言はあるが、適切な対応とは、ここもかなり危うい。『その他』の範囲は政府の裁量にあり、相当に広い解釈が可能になっている。
     この国の危うさは、憲法の解釈を都合良く「拡大解釈」や「独自解釈」により、有事法制や最近の武器輸出など、法治国家を逆手にとった政策がまかり通っている現実にあり、相当に危うい。
     今国会に提案の地方自治法改正、これまでの「対等」から「上下・主従」を含ませた改正案である点は、とても看過できない。国政策をゴリ押ししたマイナンバー、その登録率を地方交付税交付に反映など、指示権につながる危うさだ。地方の声上げの時だ。

    2024年4月6日号

  • 原発論議がなかった3月議会

     新年度4月から自治体が使う事業予算を決める3月議会が終わり、区切りよく来週月曜、4月1日から新年度がスタートする。政治の行方も気になるが、新年度の最大課題は「原発再稼働の是非」だろう。新潟県の花角知事は「信を問う」と、辞職を視野に知事選で再稼働の是非を問い、新潟県の意志を示す方針のようだ。その根拠は? と問うだろうが、国の経産省の動き、立地自治体の柏崎市、刈羽村の両議会の再稼働要請の請願採択など、再稼働問題を前に進める動きが具体化し、その後ろで花角知事がタイミングを見ている、そんな景色が見えてくる。
     真っ先に動いたのは原発が立地する柏崎市議会と刈羽村議会。地元経済団体が提出した原発再稼働を求める請願を、両議会とも3月議会で賛成多数で採択している。県や県議会に対し、花角知事に対して「早く進めろ」というアピールか。一方、新潟県議会は3月に経産省幹部が知事と面談し、再稼働要請を促したが、県議からは「なぜこのタイミングなのか、まだ早い」と疑義の声が出た。だが、県民世論を相当意識した発言であり、「出来レース」の声もある。県議会、特に自民系勢力が心底そう思っているなら、原発事故時の避難計画の遅れ、さらに冬季の避難確保など疑義が多い課題に、真正面から取り組む発言をすべきだろう。
     原発30㌔のUPZ圏に入る十日町市、さらに隣接する津南町、栄村の3月議会では、原発論議は聞かれなかった。新年度、相当な確度で原発再稼働が重要案件になることが濃厚のなかでも、議会の場での議論がなかったのは、住民代表の議員の感度のボリュームの低さを問いたい。関口市長はこれまでの議会答弁で「積雪地に原発はそぐわない」など、踏み込んだ発言をしている。地方自治体からの発信が県を動かし、国の目を向ける契機になる。
     事は、間近に迫っている。

    2024年3月30日号

  • この数字、「子育てしたい」妻有なのか

     4月採用の新入社員給与を月額40万円とする、そんなニュースが流れた。どこの話? と大きな疑問符が浮かんだが、現実に今春のこの国の話だ。春闘で労組要求を上回る増額回答が次々と出ている現実を見ると、この新入社員の月額40万円は、そんなに現実離れしている数字でもなさそうだ。だが、かけ離れている現実がある。
     十日町商工会議所調査の「令和5年度・第45回会員企業賃金統計調査」結果報告書がある。会員事業所で従業員5人以上の対象341社調査に対し、168社(対象従業員2884人)が回答。ほぼ全ての業種を網羅しており、最終学歴別の平均賃金も出ている。
     2023年4月分数値を求めた。回答の全体平均に十日町地域の低賃金の現況が見える。年齢39歳~40歳男性平均月額23万3090円、同女性19万506円。数値に偏りがあるだろうが、相当な低水準だ。全体平均の年収では39歳~40歳男性404万6220円、女性298万6951円。業種による差異はあるだろうが、月額給与を抑え、その年の業績を賞与に反映している実情が見えてくる。だが、男女格差は歴然だし、子育て世代にとって、この低水準は教育費捻出に大きく影響し、家計の大きな課題になっていることがうかがえる。
     では、子育てで最も教育費がかかる49歳~50歳はどうか。全体平均年収は男性456万3771円、女性341万9144円。10年間で50万円余の増額に留まり、年間5万円ほどの増額だけ。これでは高校卒後の進学がかなり危うく、大学進学では奨学金を求める傾向が増えている実情が、そのまま数字に出ている。
     人口減少が深刻だ。「子育てしたい」自治体なのか、である。地域の部分的な調査データだが、この現実はまさに妻有の現実だ。地域経済のテコ入れが急務だ。経済政策が聞こえてこない。

    2024年3月23日号

  • 「なぜ…」「なぜ…」に見える行政施策

     『なぜ人口は減るのか』、「生まれる子が少ないから」、『なぜ生まれる子が少ないのか』、「結婚する人たちが減っているから」、『なぜ結婚する人たちが減っているのか』、「相手が見つからないから」、『なぜ相手が見つからないのか』、「見つからないものは、見つからないから」、『なぜ見つからないのか』、「だから、見つからないのは、見つからないんだよ」。会話の最後は、苛立ちの言葉になってしまった。「見つけられない」となると個人領域になるが、実態は「見つからない」ようだ。
     十日町市が事業化する「ハピ婚サポートセンター」に新年度4月から津南町も参加することになった。事業費を新年度予算に組み入れている。十日町市のハピ婚事業は、登録制ながら専任職員が登録希望者と数回面談し、親身になって「本気度」を聞き出しながら、一緒になって「出会い」から「成婚」まで導く事業で、情報管理を徹底し、専任職員の「守秘義務」を徹底することで、登録者との信頼関係のきずなを太くしている。
     一方で「出会いマッチングサイト」が全国的に流行っている。数十項目の登録を経て条件を絞り込み、その条件に合う異性を紹介するサイトで、最近、「サイトで知り合いました」と結婚まで至った例をよく聞く。その本音は「出会いまでのプロセスが面倒で、50項目もの条件を絞り込めば、理想に近い相手と出会うことができるのでは」とのことだが、ここでもAIが活躍しているようだ。
     冒頭の「なぜ…」「なぜ…」は、そのまま地元行政の政策に直結する。全国の人口減少自治体が同じ課題に直面している現実は、実はこの国の将来像に深刻に結び付いている。このまま人口減、出生数が減少すると、社会・生活のあらゆる分野に多大な影響を及ぼすのは明らかである。
     では、今から何ができるか。出来ること全てをやる、これしかない。

    2024年3月16日号

  • 「溜息」の先に見える地方政治

     この見開き紙面の左側、オピニオンの見出し『はあ~(溜息)、この国はどうなっているの』、怒りを通り越し、溜息連発になってしまっている実感だ。そんな正義感はない、と連日TVや新聞などメディアで流れる政権不信の根源をスルーしている方々にとって、この溜息は聞こえているだろうか。
     歴史に「If」はないが、この政情で『解散・総選挙』を行い、それでも政権が維持できたなら、もうこの国はそれだけの国になってしまった、といえる。ドイツに抜かれGDP4位に転落などは、政情とは直接関係ないだろうが、そうだよなぁと妙に納得してしまう。そんな国になってしまった。
     我々が納めた税金が、地方交付税という名に変わり、地方自治体に「戻ってくる」財源のウエイトが年々増している自治体が多い。新年度予算で見ると、十日町市は134億9400万円(歳入比38・7%)、津南町は35億5千万円(同46・3%)、栄村は16億9千万円(同49・6%)。この比率は今後さらにアップしていくだろう。自主財源の減少と反比例する割合増の地方交付税だ。
     「厳しい財政事情」、この言葉が自治体で語られる頻度が増し、特に最近、「数年後には立ち行かなくなる」とまで公言するトップが出始めている。3月定例議会で津南町の桑原悠町長は、まさにこの言葉を何度も述べ、財政運営の危機感を出している。一方で、ふるさと納税が潤沢に集まり、和歌山・北山村では人口4百人余ながら、ふるさと納税により12億円の基金創設が実現し、「使途が悩み」などと文字通り嬉しい悲鳴になっているようだ。
     こうなると、国を頼りの地方政治はもはや限界にあるといえる。これほど「政権不信」が増すなかでは、地方政治の連携が要になる。パートナーだろう。民間企業、地方自治体、その仲間を見つけられるかどうかだ。

    2024年3月9日号

  • インバウンドは「雪」

     雪を求める外国からの観光客が目立つようになっている。週末に限らず平日も越後湯沢駅ではその姿が見られ、十日町雪まつりでも外国からの来訪者が見られた。関口市長はさらなるインバウンドを視野に、取り組みを始めている。だが、外国観光客が求める『雪国』と受入れ側の「もてなし」に差異が生じているのでは、と感じる場面に出くわした。「この雪像はどうやって造るのか」、このストレートな疑問に、十日町雪まつりは応えていないのではないか。出来上がった雪像を前に説明したところで、初めての雪国来訪者には、その感覚は実感として分からない。といって、数日間の雪像づくりの短縮版は出来ない。知恵の出し所だろう。
     美術館や博物館には、その企画展に関係した15分ほどの動画コーナーがある。雪像づくりに導入出来ないか。加えて雪像コンテストと合わせ、雪像づくり記録動画をコンテスト応募に義務付け、最優秀賞・優秀賞作品は1年間、市博物館や十日町駅、市役所、JR協力を得て大宮駅サイネージで動画公開など副賞を付ける。「どうやって造るの」に応えることができるのでは。
     さらに、惜しまれつつ2020年に歴史に幕を下ろした『大白倉バイトウ』は、これこそ雪国伝統だろう。あの規模の「炎」を見ることは地元でもなくなり、まして雪に映える「炎の柱」は間違いなく外国観光客の心を捉えるだろう。それも「神聖な炎」として。継続の課題はいくつも上げられるが、その困難性のハードルを乗り越えるのが地域力をバックアップする行政。その行政を資金支援するのは「とおかまち応援団」の民間事業者ではないか。
     雪国観光は確実にインバウンドの誘因要素だ。十日町雪まつりの伝統は「市民手づくりの雪まつり」。ならばその手作り感を前面に出してはどうか。そこに「雪まつり発祥の地」のプライドが再興するだろう。

    2024年3月2日号

  • 盲点、未調査の海底活断層、原発に影響大

     日本活断層学会の会長・鈴木康弘氏(名古屋大減災連携研究センター教授)は、「過去100年の間で、日本で起きた活断層地震の最大規模が能登半島地震(マグニチュード7・6)だった」と、今年元日発生の地震を月刊誌・世界3月号の「能登半島地震と活断層」で述べている。
     この中で今回の地震を「想定外?」と大きな疑問符を付けている。その疑問符は、震源地の海底活断層において、産業技術総合研究所が認定していた海底活断層が、長さ20数㌔の短い断層としているのに対し、鈴木氏は今回の能登半島地震は「90㌔を超える長い活断層が活動した」と調査結果で指摘。この先には佐渡がある。つまり、柏崎刈羽原発の沖合に近い場所になり、認定されている海域の海底活断層への影響が視野に入り、原発と海底活断層の関係がクローズアップしている。
     原発と活断層は、原発建設前の立地場所問題の前から論議され、研究者によって見解の相違が起き、発電事業者は「影響はない」知見を取り上げ、原発事業を進めてきた歴史がある。今回の能登半島地震により、これまであまり詳細データがない海底活断層に関心が集まり、早急な調査が必要な事態になっている。詳細調査はこれからの原発が立地するのは海岸沿いだけに、海底部分の活断層の存在の有無が、原子力防災の大きな要素になっている。
     原子力防災の不備の一つは、事故時の避難方法にある。今冬は小雪で実感が湧きにくいが、ここ多雪地域の冬場の道路事情は「大雪が降ればひと昔前の世界」に様変わりする。無雪期には幹線道以外の農道や集落道も通れるが、雪が降ればそれらは通行不能、国県道など幹線道も車1台の立ち往生で、深刻な渋滞が発生する。とても避難どころではなくなる現実は、この雪国住人はよく知っている。だからこそ、絵空事の避難方法は、問題外なのである。

    2024年2月24日号