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社説一覧

  • ラストチャンス、なのか

     津南町の命運がかかっている、過言だろうか。広域観光を支えて来たニュー・グリーンピア津南。開業から40年余、歴史はその存在を無情にも晒している。国の年金福祉事業団が潤沢な年金資金を使い、全国10数ヵ所に開業した保健保養リゾートホテル。運営は財団法人年金保養協会、いわば国直営的な経営。だが時代は激変、年金資金の見通しが厳しくなり、全国の施設は売却、閉鎖に追い込まれ、地域の観光拠点となっていたグリーンピア津南は、地元津南町が2億2500万円で購入。建設事業費265億円余、施設面積376㌶余の買い物だった。
     津南町は公設民営の運営方式を導入し、経営者はその時々代わったが津南高原開発が10年ごとの賃貸借契約で運営。その10年期限は9月末で満了。債務超過の現会社、頼みの金融機関もお手上げ状態のなか経営が続き、その負債総額は8億円を超えている。       
     9月末で契約が切れる。津南町は引き続き観光事業の拠点とするため、経営を受ける事業体を探すため、コンサル会社にリサーチと選定準備事業を委託。その結果2社が応札し、先週末、1社との交渉開始を決めた。その民間・イントランスは世界的なホテル展開の「インターコンチネンタルホテルグループ(IHG)」誘致を進めているという。まさにビッグネームだ。
     これは津南町にとって、ラストチャンスなのか、である。建設から40年余経過の施設ながら、それを取り巻く自然環境は「超1級品」と評価されている立地。津南町は交渉を成就させたい意向だが、売却には町の財産を普通財産に変更する必要があり、その許可の場が町議会。これをチャンスと取るか、土地売却は問題と疑義を示すか、9月にそれが決まる。
     あの時…と歳月の経過後、その選択の是非を振り返る歴史的な決断になるだろう。ラストチャンス、だろう。

    2025年7月19日号

  • 「再生二期作」、コメづくり革命か

     「再生二期作」。二期作は小学校の社会で習い、コメづくりを年に2回行うことは知っていたが、「再生」が付く二期作とは…。先週全国紙で大きく扱われ、今週は経済紙・日経に出ていた。それだけ産業構造に大きく影響する取り組みなのだろう。特にコメ価格高騰の昨今では、コメというキーワードだけで注目する世情だ。
     再生とは、一度の田植えでその年、二度の収穫をするコメづくりだ。説明されれば、なるほど…と思う。事実、ここ妻有地方の水田でもこの光景はよく見る。収穫の秋。稲刈りが終わった田んぼ、その上を赤とんぼが舞う頃になると刈り取った稲株から新たな稲(ひこばえ)が伸び、年によっては稲穂をつけ再び実入りする。このイネの特性を活用したのが「再生二期作」。春の田植えは一度。だが、収穫は二度できるという超コストパフォーマンスのコメづくりだ。
     実はこの再生二期作、先進地は中国という。一度の田植えで二度収獲する、それを専門的に研究し、システム化まできているという。日本はまだ研究が緒についたばかりで、本格研究はこれからだという。このメリットは大きい。高額なコメづくり農業機械が二度使える。結果、生産コストが下がり、利幅が増えることになる。
     先週5日の朝日新聞で紹介の再生二期作は、福島県の専業農業者の取り組み。1回目の稲刈りは8月中に行い、新米が8月に流通する。二回目は11月頃という。品種は農研機構が開発の「にじのきらめき」。暑さに強く、食味もコシヒカリ並みという。栽培ポイントは切り株を長めに残すこと。長めの切り株で稲穂の結実が早まるという。さらに研究が進めば、この再生二期作は、いまのコメづくりを革命的に変えるかもしれない。
     日進月歩、様々な分野の技術革新は早い。まさに、コメづくり革命か。

    2025年7月12日号

  • そして、また10年が始まった

     大きな節目だったJR東・宮中取水ダムの水利権更新は、「なにごともなく」、7月から新たな許可期間の10年が始まった。なにごともなく、ではないのかどうか、この10年間が検証してくれるだろう。
     更新期が迫るなかでの十日町市長選は、相当なるタイミングだった。市長候補2人による公開討論では、現職の実績を新人が「上書き修正」する場面が多く、誰の実績なのかという疑問符が付いたまま、投票日を向かえた。結果は市政史上最多の5選。この市長選からJR東とのこの先10年の「覚書」締結までの間、水利権更新に関わるいくつかの言葉が表出している。
     先ずは関口市長から「蓄電所」の言葉が出て、さらに「電気を買わせていただく」。建設から100年近く経過するも、なお現役で発電し続ける発電所は「コストが低い電気」を生み出している。それを「安価」で買う、それが関口市長の言葉。では、買った電気を何に使うのか。今度はJR東・喜㔟社長から「データセンター」という言葉が出た。これらのキーワードをつなぐと、見えてくる構図がある。
     低コストで生まれる電気を安価で求める十日町市。それを蓄電所で電気を蓄え、施設冷却が必要なデータセンターに供給、売るという流れが見えてくる。買った電気の事業化である。
     これが実現すれば、十日町市はJR東が宮中取水ダムからの水で千手発電所で発電し続ける限り、永劫的に「電気事業による利益」を得ることができる。これが7月から始まった「新たな10年」の成果なのか。
     勝手なシナリオは、得てして的外れの場合が多い。だが、これまでトップから出たキーワードをつなぐと見えてくるシナリオの一つだ。「したたか」の言葉は良い意味であるが、日本のトップ企業、JR東という心強いパートナーを十日町市が得ている事実は、大きい。

    2025年7月5日号

  • どうするグリーンピア

     津南町が岐路に立つ。観光の拠点、ニュー・グリーンピア津南の行方だ。9月30日で賃貸借契約が満了し、10月からの新たな経営者が決まっていない。残る3ヵ月、カウントダウンを刻む音が、日ごとその切迫感を増している。今月中に「優先交渉権を付与」すると方針を示す桑原悠町長。その相手は2社あり、どちらにするか選考協議の日々なのだろう。
     「津南町からグリーンピアがなくなったら、本当に何もなくなる」、住民の一致する思いだろう。だが、建設・開業から40年を経る観光拠点は、その広大な自然は魅力だが、ホテル棟など観光施設は「40年を経た中古物件」。この施設を引き続き津南観光のために使いたい、そう手を上げている2社は、相当なる覚悟なのだろう。
     その一つ、現在の経営法人・津南高原開発は株主総会を24日開いた。第21期の決算は質疑もなく承認された。その他で説明に立った樋口明社長は、9月末以降を視野に出席株主に経過説明した。賃貸借契約の『施設修繕は経営法人が行う』内容に疑義を述べ、「社会通念上、それでは経営できない」とこの10年間、何度も施設所有の津南町に求めた経過を話す。「契約更新が出来なかった場合…」、さらに踏み込んだ言葉を株主に話し、相当なる覚悟で臨んでいる姿勢を見せている。
     10月以降の経営体選択は「二者択一」なのか、である。どちらかに優先交渉を絞り込み、売却土地など具体的な交渉に入るが、この主導権は明らかに応札した民間にある。AがダメならBで、そんな単純な選択になるのだろうか。今回の「交渉」はすべて秘匿義務を課すなかで進み、外野論議は推測の域を出ないのが現実だ。
     今回の決定は、津南町にとって相当なる岐路になるだろう。その岐路の先をどう読み込み、政策決定するか、決断の日は迫っている。

    2025年6月28日号

  • このシナリオ、市長選争点だった

     55日前、「電気の地元還元を」と訴えた市長候補が敗れた十日町市。市長選から46日後、当選市長は「電気を買わせて頂きたい」と話す。市民は「?」を抱かないのだろうか。来週23日からの市議選後初の市議会一般質問では誰一人、この「発言」に関する質問はない。これが市長選、市議選を経た十日町市の現状なのか。
     JR東・信濃川発電所の水利権更新は先週12日、市長とJR東トップの調印で10年間更新が決まった。維持流量60㌧以上は、従前10年間の水利権覚書では明記していたが、7月から始まる水利権覚書には記述はない。覚書調印前、「60㌧削除」が明らかになると、地元や関係団体から疑義が一斉に起こり、JR東は夏季「60㌧程度の放流を行う」と後日、補足説明した。
     12日の覚書調印で突如として出たのが「データセンター」。国は2030年代、データセンターの集積地整備と地方分散の設置方針を示す。JR東・喜㔟社長はその電力供給として水力発電を視野に話す。「信濃川の水を使わせて頂ければ国全体の成長課題に対応でき、十日町市の皆様にしっかり還元できる取り組みになると具体的に相談している」と十日町市・関口市長に語った。還元という言葉を使った。
     言葉の受け止めは微妙だ。十日町市にデータセンターを誘致したい、と関口市長はこれまで一度も明言していない。ただ、電気事業法改正でJR東が売電できる事を踏まえ、「(信濃川発電所は)償却済みの資産で、そこで生み出される電気のコストは安いはず」とJR東から電気を購入する姿勢を見せたのが冒頭の言葉だ。
     さらに、市長選を通じて公約した「蓄電所」がこれに結び付く。安い電気を購入し、蓄電所で蓄え、データセンターに電力供給することで十日町市に利益が入る、そんな「経済行為」がイメージできるのだが…。

    2025年6月21日号

  • 村正さんの姿が浮かぶ

     「食料の安全保障」という言葉が飛び交ったのは、あの村山正司氏がGATT本部のスイス・ジュネーブに乗り込んだ1986年「GATT(ガット)ウルグアイラウンド」の頃からだ。米輸入を阻止してきた全農・中央会長だった村山正司氏、村正さんは、スイスの本部前でムシロ旗を立て抗議デモ。だが結局、米輸入はミニマムアクセス米として以降輸入が続いている。
     今回の「米騒動」。津南町生まれの村正さんが、米をめぐる「食料の安全保障問題」の矢面に立った姿を思い起こした。備蓄米放出で、逆に関心が集まっているのが輸入米だ。今秋の収穫期に向け、コメ騒動は続くだろう。
     魚沼コシヒカリ産地の妻有地方。この地の農業者の多くが「縁故米」を全国の縁戚の方々に送っている。それは相当数になっている。さらに、ふるさと納税で返礼品トップは「米」。その結果、魚沼コシヒカリを返礼品に上げる自治体のふるさと納税額は、前年比増を毎年更新している。そこに「令和のコメ騒動」。今秋の収穫後、新米が出回る年末にかけて、さらにふるさと納税は増えるだろう。だが、それに見合う魚沼米が確保できるのか、この米騒動の影響を考えてしまう。
     魚沼米生産者の声。「予約を断っている。農協に出荷予約しているが、これ以上価格が上がれば生産者は高い方に流れるだろう」。米騒動があらぬ争いを生みかねない状況だ。秋を見越したコメ買い付けが妻有でも激化している。米不足の先に、コメ輸入を見ている国の姿勢が見え始めている。
     「このままでは米づくり農家は減少の一途だ。地元行政と農協は何をしているのか」。危機感を抱く年配農業者の言葉が現実化しつつある。ほ場整備され、大型機械で営農できる水田も、作り手がいない…そんな現実が目の前に迫ってきている。コメ文化の転換点なのか。事は、深刻度を増している。

    2025年6月14日号

  • これは3選表明か

     来年2026年7月9日、津南町の桑原悠町長は2期目の任期満了を向かえる。その翌年、2027年4月に新生・津南小学校を開校する条例改正案を来週11日開会の町議会6月定例会に提案する。現在の津南小・芦ヶ崎小・上郷小の3校を統合し、町立小学校を一本化する条例改正案だ。地元説明会を経て「賛同を得た」と設置条例改正を提案する、この流れに違和感を抱く。任期を超えた政策判断である。ならば、「3選表明」なのか、である。
     小学校の再編統合は、津南町の場合、20年来の懸案事項になっている。桑原町長の前町政は、議員や住民要望を受けつつも「動かない8年間」だった。保育園再編と連動する問題だけに、住民意識は混在し、いまも多様な意見がある。だが地元住民のアンケート調査や説明会、懇談会を経て「再編統合に賛同」を得て、ようやく小学校再編が動き出し、今回の条例改正案の提案に至っている。
     政策判断は「機を見て敏なり」の通り、その一手がその先の情勢を決めることになるのは政治の世界の常道。行政事業も同様だが、今回の条例改正案の提出時期が気になる。
     「2027年4月に町立小学校一本化」。このシナリオは合意済みだが、その前年2026年7月9日、桑原町政は任期切れ、前月6月末に町長選がある。この流れを見ると、2027年4月開校の新生津南小学校設置は、「責任を持って開校する」含意があると受ける。直言するなら、任期後の政策決定は「事実上の3選表明」となる。言葉にはしないが、トップの心中は決まっているのだろう。その意志ある言葉を、来週からの町議会6月定例会で聞かれるのだろうか。
     行政の要は「継続」。トップの言葉に、真意がある。任期越えの政策判断、その責任ある言葉が聞きたい。

    2025年6月7日号

  • 「古古古米」、新米神話の崩壊か

     2024年産米はまだ「新米」だ。その前年2023年産米は「古米」。ならば国が備蓄米放出する2021年産米は「古古古米」になる。更迭された農相の後任に就いた小泉進次郎氏は28日の国会で「5㌔1800円台になる」と、古古古米の販売価格の見通しを示した。 高値価格が続く米相場。消費者感覚では「少しでも安く」だが、古古古米が流通し、消費者がどう食味を感じるか、そこがポイントだ。「美味いじゃないか」、「やっぱり古古古米だ」、「この価格ならこの味で充分」なのか。消費者反応によっては、「新米神話の崩壊」につながりかねない。
     国の備蓄米に詳しい農協関係者によると、政府の備蓄米保管は民間や団体の低温倉庫で保管している。国基準は「室温15度以下」がルール。これは各農協が持つ米倉庫と同じで、農業地域の一般家庭の家庭米の低温庫と同じだ。「3年前の米なんて、食べられたもんじゃない」、米産地の農家は話す。新米は規定の水分量で保管するが、低温倉庫保管は年月と共に乾燥が進む。曰く「食味がぱさぱさになる」そうだ。
     だが今回、国は自信を持って2021年産米の備蓄米を放出する。だが政府説明はこれまで食味に言及していない。今後この備蓄米が一般に出回り、消費者がどう反応するか、この国の米事情を大きく変えるかもしれない。それが今回の古古古米の放出だ。
     10年余前から「日本はコメ自給ができなくなる」、警鐘を鳴らす農協幹部の言葉が、現実味を帯びている状況が全国の米生産現場で起きている。それは「離農」。条件が良い田でも耕作者がいない、そんな現実が目の前で起きている。
     米不足が常態化すれば国はコメ輸入に踏み切る、その地ならしではないか、今回の古古古米放出。今季からイオングループはカルフォルニア米を輸入する。米不足の対症療法が、米事情を大きく変える転換点になるのか。

    2025年5月31日号

  • 放射能汚染の現実、根本議論はどこに

     これが放射能の汚染実態なのだろう。
    春の美味、山菜シーズンの最中、直売所など店頭販売する山菜・コシアブラからセシウムを検出したと、今月すでに2件の発表があった。十日町市と湯沢町だ。東日本大震災のフクシマ原発事故が振り撒いた放射性物質の一つ、セシウム。事故から14年経つが、いまも自然界に存在し、セシウムを多く採取するというコシアブラから検出されている現実は、「フクシマ原発事故」が続いている、ということだ。
     事故発生後、放射性物質の雲・プルームの流れを当時の気象条件を加え、見える化したデータがある。フクシマ原発の建屋が水素爆発した3月15日、大気の流れは太平洋から陸地に向って吹き、放出の放射性物質は気流に乗って陸地内部に流れた。新潟県は国境の三国山脈が流れを遮り大量のプルーム被害を免れた。だが一部は上信越国境の山脈を越え流れ込み、山麓の山菜や野生動物からセシウムが出ている。 
     森林に流れ込んだ放射性物質は針葉樹の細葉に付着。落葉する紅葉樹に付着したセシウムは落葉と共に林床に堆積。雨で流されるが、いまだ残るのが山菜や熊など野生動物などを通じて検出されている。放射性物質・セシウムの放射能半減期は30年という。
     「原発の電気を使う首都圏の消費者が、その電気が不要なら柏崎刈羽原発は不要になる。首都圏の消費者しだい」。地元県議から度々こうした発言を聞く。先日は「首都圏に聞いたが回答がなかった」という。ならば、東京のど真ん中、日比谷公園で「原発電力は必要ですか集会」を開いてはどうか。そこまで言うのであれば、そこまでやってほしい、それが地域代表の政治家ではないか。
     原発問題は、再稼働議論が中心だが、根本部分の「放射性廃棄物の処理」が全くめどが立っていない現実を直視してほしい。それが全てのスタートだ。

    2025年5月24日号

  • 決断迫られる津南町

     津南町が決断を迫られている。ニュー
    ・グリーンピア津南の行方だ。開業40年の「中古物件」の引き受け手を、町委託の仲介コンサル会社が2社見つけた。1社は現経営会社だが、資金投入し同じ社名ながら別会社となり、土地建物を買収し経営継続すると手を上げた。もう1社は外資系で、国際ブランドのホテル経営に関わる上場民間資本。だが、どちらも町議会の同意ハードルは高そうだ。土地売却が焦点になっている。問題視するなら具体案を示し、並列的な議論を交わす必要がある。
     売却に応札した2社は共に土地買収が条件。40年経過の建物の資産価値はゼロといわれる。ホテル経営を継続し観光事業をめざす2社にとって、買収価値は土地。民間企業の厳しさがそこにある。
     町議会内にある「土地は売却しない」は、この応札のリセットの意味だ。ではどうするのか。具体的プランは出ていないが、町が財政投入を継続し、ホテルを核とした観光事業に取り組み業績アップをめざす方針のようだ。土地売却はしない、そのプランを示してほしい。
     土地売却を問題視する動きには、外野席からも声が掛かり元町長まで関わっている状況は、事をさらに複雑化している。ただ、町民レベルでこの問題を考えるには判断材料が複雑で、多くの課題を含んでおり、択一という単純選択ができにくい内容だ。
     町が示した2択は、今月中に交渉優先順を決め具体的な協議に入る。現賃貸契約は9月末で満了。7月中に売却先を決定し議会同意を得る方針だ。 
     この問題、津南町の根幹に関わる重要な選択になる。だが限られた時間しかない。判断を下す時は刻々と迫っている。町民レベルで判断できるのか、町民代表の町議会は真っ当な判断ができるのか。事は、重要な曲面を向かえている。決断をするのは、津南町の人たちである。

    2025年5月17日号

  • ラストチャンス、なのか

     津南町の命運がかかっている、過言だろうか。広域観光を支えて来たニュー・グリーンピア津南。開業から40年余、歴史はその存在を無情にも晒している。国の年金福祉事業団が潤沢な年金資金を使い、全国10数ヵ所に開業した保健保養リゾートホテル。運営は財団法人年金保養協会、いわば国直営的な経営。だが時代は激変、年金資金の見通しが厳しくなり、全国の施設は売却、閉鎖に追い込まれ、地域の観光拠点となっていたグリーンピア津南は、地元津南町が2億2500万円で購入。建設事業費265億円余、施設面積376㌶余の買い物だった。
     津南町は公設民営の運営方式を導入し、経営者はその時々代わったが津南高原開発が10年ごとの賃貸借契約で運営。その10年期限は9月末で満了。債務超過の現会社、頼みの金融機関もお手上げ状態のなか経営が続き、その負債総額は8億円を超えている。       
     9月末で契約が切れる。津南町は引き続き観光事業の拠点とするため、経営を受ける事業体を探すため、コンサル会社にリサーチと選定準備事業を委託。その結果2社が応札し、先週末、1社との交渉開始を決めた。その民間・イントランスは世界的なホテル展開の「インターコンチネンタルホテルグループ(IHG)」誘致を進めているという。まさにビッグネームだ。
     これは津南町にとって、ラストチャンスなのか、である。建設から40年余経過の施設ながら、それを取り巻く自然環境は「超1級品」と評価されている立地。津南町は交渉を成就させたい意向だが、売却には町の財産を普通財産に変更する必要があり、その許可の場が町議会。これをチャンスと取るか、土地売却は問題と疑義を示すか、9月にそれが決まる。
     あの時…と歳月の経過後、その選択の是非を振り返る歴史的な決断になるだろう。ラストチャンス、だろう。

    2025年7月19日号

  • 「再生二期作」、コメづくり革命か

     「再生二期作」。二期作は小学校の社会で習い、コメづくりを年に2回行うことは知っていたが、「再生」が付く二期作とは…。先週全国紙で大きく扱われ、今週は経済紙・日経に出ていた。それだけ産業構造に大きく影響する取り組みなのだろう。特にコメ価格高騰の昨今では、コメというキーワードだけで注目する世情だ。
     再生とは、一度の田植えでその年、二度の収穫をするコメづくりだ。説明されれば、なるほど…と思う。事実、ここ妻有地方の水田でもこの光景はよく見る。収穫の秋。稲刈りが終わった田んぼ、その上を赤とんぼが舞う頃になると刈り取った稲株から新たな稲(ひこばえ)が伸び、年によっては稲穂をつけ再び実入りする。このイネの特性を活用したのが「再生二期作」。春の田植えは一度。だが、収穫は二度できるという超コストパフォーマンスのコメづくりだ。
     実はこの再生二期作、先進地は中国という。一度の田植えで二度収獲する、それを専門的に研究し、システム化まできているという。日本はまだ研究が緒についたばかりで、本格研究はこれからだという。このメリットは大きい。高額なコメづくり農業機械が二度使える。結果、生産コストが下がり、利幅が増えることになる。
     先週5日の朝日新聞で紹介の再生二期作は、福島県の専業農業者の取り組み。1回目の稲刈りは8月中に行い、新米が8月に流通する。二回目は11月頃という。品種は農研機構が開発の「にじのきらめき」。暑さに強く、食味もコシヒカリ並みという。栽培ポイントは切り株を長めに残すこと。長めの切り株で稲穂の結実が早まるという。さらに研究が進めば、この再生二期作は、いまのコメづくりを革命的に変えるかもしれない。
     日進月歩、様々な分野の技術革新は早い。まさに、コメづくり革命か。

    2025年7月12日号

  • そして、また10年が始まった

     大きな節目だったJR東・宮中取水ダムの水利権更新は、「なにごともなく」、7月から新たな許可期間の10年が始まった。なにごともなく、ではないのかどうか、この10年間が検証してくれるだろう。
     更新期が迫るなかでの十日町市長選は、相当なるタイミングだった。市長候補2人による公開討論では、現職の実績を新人が「上書き修正」する場面が多く、誰の実績なのかという疑問符が付いたまま、投票日を向かえた。結果は市政史上最多の5選。この市長選からJR東とのこの先10年の「覚書」締結までの間、水利権更新に関わるいくつかの言葉が表出している。
     先ずは関口市長から「蓄電所」の言葉が出て、さらに「電気を買わせていただく」。建設から100年近く経過するも、なお現役で発電し続ける発電所は「コストが低い電気」を生み出している。それを「安価」で買う、それが関口市長の言葉。では、買った電気を何に使うのか。今度はJR東・喜㔟社長から「データセンター」という言葉が出た。これらのキーワードをつなぐと、見えてくる構図がある。
     低コストで生まれる電気を安価で求める十日町市。それを蓄電所で電気を蓄え、施設冷却が必要なデータセンターに供給、売るという流れが見えてくる。買った電気の事業化である。
     これが実現すれば、十日町市はJR東が宮中取水ダムからの水で千手発電所で発電し続ける限り、永劫的に「電気事業による利益」を得ることができる。これが7月から始まった「新たな10年」の成果なのか。
     勝手なシナリオは、得てして的外れの場合が多い。だが、これまでトップから出たキーワードをつなぐと見えてくるシナリオの一つだ。「したたか」の言葉は良い意味であるが、日本のトップ企業、JR東という心強いパートナーを十日町市が得ている事実は、大きい。

    2025年7月5日号

  • どうするグリーンピア

     津南町が岐路に立つ。観光の拠点、ニュー・グリーンピア津南の行方だ。9月30日で賃貸借契約が満了し、10月からの新たな経営者が決まっていない。残る3ヵ月、カウントダウンを刻む音が、日ごとその切迫感を増している。今月中に「優先交渉権を付与」すると方針を示す桑原悠町長。その相手は2社あり、どちらにするか選考協議の日々なのだろう。
     「津南町からグリーンピアがなくなったら、本当に何もなくなる」、住民の一致する思いだろう。だが、建設・開業から40年を経る観光拠点は、その広大な自然は魅力だが、ホテル棟など観光施設は「40年を経た中古物件」。この施設を引き続き津南観光のために使いたい、そう手を上げている2社は、相当なる覚悟なのだろう。
     その一つ、現在の経営法人・津南高原開発は株主総会を24日開いた。第21期の決算は質疑もなく承認された。その他で説明に立った樋口明社長は、9月末以降を視野に出席株主に経過説明した。賃貸借契約の『施設修繕は経営法人が行う』内容に疑義を述べ、「社会通念上、それでは経営できない」とこの10年間、何度も施設所有の津南町に求めた経過を話す。「契約更新が出来なかった場合…」、さらに踏み込んだ言葉を株主に話し、相当なる覚悟で臨んでいる姿勢を見せている。
     10月以降の経営体選択は「二者択一」なのか、である。どちらかに優先交渉を絞り込み、売却土地など具体的な交渉に入るが、この主導権は明らかに応札した民間にある。AがダメならBで、そんな単純な選択になるのだろうか。今回の「交渉」はすべて秘匿義務を課すなかで進み、外野論議は推測の域を出ないのが現実だ。
     今回の決定は、津南町にとって相当なる岐路になるだろう。その岐路の先をどう読み込み、政策決定するか、決断の日は迫っている。

    2025年6月28日号

  • このシナリオ、市長選争点だった

     55日前、「電気の地元還元を」と訴えた市長候補が敗れた十日町市。市長選から46日後、当選市長は「電気を買わせて頂きたい」と話す。市民は「?」を抱かないのだろうか。来週23日からの市議選後初の市議会一般質問では誰一人、この「発言」に関する質問はない。これが市長選、市議選を経た十日町市の現状なのか。
     JR東・信濃川発電所の水利権更新は先週12日、市長とJR東トップの調印で10年間更新が決まった。維持流量60㌧以上は、従前10年間の水利権覚書では明記していたが、7月から始まる水利権覚書には記述はない。覚書調印前、「60㌧削除」が明らかになると、地元や関係団体から疑義が一斉に起こり、JR東は夏季「60㌧程度の放流を行う」と後日、補足説明した。
     12日の覚書調印で突如として出たのが「データセンター」。国は2030年代、データセンターの集積地整備と地方分散の設置方針を示す。JR東・喜㔟社長はその電力供給として水力発電を視野に話す。「信濃川の水を使わせて頂ければ国全体の成長課題に対応でき、十日町市の皆様にしっかり還元できる取り組みになると具体的に相談している」と十日町市・関口市長に語った。還元という言葉を使った。
     言葉の受け止めは微妙だ。十日町市にデータセンターを誘致したい、と関口市長はこれまで一度も明言していない。ただ、電気事業法改正でJR東が売電できる事を踏まえ、「(信濃川発電所は)償却済みの資産で、そこで生み出される電気のコストは安いはず」とJR東から電気を購入する姿勢を見せたのが冒頭の言葉だ。
     さらに、市長選を通じて公約した「蓄電所」がこれに結び付く。安い電気を購入し、蓄電所で蓄え、データセンターに電力供給することで十日町市に利益が入る、そんな「経済行為」がイメージできるのだが…。

    2025年6月21日号

  • 村正さんの姿が浮かぶ

     「食料の安全保障」という言葉が飛び交ったのは、あの村山正司氏がGATT本部のスイス・ジュネーブに乗り込んだ1986年「GATT(ガット)ウルグアイラウンド」の頃からだ。米輸入を阻止してきた全農・中央会長だった村山正司氏、村正さんは、スイスの本部前でムシロ旗を立て抗議デモ。だが結局、米輸入はミニマムアクセス米として以降輸入が続いている。
     今回の「米騒動」。津南町生まれの村正さんが、米をめぐる「食料の安全保障問題」の矢面に立った姿を思い起こした。備蓄米放出で、逆に関心が集まっているのが輸入米だ。今秋の収穫期に向け、コメ騒動は続くだろう。
     魚沼コシヒカリ産地の妻有地方。この地の農業者の多くが「縁故米」を全国の縁戚の方々に送っている。それは相当数になっている。さらに、ふるさと納税で返礼品トップは「米」。その結果、魚沼コシヒカリを返礼品に上げる自治体のふるさと納税額は、前年比増を毎年更新している。そこに「令和のコメ騒動」。今秋の収穫後、新米が出回る年末にかけて、さらにふるさと納税は増えるだろう。だが、それに見合う魚沼米が確保できるのか、この米騒動の影響を考えてしまう。
     魚沼米生産者の声。「予約を断っている。農協に出荷予約しているが、これ以上価格が上がれば生産者は高い方に流れるだろう」。米騒動があらぬ争いを生みかねない状況だ。秋を見越したコメ買い付けが妻有でも激化している。米不足の先に、コメ輸入を見ている国の姿勢が見え始めている。
     「このままでは米づくり農家は減少の一途だ。地元行政と農協は何をしているのか」。危機感を抱く年配農業者の言葉が現実化しつつある。ほ場整備され、大型機械で営農できる水田も、作り手がいない…そんな現実が目の前に迫ってきている。コメ文化の転換点なのか。事は、深刻度を増している。

    2025年6月14日号

  • これは3選表明か

     来年2026年7月9日、津南町の桑原悠町長は2期目の任期満了を向かえる。その翌年、2027年4月に新生・津南小学校を開校する条例改正案を来週11日開会の町議会6月定例会に提案する。現在の津南小・芦ヶ崎小・上郷小の3校を統合し、町立小学校を一本化する条例改正案だ。地元説明会を経て「賛同を得た」と設置条例改正を提案する、この流れに違和感を抱く。任期を超えた政策判断である。ならば、「3選表明」なのか、である。
     小学校の再編統合は、津南町の場合、20年来の懸案事項になっている。桑原町長の前町政は、議員や住民要望を受けつつも「動かない8年間」だった。保育園再編と連動する問題だけに、住民意識は混在し、いまも多様な意見がある。だが地元住民のアンケート調査や説明会、懇談会を経て「再編統合に賛同」を得て、ようやく小学校再編が動き出し、今回の条例改正案の提案に至っている。
     政策判断は「機を見て敏なり」の通り、その一手がその先の情勢を決めることになるのは政治の世界の常道。行政事業も同様だが、今回の条例改正案の提出時期が気になる。
     「2027年4月に町立小学校一本化」。このシナリオは合意済みだが、その前年2026年7月9日、桑原町政は任期切れ、前月6月末に町長選がある。この流れを見ると、2027年4月開校の新生津南小学校設置は、「責任を持って開校する」含意があると受ける。直言するなら、任期後の政策決定は「事実上の3選表明」となる。言葉にはしないが、トップの心中は決まっているのだろう。その意志ある言葉を、来週からの町議会6月定例会で聞かれるのだろうか。
     行政の要は「継続」。トップの言葉に、真意がある。任期越えの政策判断、その責任ある言葉が聞きたい。

    2025年6月7日号

  • 「古古古米」、新米神話の崩壊か

     2024年産米はまだ「新米」だ。その前年2023年産米は「古米」。ならば国が備蓄米放出する2021年産米は「古古古米」になる。更迭された農相の後任に就いた小泉進次郎氏は28日の国会で「5㌔1800円台になる」と、古古古米の販売価格の見通しを示した。 高値価格が続く米相場。消費者感覚では「少しでも安く」だが、古古古米が流通し、消費者がどう食味を感じるか、そこがポイントだ。「美味いじゃないか」、「やっぱり古古古米だ」、「この価格ならこの味で充分」なのか。消費者反応によっては、「新米神話の崩壊」につながりかねない。
     国の備蓄米に詳しい農協関係者によると、政府の備蓄米保管は民間や団体の低温倉庫で保管している。国基準は「室温15度以下」がルール。これは各農協が持つ米倉庫と同じで、農業地域の一般家庭の家庭米の低温庫と同じだ。「3年前の米なんて、食べられたもんじゃない」、米産地の農家は話す。新米は規定の水分量で保管するが、低温倉庫保管は年月と共に乾燥が進む。曰く「食味がぱさぱさになる」そうだ。
     だが今回、国は自信を持って2021年産米の備蓄米を放出する。だが政府説明はこれまで食味に言及していない。今後この備蓄米が一般に出回り、消費者がどう反応するか、この国の米事情を大きく変えるかもしれない。それが今回の古古古米の放出だ。
     10年余前から「日本はコメ自給ができなくなる」、警鐘を鳴らす農協幹部の言葉が、現実味を帯びている状況が全国の米生産現場で起きている。それは「離農」。条件が良い田でも耕作者がいない、そんな現実が目の前で起きている。
     米不足が常態化すれば国はコメ輸入に踏み切る、その地ならしではないか、今回の古古古米放出。今季からイオングループはカルフォルニア米を輸入する。米不足の対症療法が、米事情を大きく変える転換点になるのか。

    2025年5月31日号

  • 放射能汚染の現実、根本議論はどこに

     これが放射能の汚染実態なのだろう。
    春の美味、山菜シーズンの最中、直売所など店頭販売する山菜・コシアブラからセシウムを検出したと、今月すでに2件の発表があった。十日町市と湯沢町だ。東日本大震災のフクシマ原発事故が振り撒いた放射性物質の一つ、セシウム。事故から14年経つが、いまも自然界に存在し、セシウムを多く採取するというコシアブラから検出されている現実は、「フクシマ原発事故」が続いている、ということだ。
     事故発生後、放射性物質の雲・プルームの流れを当時の気象条件を加え、見える化したデータがある。フクシマ原発の建屋が水素爆発した3月15日、大気の流れは太平洋から陸地に向って吹き、放出の放射性物質は気流に乗って陸地内部に流れた。新潟県は国境の三国山脈が流れを遮り大量のプルーム被害を免れた。だが一部は上信越国境の山脈を越え流れ込み、山麓の山菜や野生動物からセシウムが出ている。 
     森林に流れ込んだ放射性物質は針葉樹の細葉に付着。落葉する紅葉樹に付着したセシウムは落葉と共に林床に堆積。雨で流されるが、いまだ残るのが山菜や熊など野生動物などを通じて検出されている。放射性物質・セシウムの放射能半減期は30年という。
     「原発の電気を使う首都圏の消費者が、その電気が不要なら柏崎刈羽原発は不要になる。首都圏の消費者しだい」。地元県議から度々こうした発言を聞く。先日は「首都圏に聞いたが回答がなかった」という。ならば、東京のど真ん中、日比谷公園で「原発電力は必要ですか集会」を開いてはどうか。そこまで言うのであれば、そこまでやってほしい、それが地域代表の政治家ではないか。
     原発問題は、再稼働議論が中心だが、根本部分の「放射性廃棄物の処理」が全くめどが立っていない現実を直視してほしい。それが全てのスタートだ。

    2025年5月24日号

  • 決断迫られる津南町

     津南町が決断を迫られている。ニュー
    ・グリーンピア津南の行方だ。開業40年の「中古物件」の引き受け手を、町委託の仲介コンサル会社が2社見つけた。1社は現経営会社だが、資金投入し同じ社名ながら別会社となり、土地建物を買収し経営継続すると手を上げた。もう1社は外資系で、国際ブランドのホテル経営に関わる上場民間資本。だが、どちらも町議会の同意ハードルは高そうだ。土地売却が焦点になっている。問題視するなら具体案を示し、並列的な議論を交わす必要がある。
     売却に応札した2社は共に土地買収が条件。40年経過の建物の資産価値はゼロといわれる。ホテル経営を継続し観光事業をめざす2社にとって、買収価値は土地。民間企業の厳しさがそこにある。
     町議会内にある「土地は売却しない」は、この応札のリセットの意味だ。ではどうするのか。具体的プランは出ていないが、町が財政投入を継続し、ホテルを核とした観光事業に取り組み業績アップをめざす方針のようだ。土地売却はしない、そのプランを示してほしい。
     土地売却を問題視する動きには、外野席からも声が掛かり元町長まで関わっている状況は、事をさらに複雑化している。ただ、町民レベルでこの問題を考えるには判断材料が複雑で、多くの課題を含んでおり、択一という単純選択ができにくい内容だ。
     町が示した2択は、今月中に交渉優先順を決め具体的な協議に入る。現賃貸契約は9月末で満了。7月中に売却先を決定し議会同意を得る方針だ。 
     この問題、津南町の根幹に関わる重要な選択になる。だが限られた時間しかない。判断を下す時は刻々と迫っている。町民レベルで判断できるのか、町民代表の町議会は真っ当な判断ができるのか。事は、重要な曲面を向かえている。決断をするのは、津南町の人たちである。

    2025年5月17日号