大きな節目だったJR東・宮中取水ダムの水利権更新は、「なにごともなく」、7月から新たな許可期間の10年が始まった。なにごともなく、ではないのかどうか、この10年間が検証してくれるだろう。
更新期が迫るなかでの十日町市長選は、相当なるタイミングだった。市長候補2人による公開討論では、現職の実績を新人が「上書き修正」する場面が多く、誰の実績なのかという疑問符が付いたまま、投票日を向かえた。結果は市政史上最多の5選。この市長選からJR東とのこの先10年の「覚書」締結までの間、水利権更新に関わるいくつかの言葉が表出している。
先ずは関口市長から「蓄電所」の言葉が出て、さらに「電気を買わせていただく」。建設から100年近く経過するも、なお現役で発電し続ける発電所は「コストが低い電気」を生み出している。それを「安価」で買う、それが関口市長の言葉。では、買った電気を何に使うのか。今度はJR東・喜㔟社長から「データセンター」という言葉が出た。これらのキーワードをつなぐと、見えてくる構図がある。
低コストで生まれる電気を安価で求める十日町市。それを蓄電所で電気を蓄え、施設冷却が必要なデータセンターに供給、売るという流れが見えてくる。買った電気の事業化である。
これが実現すれば、十日町市はJR東が宮中取水ダムからの水で千手発電所で発電し続ける限り、永劫的に「電気事業による利益」を得ることができる。これが7月から始まった「新たな10年」の成果なのか。
勝手なシナリオは、得てして的外れの場合が多い。だが、これまでトップから出たキーワードをつなぐと見えてくるシナリオの一つだ。「したたか」の言葉は良い意味であるが、日本のトップ企業、JR東という心強いパートナーを十日町市が得ている事実は、大きい。