「ものづくり」、三条市立大学
清水 裕理 (経済地理学博士)
新潟県三条市に設立された三条市立大学に先日行ってきました。地域の特徴を活かした「ものづくり」に特化した工学系の公立大学です。
上越新幹線の停車駅・燕三条駅から徒歩で約10分、整備中の土地の一画に、今までの大学のイメージをくつがえす開放的で明るい雰囲気の建物が建っています。
大学には一般開放されている食堂があり、美味しそうな定食やカレーなどが並び、地元ボランティアの方がお手伝いをされていました。食堂に女子学生の姿が多いと感じたところ、同じ屋根の下、隣は三条看護•医療•歯科衛生専門学校とのことでした。
三条市立大学の1学年の学生数は80名。全員が一同に集まれるホールは前面がガラス張りで、その先に弥彦山の全貌が一枚の絵画のように現れ、ホール名に地元企業の経営者だった方の名前が付けられていました。地元のためにと多額の寄付をされたそうです。
校内に、天井が高く、実習用の大きな機械がいくつも設置されている広い空間があり、上の方から、その空間を見渡せられるようになっていました。そこは、先生や学生から〝劇場〟と呼ばれており、機械を扱う際、危険がないように緊張感を持って動きに注意を払い、かつ美しく振る舞うことを学ぶのだそうです。
個々の教室が並ぶ廊下を歩くと、教室との壁が半透明となっており、学生が熱心に講義を聞いたりディスカッションをしたりしている様子が感じられます。情報処理を学ぶ教室の机やパソコンの配置などにも細かい工夫がなされていました。
今年で4年生まで揃い、毎年の入学の倍率は5倍を超えているとのことです。この数字は、少子化で受験生が減っているなか、全国的にみてもたいへん高い数字です。
人気の理由は、やはり地域の特徴を活かした学び舎であることで、ここでしか実現できない教育を実施していることだと思います。
「ものづくり」が盛んな地域という特徴を活かしていることから、地元企業からの期待も大きく、様々な協力を得られています。学生の実習の受け入れに協力している地元企業が百社を超えていることは驚きですし、学生奨学金の支援をしている地元企業もあります。
来春、大学は初めての卒業生を送り出す予定で、それまでに学生時代にできる経験の多くの機会を得られ、そして、なるべく多くの学生が地元での就職を希望することを地域は望んでいることでしょう。
これからも、学生と大学と地元とのよき関係をつくりながら歩んでほしいと思いました。