娘とのかけがえのない時間

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斉木宏幸さん(1978年生まれ)

 中学2年、高校3年の娘2人との会話のやり取りは、年々少なくなってきている。「自分に話しかけてくるときは、送って、迎えきて、アイス買ってきて、ですかね」。少しずつ大人になっている2人の姿。「そういう年代に入ってきているんですね。娘専属の便利なタクシーですよ」と、笑う。
 今はおもに長女の送迎担当。娘と2人の車中、この時間がかけがえのないものに感じるようになっている。「もう高校3年生ですよ。ほんと早いですね」。自分の高校時代と重なる。
 県立十日町実業高校として最後の卒業生だった。翌年、カリキュラムを変更し十日町総合高校に改称。「カラオケでオールして遊んで、プリクラが流行ったんで写真部作ろうってなって。名前だけの部長になった事もありました」。高校時代、仲間と一緒に遊ぶ時間が楽しかった。だが、時間は過ぎていく。
 卒業後はどうする、親からのプレッシャーを感じつつ、「これといってやりたいというものが無かったので、何か資格を取りたいと考え進んだんですが…」。
 新潟テクノスクールの土木測量科を選び卒業。しかし、「測量の仕事がなくって、土木や配管をする仕事につきました」。
 長岡の建設会社で働き始めるが土木や配管などの業務をこなし、早朝から時には夜遅くまで、ただ時間だけが過ぎていく、そんな日々が続いた。「これでいいのかと、だんだん疑問が大きくなって」、3年で見切りをつけ、十日町に帰った。

 十日町で就職した住宅設備会社。
家の水回り全般を扱う。前職での業務経験は配管、その技術を生かしたいと次々と現場に出向いた。気が付くと17年が過ぎていた。「失敗も多くしました。それらすべてが経験値となり、自分の技術アップにつながってきました」。出来上がった時の達成感は大きく、仕事へのやりがいも増し、同時に責任ある業務を任されるようになった。
 ある日、会社をたたむと聞いた。日々関わり世話になっていた関連会社から『うちに来ないか』と声がかかった。「ありがたかったですね。悩んだんですが、新しい挑戦をしてみようと思って住宅の水回り全てと電気、ガスも取り扱っている会社に決めました」。ガスの取り扱い資格や電気工事関連の資格を取得し、業務の幅を広げている。
 
 「配管はその住居や建物により全て違います。難関な場所の配管が出来た時は嬉しいですね。排水管や水道管などは人間の身体では血管のようなものです。ですからきれいに正確につなぐ、これが一番大切なことです」。
 経験値はさらにアップしている。今は後輩への確かな技術伝達を伝える立場だと感じている。「自分がいろいろ教えてもらって覚えてきた分。これからは自分の経験をしっかり次世代に伝え、さらに高い技術アップにつないでほしいですね」。

 2人の娘の父。成長から月日を感じる。「娘たちはバスケットをやっていたり、推し活したりと忙しそうです。俺も何か趣味が欲しいなと思うんですけどね…」、「なんだかんだ娘の送迎が趣味なのか…。この時間、何気ない日常ですが、だんだん愛おしい時間になってきていますね」。

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 関綾子さん