日本初の和歌に『妻』の文字が

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「越後国」と「出雲国」

清水裕理 (経済地理学博士)

 仕事で出雲国(島根県)に来ており、越後国(新潟県)との共通点を感じます。出雲国では、十月を神無月ではなく神在月と呼び、全国の神様が集まり、誰と誰のご縁を結ぶかの相談が行われるとされます。
 旧暦の10月10日である11月中旬に出雲大社で神迎祭が行われ、出雲大社の西側にある稲佐の浜に全国の神様が夜に到着され、その浜で神主さんがお迎えの神事を執り行います。その後、出雲大社の中に神様のお泊り処があり、そこにご案内し、翌朝に神様方は、相談ごとを行う場所に通われます。その会議室は意外にも出雲大社の外にあり、まちの人々は、神様が相談ごとをされる期間は、音を出さないように静かに過ごすのだそうです。
ご相談ごとが終わると酒宴が開かれ、その会場はここ、二次会はここと場所が決まっています。宴会が楽しくて居残りをされる神様もいらっしゃるとの余話も。
 神様の酒宴から発祥しているとされる島根のお酒ですが、飲んでみると、なんとなく新潟のお酒とテイストが似ているような感じがします。
 お米も、東日本が魚沼米ならば、西日本では島根県の仁多米(にたまい)が断トツのブランド米です。地形は、両県とも、日本海に面し、内陸部に入ると山や森林が深くなる点が共通しています。
出雲国の山では、かつて、たたら製鉄が盛んに行われていました。真砂をとり、炭を作り、今でいう工場で鉄がつくられました。その風景が映画「千と千尋の神隠し」で描かれています。
 現在は、刀匠が日本刀をつくる際に必要な玉鋼(たまはがね)を得るために、たたら製鉄の技が受け継がれています。
 松江市の南に位置する奥出雲と呼ばれる地域にたたら製鉄の跡が残っており、山を削って真砂をとった場所が今は棚田となりお米づくりが盛んです。鉄師と呼ばれた方々が残した住居や庭園は見事で、最近のテレビドラマ「VIVANT」の舞台となりました。
 近年は、周辺の森林の木材を活用し、建設用合板の製造が行われています。木材は海外産を使うことの多い時期があったようですが、ここ10年で国内産の使用が増えたそうです。

八雲立つ 出雲八重垣 妻ごみに 八重垣作る その八重垣を

 奥出雲で八岐大蛇(やわたのおろち)を退治したスサノオノミコトが読んだ日本で初めての和歌とされています(妻有の『妻』の文字が入っています)。
 出雲国で神話を身近に感じながら、越後国にもスサノオのような力持ちがいそうと思いました。

続きは本誌2023年11月11日号を御覧ください

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