村正さんの姿が浮かぶ

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社説

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 「食料の安全保障」という言葉が飛び交ったのは、あの村山正司氏がGATT本部のスイス・ジュネーブに乗り込んだ1986年「GATT(ガット)ウルグアイラウンド」の頃からだ。米輸入を阻止してきた全農・中央会長だった村山正司氏、村正さんは、スイスの本部前でムシロ旗を立て抗議デモ。だが結局、米輸入はミニマムアクセス米として以降輸入が続いている。
 今回の「米騒動」。津南町生まれの村正さんが、米をめぐる「食料の安全保障問題」の矢面に立った姿を思い起こした。備蓄米放出で、逆に関心が集まっているのが輸入米だ。今秋の収穫期に向け、コメ騒動は続くだろう。
 魚沼コシヒカリ産地の妻有地方。この地の農業者の多くが「縁故米」を全国の縁戚の方々に送っている。それは相当数になっている。さらに、ふるさと納税で返礼品トップは「米」。その結果、魚沼コシヒカリを返礼品に上げる自治体のふるさと納税額は、前年比増を毎年更新している。そこに「令和のコメ騒動」。今秋の収穫後、新米が出回る年末にかけて、さらにふるさと納税は増えるだろう。だが、それに見合う魚沼米が確保できるのか、この米騒動の影響を考えてしまう。
 魚沼米生産者の声。「予約を断っている。農協に出荷予約しているが、これ以上価格が上がれば生産者は高い方に流れるだろう」。米騒動があらぬ争いを生みかねない状況だ。秋を見越したコメ買い付けが妻有でも激化している。米不足の先に、コメ輸入を見ている国の姿勢が見え始めている。
 「このままでは米づくり農家は減少の一途だ。地元行政と農協は何をしているのか」。危機感を抱く年配農業者の言葉が現実化しつつある。ほ場整備され、大型機械で営農できる水田も、作り手がいない…そんな現実が目の前に迫ってきている。コメ文化の転換点なのか。事は、深刻度を増している。

続きは本誌2025年6月14日号を御覧ください

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