景気は「気」
清水 裕理 (経済地理学博士)
前回のオピニオンで、最近の経済の動きが気になると書きましたが、その続きです。
景気は、良い方向に上がると次に下がり、下がるとまた上がってと循環を繰り返します。その高低差が急であったり、長すぎたりすることがないように、考えます。
景気には「気」という言葉が入っているように、人々の気持ちが経済に影響を与えます。不安が広がると一気に景気が悪くなることがよくあります。そのため、経済金融政策はタイミングよく打つ必要があります。
さて、それでは今現在の日本の景気はどうかというと、数字的に、景気後退時期に入ったと言える状況になってきました。四半期毎の実質の国内総生産(GDP)が、前期比で連続3期プラスになっていないからです。3期といわず2期でも景気後退期に入ったと判断するのが、経済関係者の間で通説となっています。
その判断と公表は、米国では民間の専門機関が、日本では政府が行います。実際には、数字より、生活者として買物をしているときや、人の流れが分かるタクシーの運転手さんの方が、景気の変化を早く感じとることがあります。
そして、その対策として行う経済金融政策の手段に税や金利水準の調整などがあり、どの分野にそれらを適用するのが効果的であるかは、国の特徴により異なります。
例えば、米国は、経済における消費の割合が大きいのでその分野を中心に、中国は土地建物などの資産の分野、日本は、他国に比べて生産に占める割合が大きいのでその分野に適用するのが効果的と考えられると思います。
そして、日本における生産の分野を牽引しているのは、なんと言っても自動車産業です。
しかし、先週、気になるニュースが飛び込んできました。国土交通省は、国の定める自動車の型式認証制度について不正があったと発表し、それを受けて国内三大自動車メーカーのトップが揃って謝罪会見を行う事態が生じました。行政処分がなされるかもしれません。メーカーは「国の基準より厳しい条件で実施しており安全性に問題はない」という話もしています。
今回の問題の詳細がまだ分からず、どれだけ生産に影響を与えるのか分からないのですが…実際に、乗っていて国内メーカーの車の性能は優れていると感じることが多いです。それを実現してきたのは、積み重ねられてきた技術や技能があってであり、日々よい製品を届けようと切磋琢磨している現場があってこそ。その大切さは、忘れてはならないと思います。