水利権更新、流域全体の課題

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社説

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 「行く川のながれは絶えずして、しかも、もとの水にあらず…」、鴨長明は方丈記で、川の流れに我が生き方を映し、「もののあわれ」を記している。信濃川の水利権更新を2025年に向える流域の住民として、ふと思い浮かんだのが、この一節だ。目の前の川の流れは、その遥か上流から流れ下り、我が暮らす地を潤し、海へと流れている。 
 その流れの水エネルギーを先人たちは活用しようと水力発電所を作り、戦後復興のすべての底支えのエネルギー源を創出し、いまもその恩恵に預かっている。その一つ、JR東・宮中取水ダムからの送水で発電するJR東・信濃川発電所の水利権更新が迫っている。10年前の不正取水で新規取得した水利権、10年の更新期が2025年6月に来る。
 十日町市民グループは、10年前の「出来事」を考え、10年後のあり方を提言し、上流・下流を一帯に考え、発電所が立地する小千谷市の市民との連携に乗り出している。
 「行く川のながれは絶えずして…」、上流と下流は川でつながる。市民グループは、この当たり前の関係性を重要視し、小千谷の市民との連帯に取り組んでいる。では、その上流はどうなのか、という素朴な疑問が湧く。その隣接する上流の津南町には名称が同じ東京電力・信濃川発電所があり、その発電水は上流22㌔余の飯山市・西大滝ダムから送水している。この川の流れを考えたい。
 水利権更新は、住民生活や産業を支える重要なエネルギー源であることは確かである。その発電事業者と立地自治体・地域との関係性は歴史が物語る通り、まさに共存共栄。だが、この共存共栄、いまは「共生」と表現されるが、市民グループが訴える「地元還元」の視点で考え、まもなく100年を迎える歴史の積み重ねで見ると、今度の更新期はここにポイントがある。この「地元還元」、流域共通の課題ではないのか。

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