清津峡流域に堰堤計画
藤ノ木信子 (清津川に清流を取り戻す会)
清津川流域では、台風のたびに上流の電源開発二居ダムの放流と降雨量が相まって、下流集落の川沿いの家は自主避難する。この増水濁流の流れを変えるため? 湯沢砂防事務所は集落周辺の護岸床固と本流にスリットが入った堰堤をセットで造る計画を進めている。
スリットが入ったダムや穴あきダムは近年全国で多く造られて、堆砂しない流水型構造物とされているが本当にそうなのか? つくば市の日本工営には30分の1の清津川の模型が作られていて、そこに砂と水を流して実験し、「この通り集落のあるところは水流が変わって安全になる」と言う説明だが、私は堰堤より上流の土砂の堆砂が多くなることを懸念している。
清津川はすさまじく土砂供給量が多い川だからだ。この欄でも以前書いたが湯沢の山中、東電の取水施設がある清津川上流では、旧建設省が造った堰堤の上流1・5㌔に渡り砂利が溜まり河原砂漠になっている。
そのため河床が上がり山脚が削られて、今ではテトラポットを並べたり、蛇篭でピラミッドを造ったりして山崩れを押さえざるを得ない。東電の取水ダムも深く砂利に埋まっている。
川の流れを止めるものを造ると、それより上流はたちまち砂利で埋まる。溜まるのは砂利だけではい。写真①は山形県庄内市の土内川砂防ダムだが、溜まった泥の悪臭で住民が楽しみにしていた芋煮会ができなくなったそうだ。県はダムにスリットを切ったが悪臭はほとんど改善されず水が淀んでいる。上流には景勝地があったが埋まって価値が損なわれたということ。
次の写真②は先月の山形水害直後の小国川ダム(流水型穴あきタイプ)のものだが、水が穴に押し寄せ、水圧が高くなり流木や木の葉を吸い寄せて詰まり、そのため上流部で膨らんだ水で被害が出ている。堰堤があるために流速が落ちるので、普通は溜まらない細かな泥が道路を埋めている(写真③)。
人が考えるように都合よく川は流れてくれない。清津川にスリット堰堤を造ると同じように上流は河床が上がり、市の大切な収入源になっているアート作品も泥んこになるのかなと思っている。
清津峡は国立公園特別地域に指定されていて、自然公園法20条では「河川、湖沼等の水位又は水量に増減を及ぼさせること」をするときは環境大臣の許可が必要になる。
たとえ堰堤の位置が国立公園外でもそれを造ることで、今までなかった影響が特別地域に及ぶ可能性があるなら湯沢砂防事務所は一考しなければならない。(実際、私たち住民は建物の色や材質、自動販売機の色まで細かな制約を受けていて、そうして風致を守っているのだから)。この問題、また続報を書こう。