退けた民意、新潟県議会の矜持とは

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社説

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 「自分の能力を信じて抱く誇り」と言葉解説にある『矜持』。新潟県議会の矜持とは、なんだったのか。いやいや、そもそも矜持はあったのか。県民代表の気概を抱くなら、その矜持を示すべきだった。だが、原発県民投票の条例制定議案を事もなく否決した新潟県議会。そこに矜持は感じない。否決誘因の花角知事の県議会前の発言、がっかりした県民は多い。『二者択一では把握できない』、原発問題を国策と一蹴した12年前の県議会論議と通底する論点であり、原発所在県の新潟県トップは民意から逃げた。意向調査は「意識の分断」を招くだけだ。いや、それが狙いなのか。さて第二幕はあるのか。
 第一幕の県民投票は、花角知事が本番ステージに登場する前演だった。「信を問う」と公言する知事が再稼働賛否を出す前に、県民投票で県民の総意を示し、知事の判断材料にする、そんなシナリオの県民投票実現だった。だが、主役の知事登場前に、自らステージ袖から「二者択一はなじまない」と小声ながら、それがスピーカー効果を生み、同時進行の別ステージの県民投票条例制定の舞台に流れ、県民代表を自負する県議、自民県議の数の力で、ステージに上がる前に退けられた、これが第一幕の顛末だろう。
 『信を問う』。幾度となく口にした花角知事のこの言葉。県民投票条例否決で、この言葉の前に「知事選で」が付くことが明確になってきた。次なる関心は知事選の時期である。今夏の参院選との同時選とする見方が有力だったが、県民条例否決後、来年7月の任期満了説が有力視される事態になっている。あと1年余、この間に国は様々な手法と言葉で「再稼働合意づくり」に向け、あの手、この手を打って来るだろう。アメとムチで。
 さて第二幕は、どう幕開きするのか。
世界最大級の原発の存在賛否を自ら決める、これが新潟県民の矜持だろう。

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