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妻有まるごと博物館一覧

  • クジャクチョウ

    南雲 敏夫(県自然観察指導員)

     このチョウの色合いは個人的にもっとも綺麗だといつも思う。春に秋山郷などでよく見かけるが夏の間はあまり見かけない。成虫は移動性が強いために標高の高い場所、中央アルプス宝剣岳の近くの標高2800メートル付近でも飛んでいるのを見ている。
     名前のクジャクチョウだが鳥のクジャクにも負けないほどの色と模様が綺麗で本家本元のクジャクも負けそうである。クジャクチョウは涼しい気候を好むため本州中部以北に生息している、成虫越冬するために春は比較的姿を目にする事も多い。
     このチョウの学名にはギリシャ神話に登場する女性神官のイオ、亜種名は日本の芸者の意味だと言う、イオはゼウスを魅了したほどの美貌を誇り、加えて芸者と言えば和服姿の美しい女性を連想するが、確かにクジャクチョウの模様を見ればなぜか納得してしまう。
     羽の裏側は表と正反対で地味羽をたたんで止まると枯葉のようである。表の派手な大きな目玉模様は鳥などから身を守るためにあると言われている。

    2023年10月7日号

  • ウドの果実

    中沢 英正(県自然観察保護員)

     ウドは背丈2メートルにもなる大きな草である。そのため「ウドの大木」なることわざをあてがわれ、図体は大きいが役立たずのマイナスイメージを持たれてきた。
     春の若芽は人気の山菜である。栽培品も多く出回るが、風味の点では天然物には敵わない。和え物や味噌汁の具にすれば絶品である。
     山奥では6月まで採取可能だ。
     その後、茎はすくすくと伸び、誰も見向きもしない時期を迎える。
     道沿いに生えたものは除草の対象になってしまうことも…。
     晩夏、他の草より抜きん出た茎先にたくさんの小花を球状につける。はじけた線香花火のような集まりだ。この花も食用となる。球状のまま料理の飾りとしたり、衣をつけて揚げればまるい天ぷらの出来上がりだ。
     トリをとるのが果実(写真)。黒熟すれば生食できる。甘味と苦味のハーモニーがいい。 
     ことわざに取りあげられたのは昔から注目されていた証。個性ある香に魅了された人は多い。

    2023年9月30日号

  • 近代的な飯場

    小林 幸一(津南案内人)

     写真は百年前の発電所工事で賑わった前倉飯場の全景です。前倉の山田益雄さんが親から聞いた話では、冬になると沢山の人夫が村まで来るので道が凍り滑って歩けないほどだったといいます。何も無かった村に近代的な飯場が忽然と現れ、村の生活は一変しました。
     手前に線路を歩く村人らしき人物が写っていますが、これが切明まで伸びる工事用の軌道で、山道より歩きやすかったことでしょう。現在この軌道跡を歩こうとしても雑木が生い茂り、対岸の見倉の焼き畑も見えません。
     この写真は十日町市の建設会社であった旧「高幸」の5代目当主、高橋訓彦氏から提供していただきました。十日町の山内写真館の技師が「高幸」の依頼で釜落から電車に乗りここまで写真を撮りに来たと思われます。
     たった1枚の写真でも「親から口伝えで聞いてきた発電所工事のことが、この1枚の写真で納得が出来た。畑を耕すと空き瓶がいっぱい出て来て飯場があったことは知っていたが、当時としては立派な建物が建ち並びでびっくりした!」と益雄さんは驚いていました。
     工事の飯場というともっとバラック小屋のような建物をイメージしていましたが、医者や巡査も常駐し、衣食住は地元より良かったのかもしれません。

    2023年9月23日号

  • 有毒植物ヨウシュヤマゴボウ

    照井麻美(津南星空写真部)

     雨がほとんど降らなかった夏を乗り越え、稲刈りのシーズンに突入しました。最近では雨も少しずつ降るようになり、植物たちも元気を取り戻しているように思います。しかし、恵みの雨は雑草たちも元気にしてくれるので、庭や畑の草刈りも忙しくなります。
     そんな雑草の中にひときは食べられそうな実をつけた植物を紹介します。
     「インクベリー」ともよばれるこの植物は一般名を「ヨウシュヤマゴボウ」。北アメリカ原産の帰化植物で、ブルーベリーのような濃い紫色をしているのでご存じの方も多いかと思います。
     植物の根がゴボウに似ていることからヤマゴボウと名前についていますが、果実と根に有毒成分を含み誤って食べてしまうと、腹痛・ 嘔吐・下痢を起こし、ついで延髄に作用し、けいれんを起こして最悪の場合死に至る注意すべき植物のようです。(厚生労働省HP参照)
     雑草といって草刈り機などで刈り取ってしまえば、なんでもない植物ですが、庭や畑でも見回すと実は様々な植物が生えていることが分かります。
     今月29日は十五夜です。ススキがあればぜひ中秋の名月と一緒に季節を感じてください。

    2023年9月16日号

  • 高山鳥ホシガラス

    南雲敏夫

     漢字で書くと星烏と書きますが、確かに体の模様を見ると星空にも似ていますよね。
     近隣では小松原湿原や苗場山などに生息しており、湿原を歩いているとカラスと違ったガーガーと言う声が聞こえてくる事があります。これがホシガラスの鳴き声であまり綺麗な声ではありませんね。
     ハイマツ帯に多く見られますが、その下の亜高山帯のオオシラビソやコメツガなどの樹林帯にもその姿を見る事も多いです。
     主食はおもにハイマツの種やオオシラビソ、トウヒなどの裸子植物の種などを食べていますが、雑食性なので昆虫や鳥の卵なども餌にする事があります。
     種などが食べきれない時にはよく地面に埋めて貯蔵しますがホシガラスはとても記憶力が良くて地面に埋めた餌の場所はしっかりと覚えているそうです。
     しかし時には忘れる事もあるらしく、忘れた種から新しく森林を作る事もあります。ハイマツ帯によく見られますが繁殖は針葉樹林帯を選ぶそうです。

    2023年9月9日号

  • クジャクチョウ

    南雲 敏夫(県自然観察指導員)

     このチョウの色合いは個人的にもっとも綺麗だといつも思う。春に秋山郷などでよく見かけるが夏の間はあまり見かけない。成虫は移動性が強いために標高の高い場所、中央アルプス宝剣岳の近くの標高2800メートル付近でも飛んでいるのを見ている。
     名前のクジャクチョウだが鳥のクジャクにも負けないほどの色と模様が綺麗で本家本元のクジャクも負けそうである。クジャクチョウは涼しい気候を好むため本州中部以北に生息している、成虫越冬するために春は比較的姿を目にする事も多い。
     このチョウの学名にはギリシャ神話に登場する女性神官のイオ、亜種名は日本の芸者の意味だと言う、イオはゼウスを魅了したほどの美貌を誇り、加えて芸者と言えば和服姿の美しい女性を連想するが、確かにクジャクチョウの模様を見ればなぜか納得してしまう。
     羽の裏側は表と正反対で地味羽をたたんで止まると枯葉のようである。表の派手な大きな目玉模様は鳥などから身を守るためにあると言われている。

    2023年10月7日号

  • ウドの果実

    中沢 英正(県自然観察保護員)

     ウドは背丈2メートルにもなる大きな草である。そのため「ウドの大木」なることわざをあてがわれ、図体は大きいが役立たずのマイナスイメージを持たれてきた。
     春の若芽は人気の山菜である。栽培品も多く出回るが、風味の点では天然物には敵わない。和え物や味噌汁の具にすれば絶品である。
     山奥では6月まで採取可能だ。
     その後、茎はすくすくと伸び、誰も見向きもしない時期を迎える。
     道沿いに生えたものは除草の対象になってしまうことも…。
     晩夏、他の草より抜きん出た茎先にたくさんの小花を球状につける。はじけた線香花火のような集まりだ。この花も食用となる。球状のまま料理の飾りとしたり、衣をつけて揚げればまるい天ぷらの出来上がりだ。
     トリをとるのが果実(写真)。黒熟すれば生食できる。甘味と苦味のハーモニーがいい。 
     ことわざに取りあげられたのは昔から注目されていた証。個性ある香に魅了された人は多い。

    2023年9月30日号

  • 近代的な飯場

    小林 幸一(津南案内人)

     写真は百年前の発電所工事で賑わった前倉飯場の全景です。前倉の山田益雄さんが親から聞いた話では、冬になると沢山の人夫が村まで来るので道が凍り滑って歩けないほどだったといいます。何も無かった村に近代的な飯場が忽然と現れ、村の生活は一変しました。
     手前に線路を歩く村人らしき人物が写っていますが、これが切明まで伸びる工事用の軌道で、山道より歩きやすかったことでしょう。現在この軌道跡を歩こうとしても雑木が生い茂り、対岸の見倉の焼き畑も見えません。
     この写真は十日町市の建設会社であった旧「高幸」の5代目当主、高橋訓彦氏から提供していただきました。十日町の山内写真館の技師が「高幸」の依頼で釜落から電車に乗りここまで写真を撮りに来たと思われます。
     たった1枚の写真でも「親から口伝えで聞いてきた発電所工事のことが、この1枚の写真で納得が出来た。畑を耕すと空き瓶がいっぱい出て来て飯場があったことは知っていたが、当時としては立派な建物が建ち並びでびっくりした!」と益雄さんは驚いていました。
     工事の飯場というともっとバラック小屋のような建物をイメージしていましたが、医者や巡査も常駐し、衣食住は地元より良かったのかもしれません。

    2023年9月23日号

  • 有毒植物ヨウシュヤマゴボウ

    照井麻美(津南星空写真部)

     雨がほとんど降らなかった夏を乗り越え、稲刈りのシーズンに突入しました。最近では雨も少しずつ降るようになり、植物たちも元気を取り戻しているように思います。しかし、恵みの雨は雑草たちも元気にしてくれるので、庭や畑の草刈りも忙しくなります。
     そんな雑草の中にひときは食べられそうな実をつけた植物を紹介します。
     「インクベリー」ともよばれるこの植物は一般名を「ヨウシュヤマゴボウ」。北アメリカ原産の帰化植物で、ブルーベリーのような濃い紫色をしているのでご存じの方も多いかと思います。
     植物の根がゴボウに似ていることからヤマゴボウと名前についていますが、果実と根に有毒成分を含み誤って食べてしまうと、腹痛・ 嘔吐・下痢を起こし、ついで延髄に作用し、けいれんを起こして最悪の場合死に至る注意すべき植物のようです。(厚生労働省HP参照)
     雑草といって草刈り機などで刈り取ってしまえば、なんでもない植物ですが、庭や畑でも見回すと実は様々な植物が生えていることが分かります。
     今月29日は十五夜です。ススキがあればぜひ中秋の名月と一緒に季節を感じてください。

    2023年9月16日号

  • 高山鳥ホシガラス

    南雲敏夫

     漢字で書くと星烏と書きますが、確かに体の模様を見ると星空にも似ていますよね。
     近隣では小松原湿原や苗場山などに生息しており、湿原を歩いているとカラスと違ったガーガーと言う声が聞こえてくる事があります。これがホシガラスの鳴き声であまり綺麗な声ではありませんね。
     ハイマツ帯に多く見られますが、その下の亜高山帯のオオシラビソやコメツガなどの樹林帯にもその姿を見る事も多いです。
     主食はおもにハイマツの種やオオシラビソ、トウヒなどの裸子植物の種などを食べていますが、雑食性なので昆虫や鳥の卵なども餌にする事があります。
     種などが食べきれない時にはよく地面に埋めて貯蔵しますがホシガラスはとても記憶力が良くて地面に埋めた餌の場所はしっかりと覚えているそうです。
     しかし時には忘れる事もあるらしく、忘れた種から新しく森林を作る事もあります。ハイマツ帯によく見られますが繁殖は針葉樹林帯を選ぶそうです。

    2023年9月9日号