ドクササコ

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中沢 英正(県自然観察保護員)

 キノコは古くから利用されてきた食材である。栽培されることも多く、エノキ、シイタケ、マイタケなどは鍋物に欠かせない具材となっている。
 「食」あれば「毒」あるのがキノコの世界。数ある毒キノコの中で絶対に食べたくないのが「ドクササコ」だ。名前からして怪しさがプンプン臭う。
 摂取後の症状が特異だ。手足の末端が赤く腫れ、焼け火箸を押し付けたような激痛に襲われる(末端紅痛症)。恐ろしいのはその痛みが昼夜を問わず一か月ほども続くことである。痛みに耐えかね患部を冷水に浸けてみたがふやけてしまい指先の骨が露出したこともあったという。
 食べてから発症するまでの潜伏期間が一週間ほどと遅い。そのためキノコが原因とはわからず風土病や祟りではと恐れられてきた。
 一見食べられそうな姿が曲者。横から見るとラッパ形で、傘の中央が窪んでいたら要注意である。