さて前回、慢性疾患の予防や改善に口腔ケア、特に歯周病予防が大きく関係しているというお話を少ししました。今回はその続きです。
歯周病になると、まず歯肉から出血したり、歯肉が腫れたり、膿が出て口臭がするなどが起こります。さらに歯周病が進むと、歯肉が下がり歯が長く伸びたようになります。歯肉が下がると歯を支える土台の骨が溶け、歯と歯肉の間に歯周ポケットと呼ばれる溝ができ、食べ物が詰まりやすくなり、溝が深いために歯磨きなどできれいにしにくくなります。
出血した部分には細菌が集まり、血管内に細菌が侵入しやすくなります。細菌が侵入すると血管内に炎症が起き、炎症の修復のためにLDLコレステロールが血中で増加します。結果として、動脈硬化や心筋梗塞につながります。
朝、起きがけに水でも牛乳でも飲むと、口の中に増えた悪い菌を飲み込んでしまいます。腸の中から歯周病菌が見つかる人もいるそうです。もしも、腸の中に歯周病菌が入ってしまうことで腸内環境が悪くなってしまうのなら、さらに健康状態の悪化を引き起こしてしまうでしょう。
腸の環境が脳の状態に大きく関係することは以前お話しました。歯周病菌の中には免疫を抑制する働きのある物質を放出する菌もいると言われており、そのため、起きがけにうがいをするだけで、口の中に増えた菌は結構出せるということですし、風邪予防にもなるとのことです。是非お試しを。
たかき医院でおすすめしているメディカルアロマは、アロマオイルの薬効を利用した健康維持対策です。アロマオイルは皮膚に塗布した時に皮下の血管内にオイルの成分が入り、薬効が血液に乗って全身に回っていくことで効力を発揮します。 特に粘膜からの吸収が良いので、アロマオイル入りの歯磨き粉での歯磨きやマウスウォッシュは、口の中だけでなく全身の健康を保つために大いに威力を発揮します。アロマオイル入りの歯磨き粉を2年間継続して使ったことで、医師から明らかに脳の画像検査の結果が良くなって若返りましたね、と言われた人もいるとか。
第二次世界大戦の折、薬が不足したメディカルアロマの発祥の地フランスでは、消毒薬の代わりに抗菌作用の強いティートゥリーのアロマオイルを軍医さんが常備していたという話もあるように、ティートゥリーのアロマオイルで毎日うがいをしているという、とあるアロマの会社のスタッフの方たちは、今までだれ一人として新型コロナに感染していない、というくらい良い品質のアロマオイルは効果があります。
ティートゥリーのアロマオイルでのうがいは歯茎の腫れや口内炎にもおすすめです。お試ししたい方は、たかき医院で販売していますのでお声掛けください。
また、歯周病は、歯周病菌だけが原因でなく、喫煙、薬物、ストレスのほか、ホルモンバランスの変化、免疫反応などの基礎疾患も原因になります。
ということで次回は、女性ホルモンと歯周病についての関係をクローズアップします。次回まで待てないという方は是非お気軽にご相談を。(たかき医院・仲栄美子院長)
2024年9月7日号
「1㍉㌘中におよそ400~700種類、10億~1000億以上の細菌が存在して、あなたの健康を損なう危険性を作ります」。これは何を説明していると思いますか?
これは「プラーク」のことです。あなたの口の中に残った食べカスは食後8時間もすると、細菌が繁殖して歯の表面にまるでラップをかけたようにへばりつきプラークになります。プラークがへばりついてしまうと、うがい薬やマウスウォッシュではプラークの内部まで浸透することはできず、歯間ブラシや歯ブラシによって物理的にはがすしか手がありません。
さらに2014年にライオン㈱が行った調査によると、歯磨きなどで磨き残したプラークは一般に7割もあるといわれています。
プラークが石灰化してできる硬い塊が「歯石」。歯石になったプラークの中の細菌はだんだん数が増え、しかも歯石の中は酸素が少ないために酸素を嫌って育つ嫌気性菌が増えていきます。そこで増えた嫌気性菌が作り出す毒素によって、歯を支えている骨がダメージを受け、溶けてなくなっていくのが歯周病です。そして嫌気性菌が発生するガスが口臭になります。
私は乳歯から永久歯に生え変わる時に上の歯が前歯2本以外しばらく生えてこず、ビーバーのようでした。あまりに長い間生えてこないので口腔外科を受診して手術をし、そこから5年近く歯科矯正をしました。今から30年以上前、歯科矯正は保険ではできなかったため、相当なお金を親は私の歯にかけてくれていたのだと思います。
なので、歯は一生大事にしようと思い、とても大事にしていたつもりでした。でも、歯科矯正を終えてからは虫歯もできず歯のことで不具合が無かったために歯医者には通っていませんでした。
娘が生まれて3歳半健診。なんと健診の中に親子歯科検診があり、そこで「歯石がたまっている! 歯石は歯周病の原因ですからね!」とその時の担当の先生に厳しく言われて背中がゾーッとし、慌てて歯科に駆け込みました。なぜ、ゾーッとしたかというと、このまま放っておくとお金を賭けた歯が無くなってしまうかもという恐怖と、歯周病になれば様々な健康被害が出ることを知っていたからです。
厚生労働省の平成23年歯科疾患実態調査によると、30歳以上の成人の約80%が歯周病になっているともいわれています。歯周病は「サイレントディジーズ:静かなる病気」ともいわれ、重症化するまでは自覚症状がないまま慢性的な炎症が持続します。
炎症が持続することにより、全身にさまざまな影響を与えることが分かっています。たとえば、糖尿病、メタボリックシンドローム、自己免疫疾患、誤嚥性肺炎、心筋梗塞・動脈硬化、早産・低出生体重児、アルツハイマー病、がん、などです。 歯周病を治療すると、これらの疾患が改善するというのはよく知られた話です。もしかして、と思
われる方はまず口腔ケアをおすすめします。ということで、次回はもう少し歯周病について深堀していきます。女性ホルモンと歯周病も大いに関係があることもお伝えしますね。お楽しみに!
(たかき医院・仲栄美 子院長)
2024年8月24日号
ついに今月1日に梅雨明けして、急に暑くなり夏らしい天気が続いていますね。8月になって梅雨明けするのは4年ぶりらしいです。暑くなると冷たいものを飲みたくなりますよね。たかき医院の隣りにある喫茶店でも、コーヒーフロートやクリームソーダの注文が8月に入ってからは多いそうです。
小学校のころ、ごくたまに休日の午後に母がアイスカフェオレを作ってくれたのがとても楽しく美味しい思い出です。ですが、今その思い出から40年近く経ちコーヒーを飲むと、飲んでいる時は美味しいと思うのですが、数時間すると胸やけがしてしまうようになってしまいました。
なぜコーヒーを飲むと胸やけをするのでしょうか。食事の最後に珈琲が出てきますが、それはコーヒーが消化を促すための胃酸の分泌量を増やすからです。つまり胃酸が増えすぎると胃粘膜が刺激されて胸やけがする、というのが胸やけの理由の一つです。また、コーヒーに含まれているカフェインが食道と胃の境目の筋肉を緩める働きがあるため、胃酸が食道に逆流して胸やけがするというのがもう一つの理由になります。
私にとっては胸やけの原因になるコーヒーですが、およそ1千年ほど前から薬として飲まれていたのが始まりです。それもあってかコーヒーと健康については多くの研究がなされています。たとえば、コーヒーを習慣的に飲んでいる人の方が糖尿病になるリスクが低い、コーヒーによって子宮体がんや肝臓がんのリスクが低下する可能性がある、コーヒーを飲んでいる人では原因を問わないすべての死亡リスクが低下する、心疾患・脳血管疾患・呼吸器疾患による死亡リスクが低下する、などです。
また、1日の時間の中で座っている時間の長い人の方が心血管疾患での死亡のリスクが高いことが分かっていますが、中国の蘇州大学医学院の研究では、コーヒーを飲んでいると、座っている時間が長い人でも心血管疾患での死亡リスクが上がらないなどの結果が出てきていますし、オランダの研究ではコーヒーのカフェインや、コーヒーを飲むことで体内で作られる物質が神経を保護する働きを持ち、パーキンソン病リスクを低下させる可能性がある、という結果が出ています。
私が大学生の時に、試験前にカフェインの錠剤を飲んで眠気覚ましをしながら勉強をしていた男の子がいました。コーヒーは薬なんだ! と習慣的に過剰摂取をするとカフェイン依存症になって、頭痛・不安・吐き気・大量の発汗といったカフェインの血中濃度が下がることによる症状が出るようになります。カフェインは元気の前借りをしているだけなので、一度にとりすぎると後から反動で強い疲労なども感じるかもしれません。一日の摂取許容量は決まっていないのですが、とっても1日3~4杯にとどめておきましょうね。「過ぎたるは及ばざるがごとし」です!!
あとは、コーヒーに関わらず冷たいものをとりすぎるとお腹が痛くなりますので、気をつけてください。コーヒーを飲んでも元気の出ない人は是非お気軽にご相談くださいね。(たかき医院院長)
2024年8月10日号
「奇跡が起こる」瞬間に立ち会ったことはありますか? 奇跡とはいっても、自分がただ「そんなことあるわけない」と硬く信じ込んでいるだけで、人生には100%必ずということは絶対にない! ということを思い出させられる出来事が時に起こることを「奇跡」というのかもしれません。
ちょっと調べてみると、「奇跡(良いこと)が起こる前兆」というのがあり、それは①四ツ葉のクローバーを見つける ②流れ星を見る ③へびを見る ④鳥のフンが落ちてくる ⑤立て続けに物が壊れる ⑥雷が落ちるのを目撃する ⑦朝にクモを見る ⑧二重の虹を見る ⑨ゾロ目の数字をよく見る ⑩寝ても寝ても眠い ⑪嫌なことが続く ⑫イメチェンしたくなる、などだそうです。
最近たかき医院で、「奇跡のようだ!」とご本人だけでなくご家族まで喜んだお話があり、職員と一緒に感激したその話を今日は皆さんにお伝えします。
奇跡を起こした張本人は92歳の女性。少し前からその娘さんが、当院に設置している座るだけで骨盤底筋を鍛えられる器械にかかるために通院していました。この器械は約30分、週に1回程度6回座ると、骨盤底筋が鍛えられ尿漏れや頻尿が改善していくというものです。骨盤底筋だけでなくお尻や太ももの裏側の筋肉、インナーマッスルも一緒に鍛えてくれるので、ヒップアップや腰痛改善などの目的で使用される方もいます。娘さんが、とても良いのでお母さんにもかからせてあげたい、とある日連れてこられたのがきっかけでした。実はご本人さんは、背骨の圧迫骨折をして2ヵ月入院し、寝たきりになっていたことで歩けなくなり、リハビリをしても改善せず、自宅が高床式の3階建てだったこともあり、退院したら施設の入所を強く勧められたのだそうです。確かに、1回目に来た時は車から車椅子に移すのも2人がかり、車いすから器械に移すのも2人がかりでした。ところが、2回目に来た時、何かにつかまっていれば横歩きができるようになっており、車から玄関の中までは娘さんのサポートで歩いて入ってきました。3回目には車いすが全くいらないくらいに歩けるようになり、向かいに住んでいる娘さんが、ある朝チャイムが鳴るので出てみたら、ご本人さんが玄関先に立っていたという衝撃の事件があったそうです。足腰に自信がなくなってきたなと思っていて、自分にも奇跡の起きる瞬間を体験したい方は当院まで気軽にお問い合わせください。
最後にちょっと宣伝です! 今年9月28日、段十ろうにて、縄文の聖地「十日町」に「人生、心の豊かさ・美しさ」を伝える作家、アーティスト、ファッションデザイナーなど幅広い分野で活躍をする方々が集うイベントが開催されます。縄文をテーマに「新しい時代の豊かさ、美に触れる」ことで、このイベントでも間違いなく奇跡が起こることでしょう。「ヒラクハジマル」で検索してください。7月28日からウェブで、29日からは段十ろう窓口で予約開始になります。ぜひご参加くださいね。(たかき医院・仲栄美子院長)
子どもたちから災害に対する備えと意識をと十日町青年会議所やセーフネットぼうさい、十日町市社会福祉協議会がネットワークを組み、毎年管内の小中学校で開いている「越後妻有防災プログラム」。今年は水沢中で開き、生徒たちは防災学習や消火器操作、地震、豪雨など模擬体験した。
「自分の命は自分で守ろう」と防災学習の講義を受けた後、生徒たちは国交省・湯沢砂防事務所らの協力で用意された降雨体験装置や煙体験ハウス、土石流体感3Dシアターで災害を模擬体験。生徒たちは「普段からの災害の備えがいかに大切かを実感しました。今回の体験を防災にいかしていきたいです」などと話していた。
2024年7月20日号
最近このコラムを毎回切り抜いてとっています、とお声がけいただきました。本当にありがとうございます。今日は、新しい妊婦さん対象の予防接種のお知らせです。
現在すでに妊娠中に接種可能なワクチンのある感染症に、インフルエンザ、新型コロナ、百日咳などがありますが、今年1月18日に妊娠中に接種して「新生児及び乳児のRSウイルス感染症の重症化を予防する」ワクチンが登場しました。
RSウイルスの予防については、今までは重症化リスクのある児(早産児や先天性心疾患など基礎疾患のあるハイリスク児)に対してワクチン接種をしてきました。しかし、重症化リスクは基礎疾患のない正期産の子どもにもあり、しかも近年は流行の季節性もなく、現在RSウイルス感染症は乳児に限らず親にとっても極めて重要な疾病です。
RSウイルス感染症は5類感染症に指定されており、生後1歳までに50%以上が、2歳までにほぼ100%が初感染しますが、症状は熱や倦怠感などの風邪症状から上気道症状(鼻閉、鼻水、くしゃみ)、下気道症状(咳、呼吸困難、喘鳴)まで様々です。
成人にとっては鼻がグズグズする程度で済むことがほとんどですが、特に生後6ヵ月未満では重症化しやすく、肺炎、無呼吸、急性脳症なども引き起こします。
生後間もなくRSウィルスに感染した子どもは、その後に気管支喘息を生じるとの関係性も指摘されています。日本では、年間12~14万人の2歳未満の乳幼児がRSウイルス感染症と診断され、そのうち3万人が人院を要し、入院発生数は生後1~2ヵ月時点でピークとなり、人工呼吸器管理となる場合も多々あります。また、対症療法が基本で有効な治療薬はありません。そのため予防が重要です。
このワクチンを妊婦に接種することにより、RSウイルスに対する抗体が母体で作られ、そして抗体が胎盤を通じて胎児に移行することで、新生児および乳児におけるRSウイルスを原因とする下気道疾患を防ぐことができます。妊娠24週から36週の妊婦に1回筋肉内接種をします。ワクチンの効果は生後6ヵ月まで続きます。
残念ながら今はこのワクチンに対して公費補助が無いため、希望者に限り自費で接種する形となります。妊婦さんへの副反応としては、注射部位の疼痛くらいで、重篤な全身症状などはないとのことです。
新型コロナ感染症が2類から5類になり、今年は春から子どもたちを中心に様々な感染症が流行りました。そのうちの一つにRSウイルス感染症もありましたが、生後間もない赤ちゃんたちが今年は多く感染し、重症化して入院したという話を聞きました。
まず赤ちゃんが家族にいらっしゃるご家庭の方は、重症化のリスクが高い生後3ヵ月になるまで赤ちゃんには風邪を引かせないように慎重になってください。
大人のちょっとした風邪症状でも赤ちゃんにとっては命取りになる感染症かもしれません。上にお子さんのいる方は特に注意が必要です。心配な時はどうぞ妊娠中のRSワクチン接種をお考え下さいね。(たかき医院・仲栄美子院長)
2024年7月6日号
「新潟で雪が降っている匂いがする」。埼玉で大学時代を過ごしていた私が、雪国育ちなんだなぁと実感した瞬間でした。私が過ごしていた埼玉は、最寄り駅には数時間に1本ディーゼル車が通り、森の中の神社の境内で流鏑馬が行われるような所でした。
でも、田舎といえどそこは埼玉、年に数回しか降らない雪にみんなてんてこまいでした。そこにいると、はっきりと新潟で雪が降っている匂いが分かるのです。十日町から離れて初めて知った感覚でした。そして、「今日は雪」という天気予報で心配している同級生に「大丈夫、降らないよ。雪になる匂いがしないもん」と言って当てるため、びっくりされたものでした。
最近自分が元気でいるため、そして自分を忘れないために何が必要かを考えたとき、自分の五感を刺激することが重要ではないかと思いました。
まず視覚(見る)。意識的に見るのです。自分の好きなもの、美しいと感じるもの、そこに多くの色彩とそれを輝かせる光があることを脳みそ全体で感じます。
そして聴覚(聴く)。早朝散歩がマイブームの私は、あえて車通りの無い方へ向かいます。靴底が土をとらえる音、木々の梢を風が揺らす音、田んぼに引かれる水の流れる音、鳥のさえずり、大きな欅の木の声など。静寂すらそれも音。外に出る時はイヤホンで音楽を聴かないのが私は好きです。
味覚(味わう)。長年の癖で早食いになってしまうので、ひとりでご飯を食べる時ほどゆっくりと味わって食べたいと思っています。
嗅覚(嗅ぐ)。職場の同僚がある日、「玄関を出てクサッ! と思ったら、栗の花がすごかった」と。自分が感じ切れていない匂いはまだまだあるのだなと思いました。四季を感じる匂い、これを読んでいる皆さんの方がたくさん知っているのではないでしょうか。
触覚(皮膚で感じる)。私は「土に触れる」、これをしたいがために田舎に戻ってきたと言っても良いくらいです。昨日、今年初めて我が家の猫の額ほどの家庭菜園できゅうりの収穫をしました!やったー。
米国のある博士が仏教の瞑想を医療の分野に持ち込み、宗教的要素を取り除いて科学的に効果を実証させたものに、マインドフルネスがあります。マインドフルネスにはレーズンを食べる瞑想があるのですが、手の上の一粒のレーズンを見て耳元で音を聴いて匂いを嗅いで唇で触って、そして口に入れしばらく舌の上で転がした後に噛むのです。(一口で食べられるものなら何でもよく、甘納豆や焼き甘栗などで代用可)。
レーズンがどんなところでどんな人の想いで作られ自分のところにやってくる過程を想像し、また自然の恵みに感謝する気持ちを巡らす、そうすると幸福感で満たされる、と。
まさに五感を刺激する食べ方です。一粒食べきるのに最低10分はかかるでしょう。たかき医院にも五感を刺激する工夫が沢山あります。診察が無くても是非体と心を休めにお立ち寄りください。
(たかき医院・仲栄美子院長)
2024年6月22日号
「泣きながら歯を食いしばってなんてしていません。毎日笑いながらやっています」。先月、全国の産婦人科医が一堂に集まる日本産婦人科学会に行って来ました。今回、学会内の特別プログラムとして辻井伸行さんのピアノコンサートがあると聞き、こんな機会は無いと自分の休診を利用して、主にコンサートに参加してきました。
コンサートは圧巻! 久しぶりにライブ演奏を聴いたというのもあるのでしょう。彼作曲のオリジナル曲から、よく知られているクラシックの曲まで、60分という短い時間の中でトークを交え、立て続けに10曲近く演奏してくださいました。あまりに感激して、しばらくの間YouTubeなどでプログラムにあったピアノ曲を何度も何度も聴きました。
なぜ辻井伸行さんが学会でピアノコンサートを演奏して下さったかというと、彼のおじいさん、おじさん、お父さんは産婦人科医なのです。そのつながりで出演依頼があり、今回のコンサート開催に至ったのだと思います。
コンサートに先立ち、会場にお父さんからの挨拶動画が流れました。自分の結婚から辻井伸行さんの誕生、目が見えないと分かった時、音楽が好きでおもちゃのピアノを与えたら、3歳でお母さんの歌うジングルベルに合わせて伴奏を弾いたこと、そこからピアノの道へ、などのお話をお聞きしました。
その話の中で以前取材に来た記者さんが「歯を食いしばって1日に何時間も血へどを吐くような練習をされているのでしょうね?」と聞いてきた時に、お父さんが「1日に8時間も練習していますが、彼がそんな苦しい様子で練習している様子は、一度も見たこと無いですよ」と冒頭の話をしたとか。このお父さんの言葉はとても印象に残りました。
私は、先月4月より院長に就任し、毎週木曜日は魚沼基幹病院より経験豊かな先生方と一緒に仕事を、さらに月に一度は週末には新潟大学病院からの先生をお招きして仕事のサポートをお願いすることになりました。
私が過労でたかき医院を続けられなくなり、地域のお産できる病院を一つ潰してしまわない様にとの各方面からのご配慮です。
気が小さい私は、どんな毎日になるのだろうかと、4月初めは原因の分からない胃の痛みに苛まれましたが、始まって見れば外部からいらっしゃる先生方に最新の医療技術のお話を聞いたり、患者様のことで気軽に相談出来たりと良いことばかりでした。
特に基幹病院の先生方は優しく丁寧な先生ばかりで安心しました。患者様もわざわざ峠を越えなくても専門的な診療が受けられ、手術の相談やセカンドオピニオンなどが自宅近くで出来ることになったので、本当に良かったのではないかと思っています。
3重苦のヘレン・ケラーの生前の言葉に「友達がいれば、毎日世界は変わります」があります。引っ込み思案な私ですが、新たな扉を開けてたくさんの方と知り合い、その手を借りながら毎日楽しく仕事を続けていきたいと思っています。
ぜひその手を貸してくださるという方は、たかき医院の健闘を「産声を上げた働き方改革~医療現場のジレンマ~」、NST新潟総合テレビ5月25日午後2時からのドキュメンタリー番組でご覧ください! (たかき医院・仲栄美子院長)
2024年5月25日号
春ですね。ゴールデンウィークも良い天気で、少し暑いくらいでしたが、本当に気持ちの良いお休みを過ごしました。これだけ天気が良いとウキウキしてきて、どこかに出かけたくなりますよね。
そんな春といえば、前回は木の芽どきの話をしました。今回は「春は変質者や不審者が増える」とよく聞きますが、本当のことなのか、について。 私が小学生の頃(すでに時は35~40年昔にさかのぼりますが)は、春先には県外ナンバーの「当たり屋」に気をつけろ、という話をたびたび耳にしたことがあったように記憶しています。
さて、「不審者」という定義を「痴漢、露出、声掛け、つきまとい、盗撮、のぞき、暴行、強迫、危険物所持など」とした場合に、とある会社が警察からの情報をもとに分析を行ったところ、やはり4~5月から不審者情報の報告数が増加し始めるのが分かったそうです。理由としては、不審者も春はお出かけ気分になるからなのではないか、とか。
ちなみに、春の時期に見られる「不審者からの声掛け」のパターンとしては、「何歳? 何年生?」「お母さんが病院に運ばれた。今すぐ来て。いいから来て」「お母さんが死んじゃった。お父さんは会社にいるから乗って」「さわってくれたら、100円上げる。」「パンツの色は何色?」「トイレについてきて」「一緒に写真を撮ろう/写真を撮ってもいい?」「お菓子をあげるからおいで」「(お金を支払うから)下半身を見てほしい」だそうです。十日町市内でもここ数年、写真を撮る不審者がたびたび目撃されていますが、特に春は注意が必要なのかもしれません。
この原稿を書くために小学生の娘に不審者の話をしていたら、「『いかのおすし』だよ!」と自慢げに鼻を鳴らしながら教えてくれたので、小さなお子さんのいらっしゃる方はもうとっくに知っておられるかと思いますが、あげておきますね。
〇知らない人にはついて「いか」ない
〇声をかけられても車には「の」らない
〇知らない人に連れていかれそうになったら「お」おごえを出す
〇声をかけられたり追いかけられたりしたら「す」ぐに逃げる
〇怖いことにあったり見たりしたら、すぐに大人に「し」らせる
これが『いかのおすし』です。若干無理やりな感じもしますが、頭のどこかに入れていただいて、お子さんと一緒にそのつど声に出して復唱してくださいね。
以前埼玉に住んでいたころですが、ファミレスに友人と入ったときにパソコンをうっかり車の中に置いていってしまったところ、鍵を開けられパソコンを盗まれるという災難に遭いました。ウキウキしているとうっかりが生じます。
大事なものからは手を離さないようにお気を付けください。そしてうっかりといえば、病院受診の際は保険証を持って出たか、保険証の有効期限は大丈夫か、を必ず確認してくださいね。(たかき医院・仲栄美子院長)
2024年5月11日号
先週は市内のあちこちの桜が満開で、春が来たな~と気温の上昇と共に心も温かくなりました。我が家の玄関先にある、いつからか根付いたのか分からないアケビの木からも木の芽が伸びてそろそろ収穫を迎えます。
この時期まさに『木(こ)の芽どき』といいます。正確には立春から春分までの期間を指します。ざっくりいうなら、この冬から春にかけての季節の変わり目は気温の変化が大きく体調を崩しやすい時期のため、昔の人たちは代々、病気に注意するよう言い伝えてきたわけです。
春先はなんだか眠くて仕方がない、天気は良いのに布団から出るのが億劫で「春眠暁を覚えず」という方も多いのではないでしょうか。これも季節の変わり目で気圧や気温の大きな変化が大きく、自律神経のバランスを乱すためです。
春先は自律神経のうち、体を休めるための副交感神経の方が、活発に動くための交感神経より働きが強まるため、眠気が強まるのです。また、気圧や湿度の関係で頭痛を感じやすくなりますので、外来診療をしていても、頭痛薬をくださいと言われる方が多いのは確かです。
そして気持ちが落ち込むなどの症状を訴える方も増えてきますので、もともとメンタル不調をお持ちの方は、あえて調子が良くても薬の変更は延期するなど注意が必要です。
この気持ちの面での不調は、季節の変わり目の気候の大きな変動が影響するだけでなく、転居、転勤、異動、入学、就職などの環境の変化も大きく影響をします。気持ちの不調が体調の不調症状を引き起こす方もいます。
ですので、これからやってくるゴールデンウィークは天気も良く家族や友人が出かけようとお誘いをかけてくるかもしれませんが、気持ちが乗らない時には体も心も疲れている証拠ですので、勇気をもって断って自宅でしっかり休む、自分の気持ちに素直に行動する、ということを大事にしていただきたいと思います。
というのも、この『木の芽どき』にかかった負担をそのままにしておくと、ゴールデンウィークが終わった5月にうつ病に進んでしまうことがあります。いわゆる『5月病』です。なので、今この時期に頑張りすぎない、我慢しすぎない、自分がリラックスできる時間をなるべく持つ、ということはとても大事なのです。
特に「~しなくちゃ」を口にしたり考えてしまった人は、その言葉を思い浮かべた時点で自分にかなり負担がかかっていると気づいて欲しいなと思います。
あとは何度もお話したことがありますが、うつ病にならないために大事なことは「つながること」です。信頼できる人に自分のつらい気持ちを伝えること、もしくは病院などを受診して相談するのも良いでしょう。
眠れない、寝てもすぐ目が覚める、食欲がない、食べ物を美味しいと感じない、笑うことが無くなった、楽しみを見つけられない、人に会うのが億劫、そんなことが少しでもあったら早めにお気軽にご相談くださいね。
(たかき医院・仲栄美子院長)
2024年4月20日号
実家の十日町市に戻ってきてから、母のやっていた講演会活動を引き継いで、かれこれ16年目に入ります。最近、中学校で性のお話講演会をさせていただくときに、この質問よく受けるなあというものがあります。それは、「必ず結婚しないとダメですか?」「子どもを産まないとダメですか?」です。
先月2月27日に厚生労働省は人口動態統計の速報値を公表し、それによると2023年の出生数は過去最少の75万8631人(前年比マイナス1万116人)で、 婚姻件数も戦後初めて50万組を下回り、48万9281組となったとのこと。これは国立社会保障・人口問題研究所の推計より、およそ12年早いペースで少子化が進んでいるということなのだとか。16年前にちょうど「草食系男子」ということばが流行語大賞になりましたが、今の様子は草食系を通り越して「絶食系」に近いともいえます。
性のお話講演会は全国的に、以前は怖がらせて安易な性行為はやめさせよう、といった傾向が強かったのですが、最近は少子化を少しでも解消するために、「なるべく子どもを産みたいと思う話をしよう!」という風潮になっているようです。でもどうして既に中学生たちは、その年齢で「結婚したくない」「子どもを産みたくない」と思っているのでしょうか?
『SRHR』という言葉を知っていますか。英語のSexual and Reprod
uctive Health and Rightsの頭文字をとったもので、日本語では、「性と生殖に関する健康と権利」と訳されます。具体的に言うと、Sexual Health(性の健康)=自分の「性」に関することについて、心身ともに満たされて幸せを感じられ、またその状態を社会的にも認められていること。Reproductive Health(生殖の健康)=妊娠したい人、妊娠したくない人、産む・産まないに興味も関心もない人、アセクシャルな人(無性愛、非性愛の人)問わず、心身ともに満たされ健康にいられること。Sexual Rights(性の権利)=セクシュアリティ「性」を、自分で決められる権利のこと。自分の愛する人、自分のプライバシー、自分の性的な快楽、自分の性のあり方(男か女かそのどちらでもないか)を自分で決められる権利のこと。Reproductive Rights(生殖の権利)=産むか産まないか、いつ・何人子どもを持つかを自分で決める権利。妊娠、出産、中絶について十分な情報を得られ、「生殖」に関するすべてのことを自分で決められる権利のこと、です。また、これらの権利は、『生まれながらに持つべき権利(人権)』であり、どう人生設計するのかは個人個人が決めたらよいことではあるが、そのためには十分な情報を各自がしっかりと得る必要があることも明記されています。
3月8日は国際女性デーでもありました。それにちなんで『SRHR』についてタレントのIMALUさんが中心になってやっているYouTube番組「ハダカベヤ」に出させていただきました。もし良かったら、3月25日から公開されていますので見てみてくださいね!
「結局は未来の産んだ子どもの生活に不安があるから産まないんだよ」という意見でその場にいた友人たちがみんな納得したんだよと教えてくださった方がいます。中学生たちも同じなのでしょうか? 何が不安なのか、なぜこれから子どもを産む年齢の若い人たちがそう思うのかをもっと政府が汲み取らなければ、とても少子化は解決しそうにありません。私も講演活動を通じて、今後そのあたりを追求していきたいと思います。(たかき医院・仲栄美子医師)
2024年3月30日号
さて前回、慢性疾患の予防や改善に口腔ケア、特に歯周病予防が大きく関係しているというお話を少ししました。今回はその続きです。
歯周病になると、まず歯肉から出血したり、歯肉が腫れたり、膿が出て口臭がするなどが起こります。さらに歯周病が進むと、歯肉が下がり歯が長く伸びたようになります。歯肉が下がると歯を支える土台の骨が溶け、歯と歯肉の間に歯周ポケットと呼ばれる溝ができ、食べ物が詰まりやすくなり、溝が深いために歯磨きなどできれいにしにくくなります。
出血した部分には細菌が集まり、血管内に細菌が侵入しやすくなります。細菌が侵入すると血管内に炎症が起き、炎症の修復のためにLDLコレステロールが血中で増加します。結果として、動脈硬化や心筋梗塞につながります。
朝、起きがけに水でも牛乳でも飲むと、口の中に増えた悪い菌を飲み込んでしまいます。腸の中から歯周病菌が見つかる人もいるそうです。もしも、腸の中に歯周病菌が入ってしまうことで腸内環境が悪くなってしまうのなら、さらに健康状態の悪化を引き起こしてしまうでしょう。
腸の環境が脳の状態に大きく関係することは以前お話しました。歯周病菌の中には免疫を抑制する働きのある物質を放出する菌もいると言われており、そのため、起きがけにうがいをするだけで、口の中に増えた菌は結構出せるということですし、風邪予防にもなるとのことです。是非お試しを。
たかき医院でおすすめしているメディカルアロマは、アロマオイルの薬効を利用した健康維持対策です。アロマオイルは皮膚に塗布した時に皮下の血管内にオイルの成分が入り、薬効が血液に乗って全身に回っていくことで効力を発揮します。 特に粘膜からの吸収が良いので、アロマオイル入りの歯磨き粉での歯磨きやマウスウォッシュは、口の中だけでなく全身の健康を保つために大いに威力を発揮します。アロマオイル入りの歯磨き粉を2年間継続して使ったことで、医師から明らかに脳の画像検査の結果が良くなって若返りましたね、と言われた人もいるとか。
第二次世界大戦の折、薬が不足したメディカルアロマの発祥の地フランスでは、消毒薬の代わりに抗菌作用の強いティートゥリーのアロマオイルを軍医さんが常備していたという話もあるように、ティートゥリーのアロマオイルで毎日うがいをしているという、とあるアロマの会社のスタッフの方たちは、今までだれ一人として新型コロナに感染していない、というくらい良い品質のアロマオイルは効果があります。
ティートゥリーのアロマオイルでのうがいは歯茎の腫れや口内炎にもおすすめです。お試ししたい方は、たかき医院で販売していますのでお声掛けください。
また、歯周病は、歯周病菌だけが原因でなく、喫煙、薬物、ストレスのほか、ホルモンバランスの変化、免疫反応などの基礎疾患も原因になります。
ということで次回は、女性ホルモンと歯周病についての関係をクローズアップします。次回まで待てないという方は是非お気軽にご相談を。(たかき医院・仲栄美子院長)
2024年9月7日号
「1㍉㌘中におよそ400~700種類、10億~1000億以上の細菌が存在して、あなたの健康を損なう危険性を作ります」。これは何を説明していると思いますか?
これは「プラーク」のことです。あなたの口の中に残った食べカスは食後8時間もすると、細菌が繁殖して歯の表面にまるでラップをかけたようにへばりつきプラークになります。プラークがへばりついてしまうと、うがい薬やマウスウォッシュではプラークの内部まで浸透することはできず、歯間ブラシや歯ブラシによって物理的にはがすしか手がありません。
さらに2014年にライオン㈱が行った調査によると、歯磨きなどで磨き残したプラークは一般に7割もあるといわれています。
プラークが石灰化してできる硬い塊が「歯石」。歯石になったプラークの中の細菌はだんだん数が増え、しかも歯石の中は酸素が少ないために酸素を嫌って育つ嫌気性菌が増えていきます。そこで増えた嫌気性菌が作り出す毒素によって、歯を支えている骨がダメージを受け、溶けてなくなっていくのが歯周病です。そして嫌気性菌が発生するガスが口臭になります。
私は乳歯から永久歯に生え変わる時に上の歯が前歯2本以外しばらく生えてこず、ビーバーのようでした。あまりに長い間生えてこないので口腔外科を受診して手術をし、そこから5年近く歯科矯正をしました。今から30年以上前、歯科矯正は保険ではできなかったため、相当なお金を親は私の歯にかけてくれていたのだと思います。
なので、歯は一生大事にしようと思い、とても大事にしていたつもりでした。でも、歯科矯正を終えてからは虫歯もできず歯のことで不具合が無かったために歯医者には通っていませんでした。
娘が生まれて3歳半健診。なんと健診の中に親子歯科検診があり、そこで「歯石がたまっている! 歯石は歯周病の原因ですからね!」とその時の担当の先生に厳しく言われて背中がゾーッとし、慌てて歯科に駆け込みました。なぜ、ゾーッとしたかというと、このまま放っておくとお金を賭けた歯が無くなってしまうかもという恐怖と、歯周病になれば様々な健康被害が出ることを知っていたからです。
厚生労働省の平成23年歯科疾患実態調査によると、30歳以上の成人の約80%が歯周病になっているともいわれています。歯周病は「サイレントディジーズ:静かなる病気」ともいわれ、重症化するまでは自覚症状がないまま慢性的な炎症が持続します。
炎症が持続することにより、全身にさまざまな影響を与えることが分かっています。たとえば、糖尿病、メタボリックシンドローム、自己免疫疾患、誤嚥性肺炎、心筋梗塞・動脈硬化、早産・低出生体重児、アルツハイマー病、がん、などです。 歯周病を治療すると、これらの疾患が改善するというのはよく知られた話です。もしかして、と思
われる方はまず口腔ケアをおすすめします。ということで、次回はもう少し歯周病について深堀していきます。女性ホルモンと歯周病も大いに関係があることもお伝えしますね。お楽しみに!
(たかき医院・仲栄美 子院長)
2024年8月24日号
ついに今月1日に梅雨明けして、急に暑くなり夏らしい天気が続いていますね。8月になって梅雨明けするのは4年ぶりらしいです。暑くなると冷たいものを飲みたくなりますよね。たかき医院の隣りにある喫茶店でも、コーヒーフロートやクリームソーダの注文が8月に入ってからは多いそうです。
小学校のころ、ごくたまに休日の午後に母がアイスカフェオレを作ってくれたのがとても楽しく美味しい思い出です。ですが、今その思い出から40年近く経ちコーヒーを飲むと、飲んでいる時は美味しいと思うのですが、数時間すると胸やけがしてしまうようになってしまいました。
なぜコーヒーを飲むと胸やけをするのでしょうか。食事の最後に珈琲が出てきますが、それはコーヒーが消化を促すための胃酸の分泌量を増やすからです。つまり胃酸が増えすぎると胃粘膜が刺激されて胸やけがする、というのが胸やけの理由の一つです。また、コーヒーに含まれているカフェインが食道と胃の境目の筋肉を緩める働きがあるため、胃酸が食道に逆流して胸やけがするというのがもう一つの理由になります。
私にとっては胸やけの原因になるコーヒーですが、およそ1千年ほど前から薬として飲まれていたのが始まりです。それもあってかコーヒーと健康については多くの研究がなされています。たとえば、コーヒーを習慣的に飲んでいる人の方が糖尿病になるリスクが低い、コーヒーによって子宮体がんや肝臓がんのリスクが低下する可能性がある、コーヒーを飲んでいる人では原因を問わないすべての死亡リスクが低下する、心疾患・脳血管疾患・呼吸器疾患による死亡リスクが低下する、などです。
また、1日の時間の中で座っている時間の長い人の方が心血管疾患での死亡のリスクが高いことが分かっていますが、中国の蘇州大学医学院の研究では、コーヒーを飲んでいると、座っている時間が長い人でも心血管疾患での死亡リスクが上がらないなどの結果が出てきていますし、オランダの研究ではコーヒーのカフェインや、コーヒーを飲むことで体内で作られる物質が神経を保護する働きを持ち、パーキンソン病リスクを低下させる可能性がある、という結果が出ています。
私が大学生の時に、試験前にカフェインの錠剤を飲んで眠気覚ましをしながら勉強をしていた男の子がいました。コーヒーは薬なんだ! と習慣的に過剰摂取をするとカフェイン依存症になって、頭痛・不安・吐き気・大量の発汗といったカフェインの血中濃度が下がることによる症状が出るようになります。カフェインは元気の前借りをしているだけなので、一度にとりすぎると後から反動で強い疲労なども感じるかもしれません。一日の摂取許容量は決まっていないのですが、とっても1日3~4杯にとどめておきましょうね。「過ぎたるは及ばざるがごとし」です!!
あとは、コーヒーに関わらず冷たいものをとりすぎるとお腹が痛くなりますので、気をつけてください。コーヒーを飲んでも元気の出ない人は是非お気軽にご相談くださいね。(たかき医院院長)
2024年8月10日号
「奇跡が起こる」瞬間に立ち会ったことはありますか? 奇跡とはいっても、自分がただ「そんなことあるわけない」と硬く信じ込んでいるだけで、人生には100%必ずということは絶対にない! ということを思い出させられる出来事が時に起こることを「奇跡」というのかもしれません。
ちょっと調べてみると、「奇跡(良いこと)が起こる前兆」というのがあり、それは①四ツ葉のクローバーを見つける ②流れ星を見る ③へびを見る ④鳥のフンが落ちてくる ⑤立て続けに物が壊れる ⑥雷が落ちるのを目撃する ⑦朝にクモを見る ⑧二重の虹を見る ⑨ゾロ目の数字をよく見る ⑩寝ても寝ても眠い ⑪嫌なことが続く ⑫イメチェンしたくなる、などだそうです。
最近たかき医院で、「奇跡のようだ!」とご本人だけでなくご家族まで喜んだお話があり、職員と一緒に感激したその話を今日は皆さんにお伝えします。
奇跡を起こした張本人は92歳の女性。少し前からその娘さんが、当院に設置している座るだけで骨盤底筋を鍛えられる器械にかかるために通院していました。この器械は約30分、週に1回程度6回座ると、骨盤底筋が鍛えられ尿漏れや頻尿が改善していくというものです。骨盤底筋だけでなくお尻や太ももの裏側の筋肉、インナーマッスルも一緒に鍛えてくれるので、ヒップアップや腰痛改善などの目的で使用される方もいます。娘さんが、とても良いのでお母さんにもかからせてあげたい、とある日連れてこられたのがきっかけでした。実はご本人さんは、背骨の圧迫骨折をして2ヵ月入院し、寝たきりになっていたことで歩けなくなり、リハビリをしても改善せず、自宅が高床式の3階建てだったこともあり、退院したら施設の入所を強く勧められたのだそうです。確かに、1回目に来た時は車から車椅子に移すのも2人がかり、車いすから器械に移すのも2人がかりでした。ところが、2回目に来た時、何かにつかまっていれば横歩きができるようになっており、車から玄関の中までは娘さんのサポートで歩いて入ってきました。3回目には車いすが全くいらないくらいに歩けるようになり、向かいに住んでいる娘さんが、ある朝チャイムが鳴るので出てみたら、ご本人さんが玄関先に立っていたという衝撃の事件があったそうです。足腰に自信がなくなってきたなと思っていて、自分にも奇跡の起きる瞬間を体験したい方は当院まで気軽にお問い合わせください。
最後にちょっと宣伝です! 今年9月28日、段十ろうにて、縄文の聖地「十日町」に「人生、心の豊かさ・美しさ」を伝える作家、アーティスト、ファッションデザイナーなど幅広い分野で活躍をする方々が集うイベントが開催されます。縄文をテーマに「新しい時代の豊かさ、美に触れる」ことで、このイベントでも間違いなく奇跡が起こることでしょう。「ヒラクハジマル」で検索してください。7月28日からウェブで、29日からは段十ろう窓口で予約開始になります。ぜひご参加くださいね。(たかき医院・仲栄美子院長)
子どもたちから災害に対する備えと意識をと十日町青年会議所やセーフネットぼうさい、十日町市社会福祉協議会がネットワークを組み、毎年管内の小中学校で開いている「越後妻有防災プログラム」。今年は水沢中で開き、生徒たちは防災学習や消火器操作、地震、豪雨など模擬体験した。
「自分の命は自分で守ろう」と防災学習の講義を受けた後、生徒たちは国交省・湯沢砂防事務所らの協力で用意された降雨体験装置や煙体験ハウス、土石流体感3Dシアターで災害を模擬体験。生徒たちは「普段からの災害の備えがいかに大切かを実感しました。今回の体験を防災にいかしていきたいです」などと話していた。
2024年7月20日号
最近このコラムを毎回切り抜いてとっています、とお声がけいただきました。本当にありがとうございます。今日は、新しい妊婦さん対象の予防接種のお知らせです。
現在すでに妊娠中に接種可能なワクチンのある感染症に、インフルエンザ、新型コロナ、百日咳などがありますが、今年1月18日に妊娠中に接種して「新生児及び乳児のRSウイルス感染症の重症化を予防する」ワクチンが登場しました。
RSウイルスの予防については、今までは重症化リスクのある児(早産児や先天性心疾患など基礎疾患のあるハイリスク児)に対してワクチン接種をしてきました。しかし、重症化リスクは基礎疾患のない正期産の子どもにもあり、しかも近年は流行の季節性もなく、現在RSウイルス感染症は乳児に限らず親にとっても極めて重要な疾病です。
RSウイルス感染症は5類感染症に指定されており、生後1歳までに50%以上が、2歳までにほぼ100%が初感染しますが、症状は熱や倦怠感などの風邪症状から上気道症状(鼻閉、鼻水、くしゃみ)、下気道症状(咳、呼吸困難、喘鳴)まで様々です。
成人にとっては鼻がグズグズする程度で済むことがほとんどですが、特に生後6ヵ月未満では重症化しやすく、肺炎、無呼吸、急性脳症なども引き起こします。
生後間もなくRSウィルスに感染した子どもは、その後に気管支喘息を生じるとの関係性も指摘されています。日本では、年間12~14万人の2歳未満の乳幼児がRSウイルス感染症と診断され、そのうち3万人が人院を要し、入院発生数は生後1~2ヵ月時点でピークとなり、人工呼吸器管理となる場合も多々あります。また、対症療法が基本で有効な治療薬はありません。そのため予防が重要です。
このワクチンを妊婦に接種することにより、RSウイルスに対する抗体が母体で作られ、そして抗体が胎盤を通じて胎児に移行することで、新生児および乳児におけるRSウイルスを原因とする下気道疾患を防ぐことができます。妊娠24週から36週の妊婦に1回筋肉内接種をします。ワクチンの効果は生後6ヵ月まで続きます。
残念ながら今はこのワクチンに対して公費補助が無いため、希望者に限り自費で接種する形となります。妊婦さんへの副反応としては、注射部位の疼痛くらいで、重篤な全身症状などはないとのことです。
新型コロナ感染症が2類から5類になり、今年は春から子どもたちを中心に様々な感染症が流行りました。そのうちの一つにRSウイルス感染症もありましたが、生後間もない赤ちゃんたちが今年は多く感染し、重症化して入院したという話を聞きました。
まず赤ちゃんが家族にいらっしゃるご家庭の方は、重症化のリスクが高い生後3ヵ月になるまで赤ちゃんには風邪を引かせないように慎重になってください。
大人のちょっとした風邪症状でも赤ちゃんにとっては命取りになる感染症かもしれません。上にお子さんのいる方は特に注意が必要です。心配な時はどうぞ妊娠中のRSワクチン接種をお考え下さいね。(たかき医院・仲栄美子院長)
2024年7月6日号
「新潟で雪が降っている匂いがする」。埼玉で大学時代を過ごしていた私が、雪国育ちなんだなぁと実感した瞬間でした。私が過ごしていた埼玉は、最寄り駅には数時間に1本ディーゼル車が通り、森の中の神社の境内で流鏑馬が行われるような所でした。
でも、田舎といえどそこは埼玉、年に数回しか降らない雪にみんなてんてこまいでした。そこにいると、はっきりと新潟で雪が降っている匂いが分かるのです。十日町から離れて初めて知った感覚でした。そして、「今日は雪」という天気予報で心配している同級生に「大丈夫、降らないよ。雪になる匂いがしないもん」と言って当てるため、びっくりされたものでした。
最近自分が元気でいるため、そして自分を忘れないために何が必要かを考えたとき、自分の五感を刺激することが重要ではないかと思いました。
まず視覚(見る)。意識的に見るのです。自分の好きなもの、美しいと感じるもの、そこに多くの色彩とそれを輝かせる光があることを脳みそ全体で感じます。
そして聴覚(聴く)。早朝散歩がマイブームの私は、あえて車通りの無い方へ向かいます。靴底が土をとらえる音、木々の梢を風が揺らす音、田んぼに引かれる水の流れる音、鳥のさえずり、大きな欅の木の声など。静寂すらそれも音。外に出る時はイヤホンで音楽を聴かないのが私は好きです。
味覚(味わう)。長年の癖で早食いになってしまうので、ひとりでご飯を食べる時ほどゆっくりと味わって食べたいと思っています。
嗅覚(嗅ぐ)。職場の同僚がある日、「玄関を出てクサッ! と思ったら、栗の花がすごかった」と。自分が感じ切れていない匂いはまだまだあるのだなと思いました。四季を感じる匂い、これを読んでいる皆さんの方がたくさん知っているのではないでしょうか。
触覚(皮膚で感じる)。私は「土に触れる」、これをしたいがために田舎に戻ってきたと言っても良いくらいです。昨日、今年初めて我が家の猫の額ほどの家庭菜園できゅうりの収穫をしました!やったー。
米国のある博士が仏教の瞑想を医療の分野に持ち込み、宗教的要素を取り除いて科学的に効果を実証させたものに、マインドフルネスがあります。マインドフルネスにはレーズンを食べる瞑想があるのですが、手の上の一粒のレーズンを見て耳元で音を聴いて匂いを嗅いで唇で触って、そして口に入れしばらく舌の上で転がした後に噛むのです。(一口で食べられるものなら何でもよく、甘納豆や焼き甘栗などで代用可)。
レーズンがどんなところでどんな人の想いで作られ自分のところにやってくる過程を想像し、また自然の恵みに感謝する気持ちを巡らす、そうすると幸福感で満たされる、と。
まさに五感を刺激する食べ方です。一粒食べきるのに最低10分はかかるでしょう。たかき医院にも五感を刺激する工夫が沢山あります。診察が無くても是非体と心を休めにお立ち寄りください。
(たかき医院・仲栄美子院長)
2024年6月22日号
「泣きながら歯を食いしばってなんてしていません。毎日笑いながらやっています」。先月、全国の産婦人科医が一堂に集まる日本産婦人科学会に行って来ました。今回、学会内の特別プログラムとして辻井伸行さんのピアノコンサートがあると聞き、こんな機会は無いと自分の休診を利用して、主にコンサートに参加してきました。
コンサートは圧巻! 久しぶりにライブ演奏を聴いたというのもあるのでしょう。彼作曲のオリジナル曲から、よく知られているクラシックの曲まで、60分という短い時間の中でトークを交え、立て続けに10曲近く演奏してくださいました。あまりに感激して、しばらくの間YouTubeなどでプログラムにあったピアノ曲を何度も何度も聴きました。
なぜ辻井伸行さんが学会でピアノコンサートを演奏して下さったかというと、彼のおじいさん、おじさん、お父さんは産婦人科医なのです。そのつながりで出演依頼があり、今回のコンサート開催に至ったのだと思います。
コンサートに先立ち、会場にお父さんからの挨拶動画が流れました。自分の結婚から辻井伸行さんの誕生、目が見えないと分かった時、音楽が好きでおもちゃのピアノを与えたら、3歳でお母さんの歌うジングルベルに合わせて伴奏を弾いたこと、そこからピアノの道へ、などのお話をお聞きしました。
その話の中で以前取材に来た記者さんが「歯を食いしばって1日に何時間も血へどを吐くような練習をされているのでしょうね?」と聞いてきた時に、お父さんが「1日に8時間も練習していますが、彼がそんな苦しい様子で練習している様子は、一度も見たこと無いですよ」と冒頭の話をしたとか。このお父さんの言葉はとても印象に残りました。
私は、先月4月より院長に就任し、毎週木曜日は魚沼基幹病院より経験豊かな先生方と一緒に仕事を、さらに月に一度は週末には新潟大学病院からの先生をお招きして仕事のサポートをお願いすることになりました。
私が過労でたかき医院を続けられなくなり、地域のお産できる病院を一つ潰してしまわない様にとの各方面からのご配慮です。
気が小さい私は、どんな毎日になるのだろうかと、4月初めは原因の分からない胃の痛みに苛まれましたが、始まって見れば外部からいらっしゃる先生方に最新の医療技術のお話を聞いたり、患者様のことで気軽に相談出来たりと良いことばかりでした。
特に基幹病院の先生方は優しく丁寧な先生ばかりで安心しました。患者様もわざわざ峠を越えなくても専門的な診療が受けられ、手術の相談やセカンドオピニオンなどが自宅近くで出来ることになったので、本当に良かったのではないかと思っています。
3重苦のヘレン・ケラーの生前の言葉に「友達がいれば、毎日世界は変わります」があります。引っ込み思案な私ですが、新たな扉を開けてたくさんの方と知り合い、その手を借りながら毎日楽しく仕事を続けていきたいと思っています。
ぜひその手を貸してくださるという方は、たかき医院の健闘を「産声を上げた働き方改革~医療現場のジレンマ~」、NST新潟総合テレビ5月25日午後2時からのドキュメンタリー番組でご覧ください! (たかき医院・仲栄美子院長)
2024年5月25日号
春ですね。ゴールデンウィークも良い天気で、少し暑いくらいでしたが、本当に気持ちの良いお休みを過ごしました。これだけ天気が良いとウキウキしてきて、どこかに出かけたくなりますよね。
そんな春といえば、前回は木の芽どきの話をしました。今回は「春は変質者や不審者が増える」とよく聞きますが、本当のことなのか、について。 私が小学生の頃(すでに時は35~40年昔にさかのぼりますが)は、春先には県外ナンバーの「当たり屋」に気をつけろ、という話をたびたび耳にしたことがあったように記憶しています。
さて、「不審者」という定義を「痴漢、露出、声掛け、つきまとい、盗撮、のぞき、暴行、強迫、危険物所持など」とした場合に、とある会社が警察からの情報をもとに分析を行ったところ、やはり4~5月から不審者情報の報告数が増加し始めるのが分かったそうです。理由としては、不審者も春はお出かけ気分になるからなのではないか、とか。
ちなみに、春の時期に見られる「不審者からの声掛け」のパターンとしては、「何歳? 何年生?」「お母さんが病院に運ばれた。今すぐ来て。いいから来て」「お母さんが死んじゃった。お父さんは会社にいるから乗って」「さわってくれたら、100円上げる。」「パンツの色は何色?」「トイレについてきて」「一緒に写真を撮ろう/写真を撮ってもいい?」「お菓子をあげるからおいで」「(お金を支払うから)下半身を見てほしい」だそうです。十日町市内でもここ数年、写真を撮る不審者がたびたび目撃されていますが、特に春は注意が必要なのかもしれません。
この原稿を書くために小学生の娘に不審者の話をしていたら、「『いかのおすし』だよ!」と自慢げに鼻を鳴らしながら教えてくれたので、小さなお子さんのいらっしゃる方はもうとっくに知っておられるかと思いますが、あげておきますね。
〇知らない人にはついて「いか」ない
〇声をかけられても車には「の」らない
〇知らない人に連れていかれそうになったら「お」おごえを出す
〇声をかけられたり追いかけられたりしたら「す」ぐに逃げる
〇怖いことにあったり見たりしたら、すぐに大人に「し」らせる
これが『いかのおすし』です。若干無理やりな感じもしますが、頭のどこかに入れていただいて、お子さんと一緒にそのつど声に出して復唱してくださいね。
以前埼玉に住んでいたころですが、ファミレスに友人と入ったときにパソコンをうっかり車の中に置いていってしまったところ、鍵を開けられパソコンを盗まれるという災難に遭いました。ウキウキしているとうっかりが生じます。
大事なものからは手を離さないようにお気を付けください。そしてうっかりといえば、病院受診の際は保険証を持って出たか、保険証の有効期限は大丈夫か、を必ず確認してくださいね。(たかき医院・仲栄美子院長)
2024年5月11日号
先週は市内のあちこちの桜が満開で、春が来たな~と気温の上昇と共に心も温かくなりました。我が家の玄関先にある、いつからか根付いたのか分からないアケビの木からも木の芽が伸びてそろそろ収穫を迎えます。
この時期まさに『木(こ)の芽どき』といいます。正確には立春から春分までの期間を指します。ざっくりいうなら、この冬から春にかけての季節の変わり目は気温の変化が大きく体調を崩しやすい時期のため、昔の人たちは代々、病気に注意するよう言い伝えてきたわけです。
春先はなんだか眠くて仕方がない、天気は良いのに布団から出るのが億劫で「春眠暁を覚えず」という方も多いのではないでしょうか。これも季節の変わり目で気圧や気温の大きな変化が大きく、自律神経のバランスを乱すためです。
春先は自律神経のうち、体を休めるための副交感神経の方が、活発に動くための交感神経より働きが強まるため、眠気が強まるのです。また、気圧や湿度の関係で頭痛を感じやすくなりますので、外来診療をしていても、頭痛薬をくださいと言われる方が多いのは確かです。
そして気持ちが落ち込むなどの症状を訴える方も増えてきますので、もともとメンタル不調をお持ちの方は、あえて調子が良くても薬の変更は延期するなど注意が必要です。
この気持ちの面での不調は、季節の変わり目の気候の大きな変動が影響するだけでなく、転居、転勤、異動、入学、就職などの環境の変化も大きく影響をします。気持ちの不調が体調の不調症状を引き起こす方もいます。
ですので、これからやってくるゴールデンウィークは天気も良く家族や友人が出かけようとお誘いをかけてくるかもしれませんが、気持ちが乗らない時には体も心も疲れている証拠ですので、勇気をもって断って自宅でしっかり休む、自分の気持ちに素直に行動する、ということを大事にしていただきたいと思います。
というのも、この『木の芽どき』にかかった負担をそのままにしておくと、ゴールデンウィークが終わった5月にうつ病に進んでしまうことがあります。いわゆる『5月病』です。なので、今この時期に頑張りすぎない、我慢しすぎない、自分がリラックスできる時間をなるべく持つ、ということはとても大事なのです。
特に「~しなくちゃ」を口にしたり考えてしまった人は、その言葉を思い浮かべた時点で自分にかなり負担がかかっていると気づいて欲しいなと思います。
あとは何度もお話したことがありますが、うつ病にならないために大事なことは「つながること」です。信頼できる人に自分のつらい気持ちを伝えること、もしくは病院などを受診して相談するのも良いでしょう。
眠れない、寝てもすぐ目が覚める、食欲がない、食べ物を美味しいと感じない、笑うことが無くなった、楽しみを見つけられない、人に会うのが億劫、そんなことが少しでもあったら早めにお気軽にご相談くださいね。
(たかき医院・仲栄美子院長)
2024年4月20日号
実家の十日町市に戻ってきてから、母のやっていた講演会活動を引き継いで、かれこれ16年目に入ります。最近、中学校で性のお話講演会をさせていただくときに、この質問よく受けるなあというものがあります。それは、「必ず結婚しないとダメですか?」「子どもを産まないとダメですか?」です。
先月2月27日に厚生労働省は人口動態統計の速報値を公表し、それによると2023年の出生数は過去最少の75万8631人(前年比マイナス1万116人)で、 婚姻件数も戦後初めて50万組を下回り、48万9281組となったとのこと。これは国立社会保障・人口問題研究所の推計より、およそ12年早いペースで少子化が進んでいるということなのだとか。16年前にちょうど「草食系男子」ということばが流行語大賞になりましたが、今の様子は草食系を通り越して「絶食系」に近いともいえます。
性のお話講演会は全国的に、以前は怖がらせて安易な性行為はやめさせよう、といった傾向が強かったのですが、最近は少子化を少しでも解消するために、「なるべく子どもを産みたいと思う話をしよう!」という風潮になっているようです。でもどうして既に中学生たちは、その年齢で「結婚したくない」「子どもを産みたくない」と思っているのでしょうか?
『SRHR』という言葉を知っていますか。英語のSexual and Reprod
uctive Health and Rightsの頭文字をとったもので、日本語では、「性と生殖に関する健康と権利」と訳されます。具体的に言うと、Sexual Health(性の健康)=自分の「性」に関することについて、心身ともに満たされて幸せを感じられ、またその状態を社会的にも認められていること。Reproductive Health(生殖の健康)=妊娠したい人、妊娠したくない人、産む・産まないに興味も関心もない人、アセクシャルな人(無性愛、非性愛の人)問わず、心身ともに満たされ健康にいられること。Sexual Rights(性の権利)=セクシュアリティ「性」を、自分で決められる権利のこと。自分の愛する人、自分のプライバシー、自分の性的な快楽、自分の性のあり方(男か女かそのどちらでもないか)を自分で決められる権利のこと。Reproductive Rights(生殖の権利)=産むか産まないか、いつ・何人子どもを持つかを自分で決める権利。妊娠、出産、中絶について十分な情報を得られ、「生殖」に関するすべてのことを自分で決められる権利のこと、です。また、これらの権利は、『生まれながらに持つべき権利(人権)』であり、どう人生設計するのかは個人個人が決めたらよいことではあるが、そのためには十分な情報を各自がしっかりと得る必要があることも明記されています。
3月8日は国際女性デーでもありました。それにちなんで『SRHR』についてタレントのIMALUさんが中心になってやっているYouTube番組「ハダカベヤ」に出させていただきました。もし良かったら、3月25日から公開されていますので見てみてくださいね!
「結局は未来の産んだ子どもの生活に不安があるから産まないんだよ」という意見でその場にいた友人たちがみんな納得したんだよと教えてくださった方がいます。中学生たちも同じなのでしょうか? 何が不安なのか、なぜこれから子どもを産む年齢の若い人たちがそう思うのかをもっと政府が汲み取らなければ、とても少子化は解決しそうにありません。私も講演活動を通じて、今後そのあたりを追求していきたいと思います。(たかき医院・仲栄美子医師)
2024年3月30日号