創り上げた先に人の喜ぶ姿が見える

contents section

福原 久八郎さん(1956年生まれ)

 「白紙の状態から何かを創り上げるのが好きなんです」。十日町市中条にある桂公園こどもランドのすぐ前で織物業『フクハラ企画』を営む福原久八郎さん(68)。地域と共にゼロから創り上げた遊び場だ。「家族連れの子どもたちが元気に遊んでいるのを見ると、嬉しくなりますね」。

 1970年代、十日町織物業の隆盛期。地元織物会社で働きながら十日町高で学び、そのまま織物業界へ。就業しながら専門学校で染織技術を学んだ。「すでに働いて学んでいたので、学校で学ぶより実践のほうが高度でした」。織物の設計やデザインに携わり、「白紙」からものづくりする楽しさを体感した。
 1980年代に入ると織物業界が下降線に。「業界が低迷していくと、従業員や外注先が縮小され、職人さんにも仕事の打ち切りを伝えなければならなくて…」。抱え込んだ心苦しさが膨れあがっていった。「自分で会社を立ち上げれば…なんとかなるかも…」と考え32歳で独立。起業、『フクハラ企画』を立ち上げた。組合には加入せず、「身軽く、フリーで営業活動しました」。
 県内外の織物産地の職人とも積極的に交流し、人のつながりの輪を広げた。「それぞれ困っているところを補い合う。染める人が居ない、織る人が居ないってなれば、こっちでするよって。逆もありますね」。いまもパイプ役を担っている。
 「きもの産業が衰退しているのに起業なんて無謀だって言われましたけど、これまで関わってきた職人さんや十日町にない技法を持った職人さんと一緒に創り上げていくのは楽しかったですね」。

 起業した翌年に結婚。3人の子育てを通じて積極的に地域活動に関わった。「地域のイベントや困りごとなどの相談もよく受けましたね」。国宝出土の笹山遺跡で毎年開催の「じょうもん市」や市民体育祭などに様々なアイデアを出し、地域と共に創り上げていった。「なにか面白い事はできないかなぁーと創り上げるのが好きなんですが、それを喜んでくれる人を見るのが、もっと好きなんです」。
 福原さんには大切にしている思いがある。「趣味は自己満足で終わらせたくないと思っています」。近所から皐月(さつき)の植木20鉢余をもらい受けた。初心者ながら育ててみると次々に疑問が。それを解決していくと、次第に専門知識と技術を会得していき、「多様な植物の栽培にハマってしまいました」。「きれいに咲いた花を自分だけで見ているのはもったいない」と、プランターの花以外にも春は菜の花畑、夏は向日葵畑など辺りを四季折々の花で彩る。「綺麗だねって、喜ぶ人を見るのは本当に楽しく、嬉しいですね」。

 なにもない白紙状態から、考え、考え、試行を繰り返し、ものを創り上げ、人を喜ばせることが好きな福原さん。市内外の人気スポットになっている『桂公園こどもランド』もその一つ。地域の理解と協力で施設を管理し、「子どもたちが喜ぶものは何か、これを第一に考えました」。来園する子どもたちが笑顔で楽しんでほしいと、週末にはゴーカートやくじ引き。夏季にはウォータースライダープールなど設置。同時に家族で楽しめる様々なイベントを企画、実践している。
 福原さんの思いに共感し『お手伝いしたい』と、市内はじめ村上市や上越市などからボランティア協力する人も。「周りからは大変だねって言われますが、困難であるほど、それを乗り越え、創り上げた時は楽しい充実感があります。今後も自己満足に終わらず、周りを楽しませたいですね」。

▼バトンタッチします
 村山千奈さん