「嫌な感染症が流行ってきた」、りんご病
Vol 113
年末からインフルエンザ・新型コロナ・マイコプラズマ肺炎など、さまざまな感染症がはやっておりますね。せっかくの9連休がこれらの感染症の療養で終わりました!という方もいらっしゃるのではないかと思います。
新型コロナが5類感染症扱いになったころから、それまで抑え込まれていた感染症が一気に広がり、その頃からずーっと医療機関には風邪症状に効くお薬が手に入りにくい状態が続いています。
つまり、風邪を引いて病院を受診しても「お薬が無いので自力で直してください」と言われても仕方のない現状になっていることを、まず知って欲しいと思います。なので、なるべく風邪を引かないように予防努力(手洗い・うがい・マスク)をしてくださいね。
さてそんな中、薬が云々という問題では無いのですが、産婦人科医としては新年になって「嫌な感染症が流行ってきたぞー」と思っています。それは何かというと、「りんご病(伝染性紅斑)」の流行です。
国立感染症研究所の発表では、りんご病は、約5年周期で流行が起きる主に4~10歳の児童に多くみられる感染症で、原因は「パルボウイルスB 19」というウイルスの飛沫感染で、冬から初夏にかけて流行します。
症状としては、10〜20日の潜伏期間の後、頬に境界鮮明な紅い発疹(リンゴみたいなほっぺ)が現れ、 続いて腕や足、時に胸腹背部に網目状・レース状・環状などと表現される発疹がみられます。これらの発疹は1週間前後で消失しますが、なかには長引いたり、一度消えた発疹が短期間のうちに再び出現することがあります。
子どもの場合、頬に発疹が出現する7〜10日くらい前に、微熱やかぜ症状などの前駆症状が見られることがあります。この時期が一番ひとにうつす可能性がある時期といわれており、頬や体に発疹が出たときには体内のウィルス量は減ってひとにうつさない時期に来ているといわれていますが、潜伏期がはっきりしない病気のため、保育園や学校などは発疹が消えてからでないと登園・登校は許可されません。ウィルス感染症なので、特別な治療薬はありません。 成人では約半数は症状が出ず、出ても関節痛・頭痛などで特徴的な症状ではなく、関節炎症状により1〜2日歩行困難になることがありますが、ほとんどは合併症をおこすことなく自然に回復します。
さて、ここまで読んでも「なぜ嫌な感染症なの?」と思われるかもしれませんが、実は妊婦さんが妊娠20週までに「りんご病」に感染すると、胎児水腫(胎児がとても貧血になり、からだ全体がむくむ)が起こり、胎児も感染する確率は約20~30%、流産や胎児死亡に至る確率は約10%といわれています。「えーっ!!」と思っても、他の水ぼうそうや風疹などのように予防ワクチンもありません。
保育士さんは若い女性が多く、妊娠年齢の人が多いです。保育園でりんご病が流行した時に、誰か感染しやしないかと、いつもドキドキします。 これを読んで不安になった方は、りんご病に関して抗体を持っているかどうかの検査をすることができますので、近くの病院にご相談ください。ただし、結果に2週間はかかりますので、りんご病を流行が始まる前にお早めにどうぞご相談くださいね。
(たかき医院・仲栄美子院長)