辻井伸行さんのピアノ演奏に思う

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たかき医院と魚沼基幹病院、新大病院が連携

Vol 98

 「泣きながら歯を食いしばってなんてしていません。毎日笑いながらやっています」。先月、全国の産婦人科医が一堂に集まる日本産婦人科学会に行って来ました。今回、学会内の特別プログラムとして辻井伸行さんのピアノコンサートがあると聞き、こんな機会は無いと自分の休診を利用して、主にコンサートに参加してきました。
 コンサートは圧巻! 久しぶりにライブ演奏を聴いたというのもあるのでしょう。彼作曲のオリジナル曲から、よく知られているクラシックの曲まで、60分という短い時間の中でトークを交え、立て続けに10曲近く演奏してくださいました。あまりに感激して、しばらくの間YouTubeなどでプログラムにあったピアノ曲を何度も何度も聴きました。
 なぜ辻井伸行さんが学会でピアノコンサートを演奏して下さったかというと、彼のおじいさん、おじさん、お父さんは産婦人科医なのです。そのつながりで出演依頼があり、今回のコンサート開催に至ったのだと思います。
 コンサートに先立ち、会場にお父さんからの挨拶動画が流れました。自分の結婚から辻井伸行さんの誕生、目が見えないと分かった時、音楽が好きでおもちゃのピアノを与えたら、3歳でお母さんの歌うジングルベルに合わせて伴奏を弾いたこと、そこからピアノの道へ、などのお話をお聞きしました。
 その話の中で以前取材に来た記者さんが「歯を食いしばって1日に何時間も血へどを吐くような練習をされているのでしょうね?」と聞いてきた時に、お父さんが「1日に8時間も練習していますが、彼がそんな苦しい様子で練習している様子は、一度も見たこと無いですよ」と冒頭の話をしたとか。このお父さんの言葉はとても印象に残りました。
 私は、先月4月より院長に就任し、毎週木曜日は魚沼基幹病院より経験豊かな先生方と一緒に仕事を、さらに月に一度は週末には新潟大学病院からの先生をお招きして仕事のサポートをお願いすることになりました。
 私が過労でたかき医院を続けられなくなり、地域のお産できる病院を一つ潰してしまわない様にとの各方面からのご配慮です。
 気が小さい私は、どんな毎日になるのだろうかと、4月初めは原因の分からない胃の痛みに苛まれましたが、始まって見れば外部からいらっしゃる先生方に最新の医療技術のお話を聞いたり、患者様のことで気軽に相談出来たりと良いことばかりでした。
 特に基幹病院の先生方は優しく丁寧な先生ばかりで安心しました。患者様もわざわざ峠を越えなくても専門的な診療が受けられ、手術の相談やセカンドオピニオンなどが自宅近くで出来ることになったので、本当に良かったのではないかと思っています。
 3重苦のヘレン・ケラーの生前の言葉に「友達がいれば、毎日世界は変わります」があります。引っ込み思案な私ですが、新たな扉を開けてたくさんの方と知り合い、その手を借りながら毎日楽しく仕事を続けていきたいと思っています。
 ぜひその手を貸してくださるという方は、たかき医院の健闘を「産声を上げた働き方改革~医療現場のジレンマ~」、NST新潟総合テレビ5月25日午後2時からのドキュメンタリー番組でご覧ください! (たかき医院・仲栄美子院長)