農協の広域合併
斎木文夫(年金生活者)さん
9月30日に魚沼各地で農協臨時総代会が開かれる。来年2月に十日町ほか3農協が合併する、その是非を問う会だ。私が代表を務める十日町・津南地域自治研究所は、農協広域合併には様々な問題があると感じ、「農協の広域合併を考えるシンポジウム」を開催した。その発言については2日付本紙に紹介されている。
シンポ後、たくさんのお声をちょうだいした。その多くが「この合併は組合員のためでなく、農協の都合によるものだ」というものだった。
十日町農協だけではない。なぜ農協は合併したがるのか。それは、経営が行き詰りつつあるからだ。農家の高齢化・減少と農産物の輸入増加によって農業・農家そのものが弱体化し続けている。そこにマイナス金利政策が続き、金融事業を悪化させた。で、合併して「経営基盤の強化」を図ろうというわけだ。
では、合併してどうなるのか。よく言われるのがスケールメリット(規模拡大の利点)である。経営の効率化、コストの削減、生産・販売量の増大などが考えられる。十日町農協は「合併を通じて実現をめざすこと」として、①コシヒカリ・園芸農産物の販売強化、②コスト低減と効率化、③サービスの維持と地域活性化への貢献、の3点を挙げている。
だが、これを本当にどこまでやれるのか。その前に、すでに農業・農家そのものが弱体化している現実に対してどう取り組むのかが見えない。
合併予定の4農協の経常収支のトップは十日町農協。弱いところだけの足し算の結果は、市町村合併を見れば明らかだ。
金融事業が盛り返すあてもない中、農協が生き残るためには、本業である農業関連事業の収益を改善するしかない。ビジョンのない支店の統廃合や職員削減だけの合併では、リストラ→サービス低下→農協離れの悪循環を生むだろう。そして、更なる大合併に突き進むことになるだろう。
組合員を忘れ、農協組織とそこによりかかる人たちを守る広域合併は、財界と政府が望む農協つぶしに手を貸すものだ。
シンポの後段、会場から「問題は今の農政にある。農協も農家も国の農政のいいなりだ。そのことが農協と農業をダメにした」という指摘があった。それは正しいと思う。
ただ、たった今「広域合併をどうする」が問われている。「合併は4年間の議論の結果だ」と言う方もあろうが、少しでも「おかしい」と考える方は声を上げるべきだ。遅すぎることはない。