公権力の横暴の実態
長谷川 好文 (秋山郷山房もっきりや)
自民党内の裏金問題が発覚して、補選で全敗したのは数ヵ月前のことで、記憶に新しい。その後も大手企業での不正が続いていているが、その報道も知事選やらウクライナ戦争、ガザでの無差別攻撃のニュースの陰になったようで、これ幸いとばかりニュースに上らなくなって来ている。
もっとも、多くの企業の起こす事件はいつも中途半端な幕切が多いようだ。日本の社会を支える企業や報道は余計なことは突っ込んで問題視しないようにしているのだろう。江戸時代から続くお家芸ということか?
本来この国では、まじめで優しく、正直な国民が多くきちんとルールを守って社会を保って来たと思う。近頃のインバウンドで訪れる外国人は、異口同音に日本人の優しさや正直さを讃える映像を見るのだが、一般国民と選民意欲の強い政治家や大企業の特権サラリーマンとは大きな乖離があるようだ。もっとも政治を志していた頃や、就職戦線でしのぎを削っていた若かった頃の人間は、青雲の志に溢れていたり、良い仕事をして社会に貢献しようと思っていたはずである。
それが政治においても、企業人となっていく間に何となく牙を抜かれて、政党や大企業のお仕着せを脱げなくなってしまうものだ。
自己主張を続けると政党では公認をもらえなくなったり、大企業では転勤や減給などの仕打ちを受けるようになる。それならばと仲間になってしまう。結果、裏金問題であったりモラルを欠いた経営による公害まで引き起こす事件に連座することになる。
原子力発電などでは電力会社は一団となって安全を標榜するが、福島の事故はまだまだ解決には程遠い状況だ。建設会社では談合が行われ、疑問を呈すると「いつ迄も青ちょろいこと言ってるのではない」と怒られたようである。
こんなことは権力の集中する国などでは当たり前で、世界中で見られることだと思うのだが、独裁者が生まれる国の怖さは誰もが知っているだろう。警察や検察が自分達の判断を覆すことはせず、自身の権力を守るシステムは強靭である。一度逮捕してしまえば何が何でもそれを押し通す。大川原化工の冤罪事件では逮捕された3人の起訴を取り消す訴えには耳を貸すこともせず、一人の被疑者に病状の悪化がみられたにもかかわらず、勾留を続けた。その後、亡くなってしまった。
またスリランカ人の女性が名古屋出入国管理事務所で体調を壊して治療を求めたが、適切な手当を受けられず病死してしまう事件もあった。一度起訴してしまえば有罪が決まってしまうようで、病気になっても釈放することは稀なのだという。 国民の正義感に比べ力を持つ機関の目に見えない所での横暴さを注意深く見ておかなければならない。
これからも公権力の横暴は続くのだ。もちろん外国の権力とは違っているだろうがこの国においても似通ったことがある。ただ無関係だと、たかを括っていると権力は増長して戦前の日本帝国のようになってしまいそうだ。一般国民市民がゆるい人とばかり思われないように、礼儀正しく正直だが、しっかりした意見を持つ視野がある国民にならなければ日本の先は細っていくだろう。国民の権利を行使しつつ尚且つ困っている人に寄り添っていく国民市民でありたい。
ただ、私は少し多く歳を取ったせいで、警察や検察の恫喝には耐えられないことも分かっている。すぐに日和ることにしている。すみません!