「戻ってきて良かった。これが実感。家族のおかげ」

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綱 大介さん(1982年生まれ)

 暮らす地を転々と動き、たどり着いたのは生まれた地だった。十日町市下条・上新田の三代続く専業農家を継いだ綱大介さん(42)。結婚17年のパートナーで農業初心者ながら次々とアイデアを創出する優子さん(39)と「ツナファーム」を3年前に立上げ、家族営農で水田10㌶で魚沼産コシヒカリや新之助などを栽培し、20㌃でサツマイモを営農する。「いつかは…と思っていました。決断できたのは妻のおかげですね」。

 高校進学から地元を離れ柏崎市・新潟産業付属高校で学ぶ。卒業後、堀之内で土木業や小千谷市の山田鉄筋で業務をし、ひなの宿ちとせ旅館では仲居業など、多種多様な業務を経験。18年前、高校の友人紹介で柏崎市出身の優子さんと出会う。「出会った頃は突き放されていたので逆に燃えましたね」。大介さんの猛アタックで2007年10月に結婚。ふたりで話し、「ちょっと雪から離れた所で暮らしたい」と静岡・浜松市へ転居。この地で長女を授かり、2年間ほど暮らす。雪のない地での暮らしの中で、「なんとなくなんですが…十日町に帰った方がいいのかなぁ…と思ったんですが…」。次の転居先は十日町を通り越した新潟市だった。その地で電気関係業で働きながら4年ほど暮らす。
 それは、突然やって来た。
 「父の腰の具合が悪いって母から電話がありました。そろそろ帰るか…でしたね。6年間の長い新婚旅行でした」。2014年、生まれた地、下条上新田に帰った。いつかは…と考えていた農業と向き合う日々が始まる。
 やるからにはと、両親の元で農業を学び3年前夫婦で継ぎ「ツナファーム」と名付けた。水稲を主体に魚沼コシヒカリ、新之助などブランド米を手がけ、需要が多いこがねもちも生産。さらにサツマイモなど野菜栽培にも家族で取り組む。
 農業初心者の優子さんの農業への関心の高さが大介さんのやる気を倍増させている。「お米ってこんな風にできているんだと喜び、こんな美味しいお米を食べたのは初めて、と言ってくれて嬉しかったですね」。
 優子さんの新鮮な感度が営農にも大いに役立っている。ツナファームの農産物でネット販売に乗り出し、事業名刺も作成し、交友関係を広げている。「自分だけだったら、これまで通りの農業だったでしょうね。ネット販売など思いつかなかったし、ネット購入の消費者から生の声も聞けて、大きな励みになっています。新しい視点での農業になり、妻には本当に感謝です」。

 家族営農のツナファーム。小学、高校生の娘3人の存在が、新たな交友関係を広げている。「自分が小さい頃に参加していた子ども会キャンプなど、今度は自分が運営する側になって、なんだか不思議な感じですね。地域の大切なつながりになり、地域で子どもたちを育てるという、ありがたみを感じますね」。 下条小でサツマイモや米づくりなどを教え、市内で開設の子ども食堂にもいち早く関わり、米など地元食材を提供している。「子どもが喜んでくれる姿を見ると嬉しくなりますね」。

 雪を嫌って県外に転居したが、いまは雪の恵みを感じている。美味い米、野菜ができるのも雪のおかげと。冬期間はガーラ湯沢に勤務。「あんなに雪が嫌だと思っていたのに、我が子のスキー授業に合わせ、スノーボードを始めました。ボードも買っちゃって、いまでは家族で雪が待ち遠しいくらいです」。さらに「雪のおかげで、美味しいお米もでき、雪があるからこその農業だと感謝しています」。
 暮らす地を転々としながら見つけ出した『ふるさとの良さ』。「戻ってきて良かった、これが実感ですね。妻のおかげ、子どもたちのおかげ、それに家族同然の愛犬まめたのおかげですね」。

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