「RSウイルス感染症」への理解を

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新生児、生後3ヵ月までは風邪予防を

Vol 101

 最近このコラムを毎回切り抜いてとっています、とお声がけいただきました。本当にありがとうございます。今日は、新しい妊婦さん対象の予防接種のお知らせです。
 現在すでに妊娠中に接種可能なワクチンのある感染症に、インフルエンザ、新型コロナ、百日咳などがありますが、今年1月18日に妊娠中に接種して「新生児及び乳児のRSウイルス感染症の重症化を予防する」ワクチンが登場しました。
 RSウイルスの予防については、今までは重症化リスクのある児(早産児や先天性心疾患など基礎疾患のあるハイリスク児)に対してワクチン接種をしてきました。しかし、重症化リスクは基礎疾患のない正期産の子どもにもあり、しかも近年は流行の季節性もなく、現在RSウイルス感染症は乳児に限らず親にとっても極めて重要な疾病です。
 RSウイルス感染症は5類感染症に指定されており、生後1歳までに50%以上が、2歳までにほぼ100%が初感染しますが、症状は熱や倦怠感などの風邪症状から上気道症状(鼻閉、鼻水、くしゃみ)、下気道症状(咳、呼吸困難、喘鳴)まで様々です。
 成人にとっては鼻がグズグズする程度で済むことがほとんどですが、特に生後6ヵ月未満では重症化しやすく、肺炎、無呼吸、急性脳症なども引き起こします。
 生後間もなくRSウィルスに感染した子どもは、その後に気管支喘息を生じるとの関係性も指摘されています。日本では、年間12~14万人の2歳未満の乳幼児がRSウイルス感染症と診断され、そのうち3万人が人院を要し、入院発生数は生後1~2ヵ月時点でピークとなり、人工呼吸器管理となる場合も多々あります。また、対症療法が基本で有効な治療薬はありません。そのため予防が重要です。
 このワクチンを妊婦に接種することにより、RSウイルスに対する抗体が母体で作られ、そして抗体が胎盤を通じて胎児に移行することで、新生児および乳児におけるRSウイルスを原因とする下気道疾患を防ぐことができます。妊娠24週から36週の妊婦に1回筋肉内接種をします。ワクチンの効果は生後6ヵ月まで続きます。
 残念ながら今はこのワクチンに対して公費補助が無いため、希望者に限り自費で接種する形となります。妊婦さんへの副反応としては、注射部位の疼痛くらいで、重篤な全身症状などはないとのことです。
 新型コロナ感染症が2類から5類になり、今年は春から子どもたちを中心に様々な感染症が流行りました。そのうちの一つにRSウイルス感染症もありましたが、生後間もない赤ちゃんたちが今年は多く感染し、重症化して入院したという話を聞きました。
 まず赤ちゃんが家族にいらっしゃるご家庭の方は、重症化のリスクが高い生後3ヵ月になるまで赤ちゃんには風邪を引かせないように慎重になってください。 
 大人のちょっとした風邪症状でも赤ちゃんにとっては命取りになる感染症かもしれません。上にお子さんのいる方は特に注意が必要です。心配な時はどうぞ妊娠中のRSワクチン接種をお考え下さいね。(たかき医院・仲栄美子院長)