ク ズ

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中沢 英正(県自然観察保護員)

 真夏、暑さでへばっている多くの植物を尻目に一際元気なのがクズである。道端や林縁などで我が物顔で蔓を伸ばしている。
 繁殖力旺盛なこの蔓草は、人にとって厄介者だが、有用な存在でもある。
 春先の若芽は山菜として。採っても採っても芽出してくるから長く利用できる。
 梅雨時に成長した新蔓からは、光沢のある繊維が採れる。武士の裃や着物などの生地となった。
 葉は牛馬の栄養たっぷりの飼料。乾燥させたものは藁などとの物々交換品であった。
 夏に咲く花(写真)は薬に。乾燥品を煎じて服用すれば二日酔いに効く。肥満防止成分も含まれている。
 秋、木質化した蔓はテゴなど物入れの材料に。縄の代用として冬囲い時などに利用された。
 冬、地下茎には良質なデンプンが貯蔵される。「葛粉」である。細かく刻んで乾燥させたものが「葛根」で漢方薬に配合されている。
 人の暮らしと深く結びついてきたクズだが、この先関係はどうなっていくのやら…。