ケヤキ 花と果実

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中沢 英正(県自然観察保護員)

 ケヤキは日本ではよく知られた樹木である。樹形の良さから公園や道路沿いなど身近なところに植えられることが多いお馴染さんだ。
 材は耐久・耐朽性に優れ、木目が美しいことから寺社の建材や彫刻材として重宝されてきた。
 知名度抜群の樹木だが、花や果実の事となるといささか事情が違ってくる。見たことがないっていう人が多く、中には「花が咲くんですか…」などという人もいる。それは花・果実ともとにかく地味で小さいためだ。
 花が咲くのは春、葉の展開と同時だ。雄花と雌花があり、新小枝の下部に雄花が、上部に雌花がつく(写真左)。どちらも長さ5ミリほど。雄花は花粉を出し終えるとポロポロと落下する。
 受粉を終えた雌花は秋に向けて果実を成熟させていく。10月頃に熟す果実も長さ5ミリほど、小枝ごと風に運ばれていく(写真右)。
 極小の果実が千年以上の歳月をかけ、直径4~5メートルの姿にまで成長する過程は人知の及ばないドラマである。