似たような局面が、頭を過ぎった。3・11のフクシマ原発事故の福島県で1994年から数年、30年前ほどに起こった発電事業者と地元福島県知事の攻防だ。東京電力の福島原発の電気はすべて首都圏に送られていた。地元福島県民は東北電力の電気を使い、いまもこの構図は変わっていない。ここ妻有の地と同じではないか。JR東・宮中取水ダムによる「JR東・信濃川発電所」で発電の電気は、首都圏の大動脈・山手線を動かしている。少し上流の東京電力・信濃川発電所の電気は、首都圏はじめ関東エリアを広くカバーしている。だが、妻有の人たちが使う電気は東北電力の電気。似たというより、全く同じ状況だ。
30年余り前の福島県知事は佐藤栄佐久氏。今年3月に死去。1994年、東京電力は福島県にビッグプレゼントを公表した。130億円余のサッカースタジアム建設。これがあの「Jヴィレッジ」。当時、東京電力は福島第1原発の2基増設を計画。それには福島県・佐藤知事の事前同意が必須だった。だが、佐藤知事は積極的ではなく、むしろ距離を置く姿勢だった。そこで東京電力が打ち出した「地域貢献策」がサッカースタジアム建設。その後も東京電力は地域振興策の名目で財政支援など「知事合意」を求め次々と手を打ち、合意にこぎつけた。これを「ごね得」と見るなら、それは間違いだ。発電事業者にすれば、発電施設の莫大な固定資産税を納めていると開き直れるが、ならば首都圏に原発を建設すればいい、となり、事実当時そうした論議が噴出した。
同じ構図が目の前で起きている。信濃川の水を使い発電するJR東と東京電力。その電気を首都圏に送り、経済行為として莫大な利益を生み出している。その発電の地元は、どうなっているのか、ここに似た状況を見る。
十日町市長選がいよいよ告示だ。これも争点の一つだ。