大地の芸術祭、メッセージを感じる

Category:
社説

contents section

 アートの力を信じたい。先駆けの大地の芸術祭は回を重ねるごとに関心を集め、いまや全国300以上の芸術祭的なアートイベントがある。その本家本元、大地の芸術祭は来週13日、第9回展の開幕だ。本紙先週号のトップ、芸術祭・総合ディレクターの北川フラム氏の言葉が、9回展までの歴史を端的に物語っている。『…バスで空気を運んでいると言われた時代から、ここまで来た…』。第1回展の2000年以降、2回、3回と重ねるまでは、作品巡りバスは「空気を運んでいる」と揶揄された。それがコロナ禍の厳しい時期を経験しつつも、大地の芸術祭は世界ブランドに育ち、開幕の9回展では外国から多くの来訪者が、ここ妻有をめざすだろう。「アートの力」を感じる。
 注目はロシア侵攻が続くウクライナの作家たちの出展だろう。アートの力は、「過疎と過密」、「都市と山間地」のキーワードから、2000年の第1回展から変わらない理念『人間は自然に内包される』が、いま世界で起こる紛争につながり、そこには「平和」への強いメッセージが込められ、越後妻有から世界に向けて、さらに強く打ち出される9回展になるだろう。
 87日間の大地の芸術祭。アーティスト275組は41の国と地域から妻有で作品展開する。野外アート、空き家や閉校舎活用のアートなど、その作品が発するメッセージを、目で、耳で、皮膚で、嗅覚で、心で、まさに5感で体感してほしい。その地に居る自分と、その地に存在する作品、この関係性こそ越後妻有からのメッセージだろう。 
 「ここはどこ、私はだれ、どこから来て、どこへ行くのか…」、その先の視野にウクライナがあり、ガザがあり、アフリカがある。
 来訪者数が芸術祭の成否になる時代ではない、と考える。最終日11月10日、ここ越後妻有から世界に向け、どんなメッセージが発せられるのか。

Category:
社説