妊娠中期〜後期、歯肉炎に注意

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歯周病細菌が胎児に感染

Vol 107

 先日、以前からお世話になっている市内の某歯科の先生に「妻有新聞読んでます。最近歯の話を書いてますよね」と言われ赤面。本当にお恥ずかしい話ではありますが、口腔ケアは病気とも大いに関係がありますので、今回も頑張って書きますね。私の専門分野でもある女性ホルモンと歯周病の続きです。
 前回、女性ホルモンと歯周病について月経と思春期に焦点を当て、女性ホルモンのバランスが崩れると歯周病になるということを書きました。
 女性はホルモンバランスが大きく変わるところでライフステージが区切られます。思春期を過ぎて性成熟期は妊娠・出産・産後があり、まず妊娠中は歯肉炎にかかりやすくなるといわれています。
つわりで歯磨きが不十分になる、食生活の変化で唾液量が減り口の中をきれいに保つ働きが低下する、などの理由からリスクが高まります。もともと他人である赤ちゃんを10ヵ月お腹の中で安全に育てるために、妊娠中は免疫システムの働き自体を下げていますので、炎症が収まりにくい状態です。
 妊娠後期にはエストロゲンやプロゲステロンといったホルモンは月経時の10~30倍になるといわれており、このため妊娠中期から後期にかけてさらに歯肉炎が起こりやすくなります。歯肉炎の状態から50%以上の人が妊娠性歯周病になり、早産や低出生体重児のリスクが高くなります。
 これまでの私の経験で、切迫早産で入院した方には、やはり妊娠前から口腔の状態が悪い方が多いように思います。そして口腔内の歯周病細菌が血中に入り込むことで胎盤を通して胎児に直接感染するともいわれているので怖い話です。油断すると出産後に本格的な歯周病に移行する場合もありますので、注意が必要です。
 また、歯周病菌が腸内から見つかるという話からすると、妊婦さんの腸内環境がそのまま赤ちゃんに移っていくのは分かっている話ですので、赤ちゃんがどんな人生のスタートを切るのか、妊娠中の口腔ケアはとても大事なのが分かるかなと思います。
 出産直後に出会った人の腸内細菌が赤ちゃんの腸内細菌に影響する話もありますので、分娩に立ち会う私たち医療スタッフ、もしくはご家族の方の腸内細菌並びに口腔ケアも重要です。
 そして、昭和の頃はよくあった「食べ物を口の中でかみ砕いたものを赤ちゃんに与える」のは、絶対しないようにお願いします。基本的には歯垢が残存しない清潔な口の中では歯周病は起こらないか、起こっても軽度ですみますので、妊娠中は特に気をつけてプラークコントロールを行いましょう。
 抗菌作用があり、オイルより濃度が薄いため妊娠中でも安心して使えるハーブウォーターでのうがいをおすすめします。
 次回は更年期と歯周病の話で、ついにこのシリーズは終焉。10月12日の土曜日、午前10時~午後3時、たかき医院では女性がそれぞれのライフステージに合わせて毎日元気に健やかに過ごすための技術を国内外から集めた「フェムテックフェス」を行います。入場無料。
 隣の喫茶店ではマルシェも同時開催していますので、女性も男性も興味のある方は、ふらっとお気軽に立ち寄ってみてくださいね。産婦人科医による無料相談もありますよ。
 (たかき医院・仲栄美子院長)