性的な暴言も性犯罪、問われる大人社会

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性暴力、見て見ぬ振りは犯罪です

Vol 87

 12月になり、2学期を締めくくる性教育講演に毎週様々な学校へ伺っています。メディアでは某アイドル事務所で起きてきた性被害の話でもちきりだった時期がありましたね。それもあってか今年6月16日、「性被害の実態にあっていない」という被害者の声を受け、加害者を処罰する法律を大幅に見直した改正案が参議院本会議において全会一致で可決・成立し、7月から施行されました。
 私が行う性教育講演では、必ず性被害について話をしています。どんな話かというと、以前もお話しましたが、児童虐待の中に性的虐待があること。個人的にお付き合いしている間柄で起きうるデートDVの中の性的な暴力の例。この地域でも性犯罪被害(不同意性交)に遭う人がいること。そして、その場のノリや罰ゲームなどで裸になることやキスなどをせまる、集団でHな話しに参加することやHな歌を歌ったり聴かせたりすることを強要する、集団の中でホモネタやオカマネタで笑う、「ホモ」「レズ」などの省略形で呼ぶ、自分のジェンダーやセクシュアリティをカミングアウトした性的マイノリティの人に暴力をふるったり暴言を浴びせる、などが性暴力になることを伝えています。
 性暴力は被害に遭った本人が黙っていれば、加害者は罪に問われません。性犯罪として加害者を罪に問うためには、被害者が警察に通報する必要があります。
 皆さんはこんな場面を今まで見たことはないでしょうか。忘年会のような席で、加害者はちょっと羽目を外しただけ、酒に酔っていたから何となく勢いで、と言い訳をすることが多いかと思いますが、気分が悪くなるような卑猥な言葉を言ってきたり、わいせつな写真を見せて来たり、明らかにわいせつ目的で会が終わった後に自宅へ呼んだりすることが、上司から部下へ行われることを。 上司から部下だけでなく、同僚の間であっても、経済的・社会的関係の地位に基づく影響力で受ける不利益のある中で性暴力が行われること、その性暴力によって精神的な障害を生じさせること、そんなことが実際あってはなりません。これらは、通報されれば罪に問われる可能性があります。
 また、そのような暴力の被害があったことを聞いた者が、「まあまあ」とか「たまには間違いを起こすこともあるでしょう」とか「どうしてその場で嫌と言えなかった?」などとあしらった時には、被害者は更なる心理的社会的ダメージを受けることになり、これをセカンドレイプ(性的二次被害)と言い、これも性暴力の一つになります。
 高校生は、すでにこれらを性暴力と知っているのです。私たち大人はもっときちんと知って、若者たちに見本を見せられるように行動すべきだと思います。そして、そういう性暴力を受けている人を見て見ぬふりをした人たちは、もっと重い罪を犯していると知ってください。
 今まで診察室で多くの方の性暴力の話を聞いてきました。「それは警察に通報して良いことですよ」と言うと、みなさん大抵「そうなんですか!?」と驚かれます。それだけ日本人は性暴力に関してまだまだ無知といえるのか、あるいは被害に遭った人が黙って我慢させられる社会だったのか、大いに考えさせられます。
 これから忘新年会シーズンですね。これを読んでドキッとした方は、本当に注意してください。被害に遭っているのかも、と不安に思った方は是非お気軽にご相談くださいね。
 (たかき医院・仲栄美子医師)