本気度ない東京電力、知事は命を守れるのか

Category:
オピニオン

contents section

処理水放出と原発再稼働

藤ノ木信子 (清津川に清流を取り戻す会)

 福島第1原発の処理水海洋放出が始まって2ヵ月になる。この間、海外の反応は放出に反対する中国、水産物輸入規制を発表したロシア、それにアメリカでも沿岸で捕れる魚などから放射性物質が見つかれば、莫大な損害賠償問題になると報道している。海は繋がっているから当然だ。
 私が処理水放出について問題視しているのは2点、一つ目は原子炉建屋に流れ込む地下水を止めることを先にしないと、いつまでたっても汚染水は減らない(処理水放出は終わりがない)ということ。事故から12年、汚染水は増え続けタンクは1000基を超える。流れ込む地下水を止める壁について東電は「今、検討を始めようとしている段階」(2020年検討会議事録)とか、「恒久対策について、しっかり検討してまいります」(2021年)とか、「少し検討を始めていますけど、いつ、何をというところまで、まだちょっと」(2022年)、そして今年の検討会で今後の見通しについて、止水壁は2028年以降のイメージしかない。これって全くやる気なしの引き延ばし?増えたら捨てればいいという一番安価な方法を選んだとしか思えない。
 放出して汚染水が減れば廃炉が進んだとするのだろうか? 原発から出た放射性物質はまた無主物だと言い張るのだろうか?
 二つ目は関係者との約束を果たしたと言えるのかということ。政府と東電は2015年、福島県漁連に「関係者の理解なしには(処理水の)いかなる処分もしない」と約束している。今回の放出はこの約束を反故にするもので、地元以外にも北海道のホタテなど全国の漁業に影響が及んでいる。政府の決定通り実行して東電は漁業者への責任をはたせるのか。
 2017年、原子力規制委員会は東電に対して、7つの論点を提示した。その1番目が「福島第一原発の廃炉を主体的に取り組み、やり切る覚悟と実績を示すことができない事業者に、柏崎刈羽原発を運転する資格はない」というもの。今回の海洋放出を見るだけでもとてもこの組織に世界最大規模の原発を稼働させることはできない。
 6月16日、福島第1原発の処理水海洋放出について、国などに再考を求める議員発議の意見書を賛成多数で可決した津南町議会に敬意を表したい。柏崎刈羽原発の30㌔圏内には十日町市も含め44万人が暮らしている。花角知事は3つの検証(事故原因・健康、生活への影響・避難の方法)について「議論を進めていく際、重要な材料となる」と述べている。
 命を守るためにはっきりと意思表示する時ではないだろうか?

Category:
オピニオン