気分の変動・イライラ・気分が沈む…月経前症候群

contents section

お母さんを守ることが我が子を守ること

たかき医院・仲栄美子医師

 9月の第1土日は毎年、たかき医院のある土市地区は秋祭りです。今年は4年ぶりに神社境内で演芸大会が催されるなど、にぎやかなお祭りになりました。演芸大会の開始時間頃には神社境内は「ここは渋谷か?」と思うほどでびっくりしました。日中は、暑い中たくさんの子どもたちが顔を真っ赤にしながら、神輿を引っ張っている活気と笑顔に、元気をもらいました。子どもたちが嬉しそうにしている姿は良いですね。
 さて、今日は以前もお話したPMSとPMDDについて最新のお話。PMSは月経前症候群のことで、月経前3~10日間に出る様々な精神的(気分の変動、すぐイライラする、気分が沈むなど)あるいは身体的症状(下腹部が張る、疲労感、腰痛、頭痛、むくみ、乳房の張りなど)のことで、月経が来ると減弱あるいは消失するもの。PMDDは月経前不快気分障害のことで、PMSのうち精神症状が強い場合を指します。
 PMSもPMDDも外来でお手伝いしていることは主に薬物療法になるかと思いますが、サプリ、漢方治療、低用量ピル、抗うつ剤など多数ある中から、その人の訴えに合わせて処方しています。 
 実はこの二つは多種の要因が複雑にかかわっており、いまだにはっきりとした発症原因が分かっていないのです。そのため多数の治療薬物が存在しています。PMSはビタミンEやカルシウムの摂取が症状を和らげるとか、PMDDの強い人は夜勤回数の多い人やストレスを多く感じている人であるという報告も出ています。
 では最近、高校生などの若い人たちにPMSが増えてきているように感じますが、それはなぜなのでしょう。
 PMDDに関していうと、その症状に悩む人の多くが、幼少時に両親の離婚、父母の不仲、親がアルコール依存や精神疾患を患っている、いじめ、DV(身近な人からの暴力)、性的虐待、ネグレクト(育児放棄)などを体験しているというのです。虐待までいかないにしても、もしかしたら、毎月お母さんのPMSやPMDDによって子どもにつらく当たってしまうことが、将来その子どもに月経が来た時のPMSやPMDDを引き起こす可能性につながるかもしれません。
 お母さんが月経が来ることに対して、とてもつらい気持ちを持っていることが伝われば、子どもは自分の月経もつらいに違いない、と思い込んでしまうでしょう。子ども時代に笑って過ごせること、その笑顔を家族が、特にお母さんが守ってあげることが、女の子の月経が来てから先の40年を元気に過ごせることに繋がっていきます。
 40年は人生の半分、もしかしたら半分以上の長い期間です。この長い期間の大半を月経のために侵されるなんて、大変なことだと思いませんか?そしてお母さんたちがPMDDを強く感じるほどのストレスはどこにあって、それをどう助けてあげたらよいのでしょう。
これを踏まえると、PMDDの治療には、今までにお話した薬物療法のほかにカウンセリングや生活指導も大事であるというのが分かっていただけるかと思います。
 PMSやPMDDにはトリプトファンやGABAやビタミンB6の多い食品が良いのではないかという話もあります。トリプトファンは鰹節・高野豆腐・大豆・きな粉、など、GABAを多く含む食品はトマト缶詰(ホール)・ジャガイモ・かぼちゃ・ブドウ、など、ビタミンB6はとうがらし・米・にんにく・バジルなどです。
 是非取り入れてみていただき、それでも自分では限界と思ったら、抱え込まずに早く相談してくださいね。