「幸せを感じる」ひとりの時間を作る
前回、「幸せの順番」についてお話しました。今回はその続き、「幸せを感じるために」についてお話します。
私の勤めている医院は産婦人科が専門ですが、日々さまざまな年代の方の気持ちの不調についてご相談を受けます。理由はいろいろで、友人や家族との人間関係、学校の先生との人間関係、職場の人間関係、過重労働、元々のコミュニケーション能力の低さによる社会への適応障害、自身の病気、更年期のゆらぎ、認知症のはじまりとして、愛する人との死別などで、そして症状としては気持ちが沈む、というものです。
私もうつ病の既往があるのでよく分かりますが、気持ちが沈んでいる時は自分が幸せから世界で一番遠い存在であると感じます。そして幸せそうにしている人を見ると、余計に自分はどうしてこんなに不幸なのか、と感じます。
気持ちが落ち込むという状況は、自分以外の誰かがこの世にいるために生じると思います。世界に自分一人しかおらず毎日好きなように過ごせたとしたら、一人ぼっちで寂しいという気持ちさえ持たなければとても幸せで、気分が沈むということはないのではないかと思います。
ですから、まずは「幸せを感じる」ためには、自分と他人を比べない、他人がどう思おうと自分の幸せを自分の時間を追求する、5分でいいので一人の時間を作る、というのが大事なのかなと思います。
また、以前、テレビで精神腫瘍医の清水研さんとSUPER EIGHTの安田章大さんが対談をしていたのを見たのですが、そこで清水さんが日常の中での「Must(マスト、「~しなければならない」という意味)を捨てる」と気持ちが楽になる、という話をしていて、とても共感しました。
精神腫瘍医とは、がん患者及びその家族の精神心理的な苦痛の軽減および療養生活の質の向上を目的とし、薬物療法のみならず、がんに関連する苦悩などに耳を傾ける等、専門知識、技能、態度を用いて、誠意をもった診療に積極的にあたる意思を有した精神科医・心療内科医のことを指します。
自分もそうですが、気持ちの余裕がなくなってくると、あれをしなくちゃ、これをしなくちゃ、という気持ちで物事をこなしてしまいがちになります。
たとえば夕飯の支度一つであっても、「疲れてるのに、夕飯の支度をしないといけない」と思いながら作るのと、「疲れて帰ってくるみんなが、美味しい美味しいと言って食べてくれるような夕飯をつくっちゃうぞ~!」と思いながら作るのでは、全然大変さも楽しさも違うのが分かると思います。
逆に言えば、気持ちに余裕がなくなってしまっているのは、やろうとしていることのハードルが自分にとっては高いのかもしれません。
夕飯を作ることに気持ちの余裕が持てないのは、食事を作ること自体が苦手なのに「夕飯を作るのはお母さんがやるのが当然」と思っていませんか? 疲れているのに「夕飯のおかずは3品作らないとダメ」「必ず食事は手作りでないとダメ」と思っていませんか? 自分がこうしたい! と思う理想はあるかもしれませんが、その理想やゴール目標が高すぎると幸せを感じることから遠ざかる可能性があるのではないかなと思います。そして、そのハードルの高さにご自分で気づいていない人が多いのが事実です。
そうはいっても「幸せを感じられない!」という方は是非お気軽にご相談くださいね。(たかき医院・仲栄美子医師)