小林 幸一(津南案内人)
大正13(1924)年10月、秋山郷電源開発の象徴ともいえる中津川第一発電所が首都圏に向けて送電を開始して今年で百周年を迎えます。
水力発電所の立地条件には雪解け水を貯える広大な原生林と、何度も発電出来る落差のある地形、まさに苗場山麓ジオパークのエリアが発電の教科書に載っているような適地でした。
苗場山麓ジオパークガイド部会では昨年から発電所工事で開削された軌道跡や船着き場跡などを巡り、今年は運用開始百周年の記念事業として新たな探索コースを考えています。
その中でも町の中心部に近い芦ヶ崎の波止場では、護岸や岸に打ち込まれた係留金具や、岩の上で焼かれた燃えカスが、高熱で溶けガラス状のコーティングによって閉じ込められた焼却跡が見つかりました。中には小さな鉄くずやステンレス製の注射針のようなものが閉じ込められて、百年前のタイムカプセルのようです。
せっかく見つけた痕跡や護岸も大水が出ると流出してしまいます。「苗場山麓の自然に親しむ会」では、一昨年の黒石の波止場の調査に続き、昨年は芦ヶ崎の波止場の現地測量を実施しました。これを機に近代化遺産の保存活動が始まることを期待します。