表日本・裏日本? 能登地震が教える視点

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富山県制作の環日本海諸国図

藤ノ木信子 (清津川に清流を取り戻す会)

 能登の地震災害ではっきり分かったことがある。一つはこの国では原発との共存はできないということ。志賀原発や柏崎刈羽原発が運転停止していて、放射能災害が起こらなかったことは私は奇跡に近いと思っている。4㍍も隆起する地殻変動では冷却水すら得られない。運転期間60年に延長する原発推進法など以ての外、政府は自然の脅威を福島の災害から何も学んでいない。能登半島の道路は寸断され、港が隆起して船も近づけず、住民の避難が困難なこともよく分かった。
 二つ目は政府の災害対応がとにかく遅く、何としても国民を救うという当たり前の動きが止まっていたこと。元日というタイミングだったが災害に正月休みなどあるわけなく、後手後手の逐次投入だった。政財界の新年会が大事だった? 検察が入る前の隠蔽が忙しかった? つまり災害時も自助ってこと? と邪推したくなるほどイライラした。今後どんな災害が起こってもこの機能停止に近い状態が起こるから国民は覚悟しなければならない。
 ここからどう復興支援するかという難題をこの政権はクリアできるのだろうか。人口減少が急速に進み元通りにはならない。移住を選択する人もいるし、能登で暮らすことが幸せという人もいる。東北の災害後より難しいと感じるのは、復興についても政府の中に能登は裏日本の辺鄙な過疎地といった偏りが垣間見えるからだ。
 「あれれ? 日本列島が逆さまだよ」と思う地図がある。写真は富山県が制作した環日本海諸国図というもの。だから富山県が中心で南北は逆だけどこの向きで正しい。これを見ていると表日本・裏日本という言い方はおかしいなと思う。現に戦前は日本海側と太平洋側は人口も経済も大差はなく、もっと昔の北前船交易の頃は太平洋側より日本海側が主たる物流を担っていて、能登や加賀には豪商もあり文化交流盛んな表側だった。今でも大阪名物は北海道産の昆布の佃煮だし、輪島や佐渡、山形には上方の風習が残り、航路が見えるようだ。政府は近い将来起こると言われる南海トラフ地震で、太平洋沿岸に壊滅的被害を想定している。であればこの機に日本海物流の港湾整備をしておくのが重要だと思う。首都圏に電力を送るために原発を並べるだけが日本海側の役目ではない。
 それにこの地図を見ていると日本は近隣諸国と仲良くすることが大切と感じざるを得ない。ロシア・中国・北朝鮮・韓国と日本列島は手をつないで輪のように並んでいる…と思えるのは私だけだろうか?

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