豊かな水と赤いマグカップ

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照井 麻美(津南星空写真部)

 今も古い水道施設が残るT字路にちょこんと赤いマグカップが目に止まる。
 初夏の暑い日差しから木陰に入ったこの場所ではキンと冷えた水が今も道行く人の喉を潤している。
 少し行って国道に出ればキンキンに冷えた自動販売機の飲み物も買うことができるが、マグカップの様子からすると多少なりこの水を利用している人がいるのであろう。
 今では上水が完備され、山から引いた水も滅菌したものが水道から出てくることが当たり前になっているが、こうした雪解け水や清水が豊富にあるこの地域の水資源の豊かさにはいつも驚かされている。
 しかし、20年以上前から叫ばれていた地球温暖化により大きな気候変動が起こることによって、今まで当たり前だったものが少しずつ、いや、大きく変化してきている。
 今年は雪も例年より少なく梅雨入りも遅いため、世間ではすでに貯水池の水不足が心配され、豊かだと思われていた水資源はとても貴重なものだったと再認識させられる。
 移住してきた身としてはこれから暑さも厳しくなってくると思うと、まだ朝晩涼しさを感じられる山間地には住むことができても、昼夜問わず猛暑の東京には「もう住めない」と思ってしまうのである。