選挙イヤーとトランプ次期大統領

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時代の転換点か

清水 裕理 (経済地理学博士)

 今年は、世界中で多くの選挙が行われた注目の年で、米国、ロシア、台湾、韓国、インド、インドネシア、メキシコ、EUなどで、選挙が実施された選挙イヤーでした。
今年の初めごろは、日本では選挙の予定がなく、安定した政権が続くと余裕を感じていましたが、急転直下、10月に解散による衆議院選挙が行われ、結果は与党が負け、政権が一気に不安定化してしまいました。
 そこに、アメリカ・ファーストを掲げるトランプ氏が米国の大統領選挙に勝利して復活。うまく対峙するため、日本の首相には、今まで以上のリーダーシップが求められています。
 トランプ次期大統領の今後の政策を知るため、選挙中に行われた演説を、フルで聞きなおしてみました。
 演説で、最初に最も時間をかけて話がなされたのは、不法移民の問題でした。メキシコ国境からの不法移民により多くの国民が職を奪われ、侵略という言葉まで出るほど、大きな問題として捉えられていました。来年1月20日の就任1日目に、国境の壁の建設を強化すると発言しています。
 次に演説で力が入っていたのは、物価高に対する政策でした。具体的な対策について述べられており、物価高の主な原因は、太陽光などの自然エネルギーや電気自動車の利用にコストがかかりすぎていることとし、それならば米国の石油産業を復活させることで、コストを下げるとしています。
 これらの移民と物価高の問題は、日本でも問題になり始めており、半歩あるいは一歩先をいく米国で、思い切った対策を打ち出すとされるトランプ次期大統領の動きや、それによりもたらされる成果を、十分に参考としていくことが重要と思います。
 さらに気になるのが、いま米国にとっての最大の貿易赤字国である中国に対する強硬姿勢が、どのくらいになるかということです。今後、経済面と安全保障面の両面において、世界や東アジアでの緊張感が増すことになるかもしれません。
 また、国内産業を守るため、トランプ次期大統領は、国外からの輸入品に今までより高い関税を、どの国に対しても課すのではないかとされています。日本の輸出産業にどれくらいの影響がでるか…ディール(取引)外交を得意とするトランプ次期大統領ですので、ハードな交渉が考えられます。
 大きな時代の転換点を迎えているとされているいま、来年はそのことがより感じられ表面化してくる年になるかもしれないと思いました。

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