最近このコラムを毎回切り抜いてとっています、とお声がけいただきました。本当にありがとうございます。今日は、新しい妊婦さん対象の予防接種のお知らせです。
現在すでに妊娠中に接種可能なワクチンのある感染症に、インフルエンザ、新型コロナ、百日咳などがありますが、今年1月18日に妊娠中に接種して「新生児及び乳児のRSウイルス感染症の重症化を予防する」ワクチンが登場しました。
RSウイルスの予防については、今までは重症化リスクのある児(早産児や先天性心疾患など基礎疾患のあるハイリスク児)に対してワクチン接種をしてきました。しかし、重症化リスクは基礎疾患のない正期産の子どもにもあり、しかも近年は流行の季節性もなく、現在RSウイルス感染症は乳児に限らず親にとっても極めて重要な疾病です。
RSウイルス感染症は5類感染症に指定されており、生後1歳までに50%以上が、2歳までにほぼ100%が初感染しますが、症状は熱や倦怠感などの風邪症状から上気道症状(鼻閉、鼻水、くしゃみ)、下気道症状(咳、呼吸困難、喘鳴)まで様々です。
成人にとっては鼻がグズグズする程度で済むことがほとんどですが、特に生後6ヵ月未満では重症化しやすく、肺炎、無呼吸、急性脳症なども引き起こします。
生後間もなくRSウィルスに感染した子どもは、その後に気管支喘息を生じるとの関係性も指摘されています。日本では、年間12~14万人の2歳未満の乳幼児がRSウイルス感染症と診断され、そのうち3万人が人院を要し、入院発生数は生後1~2ヵ月時点でピークとなり、人工呼吸器管理となる場合も多々あります。また、対症療法が基本で有効な治療薬はありません。そのため予防が重要です。
このワクチンを妊婦に接種することにより、RSウイルスに対する抗体が母体で作られ、そして抗体が胎盤を通じて胎児に移行することで、新生児および乳児におけるRSウイルスを原因とする下気道疾患を防ぐことができます。妊娠24週から36週の妊婦に1回筋肉内接種をします。ワクチンの効果は生後6ヵ月まで続きます。
残念ながら今はこのワクチンに対して公費補助が無いため、希望者に限り自費で接種する形となります。妊婦さんへの副反応としては、注射部位の疼痛くらいで、重篤な全身症状などはないとのことです。
新型コロナ感染症が2類から5類になり、今年は春から子どもたちを中心に様々な感染症が流行りました。そのうちの一つにRSウイルス感染症もありましたが、生後間もない赤ちゃんたちが今年は多く感染し、重症化して入院したという話を聞きました。
まず赤ちゃんが家族にいらっしゃるご家庭の方は、重症化のリスクが高い生後3ヵ月になるまで赤ちゃんには風邪を引かせないように慎重になってください。
大人のちょっとした風邪症状でも赤ちゃんにとっては命取りになる感染症かもしれません。上にお子さんのいる方は特に注意が必要です。心配な時はどうぞ妊娠中のRSワクチン接種をお考え下さいね。(たかき医院・仲栄美子院長)
2024年7月6日号
「新潟で雪が降っている匂いがする」。埼玉で大学時代を過ごしていた私が、雪国育ちなんだなぁと実感した瞬間でした。私が過ごしていた埼玉は、最寄り駅には数時間に1本ディーゼル車が通り、森の中の神社の境内で流鏑馬が行われるような所でした。
でも、田舎といえどそこは埼玉、年に数回しか降らない雪にみんなてんてこまいでした。そこにいると、はっきりと新潟で雪が降っている匂いが分かるのです。十日町から離れて初めて知った感覚でした。そして、「今日は雪」という天気予報で心配している同級生に「大丈夫、降らないよ。雪になる匂いがしないもん」と言って当てるため、びっくりされたものでした。
最近自分が元気でいるため、そして自分を忘れないために何が必要かを考えたとき、自分の五感を刺激することが重要ではないかと思いました。
まず視覚(見る)。意識的に見るのです。自分の好きなもの、美しいと感じるもの、そこに多くの色彩とそれを輝かせる光があることを脳みそ全体で感じます。
そして聴覚(聴く)。早朝散歩がマイブームの私は、あえて車通りの無い方へ向かいます。靴底が土をとらえる音、木々の梢を風が揺らす音、田んぼに引かれる水の流れる音、鳥のさえずり、大きな欅の木の声など。静寂すらそれも音。外に出る時はイヤホンで音楽を聴かないのが私は好きです。
味覚(味わう)。長年の癖で早食いになってしまうので、ひとりでご飯を食べる時ほどゆっくりと味わって食べたいと思っています。
嗅覚(嗅ぐ)。職場の同僚がある日、「玄関を出てクサッ! と思ったら、栗の花がすごかった」と。自分が感じ切れていない匂いはまだまだあるのだなと思いました。四季を感じる匂い、これを読んでいる皆さんの方がたくさん知っているのではないでしょうか。
触覚(皮膚で感じる)。私は「土に触れる」、これをしたいがために田舎に戻ってきたと言っても良いくらいです。昨日、今年初めて我が家の猫の額ほどの家庭菜園できゅうりの収穫をしました!やったー。
米国のある博士が仏教の瞑想を医療の分野に持ち込み、宗教的要素を取り除いて科学的に効果を実証させたものに、マインドフルネスがあります。マインドフルネスにはレーズンを食べる瞑想があるのですが、手の上の一粒のレーズンを見て耳元で音を聴いて匂いを嗅いで唇で触って、そして口に入れしばらく舌の上で転がした後に噛むのです。(一口で食べられるものなら何でもよく、甘納豆や焼き甘栗などで代用可)。
レーズンがどんなところでどんな人の想いで作られ自分のところにやってくる過程を想像し、また自然の恵みに感謝する気持ちを巡らす、そうすると幸福感で満たされる、と。
まさに五感を刺激する食べ方です。一粒食べきるのに最低10分はかかるでしょう。たかき医院にも五感を刺激する工夫が沢山あります。診察が無くても是非体と心を休めにお立ち寄りください。
(たかき医院・仲栄美子院長)
2024年6月22日号
「泣きながら歯を食いしばってなんてしていません。毎日笑いながらやっています」。先月、全国の産婦人科医が一堂に集まる日本産婦人科学会に行って来ました。今回、学会内の特別プログラムとして辻井伸行さんのピアノコンサートがあると聞き、こんな機会は無いと自分の休診を利用して、主にコンサートに参加してきました。
コンサートは圧巻! 久しぶりにライブ演奏を聴いたというのもあるのでしょう。彼作曲のオリジナル曲から、よく知られているクラシックの曲まで、60分という短い時間の中でトークを交え、立て続けに10曲近く演奏してくださいました。あまりに感激して、しばらくの間YouTubeなどでプログラムにあったピアノ曲を何度も何度も聴きました。
なぜ辻井伸行さんが学会でピアノコンサートを演奏して下さったかというと、彼のおじいさん、おじさん、お父さんは産婦人科医なのです。そのつながりで出演依頼があり、今回のコンサート開催に至ったのだと思います。
コンサートに先立ち、会場にお父さんからの挨拶動画が流れました。自分の結婚から辻井伸行さんの誕生、目が見えないと分かった時、音楽が好きでおもちゃのピアノを与えたら、3歳でお母さんの歌うジングルベルに合わせて伴奏を弾いたこと、そこからピアノの道へ、などのお話をお聞きしました。
その話の中で以前取材に来た記者さんが「歯を食いしばって1日に何時間も血へどを吐くような練習をされているのでしょうね?」と聞いてきた時に、お父さんが「1日に8時間も練習していますが、彼がそんな苦しい様子で練習している様子は、一度も見たこと無いですよ」と冒頭の話をしたとか。このお父さんの言葉はとても印象に残りました。
私は、先月4月より院長に就任し、毎週木曜日は魚沼基幹病院より経験豊かな先生方と一緒に仕事を、さらに月に一度は週末には新潟大学病院からの先生をお招きして仕事のサポートをお願いすることになりました。
私が過労でたかき医院を続けられなくなり、地域のお産できる病院を一つ潰してしまわない様にとの各方面からのご配慮です。
気が小さい私は、どんな毎日になるのだろうかと、4月初めは原因の分からない胃の痛みに苛まれましたが、始まって見れば外部からいらっしゃる先生方に最新の医療技術のお話を聞いたり、患者様のことで気軽に相談出来たりと良いことばかりでした。
特に基幹病院の先生方は優しく丁寧な先生ばかりで安心しました。患者様もわざわざ峠を越えなくても専門的な診療が受けられ、手術の相談やセカンドオピニオンなどが自宅近くで出来ることになったので、本当に良かったのではないかと思っています。
3重苦のヘレン・ケラーの生前の言葉に「友達がいれば、毎日世界は変わります」があります。引っ込み思案な私ですが、新たな扉を開けてたくさんの方と知り合い、その手を借りながら毎日楽しく仕事を続けていきたいと思っています。
ぜひその手を貸してくださるという方は、たかき医院の健闘を「産声を上げた働き方改革~医療現場のジレンマ~」、NST新潟総合テレビ5月25日午後2時からのドキュメンタリー番組でご覧ください! (たかき医院・仲栄美子院長)
2024年5月25日号
春ですね。ゴールデンウィークも良い天気で、少し暑いくらいでしたが、本当に気持ちの良いお休みを過ごしました。これだけ天気が良いとウキウキしてきて、どこかに出かけたくなりますよね。
そんな春といえば、前回は木の芽どきの話をしました。今回は「春は変質者や不審者が増える」とよく聞きますが、本当のことなのか、について。 私が小学生の頃(すでに時は35~40年昔にさかのぼりますが)は、春先には県外ナンバーの「当たり屋」に気をつけろ、という話をたびたび耳にしたことがあったように記憶しています。
さて、「不審者」という定義を「痴漢、露出、声掛け、つきまとい、盗撮、のぞき、暴行、強迫、危険物所持など」とした場合に、とある会社が警察からの情報をもとに分析を行ったところ、やはり4~5月から不審者情報の報告数が増加し始めるのが分かったそうです。理由としては、不審者も春はお出かけ気分になるからなのではないか、とか。
ちなみに、春の時期に見られる「不審者からの声掛け」のパターンとしては、「何歳? 何年生?」「お母さんが病院に運ばれた。今すぐ来て。いいから来て」「お母さんが死んじゃった。お父さんは会社にいるから乗って」「さわってくれたら、100円上げる。」「パンツの色は何色?」「トイレについてきて」「一緒に写真を撮ろう/写真を撮ってもいい?」「お菓子をあげるからおいで」「(お金を支払うから)下半身を見てほしい」だそうです。十日町市内でもここ数年、写真を撮る不審者がたびたび目撃されていますが、特に春は注意が必要なのかもしれません。
この原稿を書くために小学生の娘に不審者の話をしていたら、「『いかのおすし』だよ!」と自慢げに鼻を鳴らしながら教えてくれたので、小さなお子さんのいらっしゃる方はもうとっくに知っておられるかと思いますが、あげておきますね。
〇知らない人にはついて「いか」ない
〇声をかけられても車には「の」らない
〇知らない人に連れていかれそうになったら「お」おごえを出す
〇声をかけられたり追いかけられたりしたら「す」ぐに逃げる
〇怖いことにあったり見たりしたら、すぐに大人に「し」らせる
これが『いかのおすし』です。若干無理やりな感じもしますが、頭のどこかに入れていただいて、お子さんと一緒にそのつど声に出して復唱してくださいね。
以前埼玉に住んでいたころですが、ファミレスに友人と入ったときにパソコンをうっかり車の中に置いていってしまったところ、鍵を開けられパソコンを盗まれるという災難に遭いました。ウキウキしているとうっかりが生じます。
大事なものからは手を離さないようにお気を付けください。そしてうっかりといえば、病院受診の際は保険証を持って出たか、保険証の有効期限は大丈夫か、を必ず確認してくださいね。(たかき医院・仲栄美子院長)
2024年5月11日号
先週は市内のあちこちの桜が満開で、春が来たな~と気温の上昇と共に心も温かくなりました。我が家の玄関先にある、いつからか根付いたのか分からないアケビの木からも木の芽が伸びてそろそろ収穫を迎えます。
この時期まさに『木(こ)の芽どき』といいます。正確には立春から春分までの期間を指します。ざっくりいうなら、この冬から春にかけての季節の変わり目は気温の変化が大きく体調を崩しやすい時期のため、昔の人たちは代々、病気に注意するよう言い伝えてきたわけです。
春先はなんだか眠くて仕方がない、天気は良いのに布団から出るのが億劫で「春眠暁を覚えず」という方も多いのではないでしょうか。これも季節の変わり目で気圧や気温の大きな変化が大きく、自律神経のバランスを乱すためです。
春先は自律神経のうち、体を休めるための副交感神経の方が、活発に動くための交感神経より働きが強まるため、眠気が強まるのです。また、気圧や湿度の関係で頭痛を感じやすくなりますので、外来診療をしていても、頭痛薬をくださいと言われる方が多いのは確かです。
そして気持ちが落ち込むなどの症状を訴える方も増えてきますので、もともとメンタル不調をお持ちの方は、あえて調子が良くても薬の変更は延期するなど注意が必要です。
この気持ちの面での不調は、季節の変わり目の気候の大きな変動が影響するだけでなく、転居、転勤、異動、入学、就職などの環境の変化も大きく影響をします。気持ちの不調が体調の不調症状を引き起こす方もいます。
ですので、これからやってくるゴールデンウィークは天気も良く家族や友人が出かけようとお誘いをかけてくるかもしれませんが、気持ちが乗らない時には体も心も疲れている証拠ですので、勇気をもって断って自宅でしっかり休む、自分の気持ちに素直に行動する、ということを大事にしていただきたいと思います。
というのも、この『木の芽どき』にかかった負担をそのままにしておくと、ゴールデンウィークが終わった5月にうつ病に進んでしまうことがあります。いわゆる『5月病』です。なので、今この時期に頑張りすぎない、我慢しすぎない、自分がリラックスできる時間をなるべく持つ、ということはとても大事なのです。
特に「~しなくちゃ」を口にしたり考えてしまった人は、その言葉を思い浮かべた時点で自分にかなり負担がかかっていると気づいて欲しいなと思います。
あとは何度もお話したことがありますが、うつ病にならないために大事なことは「つながること」です。信頼できる人に自分のつらい気持ちを伝えること、もしくは病院などを受診して相談するのも良いでしょう。
眠れない、寝てもすぐ目が覚める、食欲がない、食べ物を美味しいと感じない、笑うことが無くなった、楽しみを見つけられない、人に会うのが億劫、そんなことが少しでもあったら早めにお気軽にご相談くださいね。
(たかき医院・仲栄美子院長)
2024年4月20日号
実家の十日町市に戻ってきてから、母のやっていた講演会活動を引き継いで、かれこれ16年目に入ります。最近、中学校で性のお話講演会をさせていただくときに、この質問よく受けるなあというものがあります。それは、「必ず結婚しないとダメですか?」「子どもを産まないとダメですか?」です。
先月2月27日に厚生労働省は人口動態統計の速報値を公表し、それによると2023年の出生数は過去最少の75万8631人(前年比マイナス1万116人)で、 婚姻件数も戦後初めて50万組を下回り、48万9281組となったとのこと。これは国立社会保障・人口問題研究所の推計より、およそ12年早いペースで少子化が進んでいるということなのだとか。16年前にちょうど「草食系男子」ということばが流行語大賞になりましたが、今の様子は草食系を通り越して「絶食系」に近いともいえます。
性のお話講演会は全国的に、以前は怖がらせて安易な性行為はやめさせよう、といった傾向が強かったのですが、最近は少子化を少しでも解消するために、「なるべく子どもを産みたいと思う話をしよう!」という風潮になっているようです。でもどうして既に中学生たちは、その年齢で「結婚したくない」「子どもを産みたくない」と思っているのでしょうか?
『SRHR』という言葉を知っていますか。英語のSexual and Reprod
uctive Health and Rightsの頭文字をとったもので、日本語では、「性と生殖に関する健康と権利」と訳されます。具体的に言うと、Sexual Health(性の健康)=自分の「性」に関することについて、心身ともに満たされて幸せを感じられ、またその状態を社会的にも認められていること。Reproductive Health(生殖の健康)=妊娠したい人、妊娠したくない人、産む・産まないに興味も関心もない人、アセクシャルな人(無性愛、非性愛の人)問わず、心身ともに満たされ健康にいられること。Sexual Rights(性の権利)=セクシュアリティ「性」を、自分で決められる権利のこと。自分の愛する人、自分のプライバシー、自分の性的な快楽、自分の性のあり方(男か女かそのどちらでもないか)を自分で決められる権利のこと。Reproductive Rights(生殖の権利)=産むか産まないか、いつ・何人子どもを持つかを自分で決める権利。妊娠、出産、中絶について十分な情報を得られ、「生殖」に関するすべてのことを自分で決められる権利のこと、です。また、これらの権利は、『生まれながらに持つべき権利(人権)』であり、どう人生設計するのかは個人個人が決めたらよいことではあるが、そのためには十分な情報を各自がしっかりと得る必要があることも明記されています。
3月8日は国際女性デーでもありました。それにちなんで『SRHR』についてタレントのIMALUさんが中心になってやっているYouTube番組「ハダカベヤ」に出させていただきました。もし良かったら、3月25日から公開されていますので見てみてくださいね!
「結局は未来の産んだ子どもの生活に不安があるから産まないんだよ」という意見でその場にいた友人たちがみんな納得したんだよと教えてくださった方がいます。中学生たちも同じなのでしょうか? 何が不安なのか、なぜこれから子どもを産む年齢の若い人たちがそう思うのかをもっと政府が汲み取らなければ、とても少子化は解決しそうにありません。私も講演活動を通じて、今後そのあたりを追求していきたいと思います。(たかき医院・仲栄美子医師)
2024年3月30日号
「全国なかさとサミット」といって、青森県中里町(現中泊町)と群馬県中里村(現神流町)と沖縄県久米島の仲里村(現久米島町)と十日町市に合併前の中里村の、合わせて4つの町村で盛んに交流をしていた時期がありました。今でも久米島の知り合いからはマンゴー、島バナナ、ドラゴンフルーツなどの南国の果物が届きます。
果物は美味しいですね。でも、私は果物を食べる時、実は少し心配しながら食べています。それは私が「ラテックス」にアレルギーがあるからです。
ラテックス、つまり仕事中にするゴムの手袋です。医者にとってはいわゆる職業病ともいえます。大学病院に勤務中、麻酔科に研修に行っていた時に、ある日、ゴムの手袋をして患者さんの麻酔を行ったところ、手袋が触っていた皮膚が真っ赤になってかゆくなった上に、なんだか気道がヒューヒューいうような感じがあり、上司の先生に相談したところ「それはラテックスアレルギーだから、今度から使わない方がいいよ」といわれたのがきっかけでした。それ以来ゴムの手袋は使っていません。
ラテックスアレルギーと果物に何か関係があるの? なのですが、実は「ラテックス・フルーツ症候群」という現象があるのです。ラテックスアレルギーを起こす抗原たんぱく質と野菜や果物のアレルギーを起こす抗原たんぱく質が似ていることから、ラテックスアレルギーの患者さんの30~50%で、新鮮な果物やその加工品を摂取した際に、口腔アレルギーの症状(口の中の違和感やピリピリ感)、気道がヒューヒューいう喘鳴、じんましんやアナフィラキシーショックなどを起こすことを指します。
さまざまな果物で起こる場合があるのですが、特にアボカド、キウイ、バナナ、クリはハイリスクとのことです。
このアレルギーを起こす抗原たんぱく質が似ていることから、思わぬアレルギーを生じることを交差反応(こうさはんのう)といいます。今年は雪が少ないためにすでに花粉症の症状で困られている方もいらっしゃるかもしれませんが、花粉症にも交差反応を起こすものがあります。
たとえば春の花粉症で有名なスギ花粉にアレルギーのある人はトマトに、秋の花粉症で有名なブタクサにアレルギーのある人はスイカ、メロン、バナナに気をつけた方が良いです。
その他、ハンノキにアレルギーのある人はバラ科のリンゴ、モモ、イチゴ、ウリ科のスイカ、メロンなどに、シラカンバにアレルギーのある人は同じくバラ科の果物のほかにナッツ類やマスタードなどに、イネ科の植物にアレルギーのある人はメロン、スイカ、トマト、ジャガイモ、タマネギ、オレンジ、セロリ、キウイなどに気をつけた方が良いことが分かっています。果物や野菜にアレルギーのある人は逆に植物のアレルギーが出る可能性があります。
今までお話したものはアレルギー抗原に接してすぐに症状の出る即時型アレルギーというもので、最近はよくあるアレルギーの抗原36項目を一回で調べられる検査などがありますが、まだ一般的ではないもののアレルギー抗原に接してから数日たって症状の出る遅延型アレルギーなども検査できるようになってきています。
ただし、なかなか自分のアレルギーの原因はこれ!と全部調べきれないのも事実です。それでもアレルギー抗原が気になる方は是非当院もしくはお近くのかかりつけ医にお気軽にご相談くださいね。(たかき医院・仲栄美子医師)
2024年3月16日号
前回、「幸せの順番」についてお話しました。今回はその続き、「幸せを感じるために」についてお話します。
私の勤めている医院は産婦人科が専門ですが、日々さまざまな年代の方の気持ちの不調についてご相談を受けます。理由はいろいろで、友人や家族との人間関係、学校の先生との人間関係、職場の人間関係、過重労働、元々のコミュニケーション能力の低さによる社会への適応障害、自身の病気、更年期のゆらぎ、認知症のはじまりとして、愛する人との死別などで、そして症状としては気持ちが沈む、というものです。
私もうつ病の既往があるのでよく分かりますが、気持ちが沈んでいる時は自分が幸せから世界で一番遠い存在であると感じます。そして幸せそうにしている人を見ると、余計に自分はどうしてこんなに不幸なのか、と感じます。
気持ちが落ち込むという状況は、自分以外の誰かがこの世にいるために生じると思います。世界に自分一人しかおらず毎日好きなように過ごせたとしたら、一人ぼっちで寂しいという気持ちさえ持たなければとても幸せで、気分が沈むということはないのではないかと思います。
ですから、まずは「幸せを感じる」ためには、自分と他人を比べない、他人がどう思おうと自分の幸せを自分の時間を追求する、5分でいいので一人の時間を作る、というのが大事なのかなと思います。
また、以前、テレビで精神腫瘍医の清水研さんとSUPER EIGHTの安田章大さんが対談をしていたのを見たのですが、そこで清水さんが日常の中での「Must(マスト、「~しなければならない」という意味)を捨てる」と気持ちが楽になる、という話をしていて、とても共感しました。
精神腫瘍医とは、がん患者及びその家族の精神心理的な苦痛の軽減および療養生活の質の向上を目的とし、薬物療法のみならず、がんに関連する苦悩などに耳を傾ける等、専門知識、技能、態度を用いて、誠意をもった診療に積極的にあたる意思を有した精神科医・心療内科医のことを指します。
自分もそうですが、気持ちの余裕がなくなってくると、あれをしなくちゃ、これをしなくちゃ、という気持ちで物事をこなしてしまいがちになります。
たとえば夕飯の支度一つであっても、「疲れてるのに、夕飯の支度をしないといけない」と思いながら作るのと、「疲れて帰ってくるみんなが、美味しい美味しいと言って食べてくれるような夕飯をつくっちゃうぞ~!」と思いながら作るのでは、全然大変さも楽しさも違うのが分かると思います。
逆に言えば、気持ちに余裕がなくなってしまっているのは、やろうとしていることのハードルが自分にとっては高いのかもしれません。
夕飯を作ることに気持ちの余裕が持てないのは、食事を作ること自体が苦手なのに「夕飯を作るのはお母さんがやるのが当然」と思っていませんか? 疲れているのに「夕飯のおかずは3品作らないとダメ」「必ず食事は手作りでないとダメ」と思っていませんか? 自分がこうしたい! と思う理想はあるかもしれませんが、その理想やゴール目標が高すぎると幸せを感じることから遠ざかる可能性があるのではないかなと思います。そして、そのハードルの高さにご自分で気づいていない人が多いのが事実です。
そうはいっても「幸せを感じられない!」という方は是非お気軽にご相談くださいね。(たかき医院・仲栄美子医師)
2024年3月2日号
先日、5年以上ぶりに高校時代の同級生と土市の松海寿司さんで食事をした後、近くの「音鳴り」さんで二次会、カラオケで大きな声で笑って楽しみました。店内でご一緒させていただいた土市町内の皆さんとの昭和の名曲リレーで若かりし頃のエネルギーを思い出し、元気になりました。ありがとうございます!
美空ひばりさんの名曲・みだれ髪を聴きながら姉がポツリ「美空ひばりほど歌えたらいいのになぁ。でも、プライベートはあまり幸せではなかったんだよね」とつぶやいたので、「人生において良いことと悪いことは同じだけやってきて最後はプラスマイナスゼロになるんだよ」と私が答えると、姉が最後に「でも自分の今はプラスの方が多い気がするな」と言ったので、妹としては良かったなと思った次第です。
誰でも幸せになりたいと思いますよね。そして人生においてプラスが多い方が良いと思うのは当然です。果たして「幸せ」とは?「幸せ」とはどういう状態を指し、その「幸せ」とは、どうしたらやってくるのでしょう? みなさんにとっての「幸せ」とは何ですか?
精神科医の樺沢紫苑さんは、幸せを得るためには順番がある、と言います。まず幸せになる第一歩は「自分の体と心の安定」が保たれていることから始まる、と。自分が平らで穏やかな状態であるということが基本として無ければ、本当の幸せは訪れないという意味です。
そして第二歩は「人間関係の安定」があること。自分だけでなく周囲の状態が平らで穏やかである状態が本当に幸せになるには必要です。そして最後に「金銭的な安定」がある、という順番です。 別の視点から言えば、金銭的な幸せを得たくても、自身の心身の安定と周囲の人間関係の安定が無いところには、金銭的な幸せはやってこないということになります。なかなかシビアな話だなと思います。
次に、私たちの脳の中にある「幸せを感じさせる」物質、という視点で「幸せ」を見てみます。すると、まず幸せになる第一歩に必要なのはセロトニンという物質です。体や心が気持ちいいと感じる時に出る物質で、不足するとうつ状態になります。うつ状態になれば「自分の体と心の安定」から離れてしまいますし、周囲との良い人間関係を構築するのは困難な状態になります。
では充足された場合、第二歩で必要なのはオキシトシンという物質です。赤ちゃんにおっぱいをあげる、恋人と触れ合う、友人とハグする、子どもを抱っこする、などで多く分泌されるため、「人間関係の安定」に重要な物質といえます。そして最後にドーパミンという物質です。目標を達成したり、成功や昇給、褒められたりした時に出る物質で意欲につながります。「金銭的な安定」あるいは言い換えると、自分にとって最終的に到達したいゴール、自分にとっての最終的な「幸せ」につながる物質といえるかもしれません。
この3つの物質のどれかが欠けても幸せを感じることはできないので、「幸せを感じさせる」物質という視点でも、幸せになるための順番というのはあるのかもしれません。
私はよく中学生たちに「幸せは自分の手の中にあるんだよ」と話をします。そしてまずは「自分を大事にするというのを忘れないでね(そこから幸せは始まるよ)」とも話しています。理屈では分かっていても「幸せ」を感じにくいという方は、次回の続きをまた楽しみにしていてください。待ちきれない方はどうぞお気軽に医院までご相談くださいね。
(たかき医院・仲栄美子医師)
2024年2月10日号
新年あけましておめでとうございます。雪の少ない年末年始で、初詣に行くにも良い塩梅だと思っていた矢先に大地震と飛行機事故。なんだか不穏な1年の幕開けとなりました。
ある筋の方々からよく言われていたのは、2023年から3年間は大きく自分や社会が変わる、いわゆる「激動の年」の真っただ中にいるのだということ。それを踏まえると、いつもと違う年明けになっているのも当然なのかもしれません。
大きく変わるなんてなんだか嫌だなぁ、1週間後に何が起きているか分からないのは不安、すでに変化に巻き込まれて起きてしまったことから立ち直れず悲しみにふさぎ込んでいる、そんな方がおおいのではないでしょうか。でも、私たちは命がある限り前へ進んでいかなければなりません。
今日は、そんな自分たちの一歩が明るい未来につながる話をしてみたいと思います。
皆さんは「歩幅」というのを意識したことがありますか? 私たちが歩くとき、歩幅の平均は「身長×0・45」と言われています。つまり私は154㌢ですので、154㌢×0・45=69・3㌢が私の歩幅の平均です。横断歩道の白線の幅は約45㌢なので、意識しなくても白線をまたげるくらいで歩けると良いようです。
歩幅が広がると何に良いかというと、主に次の4つがあげられます。①下半身の筋力がアップするとメラニン生成を抑制する物質が増えます。血行や代謝が上がって皮膚のターンオーバーが整って透明感のある肌になります。②体の中の大きな筋肉である腰、太もも、お尻の筋肉を動かすので消費エネルギーが増え痩せやすい体になります。さらに骨盤を立てて歩くとポッコリお腹や反り腰が改善します。③良い姿勢で歩くと目からの光を取り込みやすくなり、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの分泌が増えてポジティブ思考になる上に睡眠の質も上がります。④骨盤を立てた良い姿勢で歩くことで骨盤底筋を鍛えることができ、尿もれ・腰痛・便秘・冷え性・胃の不調などが改善します。
ちなみに女性の8割は反り腰になっているといわれていますが、反り腰でいると巻き肩・肩こり、ストレートネック、ネガティブ思考、口角が下がって二重アゴで老け見え、腰痛、ポッコリお腹、ヒップのたるみ、骨盤底筋の筋力低下を引き起こします。
壁に後頭部、肩甲骨、お尻、かかとの4点をつけて立った時に腰と壁の間に手のひらが2枚以上入る人は反り腰です。全身が映る姿見がある方は是非自分の立ち姿勢を横から見て、耳の穴、肩の中央、くるぶしの3点が地面に垂直な一直線になるように立ち、その姿勢を保ったまま3分間腹式呼吸をするだけで、かなり体の痛みや肌の不調が改善するはずです。
歩くことに余裕がある方は、お尻に軽く両手を当ててお尻の筋肉が動くのを感じながら1分歩き、次に下腹部のお肉を両手で軽く押し込みながら1分歩き、最後の1分は足と腕をリズミカルに動かしながらリラックスして歩く、この3分ウォークを1日1回で良いのでやると、歩幅が広がり、痩せやすい体になり、反り腰も改善されるそうです。「おさんぽ整体」といわれる方法だそうです。
良い姿勢で大きく一歩を踏み出し、ポジティブ思考で激動の年を体も心も軽く乗り切っていきましょう!立つのも歩くのもしんどいという方は、座っているだけで同じような効果を得られる当院のエムセラを是非お試しくださいね。(たかき医院・仲栄美子医師)
2024年1月13日号
最近このコラムを毎回切り抜いてとっています、とお声がけいただきました。本当にありがとうございます。今日は、新しい妊婦さん対象の予防接種のお知らせです。
現在すでに妊娠中に接種可能なワクチンのある感染症に、インフルエンザ、新型コロナ、百日咳などがありますが、今年1月18日に妊娠中に接種して「新生児及び乳児のRSウイルス感染症の重症化を予防する」ワクチンが登場しました。
RSウイルスの予防については、今までは重症化リスクのある児(早産児や先天性心疾患など基礎疾患のあるハイリスク児)に対してワクチン接種をしてきました。しかし、重症化リスクは基礎疾患のない正期産の子どもにもあり、しかも近年は流行の季節性もなく、現在RSウイルス感染症は乳児に限らず親にとっても極めて重要な疾病です。
RSウイルス感染症は5類感染症に指定されており、生後1歳までに50%以上が、2歳までにほぼ100%が初感染しますが、症状は熱や倦怠感などの風邪症状から上気道症状(鼻閉、鼻水、くしゃみ)、下気道症状(咳、呼吸困難、喘鳴)まで様々です。
成人にとっては鼻がグズグズする程度で済むことがほとんどですが、特に生後6ヵ月未満では重症化しやすく、肺炎、無呼吸、急性脳症なども引き起こします。
生後間もなくRSウィルスに感染した子どもは、その後に気管支喘息を生じるとの関係性も指摘されています。日本では、年間12~14万人の2歳未満の乳幼児がRSウイルス感染症と診断され、そのうち3万人が人院を要し、入院発生数は生後1~2ヵ月時点でピークとなり、人工呼吸器管理となる場合も多々あります。また、対症療法が基本で有効な治療薬はありません。そのため予防が重要です。
このワクチンを妊婦に接種することにより、RSウイルスに対する抗体が母体で作られ、そして抗体が胎盤を通じて胎児に移行することで、新生児および乳児におけるRSウイルスを原因とする下気道疾患を防ぐことができます。妊娠24週から36週の妊婦に1回筋肉内接種をします。ワクチンの効果は生後6ヵ月まで続きます。
残念ながら今はこのワクチンに対して公費補助が無いため、希望者に限り自費で接種する形となります。妊婦さんへの副反応としては、注射部位の疼痛くらいで、重篤な全身症状などはないとのことです。
新型コロナ感染症が2類から5類になり、今年は春から子どもたちを中心に様々な感染症が流行りました。そのうちの一つにRSウイルス感染症もありましたが、生後間もない赤ちゃんたちが今年は多く感染し、重症化して入院したという話を聞きました。
まず赤ちゃんが家族にいらっしゃるご家庭の方は、重症化のリスクが高い生後3ヵ月になるまで赤ちゃんには風邪を引かせないように慎重になってください。
大人のちょっとした風邪症状でも赤ちゃんにとっては命取りになる感染症かもしれません。上にお子さんのいる方は特に注意が必要です。心配な時はどうぞ妊娠中のRSワクチン接種をお考え下さいね。(たかき医院・仲栄美子院長)
2024年7月6日号
「新潟で雪が降っている匂いがする」。埼玉で大学時代を過ごしていた私が、雪国育ちなんだなぁと実感した瞬間でした。私が過ごしていた埼玉は、最寄り駅には数時間に1本ディーゼル車が通り、森の中の神社の境内で流鏑馬が行われるような所でした。
でも、田舎といえどそこは埼玉、年に数回しか降らない雪にみんなてんてこまいでした。そこにいると、はっきりと新潟で雪が降っている匂いが分かるのです。十日町から離れて初めて知った感覚でした。そして、「今日は雪」という天気予報で心配している同級生に「大丈夫、降らないよ。雪になる匂いがしないもん」と言って当てるため、びっくりされたものでした。
最近自分が元気でいるため、そして自分を忘れないために何が必要かを考えたとき、自分の五感を刺激することが重要ではないかと思いました。
まず視覚(見る)。意識的に見るのです。自分の好きなもの、美しいと感じるもの、そこに多くの色彩とそれを輝かせる光があることを脳みそ全体で感じます。
そして聴覚(聴く)。早朝散歩がマイブームの私は、あえて車通りの無い方へ向かいます。靴底が土をとらえる音、木々の梢を風が揺らす音、田んぼに引かれる水の流れる音、鳥のさえずり、大きな欅の木の声など。静寂すらそれも音。外に出る時はイヤホンで音楽を聴かないのが私は好きです。
味覚(味わう)。長年の癖で早食いになってしまうので、ひとりでご飯を食べる時ほどゆっくりと味わって食べたいと思っています。
嗅覚(嗅ぐ)。職場の同僚がある日、「玄関を出てクサッ! と思ったら、栗の花がすごかった」と。自分が感じ切れていない匂いはまだまだあるのだなと思いました。四季を感じる匂い、これを読んでいる皆さんの方がたくさん知っているのではないでしょうか。
触覚(皮膚で感じる)。私は「土に触れる」、これをしたいがために田舎に戻ってきたと言っても良いくらいです。昨日、今年初めて我が家の猫の額ほどの家庭菜園できゅうりの収穫をしました!やったー。
米国のある博士が仏教の瞑想を医療の分野に持ち込み、宗教的要素を取り除いて科学的に効果を実証させたものに、マインドフルネスがあります。マインドフルネスにはレーズンを食べる瞑想があるのですが、手の上の一粒のレーズンを見て耳元で音を聴いて匂いを嗅いで唇で触って、そして口に入れしばらく舌の上で転がした後に噛むのです。(一口で食べられるものなら何でもよく、甘納豆や焼き甘栗などで代用可)。
レーズンがどんなところでどんな人の想いで作られ自分のところにやってくる過程を想像し、また自然の恵みに感謝する気持ちを巡らす、そうすると幸福感で満たされる、と。
まさに五感を刺激する食べ方です。一粒食べきるのに最低10分はかかるでしょう。たかき医院にも五感を刺激する工夫が沢山あります。診察が無くても是非体と心を休めにお立ち寄りください。
(たかき医院・仲栄美子院長)
2024年6月22日号
「泣きながら歯を食いしばってなんてしていません。毎日笑いながらやっています」。先月、全国の産婦人科医が一堂に集まる日本産婦人科学会に行って来ました。今回、学会内の特別プログラムとして辻井伸行さんのピアノコンサートがあると聞き、こんな機会は無いと自分の休診を利用して、主にコンサートに参加してきました。
コンサートは圧巻! 久しぶりにライブ演奏を聴いたというのもあるのでしょう。彼作曲のオリジナル曲から、よく知られているクラシックの曲まで、60分という短い時間の中でトークを交え、立て続けに10曲近く演奏してくださいました。あまりに感激して、しばらくの間YouTubeなどでプログラムにあったピアノ曲を何度も何度も聴きました。
なぜ辻井伸行さんが学会でピアノコンサートを演奏して下さったかというと、彼のおじいさん、おじさん、お父さんは産婦人科医なのです。そのつながりで出演依頼があり、今回のコンサート開催に至ったのだと思います。
コンサートに先立ち、会場にお父さんからの挨拶動画が流れました。自分の結婚から辻井伸行さんの誕生、目が見えないと分かった時、音楽が好きでおもちゃのピアノを与えたら、3歳でお母さんの歌うジングルベルに合わせて伴奏を弾いたこと、そこからピアノの道へ、などのお話をお聞きしました。
その話の中で以前取材に来た記者さんが「歯を食いしばって1日に何時間も血へどを吐くような練習をされているのでしょうね?」と聞いてきた時に、お父さんが「1日に8時間も練習していますが、彼がそんな苦しい様子で練習している様子は、一度も見たこと無いですよ」と冒頭の話をしたとか。このお父さんの言葉はとても印象に残りました。
私は、先月4月より院長に就任し、毎週木曜日は魚沼基幹病院より経験豊かな先生方と一緒に仕事を、さらに月に一度は週末には新潟大学病院からの先生をお招きして仕事のサポートをお願いすることになりました。
私が過労でたかき医院を続けられなくなり、地域のお産できる病院を一つ潰してしまわない様にとの各方面からのご配慮です。
気が小さい私は、どんな毎日になるのだろうかと、4月初めは原因の分からない胃の痛みに苛まれましたが、始まって見れば外部からいらっしゃる先生方に最新の医療技術のお話を聞いたり、患者様のことで気軽に相談出来たりと良いことばかりでした。
特に基幹病院の先生方は優しく丁寧な先生ばかりで安心しました。患者様もわざわざ峠を越えなくても専門的な診療が受けられ、手術の相談やセカンドオピニオンなどが自宅近くで出来ることになったので、本当に良かったのではないかと思っています。
3重苦のヘレン・ケラーの生前の言葉に「友達がいれば、毎日世界は変わります」があります。引っ込み思案な私ですが、新たな扉を開けてたくさんの方と知り合い、その手を借りながら毎日楽しく仕事を続けていきたいと思っています。
ぜひその手を貸してくださるという方は、たかき医院の健闘を「産声を上げた働き方改革~医療現場のジレンマ~」、NST新潟総合テレビ5月25日午後2時からのドキュメンタリー番組でご覧ください! (たかき医院・仲栄美子院長)
2024年5月25日号
春ですね。ゴールデンウィークも良い天気で、少し暑いくらいでしたが、本当に気持ちの良いお休みを過ごしました。これだけ天気が良いとウキウキしてきて、どこかに出かけたくなりますよね。
そんな春といえば、前回は木の芽どきの話をしました。今回は「春は変質者や不審者が増える」とよく聞きますが、本当のことなのか、について。 私が小学生の頃(すでに時は35~40年昔にさかのぼりますが)は、春先には県外ナンバーの「当たり屋」に気をつけろ、という話をたびたび耳にしたことがあったように記憶しています。
さて、「不審者」という定義を「痴漢、露出、声掛け、つきまとい、盗撮、のぞき、暴行、強迫、危険物所持など」とした場合に、とある会社が警察からの情報をもとに分析を行ったところ、やはり4~5月から不審者情報の報告数が増加し始めるのが分かったそうです。理由としては、不審者も春はお出かけ気分になるからなのではないか、とか。
ちなみに、春の時期に見られる「不審者からの声掛け」のパターンとしては、「何歳? 何年生?」「お母さんが病院に運ばれた。今すぐ来て。いいから来て」「お母さんが死んじゃった。お父さんは会社にいるから乗って」「さわってくれたら、100円上げる。」「パンツの色は何色?」「トイレについてきて」「一緒に写真を撮ろう/写真を撮ってもいい?」「お菓子をあげるからおいで」「(お金を支払うから)下半身を見てほしい」だそうです。十日町市内でもここ数年、写真を撮る不審者がたびたび目撃されていますが、特に春は注意が必要なのかもしれません。
この原稿を書くために小学生の娘に不審者の話をしていたら、「『いかのおすし』だよ!」と自慢げに鼻を鳴らしながら教えてくれたので、小さなお子さんのいらっしゃる方はもうとっくに知っておられるかと思いますが、あげておきますね。
〇知らない人にはついて「いか」ない
〇声をかけられても車には「の」らない
〇知らない人に連れていかれそうになったら「お」おごえを出す
〇声をかけられたり追いかけられたりしたら「す」ぐに逃げる
〇怖いことにあったり見たりしたら、すぐに大人に「し」らせる
これが『いかのおすし』です。若干無理やりな感じもしますが、頭のどこかに入れていただいて、お子さんと一緒にそのつど声に出して復唱してくださいね。
以前埼玉に住んでいたころですが、ファミレスに友人と入ったときにパソコンをうっかり車の中に置いていってしまったところ、鍵を開けられパソコンを盗まれるという災難に遭いました。ウキウキしているとうっかりが生じます。
大事なものからは手を離さないようにお気を付けください。そしてうっかりといえば、病院受診の際は保険証を持って出たか、保険証の有効期限は大丈夫か、を必ず確認してくださいね。(たかき医院・仲栄美子院長)
2024年5月11日号
先週は市内のあちこちの桜が満開で、春が来たな~と気温の上昇と共に心も温かくなりました。我が家の玄関先にある、いつからか根付いたのか分からないアケビの木からも木の芽が伸びてそろそろ収穫を迎えます。
この時期まさに『木(こ)の芽どき』といいます。正確には立春から春分までの期間を指します。ざっくりいうなら、この冬から春にかけての季節の変わり目は気温の変化が大きく体調を崩しやすい時期のため、昔の人たちは代々、病気に注意するよう言い伝えてきたわけです。
春先はなんだか眠くて仕方がない、天気は良いのに布団から出るのが億劫で「春眠暁を覚えず」という方も多いのではないでしょうか。これも季節の変わり目で気圧や気温の大きな変化が大きく、自律神経のバランスを乱すためです。
春先は自律神経のうち、体を休めるための副交感神経の方が、活発に動くための交感神経より働きが強まるため、眠気が強まるのです。また、気圧や湿度の関係で頭痛を感じやすくなりますので、外来診療をしていても、頭痛薬をくださいと言われる方が多いのは確かです。
そして気持ちが落ち込むなどの症状を訴える方も増えてきますので、もともとメンタル不調をお持ちの方は、あえて調子が良くても薬の変更は延期するなど注意が必要です。
この気持ちの面での不調は、季節の変わり目の気候の大きな変動が影響するだけでなく、転居、転勤、異動、入学、就職などの環境の変化も大きく影響をします。気持ちの不調が体調の不調症状を引き起こす方もいます。
ですので、これからやってくるゴールデンウィークは天気も良く家族や友人が出かけようとお誘いをかけてくるかもしれませんが、気持ちが乗らない時には体も心も疲れている証拠ですので、勇気をもって断って自宅でしっかり休む、自分の気持ちに素直に行動する、ということを大事にしていただきたいと思います。
というのも、この『木の芽どき』にかかった負担をそのままにしておくと、ゴールデンウィークが終わった5月にうつ病に進んでしまうことがあります。いわゆる『5月病』です。なので、今この時期に頑張りすぎない、我慢しすぎない、自分がリラックスできる時間をなるべく持つ、ということはとても大事なのです。
特に「~しなくちゃ」を口にしたり考えてしまった人は、その言葉を思い浮かべた時点で自分にかなり負担がかかっていると気づいて欲しいなと思います。
あとは何度もお話したことがありますが、うつ病にならないために大事なことは「つながること」です。信頼できる人に自分のつらい気持ちを伝えること、もしくは病院などを受診して相談するのも良いでしょう。
眠れない、寝てもすぐ目が覚める、食欲がない、食べ物を美味しいと感じない、笑うことが無くなった、楽しみを見つけられない、人に会うのが億劫、そんなことが少しでもあったら早めにお気軽にご相談くださいね。
(たかき医院・仲栄美子院長)
2024年4月20日号
実家の十日町市に戻ってきてから、母のやっていた講演会活動を引き継いで、かれこれ16年目に入ります。最近、中学校で性のお話講演会をさせていただくときに、この質問よく受けるなあというものがあります。それは、「必ず結婚しないとダメですか?」「子どもを産まないとダメですか?」です。
先月2月27日に厚生労働省は人口動態統計の速報値を公表し、それによると2023年の出生数は過去最少の75万8631人(前年比マイナス1万116人)で、 婚姻件数も戦後初めて50万組を下回り、48万9281組となったとのこと。これは国立社会保障・人口問題研究所の推計より、およそ12年早いペースで少子化が進んでいるということなのだとか。16年前にちょうど「草食系男子」ということばが流行語大賞になりましたが、今の様子は草食系を通り越して「絶食系」に近いともいえます。
性のお話講演会は全国的に、以前は怖がらせて安易な性行為はやめさせよう、といった傾向が強かったのですが、最近は少子化を少しでも解消するために、「なるべく子どもを産みたいと思う話をしよう!」という風潮になっているようです。でもどうして既に中学生たちは、その年齢で「結婚したくない」「子どもを産みたくない」と思っているのでしょうか?
『SRHR』という言葉を知っていますか。英語のSexual and Reprod
uctive Health and Rightsの頭文字をとったもので、日本語では、「性と生殖に関する健康と権利」と訳されます。具体的に言うと、Sexual Health(性の健康)=自分の「性」に関することについて、心身ともに満たされて幸せを感じられ、またその状態を社会的にも認められていること。Reproductive Health(生殖の健康)=妊娠したい人、妊娠したくない人、産む・産まないに興味も関心もない人、アセクシャルな人(無性愛、非性愛の人)問わず、心身ともに満たされ健康にいられること。Sexual Rights(性の権利)=セクシュアリティ「性」を、自分で決められる権利のこと。自分の愛する人、自分のプライバシー、自分の性的な快楽、自分の性のあり方(男か女かそのどちらでもないか)を自分で決められる権利のこと。Reproductive Rights(生殖の権利)=産むか産まないか、いつ・何人子どもを持つかを自分で決める権利。妊娠、出産、中絶について十分な情報を得られ、「生殖」に関するすべてのことを自分で決められる権利のこと、です。また、これらの権利は、『生まれながらに持つべき権利(人権)』であり、どう人生設計するのかは個人個人が決めたらよいことではあるが、そのためには十分な情報を各自がしっかりと得る必要があることも明記されています。
3月8日は国際女性デーでもありました。それにちなんで『SRHR』についてタレントのIMALUさんが中心になってやっているYouTube番組「ハダカベヤ」に出させていただきました。もし良かったら、3月25日から公開されていますので見てみてくださいね!
「結局は未来の産んだ子どもの生活に不安があるから産まないんだよ」という意見でその場にいた友人たちがみんな納得したんだよと教えてくださった方がいます。中学生たちも同じなのでしょうか? 何が不安なのか、なぜこれから子どもを産む年齢の若い人たちがそう思うのかをもっと政府が汲み取らなければ、とても少子化は解決しそうにありません。私も講演活動を通じて、今後そのあたりを追求していきたいと思います。(たかき医院・仲栄美子医師)
2024年3月30日号
「全国なかさとサミット」といって、青森県中里町(現中泊町)と群馬県中里村(現神流町)と沖縄県久米島の仲里村(現久米島町)と十日町市に合併前の中里村の、合わせて4つの町村で盛んに交流をしていた時期がありました。今でも久米島の知り合いからはマンゴー、島バナナ、ドラゴンフルーツなどの南国の果物が届きます。
果物は美味しいですね。でも、私は果物を食べる時、実は少し心配しながら食べています。それは私が「ラテックス」にアレルギーがあるからです。
ラテックス、つまり仕事中にするゴムの手袋です。医者にとってはいわゆる職業病ともいえます。大学病院に勤務中、麻酔科に研修に行っていた時に、ある日、ゴムの手袋をして患者さんの麻酔を行ったところ、手袋が触っていた皮膚が真っ赤になってかゆくなった上に、なんだか気道がヒューヒューいうような感じがあり、上司の先生に相談したところ「それはラテックスアレルギーだから、今度から使わない方がいいよ」といわれたのがきっかけでした。それ以来ゴムの手袋は使っていません。
ラテックスアレルギーと果物に何か関係があるの? なのですが、実は「ラテックス・フルーツ症候群」という現象があるのです。ラテックスアレルギーを起こす抗原たんぱく質と野菜や果物のアレルギーを起こす抗原たんぱく質が似ていることから、ラテックスアレルギーの患者さんの30~50%で、新鮮な果物やその加工品を摂取した際に、口腔アレルギーの症状(口の中の違和感やピリピリ感)、気道がヒューヒューいう喘鳴、じんましんやアナフィラキシーショックなどを起こすことを指します。
さまざまな果物で起こる場合があるのですが、特にアボカド、キウイ、バナナ、クリはハイリスクとのことです。
このアレルギーを起こす抗原たんぱく質が似ていることから、思わぬアレルギーを生じることを交差反応(こうさはんのう)といいます。今年は雪が少ないためにすでに花粉症の症状で困られている方もいらっしゃるかもしれませんが、花粉症にも交差反応を起こすものがあります。
たとえば春の花粉症で有名なスギ花粉にアレルギーのある人はトマトに、秋の花粉症で有名なブタクサにアレルギーのある人はスイカ、メロン、バナナに気をつけた方が良いです。
その他、ハンノキにアレルギーのある人はバラ科のリンゴ、モモ、イチゴ、ウリ科のスイカ、メロンなどに、シラカンバにアレルギーのある人は同じくバラ科の果物のほかにナッツ類やマスタードなどに、イネ科の植物にアレルギーのある人はメロン、スイカ、トマト、ジャガイモ、タマネギ、オレンジ、セロリ、キウイなどに気をつけた方が良いことが分かっています。果物や野菜にアレルギーのある人は逆に植物のアレルギーが出る可能性があります。
今までお話したものはアレルギー抗原に接してすぐに症状の出る即時型アレルギーというもので、最近はよくあるアレルギーの抗原36項目を一回で調べられる検査などがありますが、まだ一般的ではないもののアレルギー抗原に接してから数日たって症状の出る遅延型アレルギーなども検査できるようになってきています。
ただし、なかなか自分のアレルギーの原因はこれ!と全部調べきれないのも事実です。それでもアレルギー抗原が気になる方は是非当院もしくはお近くのかかりつけ医にお気軽にご相談くださいね。(たかき医院・仲栄美子医師)
2024年3月16日号
前回、「幸せの順番」についてお話しました。今回はその続き、「幸せを感じるために」についてお話します。
私の勤めている医院は産婦人科が専門ですが、日々さまざまな年代の方の気持ちの不調についてご相談を受けます。理由はいろいろで、友人や家族との人間関係、学校の先生との人間関係、職場の人間関係、過重労働、元々のコミュニケーション能力の低さによる社会への適応障害、自身の病気、更年期のゆらぎ、認知症のはじまりとして、愛する人との死別などで、そして症状としては気持ちが沈む、というものです。
私もうつ病の既往があるのでよく分かりますが、気持ちが沈んでいる時は自分が幸せから世界で一番遠い存在であると感じます。そして幸せそうにしている人を見ると、余計に自分はどうしてこんなに不幸なのか、と感じます。
気持ちが落ち込むという状況は、自分以外の誰かがこの世にいるために生じると思います。世界に自分一人しかおらず毎日好きなように過ごせたとしたら、一人ぼっちで寂しいという気持ちさえ持たなければとても幸せで、気分が沈むということはないのではないかと思います。
ですから、まずは「幸せを感じる」ためには、自分と他人を比べない、他人がどう思おうと自分の幸せを自分の時間を追求する、5分でいいので一人の時間を作る、というのが大事なのかなと思います。
また、以前、テレビで精神腫瘍医の清水研さんとSUPER EIGHTの安田章大さんが対談をしていたのを見たのですが、そこで清水さんが日常の中での「Must(マスト、「~しなければならない」という意味)を捨てる」と気持ちが楽になる、という話をしていて、とても共感しました。
精神腫瘍医とは、がん患者及びその家族の精神心理的な苦痛の軽減および療養生活の質の向上を目的とし、薬物療法のみならず、がんに関連する苦悩などに耳を傾ける等、専門知識、技能、態度を用いて、誠意をもった診療に積極的にあたる意思を有した精神科医・心療内科医のことを指します。
自分もそうですが、気持ちの余裕がなくなってくると、あれをしなくちゃ、これをしなくちゃ、という気持ちで物事をこなしてしまいがちになります。
たとえば夕飯の支度一つであっても、「疲れてるのに、夕飯の支度をしないといけない」と思いながら作るのと、「疲れて帰ってくるみんなが、美味しい美味しいと言って食べてくれるような夕飯をつくっちゃうぞ~!」と思いながら作るのでは、全然大変さも楽しさも違うのが分かると思います。
逆に言えば、気持ちに余裕がなくなってしまっているのは、やろうとしていることのハードルが自分にとっては高いのかもしれません。
夕飯を作ることに気持ちの余裕が持てないのは、食事を作ること自体が苦手なのに「夕飯を作るのはお母さんがやるのが当然」と思っていませんか? 疲れているのに「夕飯のおかずは3品作らないとダメ」「必ず食事は手作りでないとダメ」と思っていませんか? 自分がこうしたい! と思う理想はあるかもしれませんが、その理想やゴール目標が高すぎると幸せを感じることから遠ざかる可能性があるのではないかなと思います。そして、そのハードルの高さにご自分で気づいていない人が多いのが事実です。
そうはいっても「幸せを感じられない!」という方は是非お気軽にご相談くださいね。(たかき医院・仲栄美子医師)
2024年3月2日号
先日、5年以上ぶりに高校時代の同級生と土市の松海寿司さんで食事をした後、近くの「音鳴り」さんで二次会、カラオケで大きな声で笑って楽しみました。店内でご一緒させていただいた土市町内の皆さんとの昭和の名曲リレーで若かりし頃のエネルギーを思い出し、元気になりました。ありがとうございます!
美空ひばりさんの名曲・みだれ髪を聴きながら姉がポツリ「美空ひばりほど歌えたらいいのになぁ。でも、プライベートはあまり幸せではなかったんだよね」とつぶやいたので、「人生において良いことと悪いことは同じだけやってきて最後はプラスマイナスゼロになるんだよ」と私が答えると、姉が最後に「でも自分の今はプラスの方が多い気がするな」と言ったので、妹としては良かったなと思った次第です。
誰でも幸せになりたいと思いますよね。そして人生においてプラスが多い方が良いと思うのは当然です。果たして「幸せ」とは?「幸せ」とはどういう状態を指し、その「幸せ」とは、どうしたらやってくるのでしょう? みなさんにとっての「幸せ」とは何ですか?
精神科医の樺沢紫苑さんは、幸せを得るためには順番がある、と言います。まず幸せになる第一歩は「自分の体と心の安定」が保たれていることから始まる、と。自分が平らで穏やかな状態であるということが基本として無ければ、本当の幸せは訪れないという意味です。
そして第二歩は「人間関係の安定」があること。自分だけでなく周囲の状態が平らで穏やかである状態が本当に幸せになるには必要です。そして最後に「金銭的な安定」がある、という順番です。 別の視点から言えば、金銭的な幸せを得たくても、自身の心身の安定と周囲の人間関係の安定が無いところには、金銭的な幸せはやってこないということになります。なかなかシビアな話だなと思います。
次に、私たちの脳の中にある「幸せを感じさせる」物質、という視点で「幸せ」を見てみます。すると、まず幸せになる第一歩に必要なのはセロトニンという物質です。体や心が気持ちいいと感じる時に出る物質で、不足するとうつ状態になります。うつ状態になれば「自分の体と心の安定」から離れてしまいますし、周囲との良い人間関係を構築するのは困難な状態になります。
では充足された場合、第二歩で必要なのはオキシトシンという物質です。赤ちゃんにおっぱいをあげる、恋人と触れ合う、友人とハグする、子どもを抱っこする、などで多く分泌されるため、「人間関係の安定」に重要な物質といえます。そして最後にドーパミンという物質です。目標を達成したり、成功や昇給、褒められたりした時に出る物質で意欲につながります。「金銭的な安定」あるいは言い換えると、自分にとって最終的に到達したいゴール、自分にとっての最終的な「幸せ」につながる物質といえるかもしれません。
この3つの物質のどれかが欠けても幸せを感じることはできないので、「幸せを感じさせる」物質という視点でも、幸せになるための順番というのはあるのかもしれません。
私はよく中学生たちに「幸せは自分の手の中にあるんだよ」と話をします。そしてまずは「自分を大事にするというのを忘れないでね(そこから幸せは始まるよ)」とも話しています。理屈では分かっていても「幸せ」を感じにくいという方は、次回の続きをまた楽しみにしていてください。待ちきれない方はどうぞお気軽に医院までご相談くださいね。
(たかき医院・仲栄美子医師)
2024年2月10日号
新年あけましておめでとうございます。雪の少ない年末年始で、初詣に行くにも良い塩梅だと思っていた矢先に大地震と飛行機事故。なんだか不穏な1年の幕開けとなりました。
ある筋の方々からよく言われていたのは、2023年から3年間は大きく自分や社会が変わる、いわゆる「激動の年」の真っただ中にいるのだということ。それを踏まえると、いつもと違う年明けになっているのも当然なのかもしれません。
大きく変わるなんてなんだか嫌だなぁ、1週間後に何が起きているか分からないのは不安、すでに変化に巻き込まれて起きてしまったことから立ち直れず悲しみにふさぎ込んでいる、そんな方がおおいのではないでしょうか。でも、私たちは命がある限り前へ進んでいかなければなりません。
今日は、そんな自分たちの一歩が明るい未来につながる話をしてみたいと思います。
皆さんは「歩幅」というのを意識したことがありますか? 私たちが歩くとき、歩幅の平均は「身長×0・45」と言われています。つまり私は154㌢ですので、154㌢×0・45=69・3㌢が私の歩幅の平均です。横断歩道の白線の幅は約45㌢なので、意識しなくても白線をまたげるくらいで歩けると良いようです。
歩幅が広がると何に良いかというと、主に次の4つがあげられます。①下半身の筋力がアップするとメラニン生成を抑制する物質が増えます。血行や代謝が上がって皮膚のターンオーバーが整って透明感のある肌になります。②体の中の大きな筋肉である腰、太もも、お尻の筋肉を動かすので消費エネルギーが増え痩せやすい体になります。さらに骨盤を立てて歩くとポッコリお腹や反り腰が改善します。③良い姿勢で歩くと目からの光を取り込みやすくなり、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの分泌が増えてポジティブ思考になる上に睡眠の質も上がります。④骨盤を立てた良い姿勢で歩くことで骨盤底筋を鍛えることができ、尿もれ・腰痛・便秘・冷え性・胃の不調などが改善します。
ちなみに女性の8割は反り腰になっているといわれていますが、反り腰でいると巻き肩・肩こり、ストレートネック、ネガティブ思考、口角が下がって二重アゴで老け見え、腰痛、ポッコリお腹、ヒップのたるみ、骨盤底筋の筋力低下を引き起こします。
壁に後頭部、肩甲骨、お尻、かかとの4点をつけて立った時に腰と壁の間に手のひらが2枚以上入る人は反り腰です。全身が映る姿見がある方は是非自分の立ち姿勢を横から見て、耳の穴、肩の中央、くるぶしの3点が地面に垂直な一直線になるように立ち、その姿勢を保ったまま3分間腹式呼吸をするだけで、かなり体の痛みや肌の不調が改善するはずです。
歩くことに余裕がある方は、お尻に軽く両手を当ててお尻の筋肉が動くのを感じながら1分歩き、次に下腹部のお肉を両手で軽く押し込みながら1分歩き、最後の1分は足と腕をリズミカルに動かしながらリラックスして歩く、この3分ウォークを1日1回で良いのでやると、歩幅が広がり、痩せやすい体になり、反り腰も改善されるそうです。「おさんぽ整体」といわれる方法だそうです。
良い姿勢で大きく一歩を踏み出し、ポジティブ思考で激動の年を体も心も軽く乗り切っていきましょう!立つのも歩くのもしんどいという方は、座っているだけで同じような効果を得られる当院のエムセラを是非お試しくださいね。(たかき医院・仲栄美子医師)
2024年1月13日号