10月になると、花をつける植物の種類は随分と限られてしまう。目立つのは外来種のセイタカアワダチソウだ。でも、足元に目をやればまだまだ小さな花を見つけることができる。
日当たりの良い開けた場所で見つかるのが「ザクロソウ」(写真左)である。花期は6~8月だが、近年の温暖化の影響なのか秋遅くまで花を咲かせている。庭先や畑で草取りをする人にはお馴染みさんだ。
そのそっくりさんに「クルマバザクロソウ」(写真右)がある。こちらは熱帯アメリカ原産の外来種で明治期に渡来したという。苗場山麓で見かけるようになったのは35年ほど前からである。ザクロソウと同じ環境を好むことから、生育場所をめぐる争いが起きているのかも…。
暖かな秋は適応力の強い外来種にとって分布を広げるチャンスなのである。
2024年10月26日号
先日意を決して魚野川の水門の遺構を調査しました。
水門は完成した当時は9本の柱が上部で連結し洪水で水嵩が増した時の捌け口だったようですが、現在は右半分ほど残り、あとは土砂崩の中に埋まっていいます。
石柱は割石にセメントを充填したつくりで2本の溝が切られています。溝には厚い板を2重に落とし込む方式で柱の両側に刻まれています。
現場はガレ場で大変危険な所です。また河川敷以外は私有地で立ち入ことは出来ません。
続く。次回は水門の裏にある不気味な…。
写真:100年前の水門(東京電力ホールディングス株式会社電気の史料館より借用)
2024年10月19日号
津南町に移住して、夜のコンビニに行くとさまざまな虫が看板の明かりや照明に集まっていることに驚いた。
都心では買ったり、わざわざ旅行先に出かけて捕るカブトムシやクワガタも夜の山に入るより簡単にコンビニ前で見つけられたりする。
それだけ虫たちも多種多様に生息する自然があるからなのだと思う一方、都心では考えられないほどの大きな虫に出会い大変驚いたことがある。
ある日の入浴中、誰かが窓をたたくような音がすると思い、窓の方を見ると誰もいない。
風か気のせいと思い、また湯船でくつろいでいるとまた同じような音が聞こえてくるのだ。
何だろうと思い、窓をずっと見ていると手のひらサイズの蛾が室内の明かり目掛けて窓ガラスに体当たりしていた。
大きさもさることながら、蛾の厚みと重量感に不気味さを感じ、こんなに大きな蛾が田舎にはいるのかと驚いたことをよく覚えている。
他にもオニヤンマやムカデなど都心では見かけない大きさの虫に驚くこともしばしばだが、これも都会にはない田舎の良さと今は思えている。
2024年10月12日号
最近、夕方になるとカワウの群れが寝ぐらへと向かう姿を良く見る事がある。Vの字の形でかなりの数が夕焼けの中を通過している。
春に繁殖を抑えるために巣を壊したりして数が増えないようにしているが、そこは野生生物、やはり数が多いといつも思っている次第。幸い、カワウの寝場所は河原の河川敷なので糞公害は無いとおもうのだが、ただ漁協の方たちには頭の痛い問題だと思っている。
カワウは潜水能力が高いため水中で小魚を狙うが、放流した稚魚なども相当の被害が出るかもしれないので悪者扱いされているのが実情。カワウの数が少なければ良いが繁殖率が旺盛。共存の道はあるんだろうか⁉
2024年10月5日号
カラムシは繊維を採るために古くから栽培されてきた植物である。その葉を食草として繁栄してきた昆虫が「フクラスズメ」という蛾と「アカタテハ」という蝶である。
フクラスズメの幼虫(左・写真)は派手な色合いだからよく目だつ。時々大発生して、カラムシを丸坊主にしてしまうことがある。近づくと上半身を細かく振って威嚇するのが嫌だ。捕まえようとすると地面に落っこちて逃げ延びる。
アカタテハの幼虫(右・写真)も人目を引く。といっても幼虫自体の色合いは地味だ。目だつのは葉を綴って作る巣である。カラムシの葉は裏に綿毛が密生することから白い袋がぶら下がったように見えるのだ。その中で蛹となる。
秋に発生したものはどちらも成虫となって越冬する。暖冬だと途中で目覚めてしまい命を落とすことも多い。
2024年9月28日号
中津川第一線工事の最深部である魚野川取水堰は、完成の僅か4年後の昭和2年に右岸の大規模な崩壊で埋没したと記録されています。写真は切明の崩落前のもので、中央奥に埋没した魚野川取水堰が写っており、左の高台は現在の雄川閣付近で、右下に切明沈砂池が見えます。
昨年秋にその形跡でも無いかと和山の山田武雄さんに案内して頂きましたが、現在は大きな砂防ダムが造られ写真と見比べてもよく分かりません。
この取水堰は、水位によって堰の高さが変わるローリングダムで穴藤の初代ダムはこの方式でした。
次はもう少し上流に、その後に造られた堰提があるのでその付近を探してみると、左岸にベルリンのブランデンブルグ門のような石柱が見え、次に來る時は魚野川を渡って調べてみようと思いました。
2024年9月21日号
先月、津南町中子集落を見学させていただきました。
最近は「中子の桜」としても有名な集落ですが、この集落の神社で珍しいものをご案内いただいたのでご紹介いたします。
まず目に止まったのは神社の名前です。
各集落に一つずつ神社があるのはこの地域では珍しくないですが、「仲郷神社」と書かれており、現在の中子ではなく「仲郷」と表記されていました。
すぐお隣は「上郷」ですし、昔の人はどこかの郷と郷の間というような意味で仲郷となっていたのではないか、などと考えながら参拝いたしました。
また、帰り際に鳥居の裏を見ると、鳥居を奉納された方のお名前が彫られているのですが、上から読んでも下から読んでも「中子氏子中」なのです。
集落の方々が奉納しているので当たり前と言えば当たり前なのですが、普通に神社を参拝しているだけでは見落としがちなものだと感じました。
何気なくある神社も改めて見てみると集落の歴史や新たな発見があるので、これからも少しずつ散策していきたいと思います。
2024年9月14日号
昆虫、特にチョウやハチがよく集まる花がある。畑の雑草でもっとも手ごわい相手であるヤプガラシ、抜いても抜いてもどこからか芽が出てきては他の植物にからみつく厄介者。
そんな厄介者でもチョウやハチ類にとっては魅力的な花らしい。一度アゲハチョウに聞いてみたいほどだが、本当によくこの花に来る。スズメバチの仲間もよく集まってくるのでハチ類にはよほど好評の花なんだろうな−って。
我々がこの花の匂いをかぐとかなりキつめの匂いがするが、昆虫にとってはとても抜群に美味しい匂いだと思われる。
今年は南天とユキツバキにからむヤブガラシをそのままにしておいて観察してみたが、からみつかれる方はたいへんだろうなと思う。
もちろんチョウばかりではなくハナカミキリの仲間も来ているしコガネムシの仲間も来る。
みんなお揃いのレストランになっている。家の周りにそんな場所が一ヵ所あってもバチは当たらないだろう…。
2024年9月7日号
苗場山麓で見られる常緑のスゲは、ホソバカンスゲ、ヒメカンスゲ、ヒロバスゲなど7種ほどある。
花期は春から初夏にかけてで、どれもよく似た地味な花を咲かせる。葉は線形で、幅に違いはあるものの見分けるのが面倒くさい。
こんな厄介なスゲの中からそれぞれの特性を見極め、暮らしに取り入れられてきたものがある。
ミヤマカンスゲ(ヒロロ、写真左)の葉は軽くて丈夫、水をはじく性質から、雪や雨時の雨具であるミノの材料とした。採取時期は新葉が程よく成長した8月から秋の彼岸ころとされた。この地域ではよく見かけ、沢沿いなどの少し湿った所で群生していることが多い。
コシノホンモンジスゲ(タツノケ、写真右)の葉も水に強い性質から、旦那衆の雨具であるケミノの材料となった。採取時期は7月下旬から8月上旬である。日当たりのいい雑木林の斜面などで見かける。
自然と向き合ってきた先人の見識からは学ぶべき事ばかりだ。
2024年8月31日号
苗場山麓ジオパークのガイド仲間から、高野山の砂利道で鉄道のレールを見つけたということで、早速調査に出かけました。場所は穴藤から巻揚機で高野山に上がって調整池に向かう途中の作業道の脇で、捻じ曲げられた状態で一部は地面に埋もれていました。鉄が貴重だった戦中にレールが供出されずに残っていたのは奇跡です。
高野山には大規模なダム工事もあり、巻揚からダム現場、そこから前倉トド(結東原)までの軌道跡は、地形的に現在の道路とほぼ同じルートを通ったものと思われます。
此処で分からないのが亀岡あたりから高野山に上がったルートです。古い地図には加用から百ノ木あたりから巻揚機があり、横根を通って高野山に上がったようですが、そこが何処なのか? また志久見川ルートに電車または汽車が実際走ったのか? 志久見川沿いの方より情報をお待ちしております。
2024年8月24日号
10月になると、花をつける植物の種類は随分と限られてしまう。目立つのは外来種のセイタカアワダチソウだ。でも、足元に目をやればまだまだ小さな花を見つけることができる。
日当たりの良い開けた場所で見つかるのが「ザクロソウ」(写真左)である。花期は6~8月だが、近年の温暖化の影響なのか秋遅くまで花を咲かせている。庭先や畑で草取りをする人にはお馴染みさんだ。
そのそっくりさんに「クルマバザクロソウ」(写真右)がある。こちらは熱帯アメリカ原産の外来種で明治期に渡来したという。苗場山麓で見かけるようになったのは35年ほど前からである。ザクロソウと同じ環境を好むことから、生育場所をめぐる争いが起きているのかも…。
暖かな秋は適応力の強い外来種にとって分布を広げるチャンスなのである。
2024年10月26日号
先日意を決して魚野川の水門の遺構を調査しました。
水門は完成した当時は9本の柱が上部で連結し洪水で水嵩が増した時の捌け口だったようですが、現在は右半分ほど残り、あとは土砂崩の中に埋まっていいます。
石柱は割石にセメントを充填したつくりで2本の溝が切られています。溝には厚い板を2重に落とし込む方式で柱の両側に刻まれています。
現場はガレ場で大変危険な所です。また河川敷以外は私有地で立ち入ことは出来ません。
続く。次回は水門の裏にある不気味な…。
写真:100年前の水門(東京電力ホールディングス株式会社電気の史料館より借用)
2024年10月19日号
津南町に移住して、夜のコンビニに行くとさまざまな虫が看板の明かりや照明に集まっていることに驚いた。
都心では買ったり、わざわざ旅行先に出かけて捕るカブトムシやクワガタも夜の山に入るより簡単にコンビニ前で見つけられたりする。
それだけ虫たちも多種多様に生息する自然があるからなのだと思う一方、都心では考えられないほどの大きな虫に出会い大変驚いたことがある。
ある日の入浴中、誰かが窓をたたくような音がすると思い、窓の方を見ると誰もいない。
風か気のせいと思い、また湯船でくつろいでいるとまた同じような音が聞こえてくるのだ。
何だろうと思い、窓をずっと見ていると手のひらサイズの蛾が室内の明かり目掛けて窓ガラスに体当たりしていた。
大きさもさることながら、蛾の厚みと重量感に不気味さを感じ、こんなに大きな蛾が田舎にはいるのかと驚いたことをよく覚えている。
他にもオニヤンマやムカデなど都心では見かけない大きさの虫に驚くこともしばしばだが、これも都会にはない田舎の良さと今は思えている。
2024年10月12日号
最近、夕方になるとカワウの群れが寝ぐらへと向かう姿を良く見る事がある。Vの字の形でかなりの数が夕焼けの中を通過している。
春に繁殖を抑えるために巣を壊したりして数が増えないようにしているが、そこは野生生物、やはり数が多いといつも思っている次第。幸い、カワウの寝場所は河原の河川敷なので糞公害は無いとおもうのだが、ただ漁協の方たちには頭の痛い問題だと思っている。
カワウは潜水能力が高いため水中で小魚を狙うが、放流した稚魚なども相当の被害が出るかもしれないので悪者扱いされているのが実情。カワウの数が少なければ良いが繁殖率が旺盛。共存の道はあるんだろうか⁉
2024年10月5日号
カラムシは繊維を採るために古くから栽培されてきた植物である。その葉を食草として繁栄してきた昆虫が「フクラスズメ」という蛾と「アカタテハ」という蝶である。
フクラスズメの幼虫(左・写真)は派手な色合いだからよく目だつ。時々大発生して、カラムシを丸坊主にしてしまうことがある。近づくと上半身を細かく振って威嚇するのが嫌だ。捕まえようとすると地面に落っこちて逃げ延びる。
アカタテハの幼虫(右・写真)も人目を引く。といっても幼虫自体の色合いは地味だ。目だつのは葉を綴って作る巣である。カラムシの葉は裏に綿毛が密生することから白い袋がぶら下がったように見えるのだ。その中で蛹となる。
秋に発生したものはどちらも成虫となって越冬する。暖冬だと途中で目覚めてしまい命を落とすことも多い。
2024年9月28日号
中津川第一線工事の最深部である魚野川取水堰は、完成の僅か4年後の昭和2年に右岸の大規模な崩壊で埋没したと記録されています。写真は切明の崩落前のもので、中央奥に埋没した魚野川取水堰が写っており、左の高台は現在の雄川閣付近で、右下に切明沈砂池が見えます。
昨年秋にその形跡でも無いかと和山の山田武雄さんに案内して頂きましたが、現在は大きな砂防ダムが造られ写真と見比べてもよく分かりません。
この取水堰は、水位によって堰の高さが変わるローリングダムで穴藤の初代ダムはこの方式でした。
次はもう少し上流に、その後に造られた堰提があるのでその付近を探してみると、左岸にベルリンのブランデンブルグ門のような石柱が見え、次に來る時は魚野川を渡って調べてみようと思いました。
2024年9月21日号
先月、津南町中子集落を見学させていただきました。
最近は「中子の桜」としても有名な集落ですが、この集落の神社で珍しいものをご案内いただいたのでご紹介いたします。
まず目に止まったのは神社の名前です。
各集落に一つずつ神社があるのはこの地域では珍しくないですが、「仲郷神社」と書かれており、現在の中子ではなく「仲郷」と表記されていました。
すぐお隣は「上郷」ですし、昔の人はどこかの郷と郷の間というような意味で仲郷となっていたのではないか、などと考えながら参拝いたしました。
また、帰り際に鳥居の裏を見ると、鳥居を奉納された方のお名前が彫られているのですが、上から読んでも下から読んでも「中子氏子中」なのです。
集落の方々が奉納しているので当たり前と言えば当たり前なのですが、普通に神社を参拝しているだけでは見落としがちなものだと感じました。
何気なくある神社も改めて見てみると集落の歴史や新たな発見があるので、これからも少しずつ散策していきたいと思います。
2024年9月14日号
昆虫、特にチョウやハチがよく集まる花がある。畑の雑草でもっとも手ごわい相手であるヤプガラシ、抜いても抜いてもどこからか芽が出てきては他の植物にからみつく厄介者。
そんな厄介者でもチョウやハチ類にとっては魅力的な花らしい。一度アゲハチョウに聞いてみたいほどだが、本当によくこの花に来る。スズメバチの仲間もよく集まってくるのでハチ類にはよほど好評の花なんだろうな−って。
我々がこの花の匂いをかぐとかなりキつめの匂いがするが、昆虫にとってはとても抜群に美味しい匂いだと思われる。
今年は南天とユキツバキにからむヤブガラシをそのままにしておいて観察してみたが、からみつかれる方はたいへんだろうなと思う。
もちろんチョウばかりではなくハナカミキリの仲間も来ているしコガネムシの仲間も来る。
みんなお揃いのレストランになっている。家の周りにそんな場所が一ヵ所あってもバチは当たらないだろう…。
2024年9月7日号
苗場山麓で見られる常緑のスゲは、ホソバカンスゲ、ヒメカンスゲ、ヒロバスゲなど7種ほどある。
花期は春から初夏にかけてで、どれもよく似た地味な花を咲かせる。葉は線形で、幅に違いはあるものの見分けるのが面倒くさい。
こんな厄介なスゲの中からそれぞれの特性を見極め、暮らしに取り入れられてきたものがある。
ミヤマカンスゲ(ヒロロ、写真左)の葉は軽くて丈夫、水をはじく性質から、雪や雨時の雨具であるミノの材料とした。採取時期は新葉が程よく成長した8月から秋の彼岸ころとされた。この地域ではよく見かけ、沢沿いなどの少し湿った所で群生していることが多い。
コシノホンモンジスゲ(タツノケ、写真右)の葉も水に強い性質から、旦那衆の雨具であるケミノの材料となった。採取時期は7月下旬から8月上旬である。日当たりのいい雑木林の斜面などで見かける。
自然と向き合ってきた先人の見識からは学ぶべき事ばかりだ。
2024年8月31日号
苗場山麓ジオパークのガイド仲間から、高野山の砂利道で鉄道のレールを見つけたということで、早速調査に出かけました。場所は穴藤から巻揚機で高野山に上がって調整池に向かう途中の作業道の脇で、捻じ曲げられた状態で一部は地面に埋もれていました。鉄が貴重だった戦中にレールが供出されずに残っていたのは奇跡です。
高野山には大規模なダム工事もあり、巻揚からダム現場、そこから前倉トド(結東原)までの軌道跡は、地形的に現在の道路とほぼ同じルートを通ったものと思われます。
此処で分からないのが亀岡あたりから高野山に上がったルートです。古い地図には加用から百ノ木あたりから巻揚機があり、横根を通って高野山に上がったようですが、そこが何処なのか? また志久見川ルートに電車または汽車が実際走ったのか? 志久見川沿いの方より情報をお待ちしております。
2024年8月24日号