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妻有まるごと博物館一覧

  • 厳冬の一番滝

    小林 幸一(津南案内人)

     見玉不動尊に初詣を兼ねて新年初撮影に出かけました。境内は雪に覆われ滝の音だけが響き渡ります。雪を踏みしめ7段の滝の一番滝を拝み、今年も素敵な発見と出逢い、そして良い写真が撮れることを祈りました。
     見玉不動尊は文治2(1186)年、壇ノ浦の戦いの後、平清盛の家臣宮本清佐エ門がお告げにより不動明王を安置したことが始まりという霊験あらたかな古刹で、本山でもある比叡山延暦寺が織田信長による焼き討ちから逃れた5大明王のうち、西方守護神 大威明王と南方守護神 軍茶利明王の2体が安置されているという大変な由緒のある古寺です。

    2025年1月18日号

  • 線路の除雪ロータリ

    照井 麻美(津南星空写真部)

     雪国の生活で驚いたことはどんなに雪が降っても学校は休校にならないし、電車もバスも普通に動いていることだ。東京で10センチの降雪があれば公共交通のダイヤは乱れ、更に降り積もれば物流も何もかもがストップする。
     ただし、この地域の公共交通機関は30センチ降ったところでいつも通りの運行を行っている。それは本当にすごいことだと思うし、公共交通を担う各社の仕事には感謝と尊敬の念しかない。
     特に冬の飯山線は日本でも過酷な路線の一つだと思う。線路脇は雪壁ができ、雪庇がせり出し、線路には雪が降り積もる。
     そこで力強い味方は線路除雪のロータリ車だ。路線を一時運休にして道路と同じように雪を巻き上げ積もった雪をあっという間にきれいにしていく。
     道路除雪とは一味違った重厚感と車両が駆け抜ける風景は豪雪地の力強さを感じる一面である。
     今年は青森に大雪を降らせているようだが、どんな寒波が来ても安心して生活できるこの地域の冬は、未明から除雪をしてくれる方やその関係企業の人たちによって支えられているんだなぁと除雪車を見かけるたびに思うのでした。

    2025年1月11日号

  • 雪の上の昆虫

    南雲 敏夫(県自然観察指導員)

     少し暖かい日の雪の上にはいろんな昆虫を見かける事がある。写真はカマドウマのカゲロウの仲間だが、なぜ雪の上にいるんだろうか…
     蜘蛛の仲間も晴れている雪の上にはよく見かけるが、もちろん雪の上だから動きは相当遅い。
     ケムシの仲間のカケカレハなども雪の上でよく見かける種である。動きが悪いところに雪が積もったらいったいどうなるんだろうかと、余計なお世話とは思うが命があるものだから少し気にかかる。
     もちろん春先になればセッケイカワゲラなどの定番の昆虫が出てくるが、それならば理解できる。セッケイカワゲラが仲間の死骸を数匹で食べていたのを見た事もあるし。
     しかしやはの雪国で暮らしている昆虫たちは、雪の中でもなにかしらの生きる術を持っているんだろうなとも思う。

    2025年1月4日号

  • そっくりさんなひっつきむし

    中沢 英正(県自然観察保護員)

     秋も深まった頃、草やぶの中で着衣にいろんな植物の果実や種子がくっついてくる。それらの愛称を「ひっつきむし」と呼ぶ。
     その中でもお馴染みさんがアメリカセンダングサである。名のとおり北アメリカ原産の外来種だ。
     田畑の周りや道端など身近で見られ、群生することが多い。
     果実はそう果と呼ばれ(写真左)、扁平で先に2本の突起がつく。その突起に逆刺があってそれでくっつくのだ。釣り針の返しみたいで取るのに厄介だが、子供達には「バカ」の名で人気の遊び相手である。
     それに似た果実をつけるのがコセンダングサだ。こちらも北アメリカ原産の外来種で、関東以西に多いが、苗場山麓でも見かけるようになった。
     そう果(写真右)には2~4本の突起がつくが、それに逆刺があるところは前者と同じ。
     どちらも一年草で、たくさんの種子を蒔き散らし勢力拡大に余念がない。

    2024年12月21日号

  • 中津川幹線水路

    小林 幸一(津南案内人)

     反里口から中津川に降りる川原の崖にポッカリと開いた隧道の出口付近は土砂の崩壊で完全に埋まっていますが、その先に軌道の痕跡が残っているかと斜面を探索していると、なんと反里口頭首工の直ぐ傍に軌道跡の盛り土と、併設された灌漑用水路の石組がしっかりと残っていました。
     この辺りは今でも斜面が崩落し中津川まで押してきますので、当時も軌道や水路の確保に大変な場所だったと思います。その原因となるのが太古の昔、笹葉峰の大崩落により、幅2.5キロ長さ4.5キロ、落差300㍍で太田新田・見玉方面へ押し出し、大量の土砂が中津川を堰き止めた地域といわれております。
     その崩落地形に大正8年に中津川発電所工事の輸送路として軌道が敷かれ、穴藤のダムから正面ヶ原開田地業に引く中津川幹線水路も開通しましたが、昭和24・25年の台風で地山もろとも大崩落し農家を落胆させました。
     現在の頭首工は昭和43年に完成し広大な圃場を潤していますが、その傍に残された稲作への熱い想いを忘れてはなりません。

    2024年12月14日号

  • 冬のヒーロー除雪隊

    照井 麻美(津南星空写真部)

     ロータリ除雪車やタイヤショベルを乗りこなし、私たちが朝出かけるまでの間に町中の道路を通れるようにしてくれている「豪雪地帯のヒーロー」除雪隊。
     全国の除雪隊の始まりは北海道札幌市が始まりとされ、青森空港の除雪隊は『ホワイトインパルス』と呼ばれ、滑走路などの冬季でも滞りなく飛行機が離発着できるよう完璧なまでの除雪を行い全国的にも有名だ。
     この地域の除雪は北の雪とは違い、重く湿っていて、扱いが難しいが、これだけキレイに除雪されている地域はほとんどない。
     私が初めて目にした津南・十日町の冬道はスノータイヤじゃなくても走れるのではないかと思うほどきれいだった。
     この地域に住んでいると当たり前の光景かもしれないが、民家の前やすぐ近くの道にあんな大きな重機が走り回って、大量の雪を退けていく。
     私はそんな除雪隊がカッコイイなぁと早朝の作業を見るのがこれからの日課。
     人口減少問題の中、除雪隊の人手不足も深刻な問題となっているが、昼夜問わず、生活に欠かせない必要不可欠な仕事に冬のヒーローとして、次の世代の除雪隊が増えることを切に願っている。

    2024年12月7日号

  • ツキヨタケとその発光

    南雲 敏夫(県自然観察指導員)

     毒キノコで有名なツキヨタケ、毎年あちこちでこのキノコでの食中毒が発生している。確かに一見するとムキタケやヒラタケと間違いやすいのも事実。
     それらのキノコと違ってツキヨタケは名前の通り、傘の裏側が発光する。これを見た事がある人はほとんどいないと思われるが…。
     この写真は採ってきたばかりの新鮮なツキヨタケを真っ暗な部屋に置いて撮影したもので、少しでも周囲に明かりがあると光るのが判らないほど微光である。
     真っ暗な部屋だと、傘裏がわずかにぼーっとした淡い光が見える。
     カメラをバルブ撮影で感度を上げて30秒ほど露出をかけて撮影。そうするとこのような緑色の鮮やかな写真が撮れる。
     今年は終わりだが興味ある人は来年狙って見てはいかが。

    2024年11月30日号

  • 南から来た蝶

    中沢 英正(県自然観察保護員)

     地球温暖化と言われて久しい。長く続く暑さは勘弁してほしいし、穏やかな春の日やさわやかな秋の日が少なくなるのは寂しい。
     気温に敏感なのは昆虫の方が上。今まで見なれなかった南方種の蝶を目にする機会が増えた。
     ツマグロヒョウモン(写真左)は近畿以西に分布していたのだが、関東から東北南部まで広がってきている。津南町では10年ほど前から、栄村や野沢温泉村では2年くらい前から花に止まる姿を見かけるようになった。メスの前翅の先半分が紫黒色なのが特徴である。
     クロコノマチョウ(写真右)は、静岡県以西の沿岸地域に分布するが、生息域は関東北部まで広がっている。津南町では今秋に2個体確認した。コナラの樹液を吸う姿は枯れ葉と見まがうほど目立たぬ色合い。成虫越冬するのだそうだが南国由来の蝶に雪国の冬は過酷であろう。
     南方の蝶が見られるようになったのは嬉しいが、今まで飛び廻っ
    ていた北方の蝶が見られなくなったら悲しい。

    2024年11月23日号

  • 魚野川取水堰 その3

    小林 幸一(津南案内人)

     魚野川取水堰上流の水門は土砂の崩落で半分近くが埋まっており、そのガレ場を登って水門の裏に回ってみると、山肌に不気味な隧道が半分埋まった状態で口を開けていました。今まで入った秋山郷の廃隧道では複数で入っていたので怖い思いはしていませんが、ひとりで入るには気持ちの良いものではありません。此処では念のため動物の痕跡を確認しながら斜面を降り少し奥の方まで入ってみました。
     また、これまでの隧道は電車を通すため広い空間がありましたが、水路用の隧道は狭く圧迫感があり、最深部まで行くのは断念しました。
     この隧道は初代の魚野川取水堰が運用前に土砂の崩壊で埋没し、工事途中で破棄されたものか、高さ関係から見ても現在の取水口より高い位置にあります。
     これらの遺構はやがて土砂で埋没しますが、秋山郷の電源開発遺産として記録して行きたいと思います。
    (現地は私有地や砂防ダムで塞がれ立ち入ることはできません)

    2024年11月16日号

  • カマキリの卵と積雪量

    照井 麻美(津南星空写真部)

     「カマキリの卵が高いところに産み付けられていれば今年は大雪だ」という雪国の言い伝えのような話を皆さん一度は聞いたり、話したことがあると思います。
     この話は本当なのか? 平成9年(1997)にカマキリの卵が産み付けられる高さと、最大積雪深に関する研究発表が新潟県出身の酒井氏からされ、それがテレビなどのメディアを通じて広く知られるようになったようです。
     しかし、近年弘前大学の安藤喜一氏によってそれは間違いであるということが書物でも書かれており、そもそもカマキリの卵は寒さや雪、耐水性にも優れており、雪に埋もれても春には羽化することがわかっています。
     研究内容を見るとカマキリ自身が積雪予想をして卵を産み付ける高さを変えているわけではなさそうですが、気候の変化によって大気中の水分量や樹木の成長具合によって産卵場所が異なっているように感じました。
     個人的にはこの秋見かけたカマキリの卵は3ヵ所で全て地上から約140cmのところに付いていたことや、ヘクサムシの数も見逃せませんが、ぜひ皆さんも今年の積雪量を予想してみてください。

    2024年11月9日号

  • 厳冬の一番滝

    小林 幸一(津南案内人)

     見玉不動尊に初詣を兼ねて新年初撮影に出かけました。境内は雪に覆われ滝の音だけが響き渡ります。雪を踏みしめ7段の滝の一番滝を拝み、今年も素敵な発見と出逢い、そして良い写真が撮れることを祈りました。
     見玉不動尊は文治2(1186)年、壇ノ浦の戦いの後、平清盛の家臣宮本清佐エ門がお告げにより不動明王を安置したことが始まりという霊験あらたかな古刹で、本山でもある比叡山延暦寺が織田信長による焼き討ちから逃れた5大明王のうち、西方守護神 大威明王と南方守護神 軍茶利明王の2体が安置されているという大変な由緒のある古寺です。

    2025年1月18日号

  • 線路の除雪ロータリ

    照井 麻美(津南星空写真部)

     雪国の生活で驚いたことはどんなに雪が降っても学校は休校にならないし、電車もバスも普通に動いていることだ。東京で10センチの降雪があれば公共交通のダイヤは乱れ、更に降り積もれば物流も何もかもがストップする。
     ただし、この地域の公共交通機関は30センチ降ったところでいつも通りの運行を行っている。それは本当にすごいことだと思うし、公共交通を担う各社の仕事には感謝と尊敬の念しかない。
     特に冬の飯山線は日本でも過酷な路線の一つだと思う。線路脇は雪壁ができ、雪庇がせり出し、線路には雪が降り積もる。
     そこで力強い味方は線路除雪のロータリ車だ。路線を一時運休にして道路と同じように雪を巻き上げ積もった雪をあっという間にきれいにしていく。
     道路除雪とは一味違った重厚感と車両が駆け抜ける風景は豪雪地の力強さを感じる一面である。
     今年は青森に大雪を降らせているようだが、どんな寒波が来ても安心して生活できるこの地域の冬は、未明から除雪をしてくれる方やその関係企業の人たちによって支えられているんだなぁと除雪車を見かけるたびに思うのでした。

    2025年1月11日号

  • 雪の上の昆虫

    南雲 敏夫(県自然観察指導員)

     少し暖かい日の雪の上にはいろんな昆虫を見かける事がある。写真はカマドウマのカゲロウの仲間だが、なぜ雪の上にいるんだろうか…
     蜘蛛の仲間も晴れている雪の上にはよく見かけるが、もちろん雪の上だから動きは相当遅い。
     ケムシの仲間のカケカレハなども雪の上でよく見かける種である。動きが悪いところに雪が積もったらいったいどうなるんだろうかと、余計なお世話とは思うが命があるものだから少し気にかかる。
     もちろん春先になればセッケイカワゲラなどの定番の昆虫が出てくるが、それならば理解できる。セッケイカワゲラが仲間の死骸を数匹で食べていたのを見た事もあるし。
     しかしやはの雪国で暮らしている昆虫たちは、雪の中でもなにかしらの生きる術を持っているんだろうなとも思う。

    2025年1月4日号

  • そっくりさんなひっつきむし

    中沢 英正(県自然観察保護員)

     秋も深まった頃、草やぶの中で着衣にいろんな植物の果実や種子がくっついてくる。それらの愛称を「ひっつきむし」と呼ぶ。
     その中でもお馴染みさんがアメリカセンダングサである。名のとおり北アメリカ原産の外来種だ。
     田畑の周りや道端など身近で見られ、群生することが多い。
     果実はそう果と呼ばれ(写真左)、扁平で先に2本の突起がつく。その突起に逆刺があってそれでくっつくのだ。釣り針の返しみたいで取るのに厄介だが、子供達には「バカ」の名で人気の遊び相手である。
     それに似た果実をつけるのがコセンダングサだ。こちらも北アメリカ原産の外来種で、関東以西に多いが、苗場山麓でも見かけるようになった。
     そう果(写真右)には2~4本の突起がつくが、それに逆刺があるところは前者と同じ。
     どちらも一年草で、たくさんの種子を蒔き散らし勢力拡大に余念がない。

    2024年12月21日号

  • 中津川幹線水路

    小林 幸一(津南案内人)

     反里口から中津川に降りる川原の崖にポッカリと開いた隧道の出口付近は土砂の崩壊で完全に埋まっていますが、その先に軌道の痕跡が残っているかと斜面を探索していると、なんと反里口頭首工の直ぐ傍に軌道跡の盛り土と、併設された灌漑用水路の石組がしっかりと残っていました。
     この辺りは今でも斜面が崩落し中津川まで押してきますので、当時も軌道や水路の確保に大変な場所だったと思います。その原因となるのが太古の昔、笹葉峰の大崩落により、幅2.5キロ長さ4.5キロ、落差300㍍で太田新田・見玉方面へ押し出し、大量の土砂が中津川を堰き止めた地域といわれております。
     その崩落地形に大正8年に中津川発電所工事の輸送路として軌道が敷かれ、穴藤のダムから正面ヶ原開田地業に引く中津川幹線水路も開通しましたが、昭和24・25年の台風で地山もろとも大崩落し農家を落胆させました。
     現在の頭首工は昭和43年に完成し広大な圃場を潤していますが、その傍に残された稲作への熱い想いを忘れてはなりません。

    2024年12月14日号

  • 冬のヒーロー除雪隊

    照井 麻美(津南星空写真部)

     ロータリ除雪車やタイヤショベルを乗りこなし、私たちが朝出かけるまでの間に町中の道路を通れるようにしてくれている「豪雪地帯のヒーロー」除雪隊。
     全国の除雪隊の始まりは北海道札幌市が始まりとされ、青森空港の除雪隊は『ホワイトインパルス』と呼ばれ、滑走路などの冬季でも滞りなく飛行機が離発着できるよう完璧なまでの除雪を行い全国的にも有名だ。
     この地域の除雪は北の雪とは違い、重く湿っていて、扱いが難しいが、これだけキレイに除雪されている地域はほとんどない。
     私が初めて目にした津南・十日町の冬道はスノータイヤじゃなくても走れるのではないかと思うほどきれいだった。
     この地域に住んでいると当たり前の光景かもしれないが、民家の前やすぐ近くの道にあんな大きな重機が走り回って、大量の雪を退けていく。
     私はそんな除雪隊がカッコイイなぁと早朝の作業を見るのがこれからの日課。
     人口減少問題の中、除雪隊の人手不足も深刻な問題となっているが、昼夜問わず、生活に欠かせない必要不可欠な仕事に冬のヒーローとして、次の世代の除雪隊が増えることを切に願っている。

    2024年12月7日号

  • ツキヨタケとその発光

    南雲 敏夫(県自然観察指導員)

     毒キノコで有名なツキヨタケ、毎年あちこちでこのキノコでの食中毒が発生している。確かに一見するとムキタケやヒラタケと間違いやすいのも事実。
     それらのキノコと違ってツキヨタケは名前の通り、傘の裏側が発光する。これを見た事がある人はほとんどいないと思われるが…。
     この写真は採ってきたばかりの新鮮なツキヨタケを真っ暗な部屋に置いて撮影したもので、少しでも周囲に明かりがあると光るのが判らないほど微光である。
     真っ暗な部屋だと、傘裏がわずかにぼーっとした淡い光が見える。
     カメラをバルブ撮影で感度を上げて30秒ほど露出をかけて撮影。そうするとこのような緑色の鮮やかな写真が撮れる。
     今年は終わりだが興味ある人は来年狙って見てはいかが。

    2024年11月30日号

  • 南から来た蝶

    中沢 英正(県自然観察保護員)

     地球温暖化と言われて久しい。長く続く暑さは勘弁してほしいし、穏やかな春の日やさわやかな秋の日が少なくなるのは寂しい。
     気温に敏感なのは昆虫の方が上。今まで見なれなかった南方種の蝶を目にする機会が増えた。
     ツマグロヒョウモン(写真左)は近畿以西に分布していたのだが、関東から東北南部まで広がってきている。津南町では10年ほど前から、栄村や野沢温泉村では2年くらい前から花に止まる姿を見かけるようになった。メスの前翅の先半分が紫黒色なのが特徴である。
     クロコノマチョウ(写真右)は、静岡県以西の沿岸地域に分布するが、生息域は関東北部まで広がっている。津南町では今秋に2個体確認した。コナラの樹液を吸う姿は枯れ葉と見まがうほど目立たぬ色合い。成虫越冬するのだそうだが南国由来の蝶に雪国の冬は過酷であろう。
     南方の蝶が見られるようになったのは嬉しいが、今まで飛び廻っ
    ていた北方の蝶が見られなくなったら悲しい。

    2024年11月23日号

  • 魚野川取水堰 その3

    小林 幸一(津南案内人)

     魚野川取水堰上流の水門は土砂の崩落で半分近くが埋まっており、そのガレ場を登って水門の裏に回ってみると、山肌に不気味な隧道が半分埋まった状態で口を開けていました。今まで入った秋山郷の廃隧道では複数で入っていたので怖い思いはしていませんが、ひとりで入るには気持ちの良いものではありません。此処では念のため動物の痕跡を確認しながら斜面を降り少し奥の方まで入ってみました。
     また、これまでの隧道は電車を通すため広い空間がありましたが、水路用の隧道は狭く圧迫感があり、最深部まで行くのは断念しました。
     この隧道は初代の魚野川取水堰が運用前に土砂の崩壊で埋没し、工事途中で破棄されたものか、高さ関係から見ても現在の取水口より高い位置にあります。
     これらの遺構はやがて土砂で埋没しますが、秋山郷の電源開発遺産として記録して行きたいと思います。
    (現地は私有地や砂防ダムで塞がれ立ち入ることはできません)

    2024年11月16日号

  • カマキリの卵と積雪量

    照井 麻美(津南星空写真部)

     「カマキリの卵が高いところに産み付けられていれば今年は大雪だ」という雪国の言い伝えのような話を皆さん一度は聞いたり、話したことがあると思います。
     この話は本当なのか? 平成9年(1997)にカマキリの卵が産み付けられる高さと、最大積雪深に関する研究発表が新潟県出身の酒井氏からされ、それがテレビなどのメディアを通じて広く知られるようになったようです。
     しかし、近年弘前大学の安藤喜一氏によってそれは間違いであるということが書物でも書かれており、そもそもカマキリの卵は寒さや雪、耐水性にも優れており、雪に埋もれても春には羽化することがわかっています。
     研究内容を見るとカマキリ自身が積雪予想をして卵を産み付ける高さを変えているわけではなさそうですが、気候の変化によって大気中の水分量や樹木の成長具合によって産卵場所が異なっているように感じました。
     個人的にはこの秋見かけたカマキリの卵は3ヵ所で全て地上から約140cmのところに付いていたことや、ヘクサムシの数も見逃せませんが、ぜひ皆さんも今年の積雪量を予想してみてください。

    2024年11月9日号