Category

妻有まるごと博物館一覧

  • ホンドキツネ

    南雲 敏夫(県自然観察指導員)

     今回は久々に昼間にキツネの写真が撮れた。夜行性のキツネが日中に姿を見せるのはあまりないが、この日は天気も良いし、ちょうど春うららのような気温と雰囲気であった。
     動物たちもやはり長い冬の厳しい期間を耐えて暖かくなると油断するのかは分からないが、山からの農道を楽しそうにスキップしながら下りてくるのを確認、キツネ当人は嬉しそうにスキップしていたのかはわからないけれど…、見ていてそんな感じに受けた。
     急いで車を止めてカメラ持ってそっと陰から近づいて撮影。
     一瞬、こちらを見ていたがなんとか2回シャッターを切った途端にキツネは「あっ見つかった…」と思ったのか猛ダッシュで逃げて行った。
     わずかの時間でもこういう場面での動物たちとのやりとりはとても楽しい時間。
     このキツネ、イヌ科だと知っている人は案外と少ない。もちろんタヌキもイヌ科、だから犬の病気が流行ると野生のキツネやタヌキも被害を受ける事になる。 

    2024年5月18日号

  • ヤマナラシ綿毛

    中沢 英正(県自然観察保護員)

     5月初めの晴れた日、宙を舞うたくさんの綿毛を見ることがある。タンポポのとはちょっと違う、それを飛ばしているのは「ヤマナラシ」という樹木の仕業である。
     この樹木はヤナギの仲間で、高さ20メートル、径50センチほどになる。すっくと立つ樹姿がいい。
     花をつけるのは3月、まだ降雪のある頃だ。雌花と雄花があり、別々の株につく。雌花は新葉が広がる頃に結実し、綿毛をまとった種子を飛ばすのである。
     種子の寿命は短く、数日程度といわれている。一本の雌株から夥しい数の種子が飛び立つが、運命は風任せなのである。
     そこで、この樹木は確実性の高い繁殖手段も生み出した。地中にのびた根から芽を出して(根萌芽)新株を増やす方法だ。6月頃、親株の周りに幼株がポツポツと顔を出す。
     大仕事を終えたこの樹木は、夏には大きな木陰と、葉をすり合わせて作り出す音(山鳴らし)で涼しさを提供してくれる。

    2024年5月11日号

  • 埋もれた軌道跡

    小林 幸一(津南案内人)

     昨年秋に前倉の阿部利昭さんから、前倉上の三叉路付近で残雪期に軌道跡らしき平坦な道が見えるとの情報を頂き、早速探索に向かいましたが、軌道の痕跡が見えるのは最初だけで、あとは急斜面の連続でした。まさかこんな所を電車が走る訳がないと一旦は探索を諦めていましたが、先日阿部さんから今の時期なら分かるかもしれないと連絡を頂き、再度向かってみました。
     今回は友人と二人で送水管の横坑前から探索を始めましたが、やはり急斜面の連続で人の手が入ったような場所は発見できず、一旦林道までよじ登り、林道上から下を探す作戦に切り替えました。また今回から地図上の等高線を頼りに電車の通ったルートを想定し、横坑と同じ標高を重点的に探したところ、断片的ですが軌道跡らしきルートを見つけることが出来ました。
     軌道跡には斜面に石垣を積んだ場所もあり、此処が電車道であることが分かります。思うに、秋山林道を切り開いた時に大量の土砂を崖下に落とし、軌道跡の大半が土砂で埋まってしまったのではないのでしょうか?
     後日、阿部さんと前倉の聖徳太子碑の上部で石垣と完璧な軌道跡を発見し前倉の砕石場から秋山林道までの軌道跡が繋がる日も近いと思いました。

    2024年5月4日号

  • 米粒の道のり

    照井 麻美(津南星空写真部)

     朝、目を覚まして窓を開けるとベランダの手すりに米粒が立っていた。
     不思議に思い眼鏡をかけ直し、寝起きの開き切らない目を凝らしてみるとやはり小さな玄米が手すりの縁にチョンと立っているのだ。
     ベランダに米なんて持っていくわけないし、昨日まで無かった米粒。一体どこからやってきたのだろうと、じっくり観察していると鳥の糞ではないか。きっとスズメだろう。
     普段ならまた糞をしていったなと忌々しく思うこともあるのだが、なぜかここに春を感じてしまった。
     我が家は木造の家で数カ所スズメが巣をかけている場所がある。冬の間、鳴くこともほとんどせずにどこに行ったのかと思っていれば、暖かくなると、どこからともなくチュンチュンとスズメたちが帰ってくる。
     彼らも春になり活発に動くようになり、どこかで米を食べたのであろう。他の鳥に食べられないように慌てて飲み込んだのか、米粒は消化されずそのまま排出されたのだ。私にはこの米粒がどこから来たのか、本当のことは知らないが、我が家のベランダまで来た米粒の物語を想像することは、何とも言えない微笑ましい時間だった。

    2024年4月27日号

  • コシノコバイモの2輪咲き

    南雲 敏夫(県自然観察指導員)

     コシノコバイモ、幻の花とも言われているが、その数はある程度あるみたいだが、なんにせよ緑色の花の色合いと小型の背丈、花が下向き加減でおしとやか。
     だからそのつもりで捜さないと、ほとんどの人たちは見つけられないで終わる。普通の花は一茎に一花であるが、この花は一茎に二花付いている。
     変化花と言われればそれきりだが、いままで相当の量の花を捜して見ているが、こんな変わった花は初めてである。
     たいていカタクリの咲いている時期に咲いているのだが、カタクリと同じで花が終わると、地上茎がサッサと枯れてなくなってしまう。
     いわゆる夏眠タイプの花で、キクザキイチリンソウやイチリンソウなどもその仲間、通称はスプリングエフェメラルと言う可憐な名前が付いている。
     それにしても、なぜこのような花ができるのかが一番の疑問だが、自然の中に生育する草花は、説明できない内容もおおいのでは。
     変わった花を見つけるには、その前に正常の花をしっかりと覚える必要があると言う事を付け加えておく…。

    2024年4月20日号

  • ブナの芽吹き

    中沢 英正(県自然観察保護員)

     4月、ブナが葉を展開する時期だ。妻有の春はこの新緑で本番を迎える。
     植物を撮り始めた頃の1985年から2020年の間、ブナは4月20日前後で芽吹いていた。それがここに来て4月上旬まで早まったなと思っていたら、昨年はなんと3月下旬に見られるまでになった(花をつける年は1週間ほど早まる傾向があるが)。
     この樹木は毎年花をつける訳ではなく、5~7年おきに豊作を迎える。その間にも花をつけるものはあるが、2年続けてつけるものが現れるようになった。この場合果実は未熟なことが多いが…。
     ここ数年、雪の降り方や春先の高温に戸惑いや不安を感じるようになった。それは動植物にとってそれ以上の危機感だろう。
     地球温暖化が叫ばれて久しいがブナの芽吹きが早まったり、頻繁に花をつけるのはそれが原因のひとつなのかもしれない。
     今春も4月初めに芽吹きを確認した。山裾が新緑に包まれるのももうすぐだ。

    2024年4月13日号

  • ナラハヒラタマルタマフシ

    照井 麻美(津南星空写真部)

     皆さんは山の中でこんな不思議な赤い実を見たことはありませんか?
     この写真は9月に撮影したものですが、ナラの葉っぱの上に違和感を感じるようにくっついているこの実。
     パッ見ると美味しそうにも見えますが、実はこれはナラハヒラタマルタマバチという体長1㎜ほどの小さな羽の無いハチの卵だそうです。
     この赤い実のように虫に寄生され、植物組織が異常な発達を起こしてできるこぶ状の突起のことを「虫えい」または「虫こぶ」と言い、タマバチの寄生で起こる虫えいをナラハヒラタマルタマフシと呼びます。
     ナラハヒラタマルタマバチは幼虫から成虫へと羽化するまで虫えいの中で過ごします。6~7月ごろ産卵が始まり、8~9月にかけて幼虫が入ったまま赤い実のような虫えいが落下し、その虫えいの中で内側を食べながら成長・越冬し、翌年4~5月に成虫となり羽化するそうです。
     長引いていた雪も本当に終わりが見え、春の日差しを感じる日が多くなってまいりました。ナラハヒラタマルタマフシを破って小さなハチが出てくる季節です。目にはきっと見えませんが山菜取りなどで山に入った時思い出してもらえたら嬉しいです。

    2024年3月30日号

  • ミコアイサ

    南雲 敏夫(県自然観察指導員)

     別名がパンダガモ、顔の雰囲気がパンダに似ているから今はパンダガモの名前の方が判りやすいカモ…それにしても綺麗なカモで遠目で見ても存在が判る。
     本家のパンダはオスもメスも同じ体色と模様だが、そこはやはり鳥類、やはりオスの方が断然綺麗ですよ…。
     写真のようにほぼ純白の体に目の周りが黒い、体のあちこちに黒いラインが目を引きます。で、メスは茶色が多いので地味。
     本来は海に近い新潟市の鳥屋野潟や佐潟、上越市の朝日池などで多く見られるが、宮中のダムや信濃川でも時々姿を確認できる。
     この時期普通にいるマガモやコガモ、お馴染みのカルガモなどは潜水しないが、このアイサの仲間は潜水して餌を獲る。
     特にこのミコアイサは潜水して小魚を狙うというから水中の動きがよほど素早いのだと思う。
     まもなく北に帰ると思うがこの写真を見て一度見てみたいと思う方は海岸に近い潟に行ってみると良い。特に新潟の佐潟は見つけやすいと思うのだが。

    2024年3月23日号

  • ニンギョウトビケラ

    中沢 英正(県自然観察保護員)

     3月、河川の水はまだ冷たいが水中ではいろんな生き物が活動し始める。浅瀬の石をめくると、カゲロウ、カワゲラ、トビケラなどの幼虫がへばりついている。扁平や細い体で水流をやり過ごしているのだ。
     面白いのが糸を吐き出すことができるトビケラの仲間である。種類によってその糸で石にくっついたり、川底の小石や植物片を綴って巣をつくっている。
     ニンギョウトビケラは石粒を使って長さ1センチほどの袋状の巣をつくる。不思議なのはその両側にさらに大きい石粒を3~4対くっつけることだ。特徴ある姿が人形に見えることからの呼び名である。巣にはいったまま動き回り食べ物を探す(写真)。
     山口県岩国市では「石人形」の名で江戸の時代から人気の土産であったという。錦帯橋を洪水から守るため身をささげた乙女の生まれ変わりとして、七福神や仏様に見立ててのお守りとして人の心をつかんできたのだ。
     こんな小さな生き物まで気に留めていた先人の眼力に脱帽である。

    2024年3月16日号

  • 熊鍋と冬の秋山郷撮影ツアー

    小林 幸一(津南案内人)

     森宮交通さんの冬の秋山郷撮影ツアーのガイドとして2日間同行しました。今回の参加者は2年前に同じ企画で参加されたリピーターの方々と香港からの初めての参加者でした。
     初めての外国人の参加でちょっと不安もあり、急きょ翻訳アプリを入れましたが、ほとんど日本語で通じました。
     今回は2年前の参加者が多かったので前回とは違う撮影地に案内しました。まずは池田の池から見玉不動尊七段の滝、見倉ではバスから降り歩いて木々に薄っすらと積もった降りたての雪を撮りました。私たちには見慣れた景色でも運がよくないとなかなか撮れない光景です。
     今回の宿は江戸時代に鈴木牧之が小赤沢で泊まった苗場荘で、当時と同じ茅葺屋根の梁や柱が見られ、牧之の描いた地炉の挿絵の複写が飾ってありました。
     食事会場には他の撮影グループもいて、壁には熊の皮が吊るされ、熊鍋を中心とした料理で写真談議に花を咲かせました。
     2日目は屋敷の布岩から上野原、穴藤のつり橋など雪の上を歩くことが多かったのでしっかりと踏み固めたのですが、香港からの参加者が雪を踏み抜き転んでなかなか歩けないのです。面白がって転んでいるのかもしれませんが、雪が良い思い出になっていることでしょう。
     帰りの車中で津南・秋山郷の四季の写真を見た方から、残雪と芽吹きの撮影がしたいという新たな予約が入ました。そこまで雪が残っているか? 雪が重要なアイティムになっています。

    2024年3月9日号

  • ホンドキツネ

    南雲 敏夫(県自然観察指導員)

     今回は久々に昼間にキツネの写真が撮れた。夜行性のキツネが日中に姿を見せるのはあまりないが、この日は天気も良いし、ちょうど春うららのような気温と雰囲気であった。
     動物たちもやはり長い冬の厳しい期間を耐えて暖かくなると油断するのかは分からないが、山からの農道を楽しそうにスキップしながら下りてくるのを確認、キツネ当人は嬉しそうにスキップしていたのかはわからないけれど…、見ていてそんな感じに受けた。
     急いで車を止めてカメラ持ってそっと陰から近づいて撮影。
     一瞬、こちらを見ていたがなんとか2回シャッターを切った途端にキツネは「あっ見つかった…」と思ったのか猛ダッシュで逃げて行った。
     わずかの時間でもこういう場面での動物たちとのやりとりはとても楽しい時間。
     このキツネ、イヌ科だと知っている人は案外と少ない。もちろんタヌキもイヌ科、だから犬の病気が流行ると野生のキツネやタヌキも被害を受ける事になる。 

    2024年5月18日号

  • ヤマナラシ綿毛

    中沢 英正(県自然観察保護員)

     5月初めの晴れた日、宙を舞うたくさんの綿毛を見ることがある。タンポポのとはちょっと違う、それを飛ばしているのは「ヤマナラシ」という樹木の仕業である。
     この樹木はヤナギの仲間で、高さ20メートル、径50センチほどになる。すっくと立つ樹姿がいい。
     花をつけるのは3月、まだ降雪のある頃だ。雌花と雄花があり、別々の株につく。雌花は新葉が広がる頃に結実し、綿毛をまとった種子を飛ばすのである。
     種子の寿命は短く、数日程度といわれている。一本の雌株から夥しい数の種子が飛び立つが、運命は風任せなのである。
     そこで、この樹木は確実性の高い繁殖手段も生み出した。地中にのびた根から芽を出して(根萌芽)新株を増やす方法だ。6月頃、親株の周りに幼株がポツポツと顔を出す。
     大仕事を終えたこの樹木は、夏には大きな木陰と、葉をすり合わせて作り出す音(山鳴らし)で涼しさを提供してくれる。

    2024年5月11日号

  • 埋もれた軌道跡

    小林 幸一(津南案内人)

     昨年秋に前倉の阿部利昭さんから、前倉上の三叉路付近で残雪期に軌道跡らしき平坦な道が見えるとの情報を頂き、早速探索に向かいましたが、軌道の痕跡が見えるのは最初だけで、あとは急斜面の連続でした。まさかこんな所を電車が走る訳がないと一旦は探索を諦めていましたが、先日阿部さんから今の時期なら分かるかもしれないと連絡を頂き、再度向かってみました。
     今回は友人と二人で送水管の横坑前から探索を始めましたが、やはり急斜面の連続で人の手が入ったような場所は発見できず、一旦林道までよじ登り、林道上から下を探す作戦に切り替えました。また今回から地図上の等高線を頼りに電車の通ったルートを想定し、横坑と同じ標高を重点的に探したところ、断片的ですが軌道跡らしきルートを見つけることが出来ました。
     軌道跡には斜面に石垣を積んだ場所もあり、此処が電車道であることが分かります。思うに、秋山林道を切り開いた時に大量の土砂を崖下に落とし、軌道跡の大半が土砂で埋まってしまったのではないのでしょうか?
     後日、阿部さんと前倉の聖徳太子碑の上部で石垣と完璧な軌道跡を発見し前倉の砕石場から秋山林道までの軌道跡が繋がる日も近いと思いました。

    2024年5月4日号

  • 米粒の道のり

    照井 麻美(津南星空写真部)

     朝、目を覚まして窓を開けるとベランダの手すりに米粒が立っていた。
     不思議に思い眼鏡をかけ直し、寝起きの開き切らない目を凝らしてみるとやはり小さな玄米が手すりの縁にチョンと立っているのだ。
     ベランダに米なんて持っていくわけないし、昨日まで無かった米粒。一体どこからやってきたのだろうと、じっくり観察していると鳥の糞ではないか。きっとスズメだろう。
     普段ならまた糞をしていったなと忌々しく思うこともあるのだが、なぜかここに春を感じてしまった。
     我が家は木造の家で数カ所スズメが巣をかけている場所がある。冬の間、鳴くこともほとんどせずにどこに行ったのかと思っていれば、暖かくなると、どこからともなくチュンチュンとスズメたちが帰ってくる。
     彼らも春になり活発に動くようになり、どこかで米を食べたのであろう。他の鳥に食べられないように慌てて飲み込んだのか、米粒は消化されずそのまま排出されたのだ。私にはこの米粒がどこから来たのか、本当のことは知らないが、我が家のベランダまで来た米粒の物語を想像することは、何とも言えない微笑ましい時間だった。

    2024年4月27日号

  • コシノコバイモの2輪咲き

    南雲 敏夫(県自然観察指導員)

     コシノコバイモ、幻の花とも言われているが、その数はある程度あるみたいだが、なんにせよ緑色の花の色合いと小型の背丈、花が下向き加減でおしとやか。
     だからそのつもりで捜さないと、ほとんどの人たちは見つけられないで終わる。普通の花は一茎に一花であるが、この花は一茎に二花付いている。
     変化花と言われればそれきりだが、いままで相当の量の花を捜して見ているが、こんな変わった花は初めてである。
     たいていカタクリの咲いている時期に咲いているのだが、カタクリと同じで花が終わると、地上茎がサッサと枯れてなくなってしまう。
     いわゆる夏眠タイプの花で、キクザキイチリンソウやイチリンソウなどもその仲間、通称はスプリングエフェメラルと言う可憐な名前が付いている。
     それにしても、なぜこのような花ができるのかが一番の疑問だが、自然の中に生育する草花は、説明できない内容もおおいのでは。
     変わった花を見つけるには、その前に正常の花をしっかりと覚える必要があると言う事を付け加えておく…。

    2024年4月20日号

  • ブナの芽吹き

    中沢 英正(県自然観察保護員)

     4月、ブナが葉を展開する時期だ。妻有の春はこの新緑で本番を迎える。
     植物を撮り始めた頃の1985年から2020年の間、ブナは4月20日前後で芽吹いていた。それがここに来て4月上旬まで早まったなと思っていたら、昨年はなんと3月下旬に見られるまでになった(花をつける年は1週間ほど早まる傾向があるが)。
     この樹木は毎年花をつける訳ではなく、5~7年おきに豊作を迎える。その間にも花をつけるものはあるが、2年続けてつけるものが現れるようになった。この場合果実は未熟なことが多いが…。
     ここ数年、雪の降り方や春先の高温に戸惑いや不安を感じるようになった。それは動植物にとってそれ以上の危機感だろう。
     地球温暖化が叫ばれて久しいがブナの芽吹きが早まったり、頻繁に花をつけるのはそれが原因のひとつなのかもしれない。
     今春も4月初めに芽吹きを確認した。山裾が新緑に包まれるのももうすぐだ。

    2024年4月13日号

  • ナラハヒラタマルタマフシ

    照井 麻美(津南星空写真部)

     皆さんは山の中でこんな不思議な赤い実を見たことはありませんか?
     この写真は9月に撮影したものですが、ナラの葉っぱの上に違和感を感じるようにくっついているこの実。
     パッ見ると美味しそうにも見えますが、実はこれはナラハヒラタマルタマバチという体長1㎜ほどの小さな羽の無いハチの卵だそうです。
     この赤い実のように虫に寄生され、植物組織が異常な発達を起こしてできるこぶ状の突起のことを「虫えい」または「虫こぶ」と言い、タマバチの寄生で起こる虫えいをナラハヒラタマルタマフシと呼びます。
     ナラハヒラタマルタマバチは幼虫から成虫へと羽化するまで虫えいの中で過ごします。6~7月ごろ産卵が始まり、8~9月にかけて幼虫が入ったまま赤い実のような虫えいが落下し、その虫えいの中で内側を食べながら成長・越冬し、翌年4~5月に成虫となり羽化するそうです。
     長引いていた雪も本当に終わりが見え、春の日差しを感じる日が多くなってまいりました。ナラハヒラタマルタマフシを破って小さなハチが出てくる季節です。目にはきっと見えませんが山菜取りなどで山に入った時思い出してもらえたら嬉しいです。

    2024年3月30日号

  • ミコアイサ

    南雲 敏夫(県自然観察指導員)

     別名がパンダガモ、顔の雰囲気がパンダに似ているから今はパンダガモの名前の方が判りやすいカモ…それにしても綺麗なカモで遠目で見ても存在が判る。
     本家のパンダはオスもメスも同じ体色と模様だが、そこはやはり鳥類、やはりオスの方が断然綺麗ですよ…。
     写真のようにほぼ純白の体に目の周りが黒い、体のあちこちに黒いラインが目を引きます。で、メスは茶色が多いので地味。
     本来は海に近い新潟市の鳥屋野潟や佐潟、上越市の朝日池などで多く見られるが、宮中のダムや信濃川でも時々姿を確認できる。
     この時期普通にいるマガモやコガモ、お馴染みのカルガモなどは潜水しないが、このアイサの仲間は潜水して餌を獲る。
     特にこのミコアイサは潜水して小魚を狙うというから水中の動きがよほど素早いのだと思う。
     まもなく北に帰ると思うがこの写真を見て一度見てみたいと思う方は海岸に近い潟に行ってみると良い。特に新潟の佐潟は見つけやすいと思うのだが。

    2024年3月23日号

  • ニンギョウトビケラ

    中沢 英正(県自然観察保護員)

     3月、河川の水はまだ冷たいが水中ではいろんな生き物が活動し始める。浅瀬の石をめくると、カゲロウ、カワゲラ、トビケラなどの幼虫がへばりついている。扁平や細い体で水流をやり過ごしているのだ。
     面白いのが糸を吐き出すことができるトビケラの仲間である。種類によってその糸で石にくっついたり、川底の小石や植物片を綴って巣をつくっている。
     ニンギョウトビケラは石粒を使って長さ1センチほどの袋状の巣をつくる。不思議なのはその両側にさらに大きい石粒を3~4対くっつけることだ。特徴ある姿が人形に見えることからの呼び名である。巣にはいったまま動き回り食べ物を探す(写真)。
     山口県岩国市では「石人形」の名で江戸の時代から人気の土産であったという。錦帯橋を洪水から守るため身をささげた乙女の生まれ変わりとして、七福神や仏様に見立ててのお守りとして人の心をつかんできたのだ。
     こんな小さな生き物まで気に留めていた先人の眼力に脱帽である。

    2024年3月16日号

  • 熊鍋と冬の秋山郷撮影ツアー

    小林 幸一(津南案内人)

     森宮交通さんの冬の秋山郷撮影ツアーのガイドとして2日間同行しました。今回の参加者は2年前に同じ企画で参加されたリピーターの方々と香港からの初めての参加者でした。
     初めての外国人の参加でちょっと不安もあり、急きょ翻訳アプリを入れましたが、ほとんど日本語で通じました。
     今回は2年前の参加者が多かったので前回とは違う撮影地に案内しました。まずは池田の池から見玉不動尊七段の滝、見倉ではバスから降り歩いて木々に薄っすらと積もった降りたての雪を撮りました。私たちには見慣れた景色でも運がよくないとなかなか撮れない光景です。
     今回の宿は江戸時代に鈴木牧之が小赤沢で泊まった苗場荘で、当時と同じ茅葺屋根の梁や柱が見られ、牧之の描いた地炉の挿絵の複写が飾ってありました。
     食事会場には他の撮影グループもいて、壁には熊の皮が吊るされ、熊鍋を中心とした料理で写真談議に花を咲かせました。
     2日目は屋敷の布岩から上野原、穴藤のつり橋など雪の上を歩くことが多かったのでしっかりと踏み固めたのですが、香港からの参加者が雪を踏み抜き転んでなかなか歩けないのです。面白がって転んでいるのかもしれませんが、雪が良い思い出になっていることでしょう。
     帰りの車中で津南・秋山郷の四季の写真を見た方から、残雪と芽吹きの撮影がしたいという新たな予約が入ました。そこまで雪が残っているか? 雪が重要なアイティムになっています。

    2024年3月9日号