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妻有まるごと博物館一覧

  • ミコアイサ

    南雲 敏夫(県自然観察指導員)

     別名がパンダガモ、顔の雰囲気がパンダに似ているから今はパンダガモの名前の方が判りやすいカモ…それにしても綺麗なカモで遠目で見ても存在が判る。
     本家のパンダはオスもメスも同じ体色と模様だが、そこはやはり鳥類、やはりオスの方が断然綺麗ですよ…。
     写真のようにほぼ純白の体に目の周りが黒い、体のあちこちに黒いラインが目を引きます。で、メスは茶色が多いので地味。
     本来は海に近い新潟市の鳥屋野潟や佐潟、上越市の朝日池などで多く見られるが、宮中のダムや信濃川でも時々姿を確認できる。
     この時期普通にいるマガモやコガモ、お馴染みのカルガモなどは潜水しないが、このアイサの仲間は潜水して餌を獲る。
     特にこのミコアイサは潜水して小魚を狙うというから水中の動きがよほど素早いのだと思う。
     まもなく北に帰ると思うがこの写真を見て一度見てみたいと思う方は海岸に近い潟に行ってみると良い。特に新潟の佐潟は見つけやすいと思うのだが。

    2024年3月23日号

  • ニンギョウトビケラ

    中沢 英正(県自然観察保護員)

     3月、河川の水はまだ冷たいが水中ではいろんな生き物が活動し始める。浅瀬の石をめくると、カゲロウ、カワゲラ、トビケラなどの幼虫がへばりついている。扁平や細い体で水流をやり過ごしているのだ。
     面白いのが糸を吐き出すことができるトビケラの仲間である。種類によってその糸で石にくっついたり、川底の小石や植物片を綴って巣をつくっている。
     ニンギョウトビケラは石粒を使って長さ1センチほどの袋状の巣をつくる。不思議なのはその両側にさらに大きい石粒を3~4対くっつけることだ。特徴ある姿が人形に見えることからの呼び名である。巣にはいったまま動き回り食べ物を探す(写真)。
     山口県岩国市では「石人形」の名で江戸の時代から人気の土産であったという。錦帯橋を洪水から守るため身をささげた乙女の生まれ変わりとして、七福神や仏様に見立ててのお守りとして人の心をつかんできたのだ。
     こんな小さな生き物まで気に留めていた先人の眼力に脱帽である。

    2024年3月16日号

  • 熊鍋と冬の秋山郷撮影ツアー

    小林 幸一(津南案内人)

     森宮交通さんの冬の秋山郷撮影ツアーのガイドとして2日間同行しました。今回の参加者は2年前に同じ企画で参加されたリピーターの方々と香港からの初めての参加者でした。
     初めての外国人の参加でちょっと不安もあり、急きょ翻訳アプリを入れましたが、ほとんど日本語で通じました。
     今回は2年前の参加者が多かったので前回とは違う撮影地に案内しました。まずは池田の池から見玉不動尊七段の滝、見倉ではバスから降り歩いて木々に薄っすらと積もった降りたての雪を撮りました。私たちには見慣れた景色でも運がよくないとなかなか撮れない光景です。
     今回の宿は江戸時代に鈴木牧之が小赤沢で泊まった苗場荘で、当時と同じ茅葺屋根の梁や柱が見られ、牧之の描いた地炉の挿絵の複写が飾ってありました。
     食事会場には他の撮影グループもいて、壁には熊の皮が吊るされ、熊鍋を中心とした料理で写真談議に花を咲かせました。
     2日目は屋敷の布岩から上野原、穴藤のつり橋など雪の上を歩くことが多かったのでしっかりと踏み固めたのですが、香港からの参加者が雪を踏み抜き転んでなかなか歩けないのです。面白がって転んでいるのかもしれませんが、雪が良い思い出になっていることでしょう。
     帰りの車中で津南・秋山郷の四季の写真を見た方から、残雪と芽吹きの撮影がしたいという新たな予約が入ました。そこまで雪が残っているか? 雪が重要なアイティムになっています。

    2024年3月9日号

  • 高倉山と結東集落

    照井 麻美(津南星空写真部)

     「ゴールデンカムイ」という映画はご覧になりましたか? 明治時代の北海道を舞台にした漫画が原作の映画なのですが、実は津南町にある「見玉公園」がロケ地となっており、冒頭のシーンで数カット見玉公園だと分かる形で使われています。
     私は見玉公園からも見える中津川流域の柱状節理が好きで、今回は見玉よりもう少し上流にある高倉山と結東集落の景色をお届けします。
     撮影時期は去年の2月26日で、東秋山林道に入り見倉集落に到着する手前で撮影しました。例年3月を目の前にすると雪も落ち着き、気持ちがいい晴れの日が続くようになり、雪が積もっていると岩肌の陰影がはっきりと見えるようになり、この時期しか見られない光景を目の当たりにすることができました。
     ふり返ってみると去年の今頃は結東の観測地点で積雪が2mあり、道路の両脇には高い雪壁ができていましたが、今年は去年のおよそ半分です。
     すでに地面の見えた所からはフキノトウが顔を出し始め、雪の季節が少なくて少し寂しいような気もしていますが、気温も高く暖かな日差しを感じると春が待ち遠しくなるのでした。

    2024年3月2日号

  • 冬鳥イスカ

    南雲 敏夫(県自然観察指導員)

     赤い冬鳥のイスカ、尾根上のアカマツ林などに多く飛来していて、マツボックリなどかいっばい落ちていたらこの鳥がいると考えて良い。
     このイスカの最大の特徴はくちばしが上下に綺麗に合わさっていない事で、先端が大きく交差しています。鳥のくちばしの形もいろいろとありますが先が交差しているのには訳があります。
     この形はマツ類の球果から種子を取り出しやすいように進化したとも言われています。
     オスは真っ赤の体が鮮やかですが、メスはオスに比べたらとても地味な色合い。
     この仲間のベニマシコやオオマシコ、ナキイスカなどはオスは艶やかな赤色、メスは地味な黄褐色系の色合い。大きさは羽を広げると約28センチもあるので大きめに感じますね。
     冬場は他の鳥も一緒にいる事も多くて撮影時にはマヒワの群れやシジュウカラ、ヒガラ、ヤマガラなども近くにいてとても賑やかな状態でした。
     まだ見る事が可能ですので是非アカマツの周辺を捜して見てください。

    2024年2月24日号

  • セツブンソウ

    中沢 英正(県自然観察保護員)

     2月、陽射しにぬくもりを感じるようになると、野草好きの人にとって落ち着かない日々の始まりである。各地から花の便りが聞こえてくるからだ。そんな人たちの琴線をいち早く刺激するのがセツブンソウである。
     花期は早い。2月中旬から3月中旬で、それが名の由来となっている。
     分布は本州の関東以西で、残念ながら苗場山麓では見ることができない。この花に逢いたければ近場でも群馬県、栃木県、埼玉県や長野県の南部まで足を運ぶことになる。
     落葉広葉樹の疎林下で、礫が混じる場所を好む。夏には地上部が枯れてしまうスプリング・エフェメラル(春のはかない命)だ。
     草丈は5~10センチ、小さくて可愛い。花は径2センチほど、白い花びらに見えるのは萼片。花びらはしべを囲むように並ぶ黄色い部分で、先が二裂して蜜腺となる面白い形をしている(写真)。
     温暖化の影響で、新潟県でもいつか自生が見られるようになるのかも…。

    2024年2月17日号

  • 百周年を迎えて

    小林 幸一(津南案内人)

     大正13(1924)年10月、秋山郷電源開発の象徴ともいえる中津川第一発電所が首都圏に向けて送電を開始して今年で百周年を迎えます。
     水力発電所の立地条件には雪解け水を貯える広大な原生林と、何度も発電出来る落差のある地形、まさに苗場山麓ジオパークのエリアが発電の教科書に載っているような適地でした。
     苗場山麓ジオパークガイド部会では昨年から発電所工事で開削された軌道跡や船着き場跡などを巡り、今年は運用開始百周年の記念事業として新たな探索コースを考えています。
     その中でも町の中心部に近い芦ヶ崎の波止場では、護岸や岸に打ち込まれた係留金具や、岩の上で焼かれた燃えカスが、高熱で溶けガラス状のコーティングによって閉じ込められた焼却跡が見つかりました。中には小さな鉄くずやステンレス製の注射針のようなものが閉じ込められて、百年前のタイムカプセルのようです。
     せっかく見つけた痕跡や護岸も大水が出ると流出してしまいます。「苗場山麓の自然に親しむ会」では、一昨年の黒石の波止場の調査に続き、昨年は芦ヶ崎の波止場の現地測量を実施しました。これを機に近代化遺産の保存活動が始まることを期待します。

    2024年2月10日号

  • つらら(氷柱)

    照井 麻美(津南星空写真部)

     春を感じてしまうほど暖かな日がある今年の冬。
     この地域に住むとたくさん雪が降らないでと願う一方、必要以上に少ない積雪だとなにか物足りなさを感じてしまい、心のどこかで雪を期待している自分がいます。
     写真は数年前に秋山郷で撮ったものです。
     妻有地域ではつららというより、雪庇の方が多く見かけますが、屋根の融雪用に水を流している所や、川の水しぶきが飛ぶあたりに見かけることがあります。
     幼い頃はゲレンデに遊びに行くと親に怒られながら、小さなつららをキャンディーのようになめていたことを思い出します。
     ちなみに新潟県の上越や田上町ではつららのことを「かねっこり」という方言があるらしい。この地域でもそれ以外の呼び名があるのだろうか。
     また、新潟県から東北にかけて「つらら女・かね」と呼ばれる妖怪の話があるそうで、多くは冬の夜に独身男の家に女が訪ねてきて、寒いだろうとお風呂を進めると女は一向に出てこず、心配になり様子を見に行くと女の姿は消え、湯船に氷のかけらが浮かんでいたという。

    2024年2月3日号

  • カワガラス

    南雲 敏夫(県自然観察指導員)

     鳥の仲間でもっとも早く巣作りをする種で早い親鳥は2月中に開始する。カワガラスは漢字だと「河烏」と書き、渓流の流れに潜水して獲物を狙うカラスと言うが、実際はカラスの仲間ではなくてカワガラス属と言うまったく違う種である。
     確かに遠目で見ると真っ黒に見えるが実際は黒褐色、もちろん水中を歩く事もできると言う、鳥の仲間としては異色の存在。
     餌は主に水生昆虫の幼生や小魚、魚卵などを食べている。
     巣作りは、こちらではまだ冬の時期に始めるが、渓流の岩の隙間や砂防堰堤の穴などを使う。
     秋山郷では砂防堰堤の垂直の壁に空いている穴を使用しているのを見た事があるが、砂防堰堤の垂直の壁ならばヘビなどの一番の天敵を十分に防ぐ事ができると思われる。
     堰堤最初の頃は穴から水が出ていたと思うが、堰堤に土砂が溜まり穴がふさがれて水が出なくなれば絶好の営巣場所に早変わり…自然の要塞に巣を作り子育てするカワガラスの知恵…恐れ入りました。

    2024年1月27日号

  • カワラタケとチャウロコタケ

    中沢 英正(県自然観察保護員)

     森を歩くのは楽しい。冬は観察するものは限られるが嬉しい出会いもある。積雪が少ないと切り株や落枝についたキノコが目につく。
     お気に入りはカワラタケ(写真右)やチャウロコタケ(写真左)。革質のかたい傘を持ち、年中見ることができる。幾重にも重なって生える様子を瓦や鱗に見立てたものだ。
     どちらも白色腐朽菌と呼ばれ、材を白く腐らせる役目を担っている。
     このキノコたちに興味をひかれるのは傘の模様。傘は半円形や扇形で、同心円状に縞模様が入る。カワラタケの傘色は黒が多いが、茶、青、灰、黄などさまざまだ。チャウロコタケの傘は名前の通り茶系統である。双方とも個体によって縞模様に変化があるところが
    面白い。
     傘の模様は単なるおしゃれ…? それとも何か重要な意味が隠されているのだろうか。

    2024年1月20日号

  • ミコアイサ

    南雲 敏夫(県自然観察指導員)

     別名がパンダガモ、顔の雰囲気がパンダに似ているから今はパンダガモの名前の方が判りやすいカモ…それにしても綺麗なカモで遠目で見ても存在が判る。
     本家のパンダはオスもメスも同じ体色と模様だが、そこはやはり鳥類、やはりオスの方が断然綺麗ですよ…。
     写真のようにほぼ純白の体に目の周りが黒い、体のあちこちに黒いラインが目を引きます。で、メスは茶色が多いので地味。
     本来は海に近い新潟市の鳥屋野潟や佐潟、上越市の朝日池などで多く見られるが、宮中のダムや信濃川でも時々姿を確認できる。
     この時期普通にいるマガモやコガモ、お馴染みのカルガモなどは潜水しないが、このアイサの仲間は潜水して餌を獲る。
     特にこのミコアイサは潜水して小魚を狙うというから水中の動きがよほど素早いのだと思う。
     まもなく北に帰ると思うがこの写真を見て一度見てみたいと思う方は海岸に近い潟に行ってみると良い。特に新潟の佐潟は見つけやすいと思うのだが。

    2024年3月23日号

  • ニンギョウトビケラ

    中沢 英正(県自然観察保護員)

     3月、河川の水はまだ冷たいが水中ではいろんな生き物が活動し始める。浅瀬の石をめくると、カゲロウ、カワゲラ、トビケラなどの幼虫がへばりついている。扁平や細い体で水流をやり過ごしているのだ。
     面白いのが糸を吐き出すことができるトビケラの仲間である。種類によってその糸で石にくっついたり、川底の小石や植物片を綴って巣をつくっている。
     ニンギョウトビケラは石粒を使って長さ1センチほどの袋状の巣をつくる。不思議なのはその両側にさらに大きい石粒を3~4対くっつけることだ。特徴ある姿が人形に見えることからの呼び名である。巣にはいったまま動き回り食べ物を探す(写真)。
     山口県岩国市では「石人形」の名で江戸の時代から人気の土産であったという。錦帯橋を洪水から守るため身をささげた乙女の生まれ変わりとして、七福神や仏様に見立ててのお守りとして人の心をつかんできたのだ。
     こんな小さな生き物まで気に留めていた先人の眼力に脱帽である。

    2024年3月16日号

  • 熊鍋と冬の秋山郷撮影ツアー

    小林 幸一(津南案内人)

     森宮交通さんの冬の秋山郷撮影ツアーのガイドとして2日間同行しました。今回の参加者は2年前に同じ企画で参加されたリピーターの方々と香港からの初めての参加者でした。
     初めての外国人の参加でちょっと不安もあり、急きょ翻訳アプリを入れましたが、ほとんど日本語で通じました。
     今回は2年前の参加者が多かったので前回とは違う撮影地に案内しました。まずは池田の池から見玉不動尊七段の滝、見倉ではバスから降り歩いて木々に薄っすらと積もった降りたての雪を撮りました。私たちには見慣れた景色でも運がよくないとなかなか撮れない光景です。
     今回の宿は江戸時代に鈴木牧之が小赤沢で泊まった苗場荘で、当時と同じ茅葺屋根の梁や柱が見られ、牧之の描いた地炉の挿絵の複写が飾ってありました。
     食事会場には他の撮影グループもいて、壁には熊の皮が吊るされ、熊鍋を中心とした料理で写真談議に花を咲かせました。
     2日目は屋敷の布岩から上野原、穴藤のつり橋など雪の上を歩くことが多かったのでしっかりと踏み固めたのですが、香港からの参加者が雪を踏み抜き転んでなかなか歩けないのです。面白がって転んでいるのかもしれませんが、雪が良い思い出になっていることでしょう。
     帰りの車中で津南・秋山郷の四季の写真を見た方から、残雪と芽吹きの撮影がしたいという新たな予約が入ました。そこまで雪が残っているか? 雪が重要なアイティムになっています。

    2024年3月9日号

  • 高倉山と結東集落

    照井 麻美(津南星空写真部)

     「ゴールデンカムイ」という映画はご覧になりましたか? 明治時代の北海道を舞台にした漫画が原作の映画なのですが、実は津南町にある「見玉公園」がロケ地となっており、冒頭のシーンで数カット見玉公園だと分かる形で使われています。
     私は見玉公園からも見える中津川流域の柱状節理が好きで、今回は見玉よりもう少し上流にある高倉山と結東集落の景色をお届けします。
     撮影時期は去年の2月26日で、東秋山林道に入り見倉集落に到着する手前で撮影しました。例年3月を目の前にすると雪も落ち着き、気持ちがいい晴れの日が続くようになり、雪が積もっていると岩肌の陰影がはっきりと見えるようになり、この時期しか見られない光景を目の当たりにすることができました。
     ふり返ってみると去年の今頃は結東の観測地点で積雪が2mあり、道路の両脇には高い雪壁ができていましたが、今年は去年のおよそ半分です。
     すでに地面の見えた所からはフキノトウが顔を出し始め、雪の季節が少なくて少し寂しいような気もしていますが、気温も高く暖かな日差しを感じると春が待ち遠しくなるのでした。

    2024年3月2日号

  • 冬鳥イスカ

    南雲 敏夫(県自然観察指導員)

     赤い冬鳥のイスカ、尾根上のアカマツ林などに多く飛来していて、マツボックリなどかいっばい落ちていたらこの鳥がいると考えて良い。
     このイスカの最大の特徴はくちばしが上下に綺麗に合わさっていない事で、先端が大きく交差しています。鳥のくちばしの形もいろいろとありますが先が交差しているのには訳があります。
     この形はマツ類の球果から種子を取り出しやすいように進化したとも言われています。
     オスは真っ赤の体が鮮やかですが、メスはオスに比べたらとても地味な色合い。
     この仲間のベニマシコやオオマシコ、ナキイスカなどはオスは艶やかな赤色、メスは地味な黄褐色系の色合い。大きさは羽を広げると約28センチもあるので大きめに感じますね。
     冬場は他の鳥も一緒にいる事も多くて撮影時にはマヒワの群れやシジュウカラ、ヒガラ、ヤマガラなども近くにいてとても賑やかな状態でした。
     まだ見る事が可能ですので是非アカマツの周辺を捜して見てください。

    2024年2月24日号

  • セツブンソウ

    中沢 英正(県自然観察保護員)

     2月、陽射しにぬくもりを感じるようになると、野草好きの人にとって落ち着かない日々の始まりである。各地から花の便りが聞こえてくるからだ。そんな人たちの琴線をいち早く刺激するのがセツブンソウである。
     花期は早い。2月中旬から3月中旬で、それが名の由来となっている。
     分布は本州の関東以西で、残念ながら苗場山麓では見ることができない。この花に逢いたければ近場でも群馬県、栃木県、埼玉県や長野県の南部まで足を運ぶことになる。
     落葉広葉樹の疎林下で、礫が混じる場所を好む。夏には地上部が枯れてしまうスプリング・エフェメラル(春のはかない命)だ。
     草丈は5~10センチ、小さくて可愛い。花は径2センチほど、白い花びらに見えるのは萼片。花びらはしべを囲むように並ぶ黄色い部分で、先が二裂して蜜腺となる面白い形をしている(写真)。
     温暖化の影響で、新潟県でもいつか自生が見られるようになるのかも…。

    2024年2月17日号

  • 百周年を迎えて

    小林 幸一(津南案内人)

     大正13(1924)年10月、秋山郷電源開発の象徴ともいえる中津川第一発電所が首都圏に向けて送電を開始して今年で百周年を迎えます。
     水力発電所の立地条件には雪解け水を貯える広大な原生林と、何度も発電出来る落差のある地形、まさに苗場山麓ジオパークのエリアが発電の教科書に載っているような適地でした。
     苗場山麓ジオパークガイド部会では昨年から発電所工事で開削された軌道跡や船着き場跡などを巡り、今年は運用開始百周年の記念事業として新たな探索コースを考えています。
     その中でも町の中心部に近い芦ヶ崎の波止場では、護岸や岸に打ち込まれた係留金具や、岩の上で焼かれた燃えカスが、高熱で溶けガラス状のコーティングによって閉じ込められた焼却跡が見つかりました。中には小さな鉄くずやステンレス製の注射針のようなものが閉じ込められて、百年前のタイムカプセルのようです。
     せっかく見つけた痕跡や護岸も大水が出ると流出してしまいます。「苗場山麓の自然に親しむ会」では、一昨年の黒石の波止場の調査に続き、昨年は芦ヶ崎の波止場の現地測量を実施しました。これを機に近代化遺産の保存活動が始まることを期待します。

    2024年2月10日号

  • つらら(氷柱)

    照井 麻美(津南星空写真部)

     春を感じてしまうほど暖かな日がある今年の冬。
     この地域に住むとたくさん雪が降らないでと願う一方、必要以上に少ない積雪だとなにか物足りなさを感じてしまい、心のどこかで雪を期待している自分がいます。
     写真は数年前に秋山郷で撮ったものです。
     妻有地域ではつららというより、雪庇の方が多く見かけますが、屋根の融雪用に水を流している所や、川の水しぶきが飛ぶあたりに見かけることがあります。
     幼い頃はゲレンデに遊びに行くと親に怒られながら、小さなつららをキャンディーのようになめていたことを思い出します。
     ちなみに新潟県の上越や田上町ではつららのことを「かねっこり」という方言があるらしい。この地域でもそれ以外の呼び名があるのだろうか。
     また、新潟県から東北にかけて「つらら女・かね」と呼ばれる妖怪の話があるそうで、多くは冬の夜に独身男の家に女が訪ねてきて、寒いだろうとお風呂を進めると女は一向に出てこず、心配になり様子を見に行くと女の姿は消え、湯船に氷のかけらが浮かんでいたという。

    2024年2月3日号

  • カワガラス

    南雲 敏夫(県自然観察指導員)

     鳥の仲間でもっとも早く巣作りをする種で早い親鳥は2月中に開始する。カワガラスは漢字だと「河烏」と書き、渓流の流れに潜水して獲物を狙うカラスと言うが、実際はカラスの仲間ではなくてカワガラス属と言うまったく違う種である。
     確かに遠目で見ると真っ黒に見えるが実際は黒褐色、もちろん水中を歩く事もできると言う、鳥の仲間としては異色の存在。
     餌は主に水生昆虫の幼生や小魚、魚卵などを食べている。
     巣作りは、こちらではまだ冬の時期に始めるが、渓流の岩の隙間や砂防堰堤の穴などを使う。
     秋山郷では砂防堰堤の垂直の壁に空いている穴を使用しているのを見た事があるが、砂防堰堤の垂直の壁ならばヘビなどの一番の天敵を十分に防ぐ事ができると思われる。
     堰堤最初の頃は穴から水が出ていたと思うが、堰堤に土砂が溜まり穴がふさがれて水が出なくなれば絶好の営巣場所に早変わり…自然の要塞に巣を作り子育てするカワガラスの知恵…恐れ入りました。

    2024年1月27日号

  • カワラタケとチャウロコタケ

    中沢 英正(県自然観察保護員)

     森を歩くのは楽しい。冬は観察するものは限られるが嬉しい出会いもある。積雪が少ないと切り株や落枝についたキノコが目につく。
     お気に入りはカワラタケ(写真右)やチャウロコタケ(写真左)。革質のかたい傘を持ち、年中見ることができる。幾重にも重なって生える様子を瓦や鱗に見立てたものだ。
     どちらも白色腐朽菌と呼ばれ、材を白く腐らせる役目を担っている。
     このキノコたちに興味をひかれるのは傘の模様。傘は半円形や扇形で、同心円状に縞模様が入る。カワラタケの傘色は黒が多いが、茶、青、灰、黄などさまざまだ。チャウロコタケの傘は名前の通り茶系統である。双方とも個体によって縞模様に変化があるところが
    面白い。
     傘の模様は単なるおしゃれ…? それとも何か重要な意味が隠されているのだろうか。

    2024年1月20日号