新たな地域医療を支えるクリニックがまた一つ加わる。県立十日町病院に勤務していた整形外科医が独立、今月29日に開業する。その思いは、「地域の皆さんの人柄がすごく温かくて。治療に当たると感謝の言葉を多く頂き、医師としてやりがいを感じる」。さらに開業を後押しするのが、十日町市の医療機関の施設整備で限度額5千万円、設備整備で1千万円など新規開院や診療継続を補助する『十日町市医療施設整備等支援事業』。2017年度制度開始後、同事業を利用する開業は今回で3件目。これまで眼科医、内科医と外科医、そして今回の整形外科医が独立開業に至っている。住民の人柄と行政支援により、医師不足に悩む豪雪地の地域医療の、一筋の光明になっている。
2023年11月18日号
今回はごく個人的なことを書きたいと思います。読者の皆さんは普段どんな飲み物を飲まれていますか。緑茶派? 紅茶派?コーヒー派? 様々だと思います。筆者はコーヒー派です。とはいえ、コーヒーに特別なこだわりがあったわけではなく、 長年毎日インスタントコーヒーを飲んでいました。
ところがある時、友人からコーヒー豆が届き、はて面倒だなぁ、と思いつつせっかくの好意を無にしちゃいかんと、必要最低限のコーヒーミルとサーバー、ドリッパー、フィルターペーパーを購入しました。
無手勝流で淹れ方もいい加減だったのですが、明らかに香りや後味が違いました。それまで飲んでいたのがインスタントでしたから、とにかく香りのしない後味が舌に残るコーヒー(喫茶店のコーヒーでもそういうコーヒーが多いと思いませんか?)だったわけで、まあコーヒーとはこんなもんだと思っていました。
最低限の器具でしたが、このままではもったいないと思い、市内にあるコーヒー豆の専門店のドアを開け、あれこれ尋ねながら豆を購入しました。自分で挽いて淹れる。明らかに後味のスッキリしたうまいコーヒーに仕上がります。
これをきっかけにネットで調べるとコーヒー豆を販売するサイトがたくさんありました。
日本では缶コーヒーからコンビニのコーヒーまでさまざまな飲み方をしますが、世界でも指折りのコーヒー消費国で、アメリカ、ブラジル、ドイツに次いで第4位だそうです。日本ではほかの国に比べ自分で淹れて飲む人口が多いそうなので、豆専門の店が成り立っているのでしょうね。
ネットには割安なさまざまなお試しセットがあって、飲み始めたころにはそれらを利用していろんな味を試しました。産地(国)や農場、豆屋さんのブレンドの仕方によって本当にたくさんの味や香りがあります。値段もピンからキリまですが、自分の財布と相談してそれほど高くない豆で楽しんでいます。
蕎麦では挽きたて、打ちたて、ゆでたてが最良とされますが、コーヒーも同じです。高い豆でなくても、焙煎したて(小規模な豆屋さんなら焙煎したてを送ってくれます)、挽きたて、淹れたてであれば本当にうまいコーヒーが自宅で楽しめます。
毎朝少しの時間をおごって、豆を挽いて淹れますが、豆を取り出したときや挽きたての香り、後味の良さ、一回分の外食費程度でひと月幸せな気分にさせてくれます。何より嬉しいのが、我が家の山の神が喜んでくれること(笑)。
2023年11月18日号
中津川第一線工事での殉職者の慰霊碑は切明の沈砂池の上にあります。碑には「中津川第一線工事の殉職者追悼碑」とあり、裏には昭和3年7月建立、大林組社長と刻まれています。
また、中津川第一線工事では県境で工区が分かれていて、新潟県側の穴藤~前倉工区を日本土木(大倉組)現在の大成建設が請け負いましたが、会社としての慰霊碑は今のところ不明です。
前倉の阿部利昭氏から「前倉の山の中に聖徳太子の石塔が建っている」との情報を得て現地に出かけたところ、原生林の中に大きな岩が集められ、その碑は建っていました。表には聖徳太子と大きく刻まれ、裏にはこの碑を建てた11人の名前が彫られています。肩書には「現場監査役」「工事請負人」「現場世話役」「帳場役」「工事小頭」「坑夫小頭」「石工」等出身地や実名が彫られています。
そもそも聖徳太子とは大工や職人たちが信仰していた守護神で、工事の安全や亡くなった人の慰霊を兼ねる碑のようです。
建立が大正11年11月1日ということは秋山郷で発電した電力が東京に送電された月でもあり、4ヵ月前には朝鮮人の溺死体が発見された年でもありますので、これは安全祈願というよりは工事関係者が建立した慰霊碑だと言えます。また後日、阿部氏から「聖徳太子の碑の奥に大峯神社の碑がある」とのことで案内をして頂きました。
前倉から高野山に上がる車道の脇に車を停めて道のない急斜面を転がるように50㍍ほど下ると杉林の中にひときわ太く何本も寄り添って立っている杉の根元に小さな碑がありました。
建立は大正12年8月、工事関係者は故郷に向かって帰省が始め、発電所景気に沸いた大割野には不景気風が吹き始めた頃ですから、やはり安全祈願ではなく、慰霊のために建立したものです。裏面には「信越電力」「日本土木」の他に「田巻事務所一同」の名前が刻まれ、工事発注者や元受けの名前も出てきましたが、切明の慰霊碑に比べると辺鄙な場所で碑も小さく、とても大会社が建立したものとは思えません。きっと秋山郷の原生林の中で草に埋もれ探し出される日待っている碑がまだあるはずです。
前倉の2つの碑を調査して思ったことは、建立した人たちには後ろめたいことなどなく、実名まで彫って後世に残そうとしたことから、世間で騒がれた朝鮮人虐待事件は、当の現場ではそれほど問題視されていなかったのではないでしょうか。
この問題はまだまだ調査が必要ですが、過酷な環境の中で大事業を完工し、その後各地に散って行った人夫や技術者たちのことを忘れてはいけない場所としてこれからも守って行きたいと思います。
2023年11月18日号
十日町市議会は議会改革特別委員会を設け、議員定数を改定し、いまは議員報酬のあり方と向き合っている。栄村議会も全議員で2年後の改選に向けて、定数と報酬の基本的な考え方を論議している。
先月22日、改選した津南町議会は定数削減後の初の選挙を経験し、新メンバー12人が10日の任期開始日から活動を始めている。その津南町議会は議員報酬を町特別職報酬等審議会に、その取り扱いを委ねている。近く報酬審議会が開かれる予定だ。引上げの方針と見られる。
議員報酬では様々な先行例がある。こちらは長野県生坂村(いくさかむら)。県中央部にあり松本市まで約25㌔、長野市まで約50㌔、村の中央を千曲川水系の犀川が流れる人口1667人(11月)、718世帯の長野県で5番目に小さな自治体だ。
生坂村議会(定数8)は2020年、議員のなり手不足の対策の一つとして議員報酬を大胆に改定した。55歳以下の月額報酬をそれまでの18万円から30万円に引き上げた。働き世代・子育て世代へのアピールだ。その結果、翌年2021年4月の改選では、長らく無投票が続いていた村議選が20年ぶりの選挙戦になり、定数8のメンバーの世代交代が進み、女性が3人に増えた。副議長は女性だ。
ここで注目は、議員報酬はその議会で一律である必要がないという点だ。地方自治法では議員定数の上限は定めているが、議員報酬を定める規定はない。つまり自治体条例で定めることになる。生坂村議会は議員のなり手不足の対策として取り組んだのが、この55歳以下の大幅引き上げだ。ただ生坂村議会はこの大幅アップを検証している。55歳以下の区切りの理解は得られたが、引上げ額は村民アンケートでは6割余が「見直しが必要」としている。
自治体とは、まさに『自治』である。そこに自治体のセンスが見える。
2023年11月18日号
1等米は11%台、規格外米増で初の追加仮渡金を―。JA十日町(柄澤和久会長)は夏場の高温影響による規格外米の大量増を受け、9月に仮渡金増を決めたが、さらに今月1日に追加を決定。未熟混入うるちAは1万1500円(改定前より1500円増)、それ以外は6千円(同千円増)。なお例年は規格外米は少量のため、仮渡金は設定していない。
2023年11月11日号
世界情勢変化によるエネルギー確保不安のなかで、関心がより高まっている「再生可能エネルギー」。特に地熱発電は地下にある熱水と蒸気を取り出し、蒸気で発電機をまわし発電するため、二酸化炭素排出量はほぼゼロ、安定的に24時間発電が可能で期待は大きい。秋山郷屋敷では再生可能エネ事業を取り扱う東京の投資会社が関わる地熱発電所の開発計画が浮上、栄村に申請届が出ている。ただ栄村は6月末発生の北海道・蘭越町の地熱発電所事故を受け、安全確保への懸念が高まったことから慎重な姿勢をみせている。一方、十日町市松之山では、温泉を使った地熱発電「コミュニティ発電・ザ・松之山温泉」が発電業者と地元温泉街との連携により3年前から稼働。運営会社には地元住民が役員に入り、今年10月からは国固定価格買取制度(FIT)に基づいた売電を開始。エネルギーの地産地消に向け、新たな段階に入っている。
2023年11月11日号
秋と言えばキノコですが、今回はロクショウグサレキン属という私が山の中で好きなキノコをご紹介します。
漢字にすると「緑青腐菌」と書き、見た目が銅のサビのような緑青色に似ていることから名づけられたそうです。
大きさは2~5mmほどと小さく、毒はないそうですが、食すことは難しいようです。
木の表面に出ている部分だけでなく、木の中も菌糸で同じような緑青色に染まっており、誰かが塗ったのではないかと思わせるような色は草木染ならぬ、キノコ染めという染め物の顔料にもなり、大変鮮やかで美しい青色に染まります。
ちなみにキノコの分類は難しいので、今回のこの写真はロクショウグサレキンモドキと思われますが、正確には青くて小さな「お皿」部分の裏側に柄が中心についているのが「ロクショウグサレキン」中心からずれているのが「ロクショウグサレキンモドキ」と分類されるので、ロクショウグサレキン属というタイトルにしました。
ぜひ、全国各地に分布しているので山の中で枯木、切株などの上に生息する鮮やかな色を探してみてください。
2023年11月11日号
人材バンクなるものは、数多ある。「ふるさと人材バンク」はどうか。十日町市も津南町も栄村も、取り組みはしているだろうが、なかなか確かな情報把握はされていないようだ。それは『この地域の出身者の人材バンク』。あそこの息子は日本を代表するAI技術者のようだ…あそこの娘は世界を相手にする食品研究者のようだ…あの家の次男は大学教授をしている…などなど、巷間話の真偽はあるが、妻有地域で育った人材が国内外の各分野の最前線で活躍しているのは事実だろう。これは「妻有の財産」ではないか。
コロナ禍で自粛していた中学・高校の同窓会・同級会が少しずつ復活している。卒業10年以内はまだ社会人の中堅前。20年、30年後のいまは中堅から主軸になっている方々が多いだろう。だが、この分野は個人情報との関係でなかなか悩ましい問題に直面する。
その橋渡しの一つになるのが、妻有地域の出身者でつくる「ふるさと会」。長い歴史を積み重ねる東京十日町会は、ふるさと十日町の着物産業の隆盛と共に設立し、県内の先駆けでもある。昭和30年津南町誕生と共に出身者で立ち上げた「東京津南郷会」もふるさと会の先駆けだ。相当なる人材が関り、あの人、この人と、国内外で活躍する人材の宝庫だろう。それはふるさと十日町市・津南町・栄村の頼もしき応援団でもある。だが、そのふるさと会が高齢化し、新規加入者が少なく、大切な組織が風前の灯火にある。
かつて市町村が情報提供を呼びかけたことがある。だが…である。個人情報の壁にぶつかった。住民の命と暮らしと財産を守る責務がある自治体。その守備範囲は広範だ。常にその道の専門家のアドバイスが必要で、その人材がふるさと出身者なら、さらに心強い。
まちづくり、地域づくり。きっと相当なる人材がいるのだろうが…。こういう時代だからこそ、人材が必要だ。
2023年11月11日号
のどかな田園風景が広がる十日町市川西地区上野に「ひだまりサロン」がある。自宅の一室を改装して代表の清水さとみさん(62)がフェイシャルエステ、皮膚や筋肉、神経、腱をしなやかにするピーナッツオイルを使ったオイルリンパ・ケアなどを行い、利用者から好評を得ている。
2023年11月11日号
仕事で出雲国(島根県)に来ており、越後国(新潟県)との共通点を感じます。出雲国では、十月を神無月ではなく神在月と呼び、全国の神様が集まり、誰と誰のご縁を結ぶかの相談が行われるとされます。
旧暦の10月10日である11月中旬に出雲大社で神迎祭が行われ、出雲大社の西側にある稲佐の浜に全国の神様が夜に到着され、その浜で神主さんがお迎えの神事を執り行います。その後、出雲大社の中に神様のお泊り処があり、そこにご案内し、翌朝に神様方は、相談ごとを行う場所に通われます。その会議室は意外にも出雲大社の外にあり、まちの人々は、神様が相談ごとをされる期間は、音を出さないように静かに過ごすのだそうです。
ご相談ごとが終わると酒宴が開かれ、その会場はここ、二次会はここと場所が決まっています。宴会が楽しくて居残りをされる神様もいらっしゃるとの余話も。
神様の酒宴から発祥しているとされる島根のお酒ですが、飲んでみると、なんとなく新潟のお酒とテイストが似ているような感じがします。
お米も、東日本が魚沼米ならば、西日本では島根県の仁多米(にたまい)が断トツのブランド米です。地形は、両県とも、日本海に面し、内陸部に入ると山や森林が深くなる点が共通しています。
出雲国の山では、かつて、たたら製鉄が盛んに行われていました。真砂をとり、炭を作り、今でいう工場で鉄がつくられました。その風景が映画「千と千尋の神隠し」で描かれています。
現在は、刀匠が日本刀をつくる際に必要な玉鋼(たまはがね)を得るために、たたら製鉄の技が受け継がれています。
松江市の南に位置する奥出雲と呼ばれる地域にたたら製鉄の跡が残っており、山を削って真砂をとった場所が今は棚田となりお米づくりが盛んです。鉄師と呼ばれた方々が残した住居や庭園は見事で、最近のテレビドラマ「VIVANT」の舞台となりました。
近年は、周辺の森林の木材を活用し、建設用合板の製造が行われています。木材は海外産を使うことの多い時期があったようですが、ここ10年で国内産の使用が増えたそうです。
八雲立つ 出雲八重垣 妻ごみに 八重垣作る その八重垣を
奥出雲で八岐大蛇(やわたのおろち)を退治したスサノオノミコトが読んだ日本で初めての和歌とされています(妻有の『妻』の文字が入っています)。
出雲国で神話を身近に感じながら、越後国にもスサノオのような力持ちがいそうと思いました。
2023年11月11日号
新たな地域医療を支えるクリニックがまた一つ加わる。県立十日町病院に勤務していた整形外科医が独立、今月29日に開業する。その思いは、「地域の皆さんの人柄がすごく温かくて。治療に当たると感謝の言葉を多く頂き、医師としてやりがいを感じる」。さらに開業を後押しするのが、十日町市の医療機関の施設整備で限度額5千万円、設備整備で1千万円など新規開院や診療継続を補助する『十日町市医療施設整備等支援事業』。2017年度制度開始後、同事業を利用する開業は今回で3件目。これまで眼科医、内科医と外科医、そして今回の整形外科医が独立開業に至っている。住民の人柄と行政支援により、医師不足に悩む豪雪地の地域医療の、一筋の光明になっている。
2023年11月18日号
今回はごく個人的なことを書きたいと思います。読者の皆さんは普段どんな飲み物を飲まれていますか。緑茶派? 紅茶派?コーヒー派? 様々だと思います。筆者はコーヒー派です。とはいえ、コーヒーに特別なこだわりがあったわけではなく、 長年毎日インスタントコーヒーを飲んでいました。
ところがある時、友人からコーヒー豆が届き、はて面倒だなぁ、と思いつつせっかくの好意を無にしちゃいかんと、必要最低限のコーヒーミルとサーバー、ドリッパー、フィルターペーパーを購入しました。
無手勝流で淹れ方もいい加減だったのですが、明らかに香りや後味が違いました。それまで飲んでいたのがインスタントでしたから、とにかく香りのしない後味が舌に残るコーヒー(喫茶店のコーヒーでもそういうコーヒーが多いと思いませんか?)だったわけで、まあコーヒーとはこんなもんだと思っていました。
最低限の器具でしたが、このままではもったいないと思い、市内にあるコーヒー豆の専門店のドアを開け、あれこれ尋ねながら豆を購入しました。自分で挽いて淹れる。明らかに後味のスッキリしたうまいコーヒーに仕上がります。
これをきっかけにネットで調べるとコーヒー豆を販売するサイトがたくさんありました。
日本では缶コーヒーからコンビニのコーヒーまでさまざまな飲み方をしますが、世界でも指折りのコーヒー消費国で、アメリカ、ブラジル、ドイツに次いで第4位だそうです。日本ではほかの国に比べ自分で淹れて飲む人口が多いそうなので、豆専門の店が成り立っているのでしょうね。
ネットには割安なさまざまなお試しセットがあって、飲み始めたころにはそれらを利用していろんな味を試しました。産地(国)や農場、豆屋さんのブレンドの仕方によって本当にたくさんの味や香りがあります。値段もピンからキリまですが、自分の財布と相談してそれほど高くない豆で楽しんでいます。
蕎麦では挽きたて、打ちたて、ゆでたてが最良とされますが、コーヒーも同じです。高い豆でなくても、焙煎したて(小規模な豆屋さんなら焙煎したてを送ってくれます)、挽きたて、淹れたてであれば本当にうまいコーヒーが自宅で楽しめます。
毎朝少しの時間をおごって、豆を挽いて淹れますが、豆を取り出したときや挽きたての香り、後味の良さ、一回分の外食費程度でひと月幸せな気分にさせてくれます。何より嬉しいのが、我が家の山の神が喜んでくれること(笑)。
2023年11月18日号
中津川第一線工事での殉職者の慰霊碑は切明の沈砂池の上にあります。碑には「中津川第一線工事の殉職者追悼碑」とあり、裏には昭和3年7月建立、大林組社長と刻まれています。
また、中津川第一線工事では県境で工区が分かれていて、新潟県側の穴藤~前倉工区を日本土木(大倉組)現在の大成建設が請け負いましたが、会社としての慰霊碑は今のところ不明です。
前倉の阿部利昭氏から「前倉の山の中に聖徳太子の石塔が建っている」との情報を得て現地に出かけたところ、原生林の中に大きな岩が集められ、その碑は建っていました。表には聖徳太子と大きく刻まれ、裏にはこの碑を建てた11人の名前が彫られています。肩書には「現場監査役」「工事請負人」「現場世話役」「帳場役」「工事小頭」「坑夫小頭」「石工」等出身地や実名が彫られています。
そもそも聖徳太子とは大工や職人たちが信仰していた守護神で、工事の安全や亡くなった人の慰霊を兼ねる碑のようです。
建立が大正11年11月1日ということは秋山郷で発電した電力が東京に送電された月でもあり、4ヵ月前には朝鮮人の溺死体が発見された年でもありますので、これは安全祈願というよりは工事関係者が建立した慰霊碑だと言えます。また後日、阿部氏から「聖徳太子の碑の奥に大峯神社の碑がある」とのことで案内をして頂きました。
前倉から高野山に上がる車道の脇に車を停めて道のない急斜面を転がるように50㍍ほど下ると杉林の中にひときわ太く何本も寄り添って立っている杉の根元に小さな碑がありました。
建立は大正12年8月、工事関係者は故郷に向かって帰省が始め、発電所景気に沸いた大割野には不景気風が吹き始めた頃ですから、やはり安全祈願ではなく、慰霊のために建立したものです。裏面には「信越電力」「日本土木」の他に「田巻事務所一同」の名前が刻まれ、工事発注者や元受けの名前も出てきましたが、切明の慰霊碑に比べると辺鄙な場所で碑も小さく、とても大会社が建立したものとは思えません。きっと秋山郷の原生林の中で草に埋もれ探し出される日待っている碑がまだあるはずです。
前倉の2つの碑を調査して思ったことは、建立した人たちには後ろめたいことなどなく、実名まで彫って後世に残そうとしたことから、世間で騒がれた朝鮮人虐待事件は、当の現場ではそれほど問題視されていなかったのではないでしょうか。
この問題はまだまだ調査が必要ですが、過酷な環境の中で大事業を完工し、その後各地に散って行った人夫や技術者たちのことを忘れてはいけない場所としてこれからも守って行きたいと思います。
2023年11月18日号
十日町市議会は議会改革特別委員会を設け、議員定数を改定し、いまは議員報酬のあり方と向き合っている。栄村議会も全議員で2年後の改選に向けて、定数と報酬の基本的な考え方を論議している。
先月22日、改選した津南町議会は定数削減後の初の選挙を経験し、新メンバー12人が10日の任期開始日から活動を始めている。その津南町議会は議員報酬を町特別職報酬等審議会に、その取り扱いを委ねている。近く報酬審議会が開かれる予定だ。引上げの方針と見られる。
議員報酬では様々な先行例がある。こちらは長野県生坂村(いくさかむら)。県中央部にあり松本市まで約25㌔、長野市まで約50㌔、村の中央を千曲川水系の犀川が流れる人口1667人(11月)、718世帯の長野県で5番目に小さな自治体だ。
生坂村議会(定数8)は2020年、議員のなり手不足の対策の一つとして議員報酬を大胆に改定した。55歳以下の月額報酬をそれまでの18万円から30万円に引き上げた。働き世代・子育て世代へのアピールだ。その結果、翌年2021年4月の改選では、長らく無投票が続いていた村議選が20年ぶりの選挙戦になり、定数8のメンバーの世代交代が進み、女性が3人に増えた。副議長は女性だ。
ここで注目は、議員報酬はその議会で一律である必要がないという点だ。地方自治法では議員定数の上限は定めているが、議員報酬を定める規定はない。つまり自治体条例で定めることになる。生坂村議会は議員のなり手不足の対策として取り組んだのが、この55歳以下の大幅引き上げだ。ただ生坂村議会はこの大幅アップを検証している。55歳以下の区切りの理解は得られたが、引上げ額は村民アンケートでは6割余が「見直しが必要」としている。
自治体とは、まさに『自治』である。そこに自治体のセンスが見える。
2023年11月18日号
1等米は11%台、規格外米増で初の追加仮渡金を―。JA十日町(柄澤和久会長)は夏場の高温影響による規格外米の大量増を受け、9月に仮渡金増を決めたが、さらに今月1日に追加を決定。未熟混入うるちAは1万1500円(改定前より1500円増)、それ以外は6千円(同千円増)。なお例年は規格外米は少量のため、仮渡金は設定していない。
2023年11月11日号
世界情勢変化によるエネルギー確保不安のなかで、関心がより高まっている「再生可能エネルギー」。特に地熱発電は地下にある熱水と蒸気を取り出し、蒸気で発電機をまわし発電するため、二酸化炭素排出量はほぼゼロ、安定的に24時間発電が可能で期待は大きい。秋山郷屋敷では再生可能エネ事業を取り扱う東京の投資会社が関わる地熱発電所の開発計画が浮上、栄村に申請届が出ている。ただ栄村は6月末発生の北海道・蘭越町の地熱発電所事故を受け、安全確保への懸念が高まったことから慎重な姿勢をみせている。一方、十日町市松之山では、温泉を使った地熱発電「コミュニティ発電・ザ・松之山温泉」が発電業者と地元温泉街との連携により3年前から稼働。運営会社には地元住民が役員に入り、今年10月からは国固定価格買取制度(FIT)に基づいた売電を開始。エネルギーの地産地消に向け、新たな段階に入っている。
2023年11月11日号
秋と言えばキノコですが、今回はロクショウグサレキン属という私が山の中で好きなキノコをご紹介します。
漢字にすると「緑青腐菌」と書き、見た目が銅のサビのような緑青色に似ていることから名づけられたそうです。
大きさは2~5mmほどと小さく、毒はないそうですが、食すことは難しいようです。
木の表面に出ている部分だけでなく、木の中も菌糸で同じような緑青色に染まっており、誰かが塗ったのではないかと思わせるような色は草木染ならぬ、キノコ染めという染め物の顔料にもなり、大変鮮やかで美しい青色に染まります。
ちなみにキノコの分類は難しいので、今回のこの写真はロクショウグサレキンモドキと思われますが、正確には青くて小さな「お皿」部分の裏側に柄が中心についているのが「ロクショウグサレキン」中心からずれているのが「ロクショウグサレキンモドキ」と分類されるので、ロクショウグサレキン属というタイトルにしました。
ぜひ、全国各地に分布しているので山の中で枯木、切株などの上に生息する鮮やかな色を探してみてください。
2023年11月11日号
人材バンクなるものは、数多ある。「ふるさと人材バンク」はどうか。十日町市も津南町も栄村も、取り組みはしているだろうが、なかなか確かな情報把握はされていないようだ。それは『この地域の出身者の人材バンク』。あそこの息子は日本を代表するAI技術者のようだ…あそこの娘は世界を相手にする食品研究者のようだ…あの家の次男は大学教授をしている…などなど、巷間話の真偽はあるが、妻有地域で育った人材が国内外の各分野の最前線で活躍しているのは事実だろう。これは「妻有の財産」ではないか。
コロナ禍で自粛していた中学・高校の同窓会・同級会が少しずつ復活している。卒業10年以内はまだ社会人の中堅前。20年、30年後のいまは中堅から主軸になっている方々が多いだろう。だが、この分野は個人情報との関係でなかなか悩ましい問題に直面する。
その橋渡しの一つになるのが、妻有地域の出身者でつくる「ふるさと会」。長い歴史を積み重ねる東京十日町会は、ふるさと十日町の着物産業の隆盛と共に設立し、県内の先駆けでもある。昭和30年津南町誕生と共に出身者で立ち上げた「東京津南郷会」もふるさと会の先駆けだ。相当なる人材が関り、あの人、この人と、国内外で活躍する人材の宝庫だろう。それはふるさと十日町市・津南町・栄村の頼もしき応援団でもある。だが、そのふるさと会が高齢化し、新規加入者が少なく、大切な組織が風前の灯火にある。
かつて市町村が情報提供を呼びかけたことがある。だが…である。個人情報の壁にぶつかった。住民の命と暮らしと財産を守る責務がある自治体。その守備範囲は広範だ。常にその道の専門家のアドバイスが必要で、その人材がふるさと出身者なら、さらに心強い。
まちづくり、地域づくり。きっと相当なる人材がいるのだろうが…。こういう時代だからこそ、人材が必要だ。
2023年11月11日号
のどかな田園風景が広がる十日町市川西地区上野に「ひだまりサロン」がある。自宅の一室を改装して代表の清水さとみさん(62)がフェイシャルエステ、皮膚や筋肉、神経、腱をしなやかにするピーナッツオイルを使ったオイルリンパ・ケアなどを行い、利用者から好評を得ている。
2023年11月11日号
仕事で出雲国(島根県)に来ており、越後国(新潟県)との共通点を感じます。出雲国では、十月を神無月ではなく神在月と呼び、全国の神様が集まり、誰と誰のご縁を結ぶかの相談が行われるとされます。
旧暦の10月10日である11月中旬に出雲大社で神迎祭が行われ、出雲大社の西側にある稲佐の浜に全国の神様が夜に到着され、その浜で神主さんがお迎えの神事を執り行います。その後、出雲大社の中に神様のお泊り処があり、そこにご案内し、翌朝に神様方は、相談ごとを行う場所に通われます。その会議室は意外にも出雲大社の外にあり、まちの人々は、神様が相談ごとをされる期間は、音を出さないように静かに過ごすのだそうです。
ご相談ごとが終わると酒宴が開かれ、その会場はここ、二次会はここと場所が決まっています。宴会が楽しくて居残りをされる神様もいらっしゃるとの余話も。
神様の酒宴から発祥しているとされる島根のお酒ですが、飲んでみると、なんとなく新潟のお酒とテイストが似ているような感じがします。
お米も、東日本が魚沼米ならば、西日本では島根県の仁多米(にたまい)が断トツのブランド米です。地形は、両県とも、日本海に面し、内陸部に入ると山や森林が深くなる点が共通しています。
出雲国の山では、かつて、たたら製鉄が盛んに行われていました。真砂をとり、炭を作り、今でいう工場で鉄がつくられました。その風景が映画「千と千尋の神隠し」で描かれています。
現在は、刀匠が日本刀をつくる際に必要な玉鋼(たまはがね)を得るために、たたら製鉄の技が受け継がれています。
松江市の南に位置する奥出雲と呼ばれる地域にたたら製鉄の跡が残っており、山を削って真砂をとった場所が今は棚田となりお米づくりが盛んです。鉄師と呼ばれた方々が残した住居や庭園は見事で、最近のテレビドラマ「VIVANT」の舞台となりました。
近年は、周辺の森林の木材を活用し、建設用合板の製造が行われています。木材は海外産を使うことの多い時期があったようですが、ここ10年で国内産の使用が増えたそうです。
八雲立つ 出雲八重垣 妻ごみに 八重垣作る その八重垣を
奥出雲で八岐大蛇(やわたのおろち)を退治したスサノオノミコトが読んだ日本で初めての和歌とされています(妻有の『妻』の文字が入っています)。
出雲国で神話を身近に感じながら、越後国にもスサノオのような力持ちがいそうと思いました。
2023年11月11日号