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妻有新聞掲載記事一覧

  • 地域課題、セーフティ機能や継続の芽を

    コロナ後の夏まつりの復活

    清水裕理 (経済地理学博士)

     日の入りが早くなり、夏の終わり、秋の始まりを感じるこの頃です。今夏は特別な猛暑で、それまでとは一線を越え、30度あるいは35度を超えても驚かなくなるのは初めてでした。
     お米は、山梨県では収穫時期が1週間早くなる程度の影響でしたが、妻有地域の棚田は、災害級の高温障害が深刻と聞き、心配をしています。
     そして、今年は、コロナの行動制限が緩和されて初めての夏ということで、地元の夏まつりが復活するかどうかが気になりました。全国の各地域の結果をみると、今まで通りに復活、縮小して復活、中止のいずれかに分かれたように思います。
    私の田舎の集落では、夏まつりが今年から中止となってしまいました。アンケートにより、中止を希望する地元住民の方が多かったとのことです。 夏祭りは、家族を含めて約100人が集まる規模で、会費を払い、多くのご馳走と飲み物、司会が盛り上げるカラオケ大会、盆踊りやよさこい踊り、子供のじゃんけん大会など楽しかったのですが、準備は大変だったと思います。私は普段は東京にいて時々しか戻らないため、準備には参加していませんでした。
     コロナをきっかけに、中止の話が加速したことは否めず、個人的には、年1回、地元住民が集まって顔を合わせて話をする機会がなくなってしまい残念です。
     まちづくりの視点からは、例えば、地域公共交通の維持についてそうであるように、集落単位で協議会が開かれ、そこでの議論がベースとなり、また、運営主体もそこから誕生したりして、今後のあり方が決められる傾向にあります。
     私の知る事例では、福島県会津地域でそのような活動が活発で、国もその方向に、地域のことは地域で責任を持って、という意味合いも含めた政策になってきています。
     今後、交通問題に限らず、集落という単位をベースとして地域課題を把握し解決していくケースが多くなってくると思いますが、一方現実には、話は少し飛びますが、今まで集落に近い単位で活動していた郵便局や農協や交番などの拠点が減るニュースが増えており、その動きがもしも大きく進んでしまうなら、せっかく現場を大切にして築いてきたものがなくなってしまう…その動きはコロナ後に加速しているようにも感じられ、色々と事情があると思いつつ、複雑な気持ちです。
     ここにきての急な変化というものは不安を生じさせ、もしもがあったとしても、そうならないようなセーフティ機能や継続的な取り組みの芽に受け継がれれば…と思います。

    2023年9月30日号

  • 全国から注文の「あんしん米」

    耕作放棄地復活の田んぼで稲刈り

     〇…障がいを持つ人たちの就労支援事業などを行うNPO支援センターあんしん(樋口功会長)が27日、十日町市稲荷町の田んぼで施設利用者と職員30人余りが稲刈りを行った。この田んぼは12年間耕作放棄されていたが、あんしんが整備して復活させ、2021年春の初の田植えから継続耕作。

    2023年9月30日号

  • 男子は北信越を、女子3年ぶり

    十日町吉田 全国レベルの小海中心に

     北信越出場を目標に掲げる十日町吉田・男子。全中3000㍍9位の絶対的エース・小海楽空主将(3年)を中心に県上位を狙う。「とにかく持てる力をすべて出すだけ」と小海。中軸となる3年生の相崎基と齋木宝の2人がチームを引っ張る。最高の形で2年にタスキを渡すつもりだ。

    2023年9月30日号

  • 「組合員のための農協」を強調

    30日臨時総代会、合併可否の組合員判断は

     来年2月1日の4JA(十日町、津南町、北魚沼、越後おぢや)合併による『魚沼農業協同組合(JA魚沼)』発足をめざし、合併予備調印式は今月15日ラポート十日町で開催。4JAトップが県中央会長・伊藤能徳会長の立ち合いで署名した。「人口が少ない地域から将来見捨てられるのでは」など反対意見があるなか、4JAは今月30日午前9時、合併可否を決める臨時総代会を開く。組合員がどう判断するか注目が集まる。

    2023年9月23日号

  • 告示までカウントダウン「24」

    女性新人が表明、現職の再出馬続々

     新人の名乗りが上がった。長らく町議が出なかった中津地区から、津南町商工会女性部長で自宅で「髪工房なつ」を経営する月岡奈津子氏(54・中深見)。今月中旬に出馬決意を固め、18日の本紙取材に「子どもからお年寄りまで皆が元気に暮らせる津南町にしたい」と決意の一端を話し、来月17日告示、22日投票の津南町議選への出馬を表明した。

    2023年9月23日号

  • 新型コロナ対策の尾身さん、十日町で講演

    1冊の本との出会いが医師の道志す

     政府の「新型インフルエンザ等対策推進会議」の議長を努め、8月に退任した医師の尾身茂さん(74)が9日、祖父の出身地・十日町で講演。尾身さんは世界保健機構(WHO)勤務や新型コロナ対策などの経験を話しながら「小さい頃に十日町のことはよく話に聞いていた。心のふるさとに74歳になって初めて訪れることができた」と講演会の開催に感謝しながら話した。

    2023年9月23日号

  • プレ・コンセプション・ケア(妊娠前心身ケア)

    妊娠出産は一つの通過点、その後の人生を

    Vol 82

     この三連休、津南駅前の温泉宿・雪国さんに家族でお泊りに行きました。9月は夫と姉の二人の誕生日、いつもお世話になっている母への敬老感謝、そして私の本の出版記念、毎日頑張っている娘のご苦労さま会でした。源泉かけ流しの温泉でゆっくり足を延ばして頭から足の先まで温まり、お風呂上りに裏山の冷たい湧水をいただいてツルスベ肌に。骨まで柔らかい鯉こくに津南産のコシヒカリと漬物を頂いてお腹も大満足。一晩に2回もお産に呼ばれて出たり入ったりしたのに、よくしていただいて本当にありがとうございました。朝のお産に呼ばれて車窓から見た津南の川や山は美しく、ここに生まれて良かったと思いましたよ!
     さて、今回9月13日にダイヤモンド社より出版になった本のご紹介。『結婚していない。けど、いつか子どもが欲しい人が今できること』(税込1650円)と、長いタイトルですが、まさにその内容をズバリ知って欲しくてつけました。
     昨今「プレコンセプションケア」という言葉が良く聞かれるようになってきましたが、本の中でしつこく明記していないまでも、この本は「プレコンセプションケア」本です。プレコンセプションケアとは、これまでよ
    く使われてきた「ブライダルチェック」に似た言葉で、プレ=前、コンセプション=妊娠、という意味から分かるように「妊娠する前から自分(やパートナー)の心身面や生活を見直してケアしよう」という試みです。
     これを読んでくださっている皆さんは、自分の月経が他の人と違うのか同じなのか気にしたことはありますか? 普通だと思っている自分の月経に、妊娠を遠ざけてしまう病気からのメッセージが隠れているかもしれません。
     年齢がいけばいくほど妊娠しにくいと知っている人は多いと思いますが、それが本当のところ何歳から拍車がかかって、どうしてそんなことが起こるのかを知っていますか? 健康診断でBやC判定だけど、経過観察になっているような異常が実は妊娠してから大変なことになるということを知らずに、次回の健康診断までに何とかすればよいと延ばし延ばしにしていませんか?
     男性はいつまでも女性を妊娠させる能力があるし、年齢と精子の老化は関係ないと思っていませんか? 普段何気なくしていることが、実年齢以上に体を老化させて、卵子や精子の老化を引き起こしていると知っていますか? 海外の先進国では、今皆さんに質問したような内容は、10代のうちに性教育で教えてもらっている常識です。
     また、プレコンセプションケアには、妊娠出産育児は自分やパートナーの生活をどう変えていくのか変えられるのか、妊婦健診や出産のための費用はいくらかかるのか、金銭面や育児の支援はどうしていくのか、などをあらかじめ医療機関や行政や福祉などに相談することも含まれます。
     このケアは、ただ単に順調な妊娠出産をめざすだけではなく、妊娠出産は1つの通過点として、その後の人生を心身ともに健康で過ごすために行うケアなのです。
     だからこの本は、妊娠をめざしている年齢の人だけでなく、更年期を迎える年齢の人、思春期を迎えたお子さんをお持ちの人、男性にも読んでいただきたいと思っています。
     未来の自分やパートナーのために今からできることが満載です。ブックス平沢さんも置いてくださっているとのこと、ぜひ一度手に取ってみてください!! それでも解決しないことがあったら是非お気軽にご相談くださいね。(たかき医院・仲栄美子医師)

    2023年9月23日号

  • 近代的な飯場

    小林 幸一(津南案内人)

     写真は百年前の発電所工事で賑わった前倉飯場の全景です。前倉の山田益雄さんが親から聞いた話では、冬になると沢山の人夫が村まで来るので道が凍り滑って歩けないほどだったといいます。何も無かった村に近代的な飯場が忽然と現れ、村の生活は一変しました。
     手前に線路を歩く村人らしき人物が写っていますが、これが切明まで伸びる工事用の軌道で、山道より歩きやすかったことでしょう。現在この軌道跡を歩こうとしても雑木が生い茂り、対岸の見倉の焼き畑も見えません。
     この写真は十日町市の建設会社であった旧「高幸」の5代目当主、高橋訓彦氏から提供していただきました。十日町の山内写真館の技師が「高幸」の依頼で釜落から電車に乗りここまで写真を撮りに来たと思われます。
     たった1枚の写真でも「親から口伝えで聞いてきた発電所工事のことが、この1枚の写真で納得が出来た。畑を耕すと空き瓶がいっぱい出て来て飯場があったことは知っていたが、当時としては立派な建物が建ち並びでびっくりした!」と益雄さんは驚いていました。
     工事の飯場というともっとバラック小屋のような建物をイメージしていましたが、医者や巡査も常駐し、衣食住は地元より良かったのかもしれません。

    2023年9月23日号

  • 聴覚障がい、要約筆記で支援

    聴こえサポートうさぎ・佐藤幸子さん

     「少しでも力になれば。それだけです」。音声を文字にして、聴覚障がいがある人にもリアルタイムでその場の情報を伝える筆記通訳が『要約筆記』。分かりやすくいえば、映画の字幕のような役割。今春、名称も新たに『聴こえサポートうさぎ・十日町要約筆記サークル』として取り組んでいる。その代表を努める佐藤幸子さん(63)。「聴こえないこと、聴こえにくいことがどんなに不便なことか、考えてみたことはありますか」、そう呼びかける。

    2023年9月23日号

  • 思い出ポロポロ、積もり上がるチリのように

    『旅宿 もっきりや』

    秋山郷山房もっきりや・長谷川 好文

     先日の連休、助っ人の方々が現れ引っ越しを順々と続けてくれました。長年溜め込んだ「いろいろな物」を捨てられずにいたせいで、とにかく荷物が多すぎるわけで、そうなると、ここでの引っ越しは私のような年寄りでは到底無理だと気付くことになるのです。
     そんな時に、2組の援軍でした。ひと組は引っ越しを手伝っていただいて、もうひと組のご婦人は2人して『旅宿 もっきりや』の壁面に、べんがら色のキシリトール塗料を塗ってくれたのでした。 
     なんという幸運と思いながら、連休が去った今、思い出したようにこの原稿を書き出しました。
     このひと月、少しずつ荷物を移動させて、だんだん山のように積み重ねられた私の思い出の書籍や映像を眺めていると、長年のチリや埃にまぎれて、どうもいけません。何だか雑然と散らばって、ほっぽりだされているようで、今日までの月日が何だかとてつもなく馬鹿げて埃くさいように感じてしまいます。
     いや80億にも増えた地球上の人間のひとりとして、私などは全く小さなゴミなのですが、それでもそう簡単には納得してはいけないとも、その書籍や額から顔を覗かせているそれらの寂しげな表情を感じます。積み上げられつつある荷物の山を眺めて肩を落として、ため息ばかりついてもいられないわけで、どうにか起死回生の対応をしなくてはいかんと、背を伸ばして荷物の山を眺めるのです。
     時代が変わり、秋山郷の姿も変わりますが、ここで暮らした私の歴史は私の中に残さなければなりません。ひとり者のジイさんが寂しさのあまり寝室の壁に所狭しと貼り付けた、死んでしまった兄や親たち、多くの友人の姿や戦地に引っ張り出されて亡くなり、会うことも出来なかった2人の伯父たちの姿に、毎朝声をかけて過ごした日々は、写真の中でホコリまみれになってしまったけれど、若かった頃、感動した演劇のチラシその一つひとつを貼りながら時間の経過と共に増え続けた私の歴史を探しているのです。 
     だけれども、外されたそれらは25年の間、私を支えたお札のようなものでしかないのだろう。今それらを外しながら自分の身体が、だんだん希薄になっていくようにも感じているのでした。何だか、また生まれた時に戻ってしまって、またゾロ生まれ変わって行く思い出作りのよすがとなって私を助けたり、寂しい時に涙した日々の生活のひとつひとつのシーンを、ホコリと共に思い出して支えられていくのだろうと…感じるのです。
     一枚一枚外していったあとの壁に残ったシミが過ぎてきた時間への哀愁になるのでしょう。そんなこんなを、これからここへ来る若い人たちに一言でも伝えていくことが、これからの私の仕事になりそうです。
     ただゆっくり時間をかけて降り積もる雪のなかで気持を濾過して、願いまして~はとそろばんを弾いてから『旅宿 もっきりや』を改めて始めるかと感じているのです。

    2023年9月23日号

  • 地域課題、セーフティ機能や継続の芽を

    コロナ後の夏まつりの復活

    清水裕理 (経済地理学博士)

     日の入りが早くなり、夏の終わり、秋の始まりを感じるこの頃です。今夏は特別な猛暑で、それまでとは一線を越え、30度あるいは35度を超えても驚かなくなるのは初めてでした。
     お米は、山梨県では収穫時期が1週間早くなる程度の影響でしたが、妻有地域の棚田は、災害級の高温障害が深刻と聞き、心配をしています。
     そして、今年は、コロナの行動制限が緩和されて初めての夏ということで、地元の夏まつりが復活するかどうかが気になりました。全国の各地域の結果をみると、今まで通りに復活、縮小して復活、中止のいずれかに分かれたように思います。
    私の田舎の集落では、夏まつりが今年から中止となってしまいました。アンケートにより、中止を希望する地元住民の方が多かったとのことです。 夏祭りは、家族を含めて約100人が集まる規模で、会費を払い、多くのご馳走と飲み物、司会が盛り上げるカラオケ大会、盆踊りやよさこい踊り、子供のじゃんけん大会など楽しかったのですが、準備は大変だったと思います。私は普段は東京にいて時々しか戻らないため、準備には参加していませんでした。
     コロナをきっかけに、中止の話が加速したことは否めず、個人的には、年1回、地元住民が集まって顔を合わせて話をする機会がなくなってしまい残念です。
     まちづくりの視点からは、例えば、地域公共交通の維持についてそうであるように、集落単位で協議会が開かれ、そこでの議論がベースとなり、また、運営主体もそこから誕生したりして、今後のあり方が決められる傾向にあります。
     私の知る事例では、福島県会津地域でそのような活動が活発で、国もその方向に、地域のことは地域で責任を持って、という意味合いも含めた政策になってきています。
     今後、交通問題に限らず、集落という単位をベースとして地域課題を把握し解決していくケースが多くなってくると思いますが、一方現実には、話は少し飛びますが、今まで集落に近い単位で活動していた郵便局や農協や交番などの拠点が減るニュースが増えており、その動きがもしも大きく進んでしまうなら、せっかく現場を大切にして築いてきたものがなくなってしまう…その動きはコロナ後に加速しているようにも感じられ、色々と事情があると思いつつ、複雑な気持ちです。
     ここにきての急な変化というものは不安を生じさせ、もしもがあったとしても、そうならないようなセーフティ機能や継続的な取り組みの芽に受け継がれれば…と思います。

    2023年9月30日号

  • 全国から注文の「あんしん米」

    耕作放棄地復活の田んぼで稲刈り

     〇…障がいを持つ人たちの就労支援事業などを行うNPO支援センターあんしん(樋口功会長)が27日、十日町市稲荷町の田んぼで施設利用者と職員30人余りが稲刈りを行った。この田んぼは12年間耕作放棄されていたが、あんしんが整備して復活させ、2021年春の初の田植えから継続耕作。

    2023年9月30日号

  • 男子は北信越を、女子3年ぶり

    十日町吉田 全国レベルの小海中心に

     北信越出場を目標に掲げる十日町吉田・男子。全中3000㍍9位の絶対的エース・小海楽空主将(3年)を中心に県上位を狙う。「とにかく持てる力をすべて出すだけ」と小海。中軸となる3年生の相崎基と齋木宝の2人がチームを引っ張る。最高の形で2年にタスキを渡すつもりだ。

    2023年9月30日号

  • 「組合員のための農協」を強調

    30日臨時総代会、合併可否の組合員判断は

     来年2月1日の4JA(十日町、津南町、北魚沼、越後おぢや)合併による『魚沼農業協同組合(JA魚沼)』発足をめざし、合併予備調印式は今月15日ラポート十日町で開催。4JAトップが県中央会長・伊藤能徳会長の立ち合いで署名した。「人口が少ない地域から将来見捨てられるのでは」など反対意見があるなか、4JAは今月30日午前9時、合併可否を決める臨時総代会を開く。組合員がどう判断するか注目が集まる。

    2023年9月23日号

  • 告示までカウントダウン「24」

    女性新人が表明、現職の再出馬続々

     新人の名乗りが上がった。長らく町議が出なかった中津地区から、津南町商工会女性部長で自宅で「髪工房なつ」を経営する月岡奈津子氏(54・中深見)。今月中旬に出馬決意を固め、18日の本紙取材に「子どもからお年寄りまで皆が元気に暮らせる津南町にしたい」と決意の一端を話し、来月17日告示、22日投票の津南町議選への出馬を表明した。

    2023年9月23日号

  • 新型コロナ対策の尾身さん、十日町で講演

    1冊の本との出会いが医師の道志す

     政府の「新型インフルエンザ等対策推進会議」の議長を努め、8月に退任した医師の尾身茂さん(74)が9日、祖父の出身地・十日町で講演。尾身さんは世界保健機構(WHO)勤務や新型コロナ対策などの経験を話しながら「小さい頃に十日町のことはよく話に聞いていた。心のふるさとに74歳になって初めて訪れることができた」と講演会の開催に感謝しながら話した。

    2023年9月23日号

  • プレ・コンセプション・ケア(妊娠前心身ケア)

    妊娠出産は一つの通過点、その後の人生を

    Vol 82

     この三連休、津南駅前の温泉宿・雪国さんに家族でお泊りに行きました。9月は夫と姉の二人の誕生日、いつもお世話になっている母への敬老感謝、そして私の本の出版記念、毎日頑張っている娘のご苦労さま会でした。源泉かけ流しの温泉でゆっくり足を延ばして頭から足の先まで温まり、お風呂上りに裏山の冷たい湧水をいただいてツルスベ肌に。骨まで柔らかい鯉こくに津南産のコシヒカリと漬物を頂いてお腹も大満足。一晩に2回もお産に呼ばれて出たり入ったりしたのに、よくしていただいて本当にありがとうございました。朝のお産に呼ばれて車窓から見た津南の川や山は美しく、ここに生まれて良かったと思いましたよ!
     さて、今回9月13日にダイヤモンド社より出版になった本のご紹介。『結婚していない。けど、いつか子どもが欲しい人が今できること』(税込1650円)と、長いタイトルですが、まさにその内容をズバリ知って欲しくてつけました。
     昨今「プレコンセプションケア」という言葉が良く聞かれるようになってきましたが、本の中でしつこく明記していないまでも、この本は「プレコンセプションケア」本です。プレコンセプションケアとは、これまでよ
    く使われてきた「ブライダルチェック」に似た言葉で、プレ=前、コンセプション=妊娠、という意味から分かるように「妊娠する前から自分(やパートナー)の心身面や生活を見直してケアしよう」という試みです。
     これを読んでくださっている皆さんは、自分の月経が他の人と違うのか同じなのか気にしたことはありますか? 普通だと思っている自分の月経に、妊娠を遠ざけてしまう病気からのメッセージが隠れているかもしれません。
     年齢がいけばいくほど妊娠しにくいと知っている人は多いと思いますが、それが本当のところ何歳から拍車がかかって、どうしてそんなことが起こるのかを知っていますか? 健康診断でBやC判定だけど、経過観察になっているような異常が実は妊娠してから大変なことになるということを知らずに、次回の健康診断までに何とかすればよいと延ばし延ばしにしていませんか?
     男性はいつまでも女性を妊娠させる能力があるし、年齢と精子の老化は関係ないと思っていませんか? 普段何気なくしていることが、実年齢以上に体を老化させて、卵子や精子の老化を引き起こしていると知っていますか? 海外の先進国では、今皆さんに質問したような内容は、10代のうちに性教育で教えてもらっている常識です。
     また、プレコンセプションケアには、妊娠出産育児は自分やパートナーの生活をどう変えていくのか変えられるのか、妊婦健診や出産のための費用はいくらかかるのか、金銭面や育児の支援はどうしていくのか、などをあらかじめ医療機関や行政や福祉などに相談することも含まれます。
     このケアは、ただ単に順調な妊娠出産をめざすだけではなく、妊娠出産は1つの通過点として、その後の人生を心身ともに健康で過ごすために行うケアなのです。
     だからこの本は、妊娠をめざしている年齢の人だけでなく、更年期を迎える年齢の人、思春期を迎えたお子さんをお持ちの人、男性にも読んでいただきたいと思っています。
     未来の自分やパートナーのために今からできることが満載です。ブックス平沢さんも置いてくださっているとのこと、ぜひ一度手に取ってみてください!! それでも解決しないことがあったら是非お気軽にご相談くださいね。(たかき医院・仲栄美子医師)

    2023年9月23日号

  • 近代的な飯場

    小林 幸一(津南案内人)

     写真は百年前の発電所工事で賑わった前倉飯場の全景です。前倉の山田益雄さんが親から聞いた話では、冬になると沢山の人夫が村まで来るので道が凍り滑って歩けないほどだったといいます。何も無かった村に近代的な飯場が忽然と現れ、村の生活は一変しました。
     手前に線路を歩く村人らしき人物が写っていますが、これが切明まで伸びる工事用の軌道で、山道より歩きやすかったことでしょう。現在この軌道跡を歩こうとしても雑木が生い茂り、対岸の見倉の焼き畑も見えません。
     この写真は十日町市の建設会社であった旧「高幸」の5代目当主、高橋訓彦氏から提供していただきました。十日町の山内写真館の技師が「高幸」の依頼で釜落から電車に乗りここまで写真を撮りに来たと思われます。
     たった1枚の写真でも「親から口伝えで聞いてきた発電所工事のことが、この1枚の写真で納得が出来た。畑を耕すと空き瓶がいっぱい出て来て飯場があったことは知っていたが、当時としては立派な建物が建ち並びでびっくりした!」と益雄さんは驚いていました。
     工事の飯場というともっとバラック小屋のような建物をイメージしていましたが、医者や巡査も常駐し、衣食住は地元より良かったのかもしれません。

    2023年9月23日号

  • 聴覚障がい、要約筆記で支援

    聴こえサポートうさぎ・佐藤幸子さん

     「少しでも力になれば。それだけです」。音声を文字にして、聴覚障がいがある人にもリアルタイムでその場の情報を伝える筆記通訳が『要約筆記』。分かりやすくいえば、映画の字幕のような役割。今春、名称も新たに『聴こえサポートうさぎ・十日町要約筆記サークル』として取り組んでいる。その代表を努める佐藤幸子さん(63)。「聴こえないこと、聴こえにくいことがどんなに不便なことか、考えてみたことはありますか」、そう呼びかける。

    2023年9月23日号

  • 思い出ポロポロ、積もり上がるチリのように

    『旅宿 もっきりや』

    秋山郷山房もっきりや・長谷川 好文

     先日の連休、助っ人の方々が現れ引っ越しを順々と続けてくれました。長年溜め込んだ「いろいろな物」を捨てられずにいたせいで、とにかく荷物が多すぎるわけで、そうなると、ここでの引っ越しは私のような年寄りでは到底無理だと気付くことになるのです。
     そんな時に、2組の援軍でした。ひと組は引っ越しを手伝っていただいて、もうひと組のご婦人は2人して『旅宿 もっきりや』の壁面に、べんがら色のキシリトール塗料を塗ってくれたのでした。 
     なんという幸運と思いながら、連休が去った今、思い出したようにこの原稿を書き出しました。
     このひと月、少しずつ荷物を移動させて、だんだん山のように積み重ねられた私の思い出の書籍や映像を眺めていると、長年のチリや埃にまぎれて、どうもいけません。何だか雑然と散らばって、ほっぽりだされているようで、今日までの月日が何だかとてつもなく馬鹿げて埃くさいように感じてしまいます。
     いや80億にも増えた地球上の人間のひとりとして、私などは全く小さなゴミなのですが、それでもそう簡単には納得してはいけないとも、その書籍や額から顔を覗かせているそれらの寂しげな表情を感じます。積み上げられつつある荷物の山を眺めて肩を落として、ため息ばかりついてもいられないわけで、どうにか起死回生の対応をしなくてはいかんと、背を伸ばして荷物の山を眺めるのです。
     時代が変わり、秋山郷の姿も変わりますが、ここで暮らした私の歴史は私の中に残さなければなりません。ひとり者のジイさんが寂しさのあまり寝室の壁に所狭しと貼り付けた、死んでしまった兄や親たち、多くの友人の姿や戦地に引っ張り出されて亡くなり、会うことも出来なかった2人の伯父たちの姿に、毎朝声をかけて過ごした日々は、写真の中でホコリまみれになってしまったけれど、若かった頃、感動した演劇のチラシその一つひとつを貼りながら時間の経過と共に増え続けた私の歴史を探しているのです。 
     だけれども、外されたそれらは25年の間、私を支えたお札のようなものでしかないのだろう。今それらを外しながら自分の身体が、だんだん希薄になっていくようにも感じているのでした。何だか、また生まれた時に戻ってしまって、またゾロ生まれ変わって行く思い出作りのよすがとなって私を助けたり、寂しい時に涙した日々の生活のひとつひとつのシーンを、ホコリと共に思い出して支えられていくのだろうと…感じるのです。
     一枚一枚外していったあとの壁に残ったシミが過ぎてきた時間への哀愁になるのでしょう。そんなこんなを、これからここへ来る若い人たちに一言でも伝えていくことが、これからの私の仕事になりそうです。
     ただゆっくり時間をかけて降り積もる雪のなかで気持を濾過して、願いまして~はとそろばんを弾いてから『旅宿 もっきりや』を改めて始めるかと感じているのです。

    2023年9月23日号