頑張りすぎない、我慢しすぎない

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春の『木の芽どき』に要注意

Vol 96

 先週は市内のあちこちの桜が満開で、春が来たな~と気温の上昇と共に心も温かくなりました。我が家の玄関先にある、いつからか根付いたのか分からないアケビの木からも木の芽が伸びてそろそろ収穫を迎えます。
 この時期まさに『木(こ)の芽どき』といいます。正確には立春から春分までの期間を指します。ざっくりいうなら、この冬から春にかけての季節の変わり目は気温の変化が大きく体調を崩しやすい時期のため、昔の人たちは代々、病気に注意するよう言い伝えてきたわけです。
 春先はなんだか眠くて仕方がない、天気は良いのに布団から出るのが億劫で「春眠暁を覚えず」という方も多いのではないでしょうか。これも季節の変わり目で気圧や気温の大きな変化が大きく、自律神経のバランスを乱すためです。
 春先は自律神経のうち、体を休めるための副交感神経の方が、活発に動くための交感神経より働きが強まるため、眠気が強まるのです。また、気圧や湿度の関係で頭痛を感じやすくなりますので、外来診療をしていても、頭痛薬をくださいと言われる方が多いのは確かです。
 そして気持ちが落ち込むなどの症状を訴える方も増えてきますので、もともとメンタル不調をお持ちの方は、あえて調子が良くても薬の変更は延期するなど注意が必要です。
 この気持ちの面での不調は、季節の変わり目の気候の大きな変動が影響するだけでなく、転居、転勤、異動、入学、就職などの環境の変化も大きく影響をします。気持ちの不調が体調の不調症状を引き起こす方もいます。 
 ですので、これからやってくるゴールデンウィークは天気も良く家族や友人が出かけようとお誘いをかけてくるかもしれませんが、気持ちが乗らない時には体も心も疲れている証拠ですので、勇気をもって断って自宅でしっかり休む、自分の気持ちに素直に行動する、ということを大事にしていただきたいと思います。
 というのも、この『木の芽どき』にかかった負担をそのままにしておくと、ゴールデンウィークが終わった5月にうつ病に進んでしまうことがあります。いわゆる『5月病』です。なので、今この時期に頑張りすぎない、我慢しすぎない、自分がリラックスできる時間をなるべく持つ、ということはとても大事なのです。 
 特に「~しなくちゃ」を口にしたり考えてしまった人は、その言葉を思い浮かべた時点で自分にかなり負担がかかっていると気づいて欲しいなと思います。
 あとは何度もお話したことがありますが、うつ病にならないために大事なことは「つながること」です。信頼できる人に自分のつらい気持ちを伝えること、もしくは病院などを受診して相談するのも良いでしょう。
 眠れない、寝てもすぐ目が覚める、食欲がない、食べ物を美味しいと感じない、笑うことが無くなった、楽しみを見つけられない、人に会うのが億劫、そんなことが少しでもあったら早めにお気軽にご相談くださいね。
 (たかき医院・仲栄美子院長)