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社説一覧

  • 津南町議選の結果を読む

     記者の性分なのか、あっち、こっちとレッテル張りをしたくなる。津南町議選の結果は、有権者が「世代交代、議会刷新」を求めた証しであると共に、桑原町政への疑問符は依然として強い、とする開票結果である。
     「桑原町政への疑問符」は、現職で臨んだ候補個々の前回票と比較すると分かる。桑原町長の行政手法を疑問視する再選した現職2人は、前回を上回る得票を集めている。さらに選挙戦最終日、劣勢が伝わる現職の応援演説に入った桑原町長だが、その候補は惜敗している。
     一方、今回の町議選では「町長の推し」が各所で見られ、感じられ、有権者には「あの候補は町長が推している」と巷間話として伝わった。有権者の視点も「町長派・非町長派」という構図で今回の選挙戦を見た有権者はいる。
     だが、である。若い候補者からの言葉は、今後の津南町の歩みを示唆する感覚を受けた。「町長派、非町長派などという見た方は、津南町にとってなんの意味もなさない。なんのプラスにもならない」。とかく区別化をしたがる記者の性分からいくと、実態がそうだから、と言いたくなるが、今回の津南町議選の経過と結果を見ると、そんな区別化という低次元ではない政治意識の変化が進んでいる現実を見た思いだ。
     イデオロギーの論点で町政を見たところで、それは国政・県政という流れの中でのあり様で、町政という限られたエリアの政治では、目の前に迫る山積する町政課題に立ち向かうしかないという現実がある。それには何が必要か。チーム力だろう。
     津南町議会に新しい12人が誕生した。現職、元職も新しいスタートだ。桑原町政との関係性は今後の議員活動で示されるが、先人たちの言葉がある。『是々非々』。当然のことだが、低次元のレッテル張りの無意味さを考えたい。
     「オール津南」で臨めるか、正念場だ。

    2023年10月28日号

  • 注目は20代・30代・40代の投票率

     津南町が刻む歴史の転換点にあるのか。22日投開票の津南町議選、今回の選挙は多様な要素を含む。合併から68年の時間を積み重ね、6代目の町長が引っ張るいまの津南町を、今度の町議選は端的に表している。
     その一つは高齢化する町の現状が、そのまま町議選に出ている。高齢化率65歳以上が43%余の数字が示す通り、今回の町議選候補者の平均年齢は65歳、津南町の現実そのままだ。70代以上が9人、驚くことはない。この世代がいまの津南町を支えている現実は、地域の生産活動の現役が、この世代だ。
     女性を特別視する必要はないが、議会の場では「女性」という括りがいまだまかり通るのが、この国の議会の場の現実だ。その女性候補5人が挑んでいる。「女性の視点で」などの表現自体が時代錯誤であり、ものの見方の立脚点が違う。だが改選議席12に、5人の女性が挑む自治体は、なにかの動きを予感させる今回の選挙でもある。
     やはり投票率が気になる。過去データを見ると、1975年・昭和50年以降では、この年は定数22に対し27人が出馬、投票率はなんと96・34%。その4年後は96・24%。投票率90%を割ったのは2003年・平成15年、この年は定数18に21人が出馬。以降、選挙のたびに投票率は下がり、4年前の前回2019年は72・48%だった。
     投票率低下は、20代・30代・40代の低投票率が主因だ。投票所に足が向かない、なぜか。無関心ではないはず。今回この世代が立候補している。年代別投票率はすぐには集計が出ないが、今回はぜひ公表してほしい。今回、この年代が前回を下回る投票率なら、残念ながら津南町の将来は危うい。これも今回の町議選の一つの視点だ。
     期日前投票が始まっている。早まる必要はない。21日までの候補の言動に注目してほしい。日を追うごとに「見えてくる」、それが選挙だ。

    2023年10月21日号

  • 聞き・読み・感じて、投票所へ

     じっくり聞き、読み、感じるべきだろう。津南町議選である。来週17日、告示だ。同時に期日前投票ができる期間が始まる。だが考えてほしい。今回の町議選はこれまでと、その様は大きく異なる。それは今日に至るまでの経過からも言える。現職を含め出馬表明が大幅に遅くなり、いまだ流動的な要素が現在進行形だ。ここはじっくり考え、選択すべきだろう。
     今度の改選期の特徴の一つは、現職多数が再出馬すること、さらに新人女性2人が挑むこと、さらに候補予定者16人のうち70代以上が9人いること、この3点だけでも、これまでにない町議選になっている。70代以上の多数の出馬は、いまの津南町の現状を端的に表している。高齢化率43%余の象徴であると共に、この世代が津南町を支えているマンパワーであるということ。つまり、年代差は際立った判断材料ではないことを物語っている。
     女性の挑戦は注目されがちだが、「ようやく」であり、「やっと」かもしれない現実が、いまの津南町ともいえる。今春の統一地方選で全国の市町村で多くの女性が議席を取り、議会における女性率が各段に上昇している現実があり、その風が津南町でも吹きつつあるのか、とも言える今回の町議選だ。だからこそ、じっくり聞き、読み、感じてほしいと強く思う。
     告示後、選挙広報が発行され、本紙は投票直前の来週21日号で候補者アンケートを掲載する。その質問は『桑原町政の評価と課題』。ここに候補者のスタンス・立脚点がある。今度の町議選の争点が見えてくる。議員に求められる問題意識、その政治センスこそ、いま津南町議会に求められているのではないか。投票を早まることはない。繰り返すが、じっくり聞き、読み、感じて、投票所に行ってほしい。

    2023年10月14日号

  • 熱が増し混迷が増す津南町議選

     9月末人口8738人の津南町・町議選は、混迷が続いている。定数2人削減しての改選定数12に、現職10人、新人2人、元職3人の15人が挑む前哨戦は、まだ不確定な要因が残り、さらに新人出馬の可能性を含んでいる。だが本紙記事の通り、女性5人が挑む町議選は、これまでの津南町議会を「変えたい」思いの表れか、ようやく…なのか、変化・改革が起こるのか、10月22日が、その日だ。
     本紙は来週13日、これまでの津南町長選、町議選で実施してきた「まちづくり公開討論会」を今回も開く。発言者は町議選候補予定者。15人となると時間的な制限から一人当たりの発言時間が少なくなるが、そこは議員をめざす予定者、ストレートで簡潔な言葉が聞かれるだろう。作った文章は、その字面を受けとめるしかないが、当事者が目の前で発する言葉は、その言葉以上に全身から伝わる思いがある。これこそ、この公開討論会がめざすところで、予定者の全身から発せられる言葉と雰囲気と意気込みを、会場で感じてほしい。
     かつての選挙には「立会演説会」があった。だが国政選挙で廃止になり、その事実は歴史上の出来事になってしまった。今回の津南町議選・公開討論会は、討論会の名称だが、用意した質問に候補予定者が意見を述べるもので、討論会まではいかないが、こうした場が人を育て、有権者の判断価値を育てることになるはずだ。
     改選定数12、情勢は相当に高いハードルになってきている。今春の統一地方選でも懸念されたのが投票率の低下。これほど身近な選挙で、なぜ投票率が上がらないのか。政治離れと言われるが、若い世代の世情への関心は高い。投票率が低い世代の候補者が少ないから、ともいえる。まだ間に合う、そこの若い方、ぜひチャレンジしてください。皆さんが待っていますよ。

    2023年10月7日号

  • 水利権更新、流域全体の課題

     「行く川のながれは絶えずして、しかも、もとの水にあらず…」、鴨長明は方丈記で、川の流れに我が生き方を映し、「もののあわれ」を記している。信濃川の水利権更新を2025年に向える流域の住民として、ふと思い浮かんだのが、この一節だ。目の前の川の流れは、その遥か上流から流れ下り、我が暮らす地を潤し、海へと流れている。 
     その流れの水エネルギーを先人たちは活用しようと水力発電所を作り、戦後復興のすべての底支えのエネルギー源を創出し、いまもその恩恵に預かっている。その一つ、JR東・宮中取水ダムからの送水で発電するJR東・信濃川発電所の水利権更新が迫っている。10年前の不正取水で新規取得した水利権、10年の更新期が2025年6月に来る。
     十日町市民グループは、10年前の「出来事」を考え、10年後のあり方を提言し、上流・下流を一帯に考え、発電所が立地する小千谷市の市民との連携に乗り出している。
     「行く川のながれは絶えずして…」、上流と下流は川でつながる。市民グループは、この当たり前の関係性を重要視し、小千谷の市民との連帯に取り組んでいる。では、その上流はどうなのか、という素朴な疑問が湧く。その隣接する上流の津南町には名称が同じ東京電力・信濃川発電所があり、その発電水は上流22㌔余の飯山市・西大滝ダムから送水している。この川の流れを考えたい。
     水利権更新は、住民生活や産業を支える重要なエネルギー源であることは確かである。その発電事業者と立地自治体・地域との関係性は歴史が物語る通り、まさに共存共栄。だが、この共存共栄、いまは「共生」と表現されるが、市民グループが訴える「地元還元」の視点で考え、まもなく100年を迎える歴史の積み重ねで見ると、今度の更新期はここにポイントがある。この「地元還元」、流域共通の課題ではないのか。

    2023年9月30日号

  • コメ等級選別の限界、食味の区別化を

     「コメ等級と食味は関係ない」。今期の猛暑・干ばつ被害によりコメ等級比率が過去最低クラスになる見込みを受け、コメどころ新潟の花角知事は、コメの味と等級低下は無関係、とコメントしている。この言葉に、生産者と食味を求める消費者は反応するだろう。 
     「等級による選別は必要なのか」、素朴な疑問が出る。「コメの等級分けは流通段階で大事な指標になる。消費者との関係で使われる指標ではない」と知事は話したという。流通する商品にはランク分けがあり、それ相応の価格が付けられる。これが市場経済だ。だが、今回のコメの「食味と等級選別は無関係」と、ことさらに強調されると、生産者もひとこと言いたくなるだろう。「ならば、食味ランクで区別化を」となる。
     今年12月、津南町で「米・食味分析鑑定コンクール国際大会」が開かれる。ここではまさに食味を競う。出品コメは選別の等級より食味を第一に審査する。「人の味覚」の判定だが、実は「うまいコメ」の炊飯前の科学的データはある。この数値データこそ「コメ区別化」だろう。生産者も消費者も納得する区別化だ。そこに相応の価格差があったとしても、十分に納得できる根拠になる。いまの1等米などコメ等級選別は「見た目」であり、消費者が重要視する食味は二の次だ。ただ、津南町認証米やJA十日町「極(きわみ)」などは、整粒歩合やタンパク数値まで求めるなど、食味に連動した区別化を導入している。
     今回の猛暑による等級低下は、コメ流通の価値観を転換する好機ではないか。JA全農がコメ流通の大きなシェアを持つ現状なら、まずJA系列から「価値観の転換」に取り組んではどうか。「魚沼産コシヒカリ1等米」は流通業者のためであり、消費者は「食味トリプルA」を求める。流通に振り回される時代から、生産者、消費者直結のコメ流通への転換が求められる。

    2023年9月23日号

  • 原発総括報告書、どうする真冬・豪雪・深夜

     絶妙なタイミングだ。明日17日午後2時から、新潟県が原発の安全性を総括的に検証する検証総括委員会で、今年3月の解任まで委員長を務めた池内了氏が、川西・千手コミュニティセンターに来て話す。新潟県の花角知事は13日、東京電力福島第1原発事故を受け、新潟県が独自に「3つの検証」のため三つの検証委員会を設置し、それをまとめた総括報告書を公表した。本来これは、池内氏が委員長としてまとめ報告するはずの総括報告書だった。
     だが、花角知事は今年3月の任期切れで、池内委員長を再任せず、事実上解任した。つまり13日公表の総括報告書は、県職員がまとめたもので、そこには専門的な知見を持った専門家不在の総括報告書になっている。これを受け花角知事は柏崎刈羽原発の再稼働の「議論を進める」と表明した。なにが核心で、なにが問題なのか、明日、池内氏は語るだろう。
     3つの検証委員会の中で、ここ妻有地域に関係深いのは原発事故時の避難だ。その避難検証委員会は、最悪想定の真冬・豪雪・深夜の原発事故時の避難をどう検証したのか。原発から30㌔圏UPZに入る十日町市は、まさにこの最悪条件下での避難が求められ、柏崎刈羽原発周辺の住民は国道252号、253号で妻有側に避難し、さらに小千谷市民も妻有避難となっている。 
     この最悪条件下で、どう避難するのか、その具体策は今回の総括報告書にはない。我々雪国の住人は、1年のサイクルを冬を起点に考える。それだけ妻有の冬が過酷な生活環境となり、そこに原発事故が重なる想定は、無雪地域、少雪地域では想像できないほど重要視し、まさに一大事なのだ。
     今回の報告書を受け花角知事は「議論を進める」と明言した。さらに再稼働への知事意見の表明後「信を問う」とする。その前に、「どうする真冬・豪雪・深夜」、ではないのか。

    2023年9月16日号

  • エネルギーは残っているのか津南町

     静かすぎる前哨戦だ。津南町にエネルギーは残っているのか、と問いたいほどの静かさだ。38日後に迫る町議選。今度の改選は、これまで先人たちが積み上げ、築いてきた礎の検証と再構築が問われる場でもある。先人たちが、次代へ、次代へとバトンタッチしてきた、そのエネルギーがあるのか、それが問われる改選期だ。
     先人の礎のひとつは、広大な耕地。それも標高差を活用の「エレベーション農業」ができる段丘地の農地が出来ている。標高200㍍前後から700㍍を超える耕地は、それだけで同じ作物の「時間差作付け」ができ、さらに高低差を活用した農作物の多様性を生み出す礎であり、先人たちは次代に可能性を託した。それは人材を育てることと同意であり、最近の農業青年による多数の法人化の誕生は、託された思いが見える形で育っている。
     高齢化対応の福祉分野は、施設整備が進み、津南ファンの湖山医療福祉グループ・湖山泰成氏が先駆的に施設整備を進め、類似自治体と比較しても充実度は高い。だが一方、地域医療は窮地にある。特に来年度4月導入の医師の働き方改革は、大きな変化を迫られている。ここは広域連携の出番だ。
     人づくりの要、幼児教育を含む教育分野は、まさに先人たちが繋いできた津南町の文字通りの礎だ。この教育が混迷している。施設整備の必要性、教育のあり方。具体論が求められるが、その論点の前提は人づくり。先人たちは、議論に議論を重ね、意見の違いはあれど、人づくりの一点でつながり、前に進めてきた。だが、いまは止まっている、いや、その場に留まること自体、後退していることでもある。
     直面する課題は多岐にわたる。この現実に立ち向かうエネルギーがあるのか、そこが問われているのが、38日後に迫る津南町議選だ。選挙はその時の民意のエネルギーの発露である。

    2023年9月9日号

  • 津南町議選の結果を読む

     記者の性分なのか、あっち、こっちとレッテル張りをしたくなる。津南町議選の結果は、有権者が「世代交代、議会刷新」を求めた証しであると共に、桑原町政への疑問符は依然として強い、とする開票結果である。
     「桑原町政への疑問符」は、現職で臨んだ候補個々の前回票と比較すると分かる。桑原町長の行政手法を疑問視する再選した現職2人は、前回を上回る得票を集めている。さらに選挙戦最終日、劣勢が伝わる現職の応援演説に入った桑原町長だが、その候補は惜敗している。
     一方、今回の町議選では「町長の推し」が各所で見られ、感じられ、有権者には「あの候補は町長が推している」と巷間話として伝わった。有権者の視点も「町長派・非町長派」という構図で今回の選挙戦を見た有権者はいる。
     だが、である。若い候補者からの言葉は、今後の津南町の歩みを示唆する感覚を受けた。「町長派、非町長派などという見た方は、津南町にとってなんの意味もなさない。なんのプラスにもならない」。とかく区別化をしたがる記者の性分からいくと、実態がそうだから、と言いたくなるが、今回の津南町議選の経過と結果を見ると、そんな区別化という低次元ではない政治意識の変化が進んでいる現実を見た思いだ。
     イデオロギーの論点で町政を見たところで、それは国政・県政という流れの中でのあり様で、町政という限られたエリアの政治では、目の前に迫る山積する町政課題に立ち向かうしかないという現実がある。それには何が必要か。チーム力だろう。
     津南町議会に新しい12人が誕生した。現職、元職も新しいスタートだ。桑原町政との関係性は今後の議員活動で示されるが、先人たちの言葉がある。『是々非々』。当然のことだが、低次元のレッテル張りの無意味さを考えたい。
     「オール津南」で臨めるか、正念場だ。

    2023年10月28日号

  • 注目は20代・30代・40代の投票率

     津南町が刻む歴史の転換点にあるのか。22日投開票の津南町議選、今回の選挙は多様な要素を含む。合併から68年の時間を積み重ね、6代目の町長が引っ張るいまの津南町を、今度の町議選は端的に表している。
     その一つは高齢化する町の現状が、そのまま町議選に出ている。高齢化率65歳以上が43%余の数字が示す通り、今回の町議選候補者の平均年齢は65歳、津南町の現実そのままだ。70代以上が9人、驚くことはない。この世代がいまの津南町を支えている現実は、地域の生産活動の現役が、この世代だ。
     女性を特別視する必要はないが、議会の場では「女性」という括りがいまだまかり通るのが、この国の議会の場の現実だ。その女性候補5人が挑んでいる。「女性の視点で」などの表現自体が時代錯誤であり、ものの見方の立脚点が違う。だが改選議席12に、5人の女性が挑む自治体は、なにかの動きを予感させる今回の選挙でもある。
     やはり投票率が気になる。過去データを見ると、1975年・昭和50年以降では、この年は定数22に対し27人が出馬、投票率はなんと96・34%。その4年後は96・24%。投票率90%を割ったのは2003年・平成15年、この年は定数18に21人が出馬。以降、選挙のたびに投票率は下がり、4年前の前回2019年は72・48%だった。
     投票率低下は、20代・30代・40代の低投票率が主因だ。投票所に足が向かない、なぜか。無関心ではないはず。今回この世代が立候補している。年代別投票率はすぐには集計が出ないが、今回はぜひ公表してほしい。今回、この年代が前回を下回る投票率なら、残念ながら津南町の将来は危うい。これも今回の町議選の一つの視点だ。
     期日前投票が始まっている。早まる必要はない。21日までの候補の言動に注目してほしい。日を追うごとに「見えてくる」、それが選挙だ。

    2023年10月21日号

  • 聞き・読み・感じて、投票所へ

     じっくり聞き、読み、感じるべきだろう。津南町議選である。来週17日、告示だ。同時に期日前投票ができる期間が始まる。だが考えてほしい。今回の町議選はこれまでと、その様は大きく異なる。それは今日に至るまでの経過からも言える。現職を含め出馬表明が大幅に遅くなり、いまだ流動的な要素が現在進行形だ。ここはじっくり考え、選択すべきだろう。
     今度の改選期の特徴の一つは、現職多数が再出馬すること、さらに新人女性2人が挑むこと、さらに候補予定者16人のうち70代以上が9人いること、この3点だけでも、これまでにない町議選になっている。70代以上の多数の出馬は、いまの津南町の現状を端的に表している。高齢化率43%余の象徴であると共に、この世代が津南町を支えているマンパワーであるということ。つまり、年代差は際立った判断材料ではないことを物語っている。
     女性の挑戦は注目されがちだが、「ようやく」であり、「やっと」かもしれない現実が、いまの津南町ともいえる。今春の統一地方選で全国の市町村で多くの女性が議席を取り、議会における女性率が各段に上昇している現実があり、その風が津南町でも吹きつつあるのか、とも言える今回の町議選だ。だからこそ、じっくり聞き、読み、感じてほしいと強く思う。
     告示後、選挙広報が発行され、本紙は投票直前の来週21日号で候補者アンケートを掲載する。その質問は『桑原町政の評価と課題』。ここに候補者のスタンス・立脚点がある。今度の町議選の争点が見えてくる。議員に求められる問題意識、その政治センスこそ、いま津南町議会に求められているのではないか。投票を早まることはない。繰り返すが、じっくり聞き、読み、感じて、投票所に行ってほしい。

    2023年10月14日号

  • 熱が増し混迷が増す津南町議選

     9月末人口8738人の津南町・町議選は、混迷が続いている。定数2人削減しての改選定数12に、現職10人、新人2人、元職3人の15人が挑む前哨戦は、まだ不確定な要因が残り、さらに新人出馬の可能性を含んでいる。だが本紙記事の通り、女性5人が挑む町議選は、これまでの津南町議会を「変えたい」思いの表れか、ようやく…なのか、変化・改革が起こるのか、10月22日が、その日だ。
     本紙は来週13日、これまでの津南町長選、町議選で実施してきた「まちづくり公開討論会」を今回も開く。発言者は町議選候補予定者。15人となると時間的な制限から一人当たりの発言時間が少なくなるが、そこは議員をめざす予定者、ストレートで簡潔な言葉が聞かれるだろう。作った文章は、その字面を受けとめるしかないが、当事者が目の前で発する言葉は、その言葉以上に全身から伝わる思いがある。これこそ、この公開討論会がめざすところで、予定者の全身から発せられる言葉と雰囲気と意気込みを、会場で感じてほしい。
     かつての選挙には「立会演説会」があった。だが国政選挙で廃止になり、その事実は歴史上の出来事になってしまった。今回の津南町議選・公開討論会は、討論会の名称だが、用意した質問に候補予定者が意見を述べるもので、討論会まではいかないが、こうした場が人を育て、有権者の判断価値を育てることになるはずだ。
     改選定数12、情勢は相当に高いハードルになってきている。今春の統一地方選でも懸念されたのが投票率の低下。これほど身近な選挙で、なぜ投票率が上がらないのか。政治離れと言われるが、若い世代の世情への関心は高い。投票率が低い世代の候補者が少ないから、ともいえる。まだ間に合う、そこの若い方、ぜひチャレンジしてください。皆さんが待っていますよ。

    2023年10月7日号

  • 水利権更新、流域全体の課題

     「行く川のながれは絶えずして、しかも、もとの水にあらず…」、鴨長明は方丈記で、川の流れに我が生き方を映し、「もののあわれ」を記している。信濃川の水利権更新を2025年に向える流域の住民として、ふと思い浮かんだのが、この一節だ。目の前の川の流れは、その遥か上流から流れ下り、我が暮らす地を潤し、海へと流れている。 
     その流れの水エネルギーを先人たちは活用しようと水力発電所を作り、戦後復興のすべての底支えのエネルギー源を創出し、いまもその恩恵に預かっている。その一つ、JR東・宮中取水ダムからの送水で発電するJR東・信濃川発電所の水利権更新が迫っている。10年前の不正取水で新規取得した水利権、10年の更新期が2025年6月に来る。
     十日町市民グループは、10年前の「出来事」を考え、10年後のあり方を提言し、上流・下流を一帯に考え、発電所が立地する小千谷市の市民との連携に乗り出している。
     「行く川のながれは絶えずして…」、上流と下流は川でつながる。市民グループは、この当たり前の関係性を重要視し、小千谷の市民との連帯に取り組んでいる。では、その上流はどうなのか、という素朴な疑問が湧く。その隣接する上流の津南町には名称が同じ東京電力・信濃川発電所があり、その発電水は上流22㌔余の飯山市・西大滝ダムから送水している。この川の流れを考えたい。
     水利権更新は、住民生活や産業を支える重要なエネルギー源であることは確かである。その発電事業者と立地自治体・地域との関係性は歴史が物語る通り、まさに共存共栄。だが、この共存共栄、いまは「共生」と表現されるが、市民グループが訴える「地元還元」の視点で考え、まもなく100年を迎える歴史の積み重ねで見ると、今度の更新期はここにポイントがある。この「地元還元」、流域共通の課題ではないのか。

    2023年9月30日号

  • コメ等級選別の限界、食味の区別化を

     「コメ等級と食味は関係ない」。今期の猛暑・干ばつ被害によりコメ等級比率が過去最低クラスになる見込みを受け、コメどころ新潟の花角知事は、コメの味と等級低下は無関係、とコメントしている。この言葉に、生産者と食味を求める消費者は反応するだろう。 
     「等級による選別は必要なのか」、素朴な疑問が出る。「コメの等級分けは流通段階で大事な指標になる。消費者との関係で使われる指標ではない」と知事は話したという。流通する商品にはランク分けがあり、それ相応の価格が付けられる。これが市場経済だ。だが、今回のコメの「食味と等級選別は無関係」と、ことさらに強調されると、生産者もひとこと言いたくなるだろう。「ならば、食味ランクで区別化を」となる。
     今年12月、津南町で「米・食味分析鑑定コンクール国際大会」が開かれる。ここではまさに食味を競う。出品コメは選別の等級より食味を第一に審査する。「人の味覚」の判定だが、実は「うまいコメ」の炊飯前の科学的データはある。この数値データこそ「コメ区別化」だろう。生産者も消費者も納得する区別化だ。そこに相応の価格差があったとしても、十分に納得できる根拠になる。いまの1等米などコメ等級選別は「見た目」であり、消費者が重要視する食味は二の次だ。ただ、津南町認証米やJA十日町「極(きわみ)」などは、整粒歩合やタンパク数値まで求めるなど、食味に連動した区別化を導入している。
     今回の猛暑による等級低下は、コメ流通の価値観を転換する好機ではないか。JA全農がコメ流通の大きなシェアを持つ現状なら、まずJA系列から「価値観の転換」に取り組んではどうか。「魚沼産コシヒカリ1等米」は流通業者のためであり、消費者は「食味トリプルA」を求める。流通に振り回される時代から、生産者、消費者直結のコメ流通への転換が求められる。

    2023年9月23日号

  • 原発総括報告書、どうする真冬・豪雪・深夜

     絶妙なタイミングだ。明日17日午後2時から、新潟県が原発の安全性を総括的に検証する検証総括委員会で、今年3月の解任まで委員長を務めた池内了氏が、川西・千手コミュニティセンターに来て話す。新潟県の花角知事は13日、東京電力福島第1原発事故を受け、新潟県が独自に「3つの検証」のため三つの検証委員会を設置し、それをまとめた総括報告書を公表した。本来これは、池内氏が委員長としてまとめ報告するはずの総括報告書だった。
     だが、花角知事は今年3月の任期切れで、池内委員長を再任せず、事実上解任した。つまり13日公表の総括報告書は、県職員がまとめたもので、そこには専門的な知見を持った専門家不在の総括報告書になっている。これを受け花角知事は柏崎刈羽原発の再稼働の「議論を進める」と表明した。なにが核心で、なにが問題なのか、明日、池内氏は語るだろう。
     3つの検証委員会の中で、ここ妻有地域に関係深いのは原発事故時の避難だ。その避難検証委員会は、最悪想定の真冬・豪雪・深夜の原発事故時の避難をどう検証したのか。原発から30㌔圏UPZに入る十日町市は、まさにこの最悪条件下での避難が求められ、柏崎刈羽原発周辺の住民は国道252号、253号で妻有側に避難し、さらに小千谷市民も妻有避難となっている。 
     この最悪条件下で、どう避難するのか、その具体策は今回の総括報告書にはない。我々雪国の住人は、1年のサイクルを冬を起点に考える。それだけ妻有の冬が過酷な生活環境となり、そこに原発事故が重なる想定は、無雪地域、少雪地域では想像できないほど重要視し、まさに一大事なのだ。
     今回の報告書を受け花角知事は「議論を進める」と明言した。さらに再稼働への知事意見の表明後「信を問う」とする。その前に、「どうする真冬・豪雪・深夜」、ではないのか。

    2023年9月16日号

  • エネルギーは残っているのか津南町

     静かすぎる前哨戦だ。津南町にエネルギーは残っているのか、と問いたいほどの静かさだ。38日後に迫る町議選。今度の改選は、これまで先人たちが積み上げ、築いてきた礎の検証と再構築が問われる場でもある。先人たちが、次代へ、次代へとバトンタッチしてきた、そのエネルギーがあるのか、それが問われる改選期だ。
     先人の礎のひとつは、広大な耕地。それも標高差を活用の「エレベーション農業」ができる段丘地の農地が出来ている。標高200㍍前後から700㍍を超える耕地は、それだけで同じ作物の「時間差作付け」ができ、さらに高低差を活用した農作物の多様性を生み出す礎であり、先人たちは次代に可能性を託した。それは人材を育てることと同意であり、最近の農業青年による多数の法人化の誕生は、託された思いが見える形で育っている。
     高齢化対応の福祉分野は、施設整備が進み、津南ファンの湖山医療福祉グループ・湖山泰成氏が先駆的に施設整備を進め、類似自治体と比較しても充実度は高い。だが一方、地域医療は窮地にある。特に来年度4月導入の医師の働き方改革は、大きな変化を迫られている。ここは広域連携の出番だ。
     人づくりの要、幼児教育を含む教育分野は、まさに先人たちが繋いできた津南町の文字通りの礎だ。この教育が混迷している。施設整備の必要性、教育のあり方。具体論が求められるが、その論点の前提は人づくり。先人たちは、議論に議論を重ね、意見の違いはあれど、人づくりの一点でつながり、前に進めてきた。だが、いまは止まっている、いや、その場に留まること自体、後退していることでもある。
     直面する課題は多岐にわたる。この現実に立ち向かうエネルギーがあるのか、そこが問われているのが、38日後に迫る津南町議選だ。選挙はその時の民意のエネルギーの発露である。

    2023年9月9日号