なんの啓示だろう。元日に発生した能登大地震。2日に起こった、あってはならない航空機同士の衝突事故。惨事は世界を駆け巡り、国連事務総長は「日本の皆さんと同じ」と、新年早々の惨事に思いを寄せている。それにしても、と思ってしまう。なにも新しき年がスタートした元日に…。だが、自然は容赦ない。我々の暮らしへの大きな警鐘ではないのか。
インターネットの驚異的な発達で、生活の便利さは格段に増し、ぬくぬくと暖かい家で暮し、自ら動くことなく用が足りる、そんな暮らしが当たり前になりつつある。だが、人と人が顔を合わせ、言葉を交わし、思いを感じ合う、そんな日常が激変している今に対し、元日の自然災害は大きな警鐘を鳴らしているのではないか。
3万人を超える人たちが今も避難生活を強いられる震災の地。あの12年前の中越地震で我々は経験した。いやこの真冬の過酷下ではそれを上回る厳しい避難生活が続くなか、人と人が助け合う姿がそこにある。その啓示を示したのが自然とするなら、あまりにも酷な仕打ちではないか、と思ってしまう。
妻有も大きな揺れに襲われた。松之山で倉庫倒壊の被害が出ているが、人身的な被害がなかったのは幸いだ。さらにこの小雪、例年のように除雪に追われる日々なら、この地震の受けとめはさらに深刻度を増したことだろう。妻有は長周期振動で大きく揺れた。大量の屋根雪があったなら、家屋倒壊の危険性が高まっただろう。
今度の大地震は、13年前のあの震災を思い起こさせた。「災害は忘れた頃にやって来る」、いやいや、「忘れなくても必ず来る」。改めて日々の備えの必要性を痛感した能登大地震だ。
2024年がスタートした。いきなりの自然の教え、我々は試されていることを忘れてはならない。自然は時に容赦ないが、その啓示は大きい。
2024年1月6日号
『市町村は人口減少対策から脱却を』。こんなタイトルの意見を日経紙面で見た。地方自治総合研究所の坂本誠研究員は言い切る。「そもそも、人口減少対策を市町村に委ねること自体に無理があるのではないか」。全国の人口減少に悩
む市町村は、「移住政策」と称する独自事業を打ち上げ、「うちの町に来ませんか、うちの村はどうですか」と、全国規模で人口が減少しているこの国の「やせ細るパイ」の奪い合いを繰り広げているのが、自治体の移住政策の実態ではないのか。「市町村の本分は、住民ひとり一人の生活の質を上げること。それによる定住環境の確保にあるのではないか」。坂本研究員は、浮足立つ人口減少対策に一石を投じている。
住民生活の「質」は、個人や地域ごとに多様だ。市長・町長・村長は住民との対話を掲げ、語る会など継続的に開く。生活から出る言葉をよく聞いていくと、住民が求めているのは立派な公民館やコミュニティー施設ではなく、最寄りの場所に「茶飲み」ができる場や気軽に集える広場などではないのか。声高に「移住」を叫んだところで肝心の住民が離れたのでは、まさに元も子もない。地域が行政に求めるのは、財政投資による「活性化」ではなく住民に余計な負担をかけずに、静かに見守り、安心して暮らせる環境づくりではないのか。
坂本研究員は続ける。「人口減少対策に全国各地で取り組むが、一握りの成功と、その陰に数多くの失敗例がある」と述べ、「住民であれ、移住者であれ、目の前の住民と共に腰を据えて向き合い、生活の質の向上に取り組む定住対策への転換だ」。人口減少対策の根本部分は国の社会保障制度の設計にあるとして、生活の質向上の第一義は市町村行政にある、と言い切る。まさに、目からウロコだ。細るパイの奪い合い、この実態を先ず見ることだろう。安心・安全の真の意味を考える時だ。
2023年12月23日号
あきれた以上に、これは「犯罪」だろう。パー券売上をポケット化している事実が判明し、この国の政権は瀬戸際に立たされている。そのお金を出した企業・団体・個人からの「反旗」は、それほど高く上がっていない。なぜ怒らない、それが不思議だ。
パー券、パーティー券だが、自民党の派閥による「キックバック問題」が年の瀬の切迫感と共に、この国の政治状況を大きく揺さぶっている。13日に提出された内閣不信任案は、自民・公明の政権政党だけの数の論理の賛成で否決したが、その実態は以外の野党すべてが賛成した事実は大きい。議院内閣制の国にとって、国会での議決がモノをいうが、今回のパー券問題は、著しく政治への不信感を増幅し、不信任案は否決されたが、国民の政権への不信感をかえって増幅しているのが事実だろう。ここはまさに「正義の味方」、検察の本来の力を見せてほしい。
政権を持つと資金が集まる、この構図は政治の歴史が物語っているが、今回のパー券問題、自民を推す民間企業や団体が「言われるままに」パー券を購入している実態が明らかになった。そのパー券の「ノルマ」以上をマイポケット化したことに対し、さらに政治資金に記載せず、となれば、これは雑収入扱いになり、それを申告しないのは「脱税」だろう。捜査はここまでも視野に入れているのだろうが、今後の検察捜査に注目だ。
そのパー券を買わされた民間企業・団体・さらに個人は、それもよし、としているのか。なぜ「何をしているのか」を怒らないのか。ここは反旗を掲げる時だろう。残念ながら、そうした動きは見られない。それは、「やはりそうだったのか」という織り込み済みのことなのか。
政治不信は、国の政策に大きく響く。マイポケット化が見過ごされれば、この先の納税、確定申告にも影響してくる。「あれが許され、なんで、これがダメなのか」、税務窓口での会話が聞こえてくる。ことは、それほど重要な局面だ。
2023年12月16日号
光と影、そんな印象を受ける米コンクール国際大会だった。苦節4年で初のトップ、金賞を受賞した地元津南町のコメ生産者の喜びは、まさに努力の結晶だ。今期の猛暑による等級落ちは、米づくり界に新たな課題を突き付けた。この中で宇都宮大が開発の米「ゆうだい21」が大きく躍進した背景は、単なる魚沼産コシヒカリが猛暑の影響を受けたばかりではない事を考えたい。新潟大が暑さに強い新品種を作り上げているが、これを含め米業界は新たな領域に入っていると言える。その意味で今回の国際大会は、「従来踏襲」では対応できない段階に入っていることを示唆している。
その従来踏襲の弊害が出たのが、先に報じた参加者など関係者の宿泊受入れ、さらに5日に明らかになった国際大会の事業経費の大幅増加だろう。「前回開催の小諸市を参考にした」と津南町役場の担当者は話す。だが、その小諸市での事業費約1400万円を大きく上回る倍増の総事業費2900万円になることが5日の町議会全協で明らかになった。驚きの増加額だ。これに対して「昨年500万円もかけてプレ大会を開いたが、何を検証したのか」との議員の問いに、担当者は「検証していない」と答えた。正直さはいいが、直接担当がこの実態では今回の驚きの結果も想像に難くない。13日からの津南町定例議会でこの補正予算が提案される。改選後初の定例議会で、議会新メンバーは早々に難題を突き付けられた形だ。「使ったものはしょうがない」では済まされないことは重々承知しているだろうが、議会のチェック機能が試される場になる。
まさに監査委員の出番ではないのか。町長が選任し、議会が承認する町の監査委員。こうした驚きの予算補正、それもすでに実施した事業の収支調査こそ、監査委員の責務ではないのか。12月議会は、新メンバーとなった町議会の今後4年間の試金石でもある。
2023年12月9日号
「何をしているのか」、この国の政治の現状から感じる言葉だろう。「どうするのか」、世界最大級の原発を抱える新潟県の人たちの思いだろう。「いったい、どうなっているの」、今週末に国際コンクールと名が付くイベントを開く津南町の人たちの思いだろう。国内外から3千人余が来町し、米どころ津南を世界に発信する、来場による経済効果も大きい、はずだった。だが、余りにもお粗末な事態が明らかになった。
本紙記事が実態だ。3千人といえば、津南町の宿泊施設すべてのキャパシティ(宿泊可能数)の4倍強に匹敵する数だ。国際コンクールの名を冠する一大イベント、その宿泊先は当然地元、と思ったのが大間違いだった。開催まで2週間を切った段階で、実態が明らかになった。その多くが町外宿泊という事実が判明した。これはいったいどういうことか、宿泊関係者は疑問を通り越し、怒りに変わっている。当然だろう。
ここまでのプロセスは、立場によりその言い分は違うだろうが、先ずは現実を直視すべきだ。宿泊関係者は落胆し、感じているのは取り組む行政への「なさけなさ」だろう。なぜ中間チェックできなかったのか、そもそも宿泊振り分けを委託した業者とどういう契約をしたのか、いや、契約も覚書も交わしていなかった。なぜ、なぜと疑問符は膨らむばかりだ。誰の責任というより、そもそも誘致した津南町はいままで「なにをしていたのか」だろう。
今年産米の等級落ちという農業経済が大きな打撃を受けている現実。その沈滞ムードを国際大会で払拭する面も、この週末のイベントはあったのではないか。大会は計画通り進むだろうが、その最終日、主催地の津南町は国内外に向けて何をアピールするのか。足元がぐらつくなかで、その言葉にどれほど力が込められるのか。実行委員長、桑原悠町長の言葉に注目したい。
2023年12月2日号
JR東は、赤字路線の実態を昨年に続き公表した。飯山線の数値は深刻だが、だから…とはならない取り組みが沿線には必要だ。昨年に続く赤字路線の公表に、沿線自治体はどう動き、何を発信するのか。目の前に提示され、示された現実は看過できないだろう。だが、昨年の沿線自治体の対応を見ると、心もとない。JRに対する沿線の姿勢が見えないからだ。
公表数値によると、飯山線で深刻度が高いのが「津南駅—戸狩野沢温泉駅」である。この区間、沿線の利用人口がそもそも少なく、県境を走る飯山線の中でも、特に利用人口が少ない地域である。JRによるこの区間設定がどうなのかの疑問はあるが、この区間をピックアップし、その営業係数の深刻度を大きくアピールしている。
今後、毎年公表する方針なら、これは「雰囲気づくり」ではないのか。「これだけ赤字なら…仕方ない…」、そんな言葉を待っているのか、と懐疑心が湧いてくる。だからこそ、沿線自治体の反応が必要だ。栄村・津南町・十日町市、昨年の公表後、「説明に来てほしい」とJR東に要望したのか。要望したなら、JR東は地元に説明に来たのか、それさえも沿線住民には知らされず、今回再び「赤字路線」として飯山線が全国ニュースで流される現実は、沿線住民として納得できないことだ。
飯山線に関係しては、飯山線沿線自治体連絡協議会という組織がある。会長は飯山市・江沢市長だ。今回の公表にどう反応し、どう動くのか。さらに、どう沿線住民に説明するか、どう飯山線を考えていくのか、などなど共有すべき課題は多い。このまま毎年の公表を看過するなら、事態は確実に、「その方向」に進むだろう。
飯山線。千曲川、信濃川に寄り添うように走る鉄路だ。いわば『千曲信濃ライン』、郷愁を誘う名称もいい。そろそろ、腰を上げる時ではないか。
2023年11月25日号
十日町市議会は議会改革特別委員会を設け、議員定数を改定し、いまは議員報酬のあり方と向き合っている。栄村議会も全議員で2年後の改選に向けて、定数と報酬の基本的な考え方を論議している。
先月22日、改選した津南町議会は定数削減後の初の選挙を経験し、新メンバー12人が10日の任期開始日から活動を始めている。その津南町議会は議員報酬を町特別職報酬等審議会に、その取り扱いを委ねている。近く報酬審議会が開かれる予定だ。引上げの方針と見られる。
議員報酬では様々な先行例がある。こちらは長野県生坂村(いくさかむら)。県中央部にあり松本市まで約25㌔、長野市まで約50㌔、村の中央を千曲川水系の犀川が流れる人口1667人(11月)、718世帯の長野県で5番目に小さな自治体だ。
生坂村議会(定数8)は2020年、議員のなり手不足の対策の一つとして議員報酬を大胆に改定した。55歳以下の月額報酬をそれまでの18万円から30万円に引き上げた。働き世代・子育て世代へのアピールだ。その結果、翌年2021年4月の改選では、長らく無投票が続いていた村議選が20年ぶりの選挙戦になり、定数8のメンバーの世代交代が進み、女性が3人に増えた。副議長は女性だ。
ここで注目は、議員報酬はその議会で一律である必要がないという点だ。地方自治法では議員定数の上限は定めているが、議員報酬を定める規定はない。つまり自治体条例で定めることになる。生坂村議会は議員のなり手不足の対策として取り組んだのが、この55歳以下の大幅引き上げだ。ただ生坂村議会はこの大幅アップを検証している。55歳以下の区切りの理解は得られたが、引上げ額は村民アンケートでは6割余が「見直しが必要」としている。
自治体とは、まさに『自治』である。そこに自治体のセンスが見える。
2023年11月18日号
人材バンクなるものは、数多ある。「ふるさと人材バンク」はどうか。十日町市も津南町も栄村も、取り組みはしているだろうが、なかなか確かな情報把握はされていないようだ。それは『この地域の出身者の人材バンク』。あそこの息子は日本を代表するAI技術者のようだ…あそこの娘は世界を相手にする食品研究者のようだ…あの家の次男は大学教授をしている…などなど、巷間話の真偽はあるが、妻有地域で育った人材が国内外の各分野の最前線で活躍しているのは事実だろう。これは「妻有の財産」ではないか。
コロナ禍で自粛していた中学・高校の同窓会・同級会が少しずつ復活している。卒業10年以内はまだ社会人の中堅前。20年、30年後のいまは中堅から主軸になっている方々が多いだろう。だが、この分野は個人情報との関係でなかなか悩ましい問題に直面する。
その橋渡しの一つになるのが、妻有地域の出身者でつくる「ふるさと会」。長い歴史を積み重ねる東京十日町会は、ふるさと十日町の着物産業の隆盛と共に設立し、県内の先駆けでもある。昭和30年津南町誕生と共に出身者で立ち上げた「東京津南郷会」もふるさと会の先駆けだ。相当なる人材が関り、あの人、この人と、国内外で活躍する人材の宝庫だろう。それはふるさと十日町市・津南町・栄村の頼もしき応援団でもある。だが、そのふるさと会が高齢化し、新規加入者が少なく、大切な組織が風前の灯火にある。
かつて市町村が情報提供を呼びかけたことがある。だが…である。個人情報の壁にぶつかった。住民の命と暮らしと財産を守る責務がある自治体。その守備範囲は広範だ。常にその道の専門家のアドバイスが必要で、その人材がふるさと出身者なら、さらに心強い。
まちづくり、地域づくり。きっと相当なる人材がいるのだろうが…。こういう時代だからこそ、人材が必要だ。
2023年11月11日号
今夏の「災害級の等級落ち」をアピールする絶好の場が12月1、2日、津南町に来る。ちょっと長い大会名だが『第25回米・食味分析鑑定コンクール国際大会inつなん』。主催は大阪に本部がある「米・食味鑑定士協会」。この国際コンクールの他に、水田環境鑑定士、調理炊飯鑑定士などコメづくりと食味を、国際的な規模での向上・普及に取り組む協会だ。毎回5千点を超える出品があり、今回の津南大会も出品受付はすでに始まっている。
この場の意義を考えたい。津南町は何をアピールするのか。今年産米は等級比率が過去最低を記録。だが、JA系などは「等級と食味は関係ない。2等米、3等米もうまい」と、JA組合長が等級落ちしたコメのごはんを食べるなど、等級落ちによる消費者心理のフォローに躍起だ。
今期の災害級の等級落ちが判明した9月末、本紙社説は「コメ等級選別の限界、食味で区別化を」を論じた。生産者のコメづくり意欲を助長する等級選別は、実は消費者にとって分かりにくい区別化だ。コメどころ新潟県の花角知事は明言した。「食味と等級選別は無関係」と等級落ち被害が判明した9月に。『ならば、生産者から消費者までの一体的な理解が得られる食味選別に統一すべき』。その場となる国際食味コンクールが津南町で開かれる。これはアピールする絶好の機会ではないか。
鑑定コンクール結果は、その優位性を決める場になるが、今期の災害級等級落ちのピンチをチャンスに変える場が、この大会だ。『従来の等級選別から、消費者・生産者が共に納得できる食味選別に』、この大会アピールを津南大会で決議してはどうか。実行委員長・桑原悠町長の出番だ。コメ食味の選別化による「生産者価格のランク付け」は、消費者ニーズに応えるだろう。今期の等級落ちのタイミングこそ、津南町からのアピール発信の好機ではないか。
2023年11月4日号
記者の性分なのか、あっち、こっちとレッテル張りをしたくなる。津南町議選の結果は、有権者が「世代交代、議会刷新」を求めた証しであると共に、桑原町政への疑問符は依然として強い、とする開票結果である。
「桑原町政への疑問符」は、現職で臨んだ候補個々の前回票と比較すると分かる。桑原町長の行政手法を疑問視する再選した現職2人は、前回を上回る得票を集めている。さらに選挙戦最終日、劣勢が伝わる現職の応援演説に入った桑原町長だが、その候補は惜敗している。
一方、今回の町議選では「町長の推し」が各所で見られ、感じられ、有権者には「あの候補は町長が推している」と巷間話として伝わった。有権者の視点も「町長派・非町長派」という構図で今回の選挙戦を見た有権者はいる。
だが、である。若い候補者からの言葉は、今後の津南町の歩みを示唆する感覚を受けた。「町長派、非町長派などという見た方は、津南町にとってなんの意味もなさない。なんのプラスにもならない」。とかく区別化をしたがる記者の性分からいくと、実態がそうだから、と言いたくなるが、今回の津南町議選の経過と結果を見ると、そんな区別化という低次元ではない政治意識の変化が進んでいる現実を見た思いだ。
イデオロギーの論点で町政を見たところで、それは国政・県政という流れの中でのあり様で、町政という限られたエリアの政治では、目の前に迫る山積する町政課題に立ち向かうしかないという現実がある。それには何が必要か。チーム力だろう。
津南町議会に新しい12人が誕生した。現職、元職も新しいスタートだ。桑原町政との関係性は今後の議員活動で示されるが、先人たちの言葉がある。『是々非々』。当然のことだが、低次元のレッテル張りの無意味さを考えたい。
「オール津南」で臨めるか、正念場だ。
2023年10月28日号
なんの啓示だろう。元日に発生した能登大地震。2日に起こった、あってはならない航空機同士の衝突事故。惨事は世界を駆け巡り、国連事務総長は「日本の皆さんと同じ」と、新年早々の惨事に思いを寄せている。それにしても、と思ってしまう。なにも新しき年がスタートした元日に…。だが、自然は容赦ない。我々の暮らしへの大きな警鐘ではないのか。
インターネットの驚異的な発達で、生活の便利さは格段に増し、ぬくぬくと暖かい家で暮し、自ら動くことなく用が足りる、そんな暮らしが当たり前になりつつある。だが、人と人が顔を合わせ、言葉を交わし、思いを感じ合う、そんな日常が激変している今に対し、元日の自然災害は大きな警鐘を鳴らしているのではないか。
3万人を超える人たちが今も避難生活を強いられる震災の地。あの12年前の中越地震で我々は経験した。いやこの真冬の過酷下ではそれを上回る厳しい避難生活が続くなか、人と人が助け合う姿がそこにある。その啓示を示したのが自然とするなら、あまりにも酷な仕打ちではないか、と思ってしまう。
妻有も大きな揺れに襲われた。松之山で倉庫倒壊の被害が出ているが、人身的な被害がなかったのは幸いだ。さらにこの小雪、例年のように除雪に追われる日々なら、この地震の受けとめはさらに深刻度を増したことだろう。妻有は長周期振動で大きく揺れた。大量の屋根雪があったなら、家屋倒壊の危険性が高まっただろう。
今度の大地震は、13年前のあの震災を思い起こさせた。「災害は忘れた頃にやって来る」、いやいや、「忘れなくても必ず来る」。改めて日々の備えの必要性を痛感した能登大地震だ。
2024年がスタートした。いきなりの自然の教え、我々は試されていることを忘れてはならない。自然は時に容赦ないが、その啓示は大きい。
2024年1月6日号
『市町村は人口減少対策から脱却を』。こんなタイトルの意見を日経紙面で見た。地方自治総合研究所の坂本誠研究員は言い切る。「そもそも、人口減少対策を市町村に委ねること自体に無理があるのではないか」。全国の人口減少に悩
む市町村は、「移住政策」と称する独自事業を打ち上げ、「うちの町に来ませんか、うちの村はどうですか」と、全国規模で人口が減少しているこの国の「やせ細るパイ」の奪い合いを繰り広げているのが、自治体の移住政策の実態ではないのか。「市町村の本分は、住民ひとり一人の生活の質を上げること。それによる定住環境の確保にあるのではないか」。坂本研究員は、浮足立つ人口減少対策に一石を投じている。
住民生活の「質」は、個人や地域ごとに多様だ。市長・町長・村長は住民との対話を掲げ、語る会など継続的に開く。生活から出る言葉をよく聞いていくと、住民が求めているのは立派な公民館やコミュニティー施設ではなく、最寄りの場所に「茶飲み」ができる場や気軽に集える広場などではないのか。声高に「移住」を叫んだところで肝心の住民が離れたのでは、まさに元も子もない。地域が行政に求めるのは、財政投資による「活性化」ではなく住民に余計な負担をかけずに、静かに見守り、安心して暮らせる環境づくりではないのか。
坂本研究員は続ける。「人口減少対策に全国各地で取り組むが、一握りの成功と、その陰に数多くの失敗例がある」と述べ、「住民であれ、移住者であれ、目の前の住民と共に腰を据えて向き合い、生活の質の向上に取り組む定住対策への転換だ」。人口減少対策の根本部分は国の社会保障制度の設計にあるとして、生活の質向上の第一義は市町村行政にある、と言い切る。まさに、目からウロコだ。細るパイの奪い合い、この実態を先ず見ることだろう。安心・安全の真の意味を考える時だ。
2023年12月23日号
あきれた以上に、これは「犯罪」だろう。パー券売上をポケット化している事実が判明し、この国の政権は瀬戸際に立たされている。そのお金を出した企業・団体・個人からの「反旗」は、それほど高く上がっていない。なぜ怒らない、それが不思議だ。
パー券、パーティー券だが、自民党の派閥による「キックバック問題」が年の瀬の切迫感と共に、この国の政治状況を大きく揺さぶっている。13日に提出された内閣不信任案は、自民・公明の政権政党だけの数の論理の賛成で否決したが、その実態は以外の野党すべてが賛成した事実は大きい。議院内閣制の国にとって、国会での議決がモノをいうが、今回のパー券問題は、著しく政治への不信感を増幅し、不信任案は否決されたが、国民の政権への不信感をかえって増幅しているのが事実だろう。ここはまさに「正義の味方」、検察の本来の力を見せてほしい。
政権を持つと資金が集まる、この構図は政治の歴史が物語っているが、今回のパー券問題、自民を推す民間企業や団体が「言われるままに」パー券を購入している実態が明らかになった。そのパー券の「ノルマ」以上をマイポケット化したことに対し、さらに政治資金に記載せず、となれば、これは雑収入扱いになり、それを申告しないのは「脱税」だろう。捜査はここまでも視野に入れているのだろうが、今後の検察捜査に注目だ。
そのパー券を買わされた民間企業・団体・さらに個人は、それもよし、としているのか。なぜ「何をしているのか」を怒らないのか。ここは反旗を掲げる時だろう。残念ながら、そうした動きは見られない。それは、「やはりそうだったのか」という織り込み済みのことなのか。
政治不信は、国の政策に大きく響く。マイポケット化が見過ごされれば、この先の納税、確定申告にも影響してくる。「あれが許され、なんで、これがダメなのか」、税務窓口での会話が聞こえてくる。ことは、それほど重要な局面だ。
2023年12月16日号
光と影、そんな印象を受ける米コンクール国際大会だった。苦節4年で初のトップ、金賞を受賞した地元津南町のコメ生産者の喜びは、まさに努力の結晶だ。今期の猛暑による等級落ちは、米づくり界に新たな課題を突き付けた。この中で宇都宮大が開発の米「ゆうだい21」が大きく躍進した背景は、単なる魚沼産コシヒカリが猛暑の影響を受けたばかりではない事を考えたい。新潟大が暑さに強い新品種を作り上げているが、これを含め米業界は新たな領域に入っていると言える。その意味で今回の国際大会は、「従来踏襲」では対応できない段階に入っていることを示唆している。
その従来踏襲の弊害が出たのが、先に報じた参加者など関係者の宿泊受入れ、さらに5日に明らかになった国際大会の事業経費の大幅増加だろう。「前回開催の小諸市を参考にした」と津南町役場の担当者は話す。だが、その小諸市での事業費約1400万円を大きく上回る倍増の総事業費2900万円になることが5日の町議会全協で明らかになった。驚きの増加額だ。これに対して「昨年500万円もかけてプレ大会を開いたが、何を検証したのか」との議員の問いに、担当者は「検証していない」と答えた。正直さはいいが、直接担当がこの実態では今回の驚きの結果も想像に難くない。13日からの津南町定例議会でこの補正予算が提案される。改選後初の定例議会で、議会新メンバーは早々に難題を突き付けられた形だ。「使ったものはしょうがない」では済まされないことは重々承知しているだろうが、議会のチェック機能が試される場になる。
まさに監査委員の出番ではないのか。町長が選任し、議会が承認する町の監査委員。こうした驚きの予算補正、それもすでに実施した事業の収支調査こそ、監査委員の責務ではないのか。12月議会は、新メンバーとなった町議会の今後4年間の試金石でもある。
2023年12月9日号
「何をしているのか」、この国の政治の現状から感じる言葉だろう。「どうするのか」、世界最大級の原発を抱える新潟県の人たちの思いだろう。「いったい、どうなっているの」、今週末に国際コンクールと名が付くイベントを開く津南町の人たちの思いだろう。国内外から3千人余が来町し、米どころ津南を世界に発信する、来場による経済効果も大きい、はずだった。だが、余りにもお粗末な事態が明らかになった。
本紙記事が実態だ。3千人といえば、津南町の宿泊施設すべてのキャパシティ(宿泊可能数)の4倍強に匹敵する数だ。国際コンクールの名を冠する一大イベント、その宿泊先は当然地元、と思ったのが大間違いだった。開催まで2週間を切った段階で、実態が明らかになった。その多くが町外宿泊という事実が判明した。これはいったいどういうことか、宿泊関係者は疑問を通り越し、怒りに変わっている。当然だろう。
ここまでのプロセスは、立場によりその言い分は違うだろうが、先ずは現実を直視すべきだ。宿泊関係者は落胆し、感じているのは取り組む行政への「なさけなさ」だろう。なぜ中間チェックできなかったのか、そもそも宿泊振り分けを委託した業者とどういう契約をしたのか、いや、契約も覚書も交わしていなかった。なぜ、なぜと疑問符は膨らむばかりだ。誰の責任というより、そもそも誘致した津南町はいままで「なにをしていたのか」だろう。
今年産米の等級落ちという農業経済が大きな打撃を受けている現実。その沈滞ムードを国際大会で払拭する面も、この週末のイベントはあったのではないか。大会は計画通り進むだろうが、その最終日、主催地の津南町は国内外に向けて何をアピールするのか。足元がぐらつくなかで、その言葉にどれほど力が込められるのか。実行委員長、桑原悠町長の言葉に注目したい。
2023年12月2日号
JR東は、赤字路線の実態を昨年に続き公表した。飯山線の数値は深刻だが、だから…とはならない取り組みが沿線には必要だ。昨年に続く赤字路線の公表に、沿線自治体はどう動き、何を発信するのか。目の前に提示され、示された現実は看過できないだろう。だが、昨年の沿線自治体の対応を見ると、心もとない。JRに対する沿線の姿勢が見えないからだ。
公表数値によると、飯山線で深刻度が高いのが「津南駅—戸狩野沢温泉駅」である。この区間、沿線の利用人口がそもそも少なく、県境を走る飯山線の中でも、特に利用人口が少ない地域である。JRによるこの区間設定がどうなのかの疑問はあるが、この区間をピックアップし、その営業係数の深刻度を大きくアピールしている。
今後、毎年公表する方針なら、これは「雰囲気づくり」ではないのか。「これだけ赤字なら…仕方ない…」、そんな言葉を待っているのか、と懐疑心が湧いてくる。だからこそ、沿線自治体の反応が必要だ。栄村・津南町・十日町市、昨年の公表後、「説明に来てほしい」とJR東に要望したのか。要望したなら、JR東は地元に説明に来たのか、それさえも沿線住民には知らされず、今回再び「赤字路線」として飯山線が全国ニュースで流される現実は、沿線住民として納得できないことだ。
飯山線に関係しては、飯山線沿線自治体連絡協議会という組織がある。会長は飯山市・江沢市長だ。今回の公表にどう反応し、どう動くのか。さらに、どう沿線住民に説明するか、どう飯山線を考えていくのか、などなど共有すべき課題は多い。このまま毎年の公表を看過するなら、事態は確実に、「その方向」に進むだろう。
飯山線。千曲川、信濃川に寄り添うように走る鉄路だ。いわば『千曲信濃ライン』、郷愁を誘う名称もいい。そろそろ、腰を上げる時ではないか。
2023年11月25日号
十日町市議会は議会改革特別委員会を設け、議員定数を改定し、いまは議員報酬のあり方と向き合っている。栄村議会も全議員で2年後の改選に向けて、定数と報酬の基本的な考え方を論議している。
先月22日、改選した津南町議会は定数削減後の初の選挙を経験し、新メンバー12人が10日の任期開始日から活動を始めている。その津南町議会は議員報酬を町特別職報酬等審議会に、その取り扱いを委ねている。近く報酬審議会が開かれる予定だ。引上げの方針と見られる。
議員報酬では様々な先行例がある。こちらは長野県生坂村(いくさかむら)。県中央部にあり松本市まで約25㌔、長野市まで約50㌔、村の中央を千曲川水系の犀川が流れる人口1667人(11月)、718世帯の長野県で5番目に小さな自治体だ。
生坂村議会(定数8)は2020年、議員のなり手不足の対策の一つとして議員報酬を大胆に改定した。55歳以下の月額報酬をそれまでの18万円から30万円に引き上げた。働き世代・子育て世代へのアピールだ。その結果、翌年2021年4月の改選では、長らく無投票が続いていた村議選が20年ぶりの選挙戦になり、定数8のメンバーの世代交代が進み、女性が3人に増えた。副議長は女性だ。
ここで注目は、議員報酬はその議会で一律である必要がないという点だ。地方自治法では議員定数の上限は定めているが、議員報酬を定める規定はない。つまり自治体条例で定めることになる。生坂村議会は議員のなり手不足の対策として取り組んだのが、この55歳以下の大幅引き上げだ。ただ生坂村議会はこの大幅アップを検証している。55歳以下の区切りの理解は得られたが、引上げ額は村民アンケートでは6割余が「見直しが必要」としている。
自治体とは、まさに『自治』である。そこに自治体のセンスが見える。
2023年11月18日号
人材バンクなるものは、数多ある。「ふるさと人材バンク」はどうか。十日町市も津南町も栄村も、取り組みはしているだろうが、なかなか確かな情報把握はされていないようだ。それは『この地域の出身者の人材バンク』。あそこの息子は日本を代表するAI技術者のようだ…あそこの娘は世界を相手にする食品研究者のようだ…あの家の次男は大学教授をしている…などなど、巷間話の真偽はあるが、妻有地域で育った人材が国内外の各分野の最前線で活躍しているのは事実だろう。これは「妻有の財産」ではないか。
コロナ禍で自粛していた中学・高校の同窓会・同級会が少しずつ復活している。卒業10年以内はまだ社会人の中堅前。20年、30年後のいまは中堅から主軸になっている方々が多いだろう。だが、この分野は個人情報との関係でなかなか悩ましい問題に直面する。
その橋渡しの一つになるのが、妻有地域の出身者でつくる「ふるさと会」。長い歴史を積み重ねる東京十日町会は、ふるさと十日町の着物産業の隆盛と共に設立し、県内の先駆けでもある。昭和30年津南町誕生と共に出身者で立ち上げた「東京津南郷会」もふるさと会の先駆けだ。相当なる人材が関り、あの人、この人と、国内外で活躍する人材の宝庫だろう。それはふるさと十日町市・津南町・栄村の頼もしき応援団でもある。だが、そのふるさと会が高齢化し、新規加入者が少なく、大切な組織が風前の灯火にある。
かつて市町村が情報提供を呼びかけたことがある。だが…である。個人情報の壁にぶつかった。住民の命と暮らしと財産を守る責務がある自治体。その守備範囲は広範だ。常にその道の専門家のアドバイスが必要で、その人材がふるさと出身者なら、さらに心強い。
まちづくり、地域づくり。きっと相当なる人材がいるのだろうが…。こういう時代だからこそ、人材が必要だ。
2023年11月11日号
今夏の「災害級の等級落ち」をアピールする絶好の場が12月1、2日、津南町に来る。ちょっと長い大会名だが『第25回米・食味分析鑑定コンクール国際大会inつなん』。主催は大阪に本部がある「米・食味鑑定士協会」。この国際コンクールの他に、水田環境鑑定士、調理炊飯鑑定士などコメづくりと食味を、国際的な規模での向上・普及に取り組む協会だ。毎回5千点を超える出品があり、今回の津南大会も出品受付はすでに始まっている。
この場の意義を考えたい。津南町は何をアピールするのか。今年産米は等級比率が過去最低を記録。だが、JA系などは「等級と食味は関係ない。2等米、3等米もうまい」と、JA組合長が等級落ちしたコメのごはんを食べるなど、等級落ちによる消費者心理のフォローに躍起だ。
今期の災害級の等級落ちが判明した9月末、本紙社説は「コメ等級選別の限界、食味で区別化を」を論じた。生産者のコメづくり意欲を助長する等級選別は、実は消費者にとって分かりにくい区別化だ。コメどころ新潟県の花角知事は明言した。「食味と等級選別は無関係」と等級落ち被害が判明した9月に。『ならば、生産者から消費者までの一体的な理解が得られる食味選別に統一すべき』。その場となる国際食味コンクールが津南町で開かれる。これはアピールする絶好の機会ではないか。
鑑定コンクール結果は、その優位性を決める場になるが、今期の災害級等級落ちのピンチをチャンスに変える場が、この大会だ。『従来の等級選別から、消費者・生産者が共に納得できる食味選別に』、この大会アピールを津南大会で決議してはどうか。実行委員長・桑原悠町長の出番だ。コメ食味の選別化による「生産者価格のランク付け」は、消費者ニーズに応えるだろう。今期の等級落ちのタイミングこそ、津南町からのアピール発信の好機ではないか。
2023年11月4日号
記者の性分なのか、あっち、こっちとレッテル張りをしたくなる。津南町議選の結果は、有権者が「世代交代、議会刷新」を求めた証しであると共に、桑原町政への疑問符は依然として強い、とする開票結果である。
「桑原町政への疑問符」は、現職で臨んだ候補個々の前回票と比較すると分かる。桑原町長の行政手法を疑問視する再選した現職2人は、前回を上回る得票を集めている。さらに選挙戦最終日、劣勢が伝わる現職の応援演説に入った桑原町長だが、その候補は惜敗している。
一方、今回の町議選では「町長の推し」が各所で見られ、感じられ、有権者には「あの候補は町長が推している」と巷間話として伝わった。有権者の視点も「町長派・非町長派」という構図で今回の選挙戦を見た有権者はいる。
だが、である。若い候補者からの言葉は、今後の津南町の歩みを示唆する感覚を受けた。「町長派、非町長派などという見た方は、津南町にとってなんの意味もなさない。なんのプラスにもならない」。とかく区別化をしたがる記者の性分からいくと、実態がそうだから、と言いたくなるが、今回の津南町議選の経過と結果を見ると、そんな区別化という低次元ではない政治意識の変化が進んでいる現実を見た思いだ。
イデオロギーの論点で町政を見たところで、それは国政・県政という流れの中でのあり様で、町政という限られたエリアの政治では、目の前に迫る山積する町政課題に立ち向かうしかないという現実がある。それには何が必要か。チーム力だろう。
津南町議会に新しい12人が誕生した。現職、元職も新しいスタートだ。桑原町政との関係性は今後の議員活動で示されるが、先人たちの言葉がある。『是々非々』。当然のことだが、低次元のレッテル張りの無意味さを考えたい。
「オール津南」で臨めるか、正念場だ。
2023年10月28日号