光と影、そんな印象を受ける米コンクール国際大会だった。苦節4年で初のトップ、金賞を受賞した地元津南町のコメ生産者の喜びは、まさに努力の結晶だ。今期の猛暑による等級落ちは、米づくり界に新たな課題を突き付けた。この中で宇都宮大が開発の米「ゆうだい21」が大きく躍進した背景は、単なる魚沼産コシヒカリが猛暑の影響を受けたばかりではない事を考えたい。新潟大が暑さに強い新品種を作り上げているが、これを含め米業界は新たな領域に入っていると言える。その意味で今回の国際大会は、「従来踏襲」では対応できない段階に入っていることを示唆している。
その従来踏襲の弊害が出たのが、先に報じた参加者など関係者の宿泊受入れ、さらに5日に明らかになった国際大会の事業経費の大幅増加だろう。「前回開催の小諸市を参考にした」と津南町役場の担当者は話す。だが、その小諸市での事業費約1400万円を大きく上回る倍増の総事業費2900万円になることが5日の町議会全協で明らかになった。驚きの増加額だ。これに対して「昨年500万円もかけてプレ大会を開いたが、何を検証したのか」との議員の問いに、担当者は「検証していない」と答えた。正直さはいいが、直接担当がこの実態では今回の驚きの結果も想像に難くない。13日からの津南町定例議会でこの補正予算が提案される。改選後初の定例議会で、議会新メンバーは早々に難題を突き付けられた形だ。「使ったものはしょうがない」では済まされないことは重々承知しているだろうが、議会のチェック機能が試される場になる。
まさに監査委員の出番ではないのか。町長が選任し、議会が承認する町の監査委員。こうした驚きの予算補正、それもすでに実施した事業の収支調査こそ、監査委員の責務ではないのか。12月議会は、新メンバーとなった町議会の今後4年間の試金石でもある。
2023年12月9日号
「何をしているのか」、この国の政治の現状から感じる言葉だろう。「どうするのか」、世界最大級の原発を抱える新潟県の人たちの思いだろう。「いったい、どうなっているの」、今週末に国際コンクールと名が付くイベントを開く津南町の人たちの思いだろう。国内外から3千人余が来町し、米どころ津南を世界に発信する、来場による経済効果も大きい、はずだった。だが、余りにもお粗末な事態が明らかになった。
本紙記事が実態だ。3千人といえば、津南町の宿泊施設すべてのキャパシティ(宿泊可能数)の4倍強に匹敵する数だ。国際コンクールの名を冠する一大イベント、その宿泊先は当然地元、と思ったのが大間違いだった。開催まで2週間を切った段階で、実態が明らかになった。その多くが町外宿泊という事実が判明した。これはいったいどういうことか、宿泊関係者は疑問を通り越し、怒りに変わっている。当然だろう。
ここまでのプロセスは、立場によりその言い分は違うだろうが、先ずは現実を直視すべきだ。宿泊関係者は落胆し、感じているのは取り組む行政への「なさけなさ」だろう。なぜ中間チェックできなかったのか、そもそも宿泊振り分けを委託した業者とどういう契約をしたのか、いや、契約も覚書も交わしていなかった。なぜ、なぜと疑問符は膨らむばかりだ。誰の責任というより、そもそも誘致した津南町はいままで「なにをしていたのか」だろう。
今年産米の等級落ちという農業経済が大きな打撃を受けている現実。その沈滞ムードを国際大会で払拭する面も、この週末のイベントはあったのではないか。大会は計画通り進むだろうが、その最終日、主催地の津南町は国内外に向けて何をアピールするのか。足元がぐらつくなかで、その言葉にどれほど力が込められるのか。実行委員長、桑原悠町長の言葉に注目したい。
2023年12月2日号
JR東は、赤字路線の実態を昨年に続き公表した。飯山線の数値は深刻だが、だから…とはならない取り組みが沿線には必要だ。昨年に続く赤字路線の公表に、沿線自治体はどう動き、何を発信するのか。目の前に提示され、示された現実は看過できないだろう。だが、昨年の沿線自治体の対応を見ると、心もとない。JRに対する沿線の姿勢が見えないからだ。
公表数値によると、飯山線で深刻度が高いのが「津南駅—戸狩野沢温泉駅」である。この区間、沿線の利用人口がそもそも少なく、県境を走る飯山線の中でも、特に利用人口が少ない地域である。JRによるこの区間設定がどうなのかの疑問はあるが、この区間をピックアップし、その営業係数の深刻度を大きくアピールしている。
今後、毎年公表する方針なら、これは「雰囲気づくり」ではないのか。「これだけ赤字なら…仕方ない…」、そんな言葉を待っているのか、と懐疑心が湧いてくる。だからこそ、沿線自治体の反応が必要だ。栄村・津南町・十日町市、昨年の公表後、「説明に来てほしい」とJR東に要望したのか。要望したなら、JR東は地元に説明に来たのか、それさえも沿線住民には知らされず、今回再び「赤字路線」として飯山線が全国ニュースで流される現実は、沿線住民として納得できないことだ。
飯山線に関係しては、飯山線沿線自治体連絡協議会という組織がある。会長は飯山市・江沢市長だ。今回の公表にどう反応し、どう動くのか。さらに、どう沿線住民に説明するか、どう飯山線を考えていくのか、などなど共有すべき課題は多い。このまま毎年の公表を看過するなら、事態は確実に、「その方向」に進むだろう。
飯山線。千曲川、信濃川に寄り添うように走る鉄路だ。いわば『千曲信濃ライン』、郷愁を誘う名称もいい。そろそろ、腰を上げる時ではないか。
2023年11月25日号
十日町市議会は議会改革特別委員会を設け、議員定数を改定し、いまは議員報酬のあり方と向き合っている。栄村議会も全議員で2年後の改選に向けて、定数と報酬の基本的な考え方を論議している。
先月22日、改選した津南町議会は定数削減後の初の選挙を経験し、新メンバー12人が10日の任期開始日から活動を始めている。その津南町議会は議員報酬を町特別職報酬等審議会に、その取り扱いを委ねている。近く報酬審議会が開かれる予定だ。引上げの方針と見られる。
議員報酬では様々な先行例がある。こちらは長野県生坂村(いくさかむら)。県中央部にあり松本市まで約25㌔、長野市まで約50㌔、村の中央を千曲川水系の犀川が流れる人口1667人(11月)、718世帯の長野県で5番目に小さな自治体だ。
生坂村議会(定数8)は2020年、議員のなり手不足の対策の一つとして議員報酬を大胆に改定した。55歳以下の月額報酬をそれまでの18万円から30万円に引き上げた。働き世代・子育て世代へのアピールだ。その結果、翌年2021年4月の改選では、長らく無投票が続いていた村議選が20年ぶりの選挙戦になり、定数8のメンバーの世代交代が進み、女性が3人に増えた。副議長は女性だ。
ここで注目は、議員報酬はその議会で一律である必要がないという点だ。地方自治法では議員定数の上限は定めているが、議員報酬を定める規定はない。つまり自治体条例で定めることになる。生坂村議会は議員のなり手不足の対策として取り組んだのが、この55歳以下の大幅引き上げだ。ただ生坂村議会はこの大幅アップを検証している。55歳以下の区切りの理解は得られたが、引上げ額は村民アンケートでは6割余が「見直しが必要」としている。
自治体とは、まさに『自治』である。そこに自治体のセンスが見える。
2023年11月18日号
人材バンクなるものは、数多ある。「ふるさと人材バンク」はどうか。十日町市も津南町も栄村も、取り組みはしているだろうが、なかなか確かな情報把握はされていないようだ。それは『この地域の出身者の人材バンク』。あそこの息子は日本を代表するAI技術者のようだ…あそこの娘は世界を相手にする食品研究者のようだ…あの家の次男は大学教授をしている…などなど、巷間話の真偽はあるが、妻有地域で育った人材が国内外の各分野の最前線で活躍しているのは事実だろう。これは「妻有の財産」ではないか。
コロナ禍で自粛していた中学・高校の同窓会・同級会が少しずつ復活している。卒業10年以内はまだ社会人の中堅前。20年、30年後のいまは中堅から主軸になっている方々が多いだろう。だが、この分野は個人情報との関係でなかなか悩ましい問題に直面する。
その橋渡しの一つになるのが、妻有地域の出身者でつくる「ふるさと会」。長い歴史を積み重ねる東京十日町会は、ふるさと十日町の着物産業の隆盛と共に設立し、県内の先駆けでもある。昭和30年津南町誕生と共に出身者で立ち上げた「東京津南郷会」もふるさと会の先駆けだ。相当なる人材が関り、あの人、この人と、国内外で活躍する人材の宝庫だろう。それはふるさと十日町市・津南町・栄村の頼もしき応援団でもある。だが、そのふるさと会が高齢化し、新規加入者が少なく、大切な組織が風前の灯火にある。
かつて市町村が情報提供を呼びかけたことがある。だが…である。個人情報の壁にぶつかった。住民の命と暮らしと財産を守る責務がある自治体。その守備範囲は広範だ。常にその道の専門家のアドバイスが必要で、その人材がふるさと出身者なら、さらに心強い。
まちづくり、地域づくり。きっと相当なる人材がいるのだろうが…。こういう時代だからこそ、人材が必要だ。
2023年11月11日号
今夏の「災害級の等級落ち」をアピールする絶好の場が12月1、2日、津南町に来る。ちょっと長い大会名だが『第25回米・食味分析鑑定コンクール国際大会inつなん』。主催は大阪に本部がある「米・食味鑑定士協会」。この国際コンクールの他に、水田環境鑑定士、調理炊飯鑑定士などコメづくりと食味を、国際的な規模での向上・普及に取り組む協会だ。毎回5千点を超える出品があり、今回の津南大会も出品受付はすでに始まっている。
この場の意義を考えたい。津南町は何をアピールするのか。今年産米は等級比率が過去最低を記録。だが、JA系などは「等級と食味は関係ない。2等米、3等米もうまい」と、JA組合長が等級落ちしたコメのごはんを食べるなど、等級落ちによる消費者心理のフォローに躍起だ。
今期の災害級の等級落ちが判明した9月末、本紙社説は「コメ等級選別の限界、食味で区別化を」を論じた。生産者のコメづくり意欲を助長する等級選別は、実は消費者にとって分かりにくい区別化だ。コメどころ新潟県の花角知事は明言した。「食味と等級選別は無関係」と等級落ち被害が判明した9月に。『ならば、生産者から消費者までの一体的な理解が得られる食味選別に統一すべき』。その場となる国際食味コンクールが津南町で開かれる。これはアピールする絶好の機会ではないか。
鑑定コンクール結果は、その優位性を決める場になるが、今期の災害級等級落ちのピンチをチャンスに変える場が、この大会だ。『従来の等級選別から、消費者・生産者が共に納得できる食味選別に』、この大会アピールを津南大会で決議してはどうか。実行委員長・桑原悠町長の出番だ。コメ食味の選別化による「生産者価格のランク付け」は、消費者ニーズに応えるだろう。今期の等級落ちのタイミングこそ、津南町からのアピール発信の好機ではないか。
2023年11月4日号
記者の性分なのか、あっち、こっちとレッテル張りをしたくなる。津南町議選の結果は、有権者が「世代交代、議会刷新」を求めた証しであると共に、桑原町政への疑問符は依然として強い、とする開票結果である。
「桑原町政への疑問符」は、現職で臨んだ候補個々の前回票と比較すると分かる。桑原町長の行政手法を疑問視する再選した現職2人は、前回を上回る得票を集めている。さらに選挙戦最終日、劣勢が伝わる現職の応援演説に入った桑原町長だが、その候補は惜敗している。
一方、今回の町議選では「町長の推し」が各所で見られ、感じられ、有権者には「あの候補は町長が推している」と巷間話として伝わった。有権者の視点も「町長派・非町長派」という構図で今回の選挙戦を見た有権者はいる。
だが、である。若い候補者からの言葉は、今後の津南町の歩みを示唆する感覚を受けた。「町長派、非町長派などという見た方は、津南町にとってなんの意味もなさない。なんのプラスにもならない」。とかく区別化をしたがる記者の性分からいくと、実態がそうだから、と言いたくなるが、今回の津南町議選の経過と結果を見ると、そんな区別化という低次元ではない政治意識の変化が進んでいる現実を見た思いだ。
イデオロギーの論点で町政を見たところで、それは国政・県政という流れの中でのあり様で、町政という限られたエリアの政治では、目の前に迫る山積する町政課題に立ち向かうしかないという現実がある。それには何が必要か。チーム力だろう。
津南町議会に新しい12人が誕生した。現職、元職も新しいスタートだ。桑原町政との関係性は今後の議員活動で示されるが、先人たちの言葉がある。『是々非々』。当然のことだが、低次元のレッテル張りの無意味さを考えたい。
「オール津南」で臨めるか、正念場だ。
2023年10月28日号
津南町が刻む歴史の転換点にあるのか。22日投開票の津南町議選、今回の選挙は多様な要素を含む。合併から68年の時間を積み重ね、6代目の町長が引っ張るいまの津南町を、今度の町議選は端的に表している。
その一つは高齢化する町の現状が、そのまま町議選に出ている。高齢化率65歳以上が43%余の数字が示す通り、今回の町議選候補者の平均年齢は65歳、津南町の現実そのままだ。70代以上が9人、驚くことはない。この世代がいまの津南町を支えている現実は、地域の生産活動の現役が、この世代だ。
女性を特別視する必要はないが、議会の場では「女性」という括りがいまだまかり通るのが、この国の議会の場の現実だ。その女性候補5人が挑んでいる。「女性の視点で」などの表現自体が時代錯誤であり、ものの見方の立脚点が違う。だが改選議席12に、5人の女性が挑む自治体は、なにかの動きを予感させる今回の選挙でもある。
やはり投票率が気になる。過去データを見ると、1975年・昭和50年以降では、この年は定数22に対し27人が出馬、投票率はなんと96・34%。その4年後は96・24%。投票率90%を割ったのは2003年・平成15年、この年は定数18に21人が出馬。以降、選挙のたびに投票率は下がり、4年前の前回2019年は72・48%だった。
投票率低下は、20代・30代・40代の低投票率が主因だ。投票所に足が向かない、なぜか。無関心ではないはず。今回この世代が立候補している。年代別投票率はすぐには集計が出ないが、今回はぜひ公表してほしい。今回、この年代が前回を下回る投票率なら、残念ながら津南町の将来は危うい。これも今回の町議選の一つの視点だ。
期日前投票が始まっている。早まる必要はない。21日までの候補の言動に注目してほしい。日を追うごとに「見えてくる」、それが選挙だ。
2023年10月21日号
じっくり聞き、読み、感じるべきだろう。津南町議選である。来週17日、告示だ。同時に期日前投票ができる期間が始まる。だが考えてほしい。今回の町議選はこれまでと、その様は大きく異なる。それは今日に至るまでの経過からも言える。現職を含め出馬表明が大幅に遅くなり、いまだ流動的な要素が現在進行形だ。ここはじっくり考え、選択すべきだろう。
今度の改選期の特徴の一つは、現職多数が再出馬すること、さらに新人女性2人が挑むこと、さらに候補予定者16人のうち70代以上が9人いること、この3点だけでも、これまでにない町議選になっている。70代以上の多数の出馬は、いまの津南町の現状を端的に表している。高齢化率43%余の象徴であると共に、この世代が津南町を支えているマンパワーであるということ。つまり、年代差は際立った判断材料ではないことを物語っている。
女性の挑戦は注目されがちだが、「ようやく」であり、「やっと」かもしれない現実が、いまの津南町ともいえる。今春の統一地方選で全国の市町村で多くの女性が議席を取り、議会における女性率が各段に上昇している現実があり、その風が津南町でも吹きつつあるのか、とも言える今回の町議選だ。だからこそ、じっくり聞き、読み、感じてほしいと強く思う。
告示後、選挙広報が発行され、本紙は投票直前の来週21日号で候補者アンケートを掲載する。その質問は『桑原町政の評価と課題』。ここに候補者のスタンス・立脚点がある。今度の町議選の争点が見えてくる。議員に求められる問題意識、その政治センスこそ、いま津南町議会に求められているのではないか。投票を早まることはない。繰り返すが、じっくり聞き、読み、感じて、投票所に行ってほしい。
2023年10月14日号
9月末人口8738人の津南町・町議選は、混迷が続いている。定数2人削減しての改選定数12に、現職10人、新人2人、元職3人の15人が挑む前哨戦は、まだ不確定な要因が残り、さらに新人出馬の可能性を含んでいる。だが本紙記事の通り、女性5人が挑む町議選は、これまでの津南町議会を「変えたい」思いの表れか、ようやく…なのか、変化・改革が起こるのか、10月22日が、その日だ。
本紙は来週13日、これまでの津南町長選、町議選で実施してきた「まちづくり公開討論会」を今回も開く。発言者は町議選候補予定者。15人となると時間的な制限から一人当たりの発言時間が少なくなるが、そこは議員をめざす予定者、ストレートで簡潔な言葉が聞かれるだろう。作った文章は、その字面を受けとめるしかないが、当事者が目の前で発する言葉は、その言葉以上に全身から伝わる思いがある。これこそ、この公開討論会がめざすところで、予定者の全身から発せられる言葉と雰囲気と意気込みを、会場で感じてほしい。
かつての選挙には「立会演説会」があった。だが国政選挙で廃止になり、その事実は歴史上の出来事になってしまった。今回の津南町議選・公開討論会は、討論会の名称だが、用意した質問に候補予定者が意見を述べるもので、討論会まではいかないが、こうした場が人を育て、有権者の判断価値を育てることになるはずだ。
改選定数12、情勢は相当に高いハードルになってきている。今春の統一地方選でも懸念されたのが投票率の低下。これほど身近な選挙で、なぜ投票率が上がらないのか。政治離れと言われるが、若い世代の世情への関心は高い。投票率が低い世代の候補者が少ないから、ともいえる。まだ間に合う、そこの若い方、ぜひチャレンジしてください。皆さんが待っていますよ。
2023年10月7日号
光と影、そんな印象を受ける米コンクール国際大会だった。苦節4年で初のトップ、金賞を受賞した地元津南町のコメ生産者の喜びは、まさに努力の結晶だ。今期の猛暑による等級落ちは、米づくり界に新たな課題を突き付けた。この中で宇都宮大が開発の米「ゆうだい21」が大きく躍進した背景は、単なる魚沼産コシヒカリが猛暑の影響を受けたばかりではない事を考えたい。新潟大が暑さに強い新品種を作り上げているが、これを含め米業界は新たな領域に入っていると言える。その意味で今回の国際大会は、「従来踏襲」では対応できない段階に入っていることを示唆している。
その従来踏襲の弊害が出たのが、先に報じた参加者など関係者の宿泊受入れ、さらに5日に明らかになった国際大会の事業経費の大幅増加だろう。「前回開催の小諸市を参考にした」と津南町役場の担当者は話す。だが、その小諸市での事業費約1400万円を大きく上回る倍増の総事業費2900万円になることが5日の町議会全協で明らかになった。驚きの増加額だ。これに対して「昨年500万円もかけてプレ大会を開いたが、何を検証したのか」との議員の問いに、担当者は「検証していない」と答えた。正直さはいいが、直接担当がこの実態では今回の驚きの結果も想像に難くない。13日からの津南町定例議会でこの補正予算が提案される。改選後初の定例議会で、議会新メンバーは早々に難題を突き付けられた形だ。「使ったものはしょうがない」では済まされないことは重々承知しているだろうが、議会のチェック機能が試される場になる。
まさに監査委員の出番ではないのか。町長が選任し、議会が承認する町の監査委員。こうした驚きの予算補正、それもすでに実施した事業の収支調査こそ、監査委員の責務ではないのか。12月議会は、新メンバーとなった町議会の今後4年間の試金石でもある。
2023年12月9日号
「何をしているのか」、この国の政治の現状から感じる言葉だろう。「どうするのか」、世界最大級の原発を抱える新潟県の人たちの思いだろう。「いったい、どうなっているの」、今週末に国際コンクールと名が付くイベントを開く津南町の人たちの思いだろう。国内外から3千人余が来町し、米どころ津南を世界に発信する、来場による経済効果も大きい、はずだった。だが、余りにもお粗末な事態が明らかになった。
本紙記事が実態だ。3千人といえば、津南町の宿泊施設すべてのキャパシティ(宿泊可能数)の4倍強に匹敵する数だ。国際コンクールの名を冠する一大イベント、その宿泊先は当然地元、と思ったのが大間違いだった。開催まで2週間を切った段階で、実態が明らかになった。その多くが町外宿泊という事実が判明した。これはいったいどういうことか、宿泊関係者は疑問を通り越し、怒りに変わっている。当然だろう。
ここまでのプロセスは、立場によりその言い分は違うだろうが、先ずは現実を直視すべきだ。宿泊関係者は落胆し、感じているのは取り組む行政への「なさけなさ」だろう。なぜ中間チェックできなかったのか、そもそも宿泊振り分けを委託した業者とどういう契約をしたのか、いや、契約も覚書も交わしていなかった。なぜ、なぜと疑問符は膨らむばかりだ。誰の責任というより、そもそも誘致した津南町はいままで「なにをしていたのか」だろう。
今年産米の等級落ちという農業経済が大きな打撃を受けている現実。その沈滞ムードを国際大会で払拭する面も、この週末のイベントはあったのではないか。大会は計画通り進むだろうが、その最終日、主催地の津南町は国内外に向けて何をアピールするのか。足元がぐらつくなかで、その言葉にどれほど力が込められるのか。実行委員長、桑原悠町長の言葉に注目したい。
2023年12月2日号
JR東は、赤字路線の実態を昨年に続き公表した。飯山線の数値は深刻だが、だから…とはならない取り組みが沿線には必要だ。昨年に続く赤字路線の公表に、沿線自治体はどう動き、何を発信するのか。目の前に提示され、示された現実は看過できないだろう。だが、昨年の沿線自治体の対応を見ると、心もとない。JRに対する沿線の姿勢が見えないからだ。
公表数値によると、飯山線で深刻度が高いのが「津南駅—戸狩野沢温泉駅」である。この区間、沿線の利用人口がそもそも少なく、県境を走る飯山線の中でも、特に利用人口が少ない地域である。JRによるこの区間設定がどうなのかの疑問はあるが、この区間をピックアップし、その営業係数の深刻度を大きくアピールしている。
今後、毎年公表する方針なら、これは「雰囲気づくり」ではないのか。「これだけ赤字なら…仕方ない…」、そんな言葉を待っているのか、と懐疑心が湧いてくる。だからこそ、沿線自治体の反応が必要だ。栄村・津南町・十日町市、昨年の公表後、「説明に来てほしい」とJR東に要望したのか。要望したなら、JR東は地元に説明に来たのか、それさえも沿線住民には知らされず、今回再び「赤字路線」として飯山線が全国ニュースで流される現実は、沿線住民として納得できないことだ。
飯山線に関係しては、飯山線沿線自治体連絡協議会という組織がある。会長は飯山市・江沢市長だ。今回の公表にどう反応し、どう動くのか。さらに、どう沿線住民に説明するか、どう飯山線を考えていくのか、などなど共有すべき課題は多い。このまま毎年の公表を看過するなら、事態は確実に、「その方向」に進むだろう。
飯山線。千曲川、信濃川に寄り添うように走る鉄路だ。いわば『千曲信濃ライン』、郷愁を誘う名称もいい。そろそろ、腰を上げる時ではないか。
2023年11月25日号
十日町市議会は議会改革特別委員会を設け、議員定数を改定し、いまは議員報酬のあり方と向き合っている。栄村議会も全議員で2年後の改選に向けて、定数と報酬の基本的な考え方を論議している。
先月22日、改選した津南町議会は定数削減後の初の選挙を経験し、新メンバー12人が10日の任期開始日から活動を始めている。その津南町議会は議員報酬を町特別職報酬等審議会に、その取り扱いを委ねている。近く報酬審議会が開かれる予定だ。引上げの方針と見られる。
議員報酬では様々な先行例がある。こちらは長野県生坂村(いくさかむら)。県中央部にあり松本市まで約25㌔、長野市まで約50㌔、村の中央を千曲川水系の犀川が流れる人口1667人(11月)、718世帯の長野県で5番目に小さな自治体だ。
生坂村議会(定数8)は2020年、議員のなり手不足の対策の一つとして議員報酬を大胆に改定した。55歳以下の月額報酬をそれまでの18万円から30万円に引き上げた。働き世代・子育て世代へのアピールだ。その結果、翌年2021年4月の改選では、長らく無投票が続いていた村議選が20年ぶりの選挙戦になり、定数8のメンバーの世代交代が進み、女性が3人に増えた。副議長は女性だ。
ここで注目は、議員報酬はその議会で一律である必要がないという点だ。地方自治法では議員定数の上限は定めているが、議員報酬を定める規定はない。つまり自治体条例で定めることになる。生坂村議会は議員のなり手不足の対策として取り組んだのが、この55歳以下の大幅引き上げだ。ただ生坂村議会はこの大幅アップを検証している。55歳以下の区切りの理解は得られたが、引上げ額は村民アンケートでは6割余が「見直しが必要」としている。
自治体とは、まさに『自治』である。そこに自治体のセンスが見える。
2023年11月18日号
人材バンクなるものは、数多ある。「ふるさと人材バンク」はどうか。十日町市も津南町も栄村も、取り組みはしているだろうが、なかなか確かな情報把握はされていないようだ。それは『この地域の出身者の人材バンク』。あそこの息子は日本を代表するAI技術者のようだ…あそこの娘は世界を相手にする食品研究者のようだ…あの家の次男は大学教授をしている…などなど、巷間話の真偽はあるが、妻有地域で育った人材が国内外の各分野の最前線で活躍しているのは事実だろう。これは「妻有の財産」ではないか。
コロナ禍で自粛していた中学・高校の同窓会・同級会が少しずつ復活している。卒業10年以内はまだ社会人の中堅前。20年、30年後のいまは中堅から主軸になっている方々が多いだろう。だが、この分野は個人情報との関係でなかなか悩ましい問題に直面する。
その橋渡しの一つになるのが、妻有地域の出身者でつくる「ふるさと会」。長い歴史を積み重ねる東京十日町会は、ふるさと十日町の着物産業の隆盛と共に設立し、県内の先駆けでもある。昭和30年津南町誕生と共に出身者で立ち上げた「東京津南郷会」もふるさと会の先駆けだ。相当なる人材が関り、あの人、この人と、国内外で活躍する人材の宝庫だろう。それはふるさと十日町市・津南町・栄村の頼もしき応援団でもある。だが、そのふるさと会が高齢化し、新規加入者が少なく、大切な組織が風前の灯火にある。
かつて市町村が情報提供を呼びかけたことがある。だが…である。個人情報の壁にぶつかった。住民の命と暮らしと財産を守る責務がある自治体。その守備範囲は広範だ。常にその道の専門家のアドバイスが必要で、その人材がふるさと出身者なら、さらに心強い。
まちづくり、地域づくり。きっと相当なる人材がいるのだろうが…。こういう時代だからこそ、人材が必要だ。
2023年11月11日号
今夏の「災害級の等級落ち」をアピールする絶好の場が12月1、2日、津南町に来る。ちょっと長い大会名だが『第25回米・食味分析鑑定コンクール国際大会inつなん』。主催は大阪に本部がある「米・食味鑑定士協会」。この国際コンクールの他に、水田環境鑑定士、調理炊飯鑑定士などコメづくりと食味を、国際的な規模での向上・普及に取り組む協会だ。毎回5千点を超える出品があり、今回の津南大会も出品受付はすでに始まっている。
この場の意義を考えたい。津南町は何をアピールするのか。今年産米は等級比率が過去最低を記録。だが、JA系などは「等級と食味は関係ない。2等米、3等米もうまい」と、JA組合長が等級落ちしたコメのごはんを食べるなど、等級落ちによる消費者心理のフォローに躍起だ。
今期の災害級の等級落ちが判明した9月末、本紙社説は「コメ等級選別の限界、食味で区別化を」を論じた。生産者のコメづくり意欲を助長する等級選別は、実は消費者にとって分かりにくい区別化だ。コメどころ新潟県の花角知事は明言した。「食味と等級選別は無関係」と等級落ち被害が判明した9月に。『ならば、生産者から消費者までの一体的な理解が得られる食味選別に統一すべき』。その場となる国際食味コンクールが津南町で開かれる。これはアピールする絶好の機会ではないか。
鑑定コンクール結果は、その優位性を決める場になるが、今期の災害級等級落ちのピンチをチャンスに変える場が、この大会だ。『従来の等級選別から、消費者・生産者が共に納得できる食味選別に』、この大会アピールを津南大会で決議してはどうか。実行委員長・桑原悠町長の出番だ。コメ食味の選別化による「生産者価格のランク付け」は、消費者ニーズに応えるだろう。今期の等級落ちのタイミングこそ、津南町からのアピール発信の好機ではないか。
2023年11月4日号
記者の性分なのか、あっち、こっちとレッテル張りをしたくなる。津南町議選の結果は、有権者が「世代交代、議会刷新」を求めた証しであると共に、桑原町政への疑問符は依然として強い、とする開票結果である。
「桑原町政への疑問符」は、現職で臨んだ候補個々の前回票と比較すると分かる。桑原町長の行政手法を疑問視する再選した現職2人は、前回を上回る得票を集めている。さらに選挙戦最終日、劣勢が伝わる現職の応援演説に入った桑原町長だが、その候補は惜敗している。
一方、今回の町議選では「町長の推し」が各所で見られ、感じられ、有権者には「あの候補は町長が推している」と巷間話として伝わった。有権者の視点も「町長派・非町長派」という構図で今回の選挙戦を見た有権者はいる。
だが、である。若い候補者からの言葉は、今後の津南町の歩みを示唆する感覚を受けた。「町長派、非町長派などという見た方は、津南町にとってなんの意味もなさない。なんのプラスにもならない」。とかく区別化をしたがる記者の性分からいくと、実態がそうだから、と言いたくなるが、今回の津南町議選の経過と結果を見ると、そんな区別化という低次元ではない政治意識の変化が進んでいる現実を見た思いだ。
イデオロギーの論点で町政を見たところで、それは国政・県政という流れの中でのあり様で、町政という限られたエリアの政治では、目の前に迫る山積する町政課題に立ち向かうしかないという現実がある。それには何が必要か。チーム力だろう。
津南町議会に新しい12人が誕生した。現職、元職も新しいスタートだ。桑原町政との関係性は今後の議員活動で示されるが、先人たちの言葉がある。『是々非々』。当然のことだが、低次元のレッテル張りの無意味さを考えたい。
「オール津南」で臨めるか、正念場だ。
2023年10月28日号
津南町が刻む歴史の転換点にあるのか。22日投開票の津南町議選、今回の選挙は多様な要素を含む。合併から68年の時間を積み重ね、6代目の町長が引っ張るいまの津南町を、今度の町議選は端的に表している。
その一つは高齢化する町の現状が、そのまま町議選に出ている。高齢化率65歳以上が43%余の数字が示す通り、今回の町議選候補者の平均年齢は65歳、津南町の現実そのままだ。70代以上が9人、驚くことはない。この世代がいまの津南町を支えている現実は、地域の生産活動の現役が、この世代だ。
女性を特別視する必要はないが、議会の場では「女性」という括りがいまだまかり通るのが、この国の議会の場の現実だ。その女性候補5人が挑んでいる。「女性の視点で」などの表現自体が時代錯誤であり、ものの見方の立脚点が違う。だが改選議席12に、5人の女性が挑む自治体は、なにかの動きを予感させる今回の選挙でもある。
やはり投票率が気になる。過去データを見ると、1975年・昭和50年以降では、この年は定数22に対し27人が出馬、投票率はなんと96・34%。その4年後は96・24%。投票率90%を割ったのは2003年・平成15年、この年は定数18に21人が出馬。以降、選挙のたびに投票率は下がり、4年前の前回2019年は72・48%だった。
投票率低下は、20代・30代・40代の低投票率が主因だ。投票所に足が向かない、なぜか。無関心ではないはず。今回この世代が立候補している。年代別投票率はすぐには集計が出ないが、今回はぜひ公表してほしい。今回、この年代が前回を下回る投票率なら、残念ながら津南町の将来は危うい。これも今回の町議選の一つの視点だ。
期日前投票が始まっている。早まる必要はない。21日までの候補の言動に注目してほしい。日を追うごとに「見えてくる」、それが選挙だ。
2023年10月21日号
じっくり聞き、読み、感じるべきだろう。津南町議選である。来週17日、告示だ。同時に期日前投票ができる期間が始まる。だが考えてほしい。今回の町議選はこれまでと、その様は大きく異なる。それは今日に至るまでの経過からも言える。現職を含め出馬表明が大幅に遅くなり、いまだ流動的な要素が現在進行形だ。ここはじっくり考え、選択すべきだろう。
今度の改選期の特徴の一つは、現職多数が再出馬すること、さらに新人女性2人が挑むこと、さらに候補予定者16人のうち70代以上が9人いること、この3点だけでも、これまでにない町議選になっている。70代以上の多数の出馬は、いまの津南町の現状を端的に表している。高齢化率43%余の象徴であると共に、この世代が津南町を支えているマンパワーであるということ。つまり、年代差は際立った判断材料ではないことを物語っている。
女性の挑戦は注目されがちだが、「ようやく」であり、「やっと」かもしれない現実が、いまの津南町ともいえる。今春の統一地方選で全国の市町村で多くの女性が議席を取り、議会における女性率が各段に上昇している現実があり、その風が津南町でも吹きつつあるのか、とも言える今回の町議選だ。だからこそ、じっくり聞き、読み、感じてほしいと強く思う。
告示後、選挙広報が発行され、本紙は投票直前の来週21日号で候補者アンケートを掲載する。その質問は『桑原町政の評価と課題』。ここに候補者のスタンス・立脚点がある。今度の町議選の争点が見えてくる。議員に求められる問題意識、その政治センスこそ、いま津南町議会に求められているのではないか。投票を早まることはない。繰り返すが、じっくり聞き、読み、感じて、投票所に行ってほしい。
2023年10月14日号
9月末人口8738人の津南町・町議選は、混迷が続いている。定数2人削減しての改選定数12に、現職10人、新人2人、元職3人の15人が挑む前哨戦は、まだ不確定な要因が残り、さらに新人出馬の可能性を含んでいる。だが本紙記事の通り、女性5人が挑む町議選は、これまでの津南町議会を「変えたい」思いの表れか、ようやく…なのか、変化・改革が起こるのか、10月22日が、その日だ。
本紙は来週13日、これまでの津南町長選、町議選で実施してきた「まちづくり公開討論会」を今回も開く。発言者は町議選候補予定者。15人となると時間的な制限から一人当たりの発言時間が少なくなるが、そこは議員をめざす予定者、ストレートで簡潔な言葉が聞かれるだろう。作った文章は、その字面を受けとめるしかないが、当事者が目の前で発する言葉は、その言葉以上に全身から伝わる思いがある。これこそ、この公開討論会がめざすところで、予定者の全身から発せられる言葉と雰囲気と意気込みを、会場で感じてほしい。
かつての選挙には「立会演説会」があった。だが国政選挙で廃止になり、その事実は歴史上の出来事になってしまった。今回の津南町議選・公開討論会は、討論会の名称だが、用意した質問に候補予定者が意見を述べるもので、討論会まではいかないが、こうした場が人を育て、有権者の判断価値を育てることになるはずだ。
改選定数12、情勢は相当に高いハードルになってきている。今春の統一地方選でも懸念されたのが投票率の低下。これほど身近な選挙で、なぜ投票率が上がらないのか。政治離れと言われるが、若い世代の世情への関心は高い。投票率が低い世代の候補者が少ないから、ともいえる。まだ間に合う、そこの若い方、ぜひチャレンジしてください。皆さんが待っていますよ。
2023年10月7日号