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妻有まるごと博物館一覧

  • ナワシロイチゴ

    照井 麻美(津南星空写真部)

     津南町にある森林セラピー基地にて野イチゴを見つけました。これはナワシロイチゴというキイチゴの仲間で野山の林縁のみならず、道端の藪など日当たりのいいところに生息しています。
     5月から7月にかけてラズベリーに似た赤い実をつけ、「苗代」を作るころに果実が熟すことから、ナワシロイチゴと名付けられたそうです。
     そのままでもジャムにしてもおいしく食べることができますが、すぐそばにある自然の中に食べ物があるということは改めて良いところに住んでいるな、と感じる瞬間でもあります。
     移住した最初の頃は「花」や「草」ということだけで、名前も何もわかりませんでしたが、少しずつ植物の知識を増やしていくと、本当に多くの草花が山や林に生息していることがわかります。
     特に葉の形や香り、樹木の質感などは一つ一つ特徴的で、こんなにも違うのかと驚くと同時に緑豊かな自然に囲まれて生活ができるこの地域が本当に贅沢な場所だと感じています。
     これからの時期はブナ林がとても涼しく感じることのできる季節です。ぜひ、森林セラピー基地や近くの森に足を運んでみてはいかがでしょうか。

    2024年7月20日号

  • 豪雪地のニホンヤモリ

    南雲 敏夫(県自然観察指導員)

     あるホテルから「ヤモリが数年前から住んでいて夏場は良く出てくるよ」って連絡をもらった。
     最初は半信半疑だったが現物を確認するとやはりニホンヤモリそのもの…普通こんな豪雪地の山間部にはいないと思っていたのだが。
     新潟県内では柏崎や出雲崎、糸魚川などの古くから商船が出入りする港町などでは船荷などに入り込んであちこちの港などに運び込まれる事が多いと言う。
     ではなぜこんな豪雪地にいたかと思うと、予想ではあるが、ホテルのリフォームなどで大量の資材が運び込まれた時にその中にいたのではないかと思う。
     夜行性の動物で人家など人の生活圏にすみつき、天井や壁などに張り付いて生活しているのが見られる。特に夜間にガラス窓に集まる昆虫などを捕食して生活している。人とうまく共存していて野外では姿を見るのまれである。
     漢字で書くと「家守」と書き、家を守る動物としても有名で、見つけてもそっとしておいてあげたい。

    2024年7月13日号

  • マツブサとチョウセンゴミシ

    中沢 英正(県自然観察保護員)

     どちらもマツブサ科の蔓性の樹木である。種子の他に、地下茎を這わせて繁殖する。
     出会いはいつも深山だが、苗場山麓では超がつくほどの希少種だ。
     見つかるのは若木が多く、蔓を伸ばして絡みついているものは少ない。花を咲かせる株など尚更だ。
     花期は6~7月で、雌花と雄花があり、別々の株につく。雄株の方が多いが、雌雄同株を見かけたこともある。同株で性転換するとも言われているが…。(写真はマツブサ雄株・左、チョウセンゴミシ雌株・右)。
     花は似ているが、房状に成長する果実の色は全く違ってくる。マツブサは青黒色に、チョウセンゴミシは赤色に熟すのだ。
     蔓や果実には薬効があることが知られている。茶や入浴剤として利用すれば、血行促進、強壮などの作用がある。
     名は、蔓に松脂のような匂いがあることからと、朝鮮から種子を輸入し、果実に甘、苦など5つの味があること(五味子)から。

    2024年7月6日号

  • 高野山でモガとビール?

    小林 幸一(津南案内人)

     県営妙法育成牧場で土の中から出てきた古いビール瓶を持っているという大割野の内山孝行さんを訪ね、収集した経緯をお聞きし、実物まで頂いて来ました。
     内山さんは昭和40年代に妙法牧場の工事に入り、道路脇の牧草地の中から出てきたビール瓶などを見たところ、知らない銘柄だったので持ち帰ったといいます。
     瓶には「サクラビール」や「大日本麦酒鉱泉株式会社」などの浮き文字があり、大正時代のハイカラな文化がこの山奥にも入って来たことが伺えます。ビールは一般家庭ではまだ贅沢品な飲み物で、大衆向けの日本酒や焼酎の瓶が見当たらないことから工事に関わった方の贅沢な生活が垣間見えます。また小さな瓶には「神薬資生堂」の文字の入った瓶や「ホーカー液」と刻まれた小瓶があり、調べてみると美白化粧水を謳ったモダンガールの必需品でした。
     内山氏の話では、他にも化粧瓶や子供の玩具があったとのことで、女性や子供も一緒に生活していたことが伺えます。こういった嗜好品や食料は注文をすれば配給所まで届き、代金は給料から天引きされていたとの記録もあります。
     厳しい労働の後には癒しの時間もあったようで、一生懸命稼いだ金を女性たちに巻き上げられ、その日暮らしの人夫の姿が目に浮かぶようです。また、前倉の飯場跡でも畑を耕すと瓶がたくさん出てきたということなので、当時の生活を知る上で貴重なものを頂きました。

    2024年6月29日号

  • 豊かな水と赤いマグカップ

    照井 麻美(津南星空写真部)

     今も古い水道施設が残るT字路にちょこんと赤いマグカップが目に止まる。
     初夏の暑い日差しから木陰に入ったこの場所ではキンと冷えた水が今も道行く人の喉を潤している。
     少し行って国道に出ればキンキンに冷えた自動販売機の飲み物も買うことができるが、マグカップの様子からすると多少なりこの水を利用している人がいるのであろう。
     今では上水が完備され、山から引いた水も滅菌したものが水道から出てくることが当たり前になっているが、こうした雪解け水や清水が豊富にあるこの地域の水資源の豊かさにはいつも驚かされている。
     しかし、20年以上前から叫ばれていた地球温暖化により大きな気候変動が起こることによって、今まで当たり前だったものが少しずつ、いや、大きく変化してきている。
     今年は雪も例年より少なく梅雨入りも遅いため、世間ではすでに貯水池の水不足が心配され、豊かだと思われていた水資源はとても貴重なものだったと再認識させられる。
     移住してきた身としてはこれから暑さも厳しくなってくると思うと、まだ朝晩涼しさを感じられる山間地には住むことができても、昼夜問わず猛暑の東京には「もう住めない」と思ってしまうのである。

    2024年6月22日号

  • 餌を狙うゴイサギ

    南雲 敏夫(県自然観察指導員)

     先日、田んぼの中の農道を移動中に普段あまり見かけない感じの鳥が田んぼに舞い降りた。
     車でゆっくりと近づいてみたらゴイサギ。広い河川敷の田んぼにいても不思議ではないが近距離で見る事があまりない鳥なので、窓を静かに開けて撮影、ゴイサギが移動するのでこちらもゆっくりと車を移動。
     このサギ類は遠くからでも人影を見るとあっという間に飛び去ってしまう、さすがに目が良い。車の陰から撮影しても姿を見せるとすぐに飛び立つ。しかし今回はうまく撮れた、田んぼの中のオタマジャクシでも狙っているのか、さかんに姿勢を低くしてついばんでいた。
     ゴイサギの由来は、昔、醍醐天皇に貴族階級の一つの五位を与えられたところから五位鷺とある。詳しくは読者で調べて頂きたい。
     このゴイサギの幼鳥を見た事があるが、全身に星空みたいな美しい模様があって星五位とも言われている。夜、大きな声で「クワッー」と鳴く鳥はこのゴイサギである。

    2024年6月15日号

  • スイカズラ

    中沢 英正(県自然観察保護員)

     梅雨前のこの時期、唇形の小花をびっしりつけて存在をアピールしている。幹は蔓性で、日当たりのいい道端や斜面などで垂れ下がっていることが多い。
     漢字にすると「吸蔓」で、花にある蜜を吸ったことからつけられた名である。子供にとっては宝の花だったのだ。
     別名は「ニンドウ(忍冬)」、冬に緑の葉を保っていることから。津南周辺では雪が多く積もるためなのか葉は枯れ落ちてしまう。忍ぶことが難しいのである。雪国ではこの名称は似つかわしくない。
     もう一つの別名に「キンギンカ(金銀花)」がある。花の咲き始めの白色を「銀」に、だんだんと黄味を帯びてくる様子を「金」に見たてたものである。花色の順だと「銀金花」だと思うのだが、語呂がいいからなのか、名づけ人が金に強い思い入れを持っていたためなのか…。
     花には芳香があるが、夜になると更に強くなり、受粉を手伝ってくれる蛾を誘う。

    2024年6月8日号

  • 中津川発電所と正面ヶ原開田

    小林 幸一(津南案内人)

     中津川電源開発は、都市に送る電力以外に地元の開田にも利用されました。大正8年正面ヶ原の開田事業の水源として県が発注し、用水が不足した際には、補給をするという目的で、穴藤の中津川第2発電所の取水口から従来の秋成の古田用に合流するよう灌漑用水路が引かれました。
     この灌漑用水路は、発電所工事の軌道と併設してつくられたため度々問題を起こし、地元に設立された水利組合は引き渡しを拒否し、維持管理は昭和26年まで電力側が行っていました。
     津南町史や反里口の頭首口に建立された石碑によれば、取水口から中深見の合流地点までには8か所の隧道があり、管理が大変でした。また水路の開閉権は電力会社が握っており、充分な用水は供給できませんでした。
     中津川第一発電所が完成した大正13年夏には水不足が生じ、開墾が進んだ大正15年には、正面ヶ原の5分の4の水田が枯れ死寸前になり、電力会社の利害に振り回されました。また軌道脇に併設されたことから中津川の氾濫をもろに受け、昭和23年アイオン、24年にキティと立て続きに来襲した台風で地山もろとも決壊し水田への用水は途絶えました。
     そこで多方面に陳情し、下流の石坂から揚水設備を設けたものの水路全体の老朽化が甚だしく現在の反り口頭首工工事に取り掛かりました。
    このエリアは秋山林道のような戦後の開発から外れ、土砂崩壊した場所以外は百年前の姿が残っている貴重なエリアです。

    2024年6月1日号

  • オオカメノキの芽吹き

    照井 麻美(津南星空写真部)

     日中との寒暖差がまだまだ厳しい5月、田植えで体調を崩されていないでしょうか。
     5月も終わりを迎えますが、山の上の方ではまだまだ雪が残る場所もあり、新緑の美しさとエネルギッシュな芽吹きを見ることができます。
     今回は芽吹いたばかりのオオカメノキをご紹介します。
     オオカメノキは森の中でよく見られ、名前の通り、亀の甲羅のような手のひらより少し小さめの丸々とした葉が特徴です。
     ブナ林で春を告げる葉としても有名で、コロンと丸く小さな新葉はまだまだ小さく親指大のかわいらしいサイズです。
     所々大きくなった葉は500円玉くらいのものもあり、木漏れ日が差し込むと葉脈がくっきりと浮かび上がりとても美しいです。
     私はこんな美しい自然が身近にあるこの地域がとても好きで、特に春は動植物と同じようにワクワクする季節です。
    他にも山の中にはイワカガミやコブシなどの美しい花々も咲き誇るようになりました。
     ぜひこの季節に、近くにある野山を歩いてみてはいかがでしょうか。

    2024年5月25日号

  • ホンドキツネ

    南雲 敏夫(県自然観察指導員)

     今回は久々に昼間にキツネの写真が撮れた。夜行性のキツネが日中に姿を見せるのはあまりないが、この日は天気も良いし、ちょうど春うららのような気温と雰囲気であった。
     動物たちもやはり長い冬の厳しい期間を耐えて暖かくなると油断するのかは分からないが、山からの農道を楽しそうにスキップしながら下りてくるのを確認、キツネ当人は嬉しそうにスキップしていたのかはわからないけれど…、見ていてそんな感じに受けた。
     急いで車を止めてカメラ持ってそっと陰から近づいて撮影。
     一瞬、こちらを見ていたがなんとか2回シャッターを切った途端にキツネは「あっ見つかった…」と思ったのか猛ダッシュで逃げて行った。
     わずかの時間でもこういう場面での動物たちとのやりとりはとても楽しい時間。
     このキツネ、イヌ科だと知っている人は案外と少ない。もちろんタヌキもイヌ科、だから犬の病気が流行ると野生のキツネやタヌキも被害を受ける事になる。 

    2024年5月18日号

  • ナワシロイチゴ

    照井 麻美(津南星空写真部)

     津南町にある森林セラピー基地にて野イチゴを見つけました。これはナワシロイチゴというキイチゴの仲間で野山の林縁のみならず、道端の藪など日当たりのいいところに生息しています。
     5月から7月にかけてラズベリーに似た赤い実をつけ、「苗代」を作るころに果実が熟すことから、ナワシロイチゴと名付けられたそうです。
     そのままでもジャムにしてもおいしく食べることができますが、すぐそばにある自然の中に食べ物があるということは改めて良いところに住んでいるな、と感じる瞬間でもあります。
     移住した最初の頃は「花」や「草」ということだけで、名前も何もわかりませんでしたが、少しずつ植物の知識を増やしていくと、本当に多くの草花が山や林に生息していることがわかります。
     特に葉の形や香り、樹木の質感などは一つ一つ特徴的で、こんなにも違うのかと驚くと同時に緑豊かな自然に囲まれて生活ができるこの地域が本当に贅沢な場所だと感じています。
     これからの時期はブナ林がとても涼しく感じることのできる季節です。ぜひ、森林セラピー基地や近くの森に足を運んでみてはいかがでしょうか。

    2024年7月20日号

  • 豪雪地のニホンヤモリ

    南雲 敏夫(県自然観察指導員)

     あるホテルから「ヤモリが数年前から住んでいて夏場は良く出てくるよ」って連絡をもらった。
     最初は半信半疑だったが現物を確認するとやはりニホンヤモリそのもの…普通こんな豪雪地の山間部にはいないと思っていたのだが。
     新潟県内では柏崎や出雲崎、糸魚川などの古くから商船が出入りする港町などでは船荷などに入り込んであちこちの港などに運び込まれる事が多いと言う。
     ではなぜこんな豪雪地にいたかと思うと、予想ではあるが、ホテルのリフォームなどで大量の資材が運び込まれた時にその中にいたのではないかと思う。
     夜行性の動物で人家など人の生活圏にすみつき、天井や壁などに張り付いて生活しているのが見られる。特に夜間にガラス窓に集まる昆虫などを捕食して生活している。人とうまく共存していて野外では姿を見るのまれである。
     漢字で書くと「家守」と書き、家を守る動物としても有名で、見つけてもそっとしておいてあげたい。

    2024年7月13日号

  • マツブサとチョウセンゴミシ

    中沢 英正(県自然観察保護員)

     どちらもマツブサ科の蔓性の樹木である。種子の他に、地下茎を這わせて繁殖する。
     出会いはいつも深山だが、苗場山麓では超がつくほどの希少種だ。
     見つかるのは若木が多く、蔓を伸ばして絡みついているものは少ない。花を咲かせる株など尚更だ。
     花期は6~7月で、雌花と雄花があり、別々の株につく。雄株の方が多いが、雌雄同株を見かけたこともある。同株で性転換するとも言われているが…。(写真はマツブサ雄株・左、チョウセンゴミシ雌株・右)。
     花は似ているが、房状に成長する果実の色は全く違ってくる。マツブサは青黒色に、チョウセンゴミシは赤色に熟すのだ。
     蔓や果実には薬効があることが知られている。茶や入浴剤として利用すれば、血行促進、強壮などの作用がある。
     名は、蔓に松脂のような匂いがあることからと、朝鮮から種子を輸入し、果実に甘、苦など5つの味があること(五味子)から。

    2024年7月6日号

  • 高野山でモガとビール?

    小林 幸一(津南案内人)

     県営妙法育成牧場で土の中から出てきた古いビール瓶を持っているという大割野の内山孝行さんを訪ね、収集した経緯をお聞きし、実物まで頂いて来ました。
     内山さんは昭和40年代に妙法牧場の工事に入り、道路脇の牧草地の中から出てきたビール瓶などを見たところ、知らない銘柄だったので持ち帰ったといいます。
     瓶には「サクラビール」や「大日本麦酒鉱泉株式会社」などの浮き文字があり、大正時代のハイカラな文化がこの山奥にも入って来たことが伺えます。ビールは一般家庭ではまだ贅沢品な飲み物で、大衆向けの日本酒や焼酎の瓶が見当たらないことから工事に関わった方の贅沢な生活が垣間見えます。また小さな瓶には「神薬資生堂」の文字の入った瓶や「ホーカー液」と刻まれた小瓶があり、調べてみると美白化粧水を謳ったモダンガールの必需品でした。
     内山氏の話では、他にも化粧瓶や子供の玩具があったとのことで、女性や子供も一緒に生活していたことが伺えます。こういった嗜好品や食料は注文をすれば配給所まで届き、代金は給料から天引きされていたとの記録もあります。
     厳しい労働の後には癒しの時間もあったようで、一生懸命稼いだ金を女性たちに巻き上げられ、その日暮らしの人夫の姿が目に浮かぶようです。また、前倉の飯場跡でも畑を耕すと瓶がたくさん出てきたということなので、当時の生活を知る上で貴重なものを頂きました。

    2024年6月29日号

  • 豊かな水と赤いマグカップ

    照井 麻美(津南星空写真部)

     今も古い水道施設が残るT字路にちょこんと赤いマグカップが目に止まる。
     初夏の暑い日差しから木陰に入ったこの場所ではキンと冷えた水が今も道行く人の喉を潤している。
     少し行って国道に出ればキンキンに冷えた自動販売機の飲み物も買うことができるが、マグカップの様子からすると多少なりこの水を利用している人がいるのであろう。
     今では上水が完備され、山から引いた水も滅菌したものが水道から出てくることが当たり前になっているが、こうした雪解け水や清水が豊富にあるこの地域の水資源の豊かさにはいつも驚かされている。
     しかし、20年以上前から叫ばれていた地球温暖化により大きな気候変動が起こることによって、今まで当たり前だったものが少しずつ、いや、大きく変化してきている。
     今年は雪も例年より少なく梅雨入りも遅いため、世間ではすでに貯水池の水不足が心配され、豊かだと思われていた水資源はとても貴重なものだったと再認識させられる。
     移住してきた身としてはこれから暑さも厳しくなってくると思うと、まだ朝晩涼しさを感じられる山間地には住むことができても、昼夜問わず猛暑の東京には「もう住めない」と思ってしまうのである。

    2024年6月22日号

  • 餌を狙うゴイサギ

    南雲 敏夫(県自然観察指導員)

     先日、田んぼの中の農道を移動中に普段あまり見かけない感じの鳥が田んぼに舞い降りた。
     車でゆっくりと近づいてみたらゴイサギ。広い河川敷の田んぼにいても不思議ではないが近距離で見る事があまりない鳥なので、窓を静かに開けて撮影、ゴイサギが移動するのでこちらもゆっくりと車を移動。
     このサギ類は遠くからでも人影を見るとあっという間に飛び去ってしまう、さすがに目が良い。車の陰から撮影しても姿を見せるとすぐに飛び立つ。しかし今回はうまく撮れた、田んぼの中のオタマジャクシでも狙っているのか、さかんに姿勢を低くしてついばんでいた。
     ゴイサギの由来は、昔、醍醐天皇に貴族階級の一つの五位を与えられたところから五位鷺とある。詳しくは読者で調べて頂きたい。
     このゴイサギの幼鳥を見た事があるが、全身に星空みたいな美しい模様があって星五位とも言われている。夜、大きな声で「クワッー」と鳴く鳥はこのゴイサギである。

    2024年6月15日号

  • スイカズラ

    中沢 英正(県自然観察保護員)

     梅雨前のこの時期、唇形の小花をびっしりつけて存在をアピールしている。幹は蔓性で、日当たりのいい道端や斜面などで垂れ下がっていることが多い。
     漢字にすると「吸蔓」で、花にある蜜を吸ったことからつけられた名である。子供にとっては宝の花だったのだ。
     別名は「ニンドウ(忍冬)」、冬に緑の葉を保っていることから。津南周辺では雪が多く積もるためなのか葉は枯れ落ちてしまう。忍ぶことが難しいのである。雪国ではこの名称は似つかわしくない。
     もう一つの別名に「キンギンカ(金銀花)」がある。花の咲き始めの白色を「銀」に、だんだんと黄味を帯びてくる様子を「金」に見たてたものである。花色の順だと「銀金花」だと思うのだが、語呂がいいからなのか、名づけ人が金に強い思い入れを持っていたためなのか…。
     花には芳香があるが、夜になると更に強くなり、受粉を手伝ってくれる蛾を誘う。

    2024年6月8日号

  • 中津川発電所と正面ヶ原開田

    小林 幸一(津南案内人)

     中津川電源開発は、都市に送る電力以外に地元の開田にも利用されました。大正8年正面ヶ原の開田事業の水源として県が発注し、用水が不足した際には、補給をするという目的で、穴藤の中津川第2発電所の取水口から従来の秋成の古田用に合流するよう灌漑用水路が引かれました。
     この灌漑用水路は、発電所工事の軌道と併設してつくられたため度々問題を起こし、地元に設立された水利組合は引き渡しを拒否し、維持管理は昭和26年まで電力側が行っていました。
     津南町史や反里口の頭首口に建立された石碑によれば、取水口から中深見の合流地点までには8か所の隧道があり、管理が大変でした。また水路の開閉権は電力会社が握っており、充分な用水は供給できませんでした。
     中津川第一発電所が完成した大正13年夏には水不足が生じ、開墾が進んだ大正15年には、正面ヶ原の5分の4の水田が枯れ死寸前になり、電力会社の利害に振り回されました。また軌道脇に併設されたことから中津川の氾濫をもろに受け、昭和23年アイオン、24年にキティと立て続きに来襲した台風で地山もろとも決壊し水田への用水は途絶えました。
     そこで多方面に陳情し、下流の石坂から揚水設備を設けたものの水路全体の老朽化が甚だしく現在の反り口頭首工工事に取り掛かりました。
    このエリアは秋山林道のような戦後の開発から外れ、土砂崩壊した場所以外は百年前の姿が残っている貴重なエリアです。

    2024年6月1日号

  • オオカメノキの芽吹き

    照井 麻美(津南星空写真部)

     日中との寒暖差がまだまだ厳しい5月、田植えで体調を崩されていないでしょうか。
     5月も終わりを迎えますが、山の上の方ではまだまだ雪が残る場所もあり、新緑の美しさとエネルギッシュな芽吹きを見ることができます。
     今回は芽吹いたばかりのオオカメノキをご紹介します。
     オオカメノキは森の中でよく見られ、名前の通り、亀の甲羅のような手のひらより少し小さめの丸々とした葉が特徴です。
     ブナ林で春を告げる葉としても有名で、コロンと丸く小さな新葉はまだまだ小さく親指大のかわいらしいサイズです。
     所々大きくなった葉は500円玉くらいのものもあり、木漏れ日が差し込むと葉脈がくっきりと浮かび上がりとても美しいです。
     私はこんな美しい自然が身近にあるこの地域がとても好きで、特に春は動植物と同じようにワクワクする季節です。
    他にも山の中にはイワカガミやコブシなどの美しい花々も咲き誇るようになりました。
     ぜひこの季節に、近くにある野山を歩いてみてはいかがでしょうか。

    2024年5月25日号

  • ホンドキツネ

    南雲 敏夫(県自然観察指導員)

     今回は久々に昼間にキツネの写真が撮れた。夜行性のキツネが日中に姿を見せるのはあまりないが、この日は天気も良いし、ちょうど春うららのような気温と雰囲気であった。
     動物たちもやはり長い冬の厳しい期間を耐えて暖かくなると油断するのかは分からないが、山からの農道を楽しそうにスキップしながら下りてくるのを確認、キツネ当人は嬉しそうにスキップしていたのかはわからないけれど…、見ていてそんな感じに受けた。
     急いで車を止めてカメラ持ってそっと陰から近づいて撮影。
     一瞬、こちらを見ていたがなんとか2回シャッターを切った途端にキツネは「あっ見つかった…」と思ったのか猛ダッシュで逃げて行った。
     わずかの時間でもこういう場面での動物たちとのやりとりはとても楽しい時間。
     このキツネ、イヌ科だと知っている人は案外と少ない。もちろんタヌキもイヌ科、だから犬の病気が流行ると野生のキツネやタヌキも被害を受ける事になる。 

    2024年5月18日号