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オピニオン一覧

  • スリット堰堤より住居移転で集落活性化

    清津峡の護岸整備を考える

    藤ノ木信子 (清津川に清流を取り戻す会)

     原点に戻って考えよう。湯沢砂防事務所はスリット堰堤と集落付近の護岸整備をセットにする案だけを住民に提示している。で、やるのかやらないのかと問われれば、住民はイエスしか選択できない。
     本来は複数の案があってメリットデメリットを比較し、住民が考えて決めるのが河川自治だ。
     堰堤を造るとスリットがあると言っても、下流は河床が下がり、上流は流れが滞留し砂利が溜まり河床が上がる。一つの集落を二分するような案しか方法はないのだろうか?
     多くの山間地での共通問題だが、清津峡地区も高齢化が進んで世帯数が減り、もうすぐ地図上から消えるかも? と思うほど過疎化が進んでいる。
     私はこの治水の課題は集落存続のチャンスなのでは? と思っている。どうして? と聞かれるだろう。…ここからは単なる私の妄想だと読んでほしい。
     仮に湯沢砂防の計画通りスリット堰堤と護岸工事ができても、大きな台風が近づくとやっぱり川沿いの住人は心配で自主避難するだろう。安全度は上がっても災害は想定を超えてくる。川沿いの家は10軒くらいだ。もしできるなら川沿いの住民が地域内の少し川から離れた道上へ移るというのはダメだろうか?
     山の中でよく見る小さな砂防堰堤の費用は一基4~5億円と言われている。清津川本流に計画されているスリット堰堤はその何倍もある。土地確保と住宅建設や引っ越しその他の費用を10軒分見積もっても、堰堤を造るよりずっと安い。
     住民も十分な補償があれば、築50年超えの大きな家より、こぢんまりした耐雪、省エネ、バリアフリーの家のほうが暮らしやすいのではないだろうか? 高齢者世帯が後に家を手放す時が来ても、雪始末の楽な家は買い手が見つかり易く集落に新しいメンバーが加わる可能性もできる。古く大きな家は取り壊しにも費用がかかり空き家問題の原因になる。
     川沿いの土地は大切な生命財産を置かなければいいだけだから、護岸工事をして農地に転用してもいいし公園にしてもいい。漁協に協力頂いて釣り堀でもいいし、ウドやタラの木を植えて山菜農園にしてもいい。きれいな蓮の花を植えても、アヒルが泳いでいてもいい。
     村の形は変わるけど、年間何十万人も集客する清津峡の入り口だから、考えようで集落活性化になるのでは? 最もいいことは、堰堤を造るより移転のほうが早くできることだ。
     この国では近い将来、通貨危機や南海トラフや戦争といった大きな惨事が起こる可能性は否定できず、そうなったら国は地方の小さな清津川の治水などできなくなる…だから何年もかかる治水事業より早く確実な移転がいい。
     先祖代々住み続けた家、地域の内情、高齢化…代えがたいものがあるのはわかるけど…非力な私には提案しかできない。地域の人が自分で決めることだと思う。

    2024年11月16日号

  • 柏崎刈羽原発の再稼働は県民投票で

    県民投票署名が始まる

    齋木 文夫 (年金生活者)


     10月27日の衆院選では、自民・公明が大幅に議席を減らし、立憲、国民が躍進しました。気がかりなのは、「護憲、反戦・反核・反原発」を掲げる勢力が伸びなかったこと。本来、これらも大きな争点になるべきだったのに、「裏金」と「経済」に絞られてしまったのは、マスコミの責任でもあります。
     これを書いている11月6日夜、米国大統領選は、トランプ氏の当選が確実となったようです。どちらが勝っても、米国はガザで虐殺を続けるイスラエルへの支援を継続するでしょう。私が米国大統領選に興味を持てない理由はこれです。
     さて、新潟県内では柏崎刈羽原発再稼働の是非を県民投票で決めるため、条例制定を求める署名活動が始まりました。
    世界最大級の柏崎刈羽原発は、1~7号機とも運転停止中です。東京電力は2013年に6・7号機の再稼働の審査を原子力規制委員会に申請し、2023年12月にようやく再稼働準備ができるようになりました。
     再稼働にあたっては、規制委員会の審査のほか、柏崎市、刈羽村、新潟県の同意が必要です。柏崎市と刈羽村は、議会、首長とも再稼働に同意する意向のようです。
     一方、新潟県では、花角知事は18年に、柏崎刈羽原発の再稼働について「自ら判断し、県民に信を問う」と公約に掲げて当選しました。しかし、「信を問う」具体的な方法や時期は明確にしないまま今日に至っています。
     柏崎刈羽原発の再稼働は、県民のいのちや暮らしに関わる大きな問題です。県知事や県議会に任せるのでなく、県民の一人ひとりが、県政の主人公として意思表示するべきではないでしょうか。
     私たちは、地方自治法に基づき、「柏崎刈羽原発の再稼働の是非を問う県民投票条例」の制定を請求することにしました。請求のためには、新潟県民有権者の50分の1以上の署名が必要です。「条例を制定してください」という署名で、原発反対署名ではありません。
     ①県民のすべてが柏崎刈羽原発の再稼働の問題に向き合い、賛成・反対の立場を超えて話し合うこと、②柏崎刈羽原発の再稼働の是非を県民投票で問い、投票の結果を県の方針に反映させることが、新潟の民主主義を育て、未来をひらくことにつながると確信しています。どうか署名をお願いします。
     署名と署名集めをしてくださる方は、齋木までご連絡ください。電話090‒4946‒7570。

    2024年11月9日号

  • 敗戦体験79年、行動し続けることを我が身に

    日本被団協にノーベル平和賞

    松崎 房子 (元ゆずり葉編集委員)

     今年のノーベル平和賞を、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)が受賞することに決まった。驚愕し、それからだんだんに高揚した。
     10年ぐらい前、我が国の憲法九条をノーベル平和賞に推薦しよう、というムーブメントがあった。
     その発想に大いに共感し、実現すればいいなと願った。自衛隊を軍隊と明記したい政府の改憲を、何としても阻止しなければと強く願い、九条の会にも参加した。焦りを覚えたが進展しないまま低迷した。
     被爆後11年。語り始めた被爆者と被団協として結成以来68年。その間のニュース映像を見ると、国連本部で『ノーモア広島、ノーモア長崎、ノーモア被爆者』と演説した山口仙二さん。背中に追った火傷の写真を掲げながら、活動し続けた谷口稜曄(すみてる)さん。米大統領として初めて広島を訪れたオバマ大統領と握手した坪井直(すなお)さん。長い年月の間に何度も目にした方々のお顔が見に浮かぶ。 
     そして今年の受賞速報の場面で、高校生の平和大使たちと歓喜する箕牧智之(みまきとしゆき)さん、ニューヨークを、横断幕を掲げて、アピール行進する姿も記憶に新しい。
     永年の辛抱強い行動、具体的で目に見えるアピール行動が認められた。心からの敬意を奉げたい。 
     そうした一方で、授与を決定した委員会の委員長の年齢に感動した。若い世代もある意味、危機感を感じているのだろう。いやむしろ若い世代のほうが、危機感が強いかも。
     受賞の知らせを受けた場面でも高校生平和大使たちが同席していた。
     見るに見かねて行動に移し、長い年月、たゆまず、ひるまず、若い世代へも伝え・バトンを繋いで行動し続ける被団協の皆さんに頭が下がる。
     それを認めて、世界が注目するノーベル平和賞を授与してくれる世界の目がある事にも感動した。
     自分だけではだめだと九条の会に参加してはいるが、戦争は、だめだ、ダメだと叫んでいるだけでは、世界にはもちろん、日本政府にさえ届かない。
     敗戦を体験して79年、あきらめずに行動することを我が身に言い聞かせた。
     国として、核兵器使用廃絶の条約への批准を。世界が注目をしていますぞ‼

    2024年11月2日号

  • 比例代表は全国1区、重複禁止を

    改めて選挙制度を考える

    村山 朗 (会社員)

     衆院選も大詰めを迎えています。筆者は、毎回投票所に足を運んできましたが、重複立候補できるこの小選挙区比例代表並立制にすっきりしない感覚を持っておりました。今回自民党の裏金問題で、わが選挙区の一候補が重複立候補できなくなったということですが、重複立候補ということは一回の選挙に同じ人が、選挙区と政党の比例代表の両方に立候補できるということですよね。はて? これって、正しいやり方でしょうか。
     今更こんなことを持ち出すのは、ボケ老人もいいとこですが、今回の衆院選挙で重複云々が大きな話題になっているので改めて確認してみました。
     かつて中選挙区制(一つの選挙区で2人以上当選する制度)の下で、同じ選挙区で同じ政党から複数立候補すると、同じ党の支持者の票を候補者が奪いあうことになり、不正や買収行為が横行する汚い選挙になりがちでした。
     それを解消するために一つの選挙区で1人が当選する小選挙区制に時間をかけて制度改革をしたわけですね。そして、政党に投票する比例代表制は衆議院の場合、拘束名簿式(政党であらかじめ当選する順番を決めた名簿を作成)で、得票数に応じて名簿の上位から当選するという仕組みです。小選挙区での選挙活動は難しいが、政党にとって議員になってほしい人を名簿に載せるのが本来の姿でしょうが、現実には小選挙区で立候補している人も名簿に載せることができることができます。これが並立制ということなのでしょうか。
     またブロック単位の比例代表制では投票したい候補者と政党が別の場合、ブロックにその政党がない場合は1票が棄権と同じことになります。つまり小選挙区の候補者に1票、比例代表では別の党に1票と2票投票したいのに1票は投票する相手がいないことになります。
     この制度は、小党の乱立や売名行為の候補者を防ぐには有効だと思いますが、やっぱり並立というのが釈然としません。 比例代表制を全国1区にして重複立候補を禁止してはどうでしょうか。選挙区ではその地域の代表を選び、比例代表では政党の政策や理念で投票する。これが1人2票制のあるべき姿だと思います。
     289人が選挙区で選ばれ、176人が比例代表で選ばれる今回の衆議院選挙。裏金問題で公認されなかった議員や重複名簿に載らなかった候補者にとって、今までとまったく勝手の違う選挙です。我が新5区では1人が重複立候補、1人が選挙区のみの立候補です。さて結果はいかに?

    2024年10月26日号

  • 「Small is Beautiful」がある

    隠岐の島々を訪れて

    清水 裕理 (経済地理学博士)


     早いもので今年も残すところ2ヵ月半となり、夏の暑さがやっと和らいできたところ、島根県の隠岐の島々に行ってきました。
     新潟県の佐渡と同じように、奈良時代ごろから、天皇や公家の方々などが遠流された歴史を有します。この地がそのような地に選ばれたのは、都から遠く離れているだけでなく、貴人が食べ物に苦労したり生活に危険が生じたりしないところとして選ばれたという話があります。江戸時代には、北前船の寄港地としても栄えました。
     最近は、隠岐の島にIターンやUターンをする人々が増え、子供の数が増えていることが注目されます。5年位前は小学校の1学年に1〜2名しかいなかったのが、最近は5名を超えるようになってきているとのことでした。
     ここに住むと、ここで結婚をすると、ここで子供を授かると、それぞれの段階で自治体は支援金を準備し、そのような思い切った施策を行なってきたことも功を奏しているのでしょう。
     地域おこし協力隊として島にやってきた若者が、地域に溶け込み頼りにされている姿も至るところで見られました。
     釣り好きと島好きが島で出会って結婚し、夫婦で農業漁業や観光業の仕事をしながらの子育て中。年会費のアマゾンプライムに入っているので、おむつも送料無料で2日後に届き便利です、と話してくれました。
     さらに最近の島の話題は、フランス料理のレストラン、おしゃれな美容院、こだわりのパン屋さんが、新たにできたことです。
     飲食店や美容の業種は、今までも島にある仕事ですが、最近は、本土で一流の腕をふるっていた人たちが島にやってきて移住し、自分たちの小さなお店を持ち、提供するサービスのわりに良心的な価格で、島の住民と観光客から人気とのことでした。
     この話を聞いて、これらの方々に共通して「Small is Beautiful 」とよばれるような美学がおありになるのかなと、ふと感じてしまいました。
     「Small is Beautiful」は、欧州の経済学者が1973年に記した著書の日本語タイトルとして有名になった言葉です。
     大分県湯布院で温泉宿を営まれ、観光カリスマでいらした中谷健太郎氏は、町のあり様について、
    小さいから、身近に暖かい関係が生まれる。小さいから、個性的な価値を生み出せる。 小さいから、大きな資本を必要としない。と語られていたと、かつての勤務先の先輩から聞いたことを思い出し、島を後にしました。

    2024年10月19日号

  • カメムシ対策、農学部教授の教え

    ベンガラの効能

    長谷川 好文 (秋山郷山房もっきりや)

     秋山郷に来て30年近くが過ぎた。春と秋の二度ここでカメムシにいじめられ続けていた。伊勢湾台風後に、防風用に植えられ大きく成長した杉に囲まれた一軒家に昨年まで暮らし、中津川対岸の百㍍ほど先に昔からの旅館「仁成館」があるばかりで、川をはさんで共にカメムシには苦しめられていた。
     中津川右岸の宿は季節ごとの登山客、釣り客、湯治客で雪のない時期は忙しくしていた。私のところはひとり暮らしの古い家で、木端葺きの上にトタンを張った屋根で、秋口になると風のない穏やかな日、カメムシが湧き出すように飛んでくるのだ。ヤマトクサギカメムシと呼ばれていた。この虫が廊下一面にへばりつき触ろうものならとにかく臭く、皮膚に触れると痛く肝を冷やしたものである。
     そのうち「しょうがない」と観念すると、何となくどうにかなってしまうものなのか、その臭いにも慣れてしまったようで、まっ諦めたのだろう。この辺りの人と同じように掴まえた虫をストーブに放り込んだり、自家製のペットボトルに灯油を少し入れて投げこんだりしていた。虫が動く秋や春にはそれぞれ5、6㌔ほどの虫を取ったものである。
     近頃になって旧仁成館も住む人がいなくなると、どうにも中津川左岸の一軒家でのひとり暮らしが面倒になり、対岸の集落で家を探し、見つけて改修工事をし移転をしたのが昨年のことで、そこも同じように虫の多いところだと聞いていた。
    工事が終わって外壁のペンキを選んだのだが、目立たない小さな家でもあり、派手だったがベンガラの塗料を塗ることにした。家は小さな赤い家となって、それなりの存在感を嬉しく感じた。
     昨年の今頃だが、隣の人がやって来て「ここには虫がいないな! みんなワシのところに来てしまったようだ」と笑っていた。そう言われて、はて! と考えると、確かにここではカメムシを見ないと感じた。人とは勝手なもので、ここで虫に気がつかないことに気がついた。見ぬもの清である。外壁に塗布したベンガラの塗料を虫が嫌ったように思えた。
     さて、そうなると今年の秋に飛んでくる虫を強く意識することになる。そこで昨年のベンガラ塗料を取り寄せて考えるのだが、塗れば来ないと言うほど単純ではないだろと、科学する頭がない私にはその先が解らなかった。友人の農学部で教鞭をとる先生に訊くと「ベンガラは酸化鉄で、つまり鉄さびで木材を丈夫にし乾燥すると害虫やカビなどを防ぐ」と言う。塗布した表面が㏗12ほどのアルカリ性となるので酸性域を好む虫は寄り付きにくくなるとも言う。虫が酸性域を好むのかは分からないが、加えるに伝統技術的の柿渋と混ぜて使うとより効果的だろうとも御教授頂けた。
     それならハッカ油なども良いのだろうと検証をしてみることにした。大きめのタッパーに仕切りを立て、塗料を塗布した板と白木の板を別々に置くのだ。飛びくる虫を素手で捕まえては放り込んでおよそ50匹ほども入れて観察してみると、当日から虫は白木の方に集まってベンガラ色の板には数匹の虫を見るだけになった。
     まだまだ観察は続けるが確かにカメムシに対しては効果があるように思えた。昨年塗った外壁が今年も効果が続くのかと気を揉むのだが、な〜に虫が寄って来れば、またベンガラを塗るだけだ!こうなればひとつ、昔年の恨みを晴らしてみようと思った。
     ただ、その矢先2回目の脳梗塞の患者となった私がいた!

    2024年10月12日号

  • 「どうしてここに?」、崩壊地の直下

    清津峡 スリット堰堤計画

    藤ノ木信子 (清津川に清流を取り戻す会)

     前回の続き…湯沢砂防事務所の清津川治水事業は、私には「はて?」と引っかかる点が多くて困っている。ホームページには「清津峡渓流保全工の推進」として上がっているが、H26年の現地調査から10年過ぎても現地は何も変わっていない。つくば市の日本工営には流域住民が頼んだ訳ではないのに巨大な模型を作って実験し、住民に見学させてくれる。どうしてこんなに時間や手前をかけているのかな?  サクサク造ってしまうと大人の都合上うまくないのだろうか?同じ砂防事務所の他の現場のスピード感と違いが明らかなので、「そう(・・)いう(・・)案件」と私は思っている。この事業が完成するまでには更に5年はかかるとのこと。(その間ずっと住民の安全は現状のままだけど…)
     それにスリット堰堤を造る場所も「どうしてここ?」と引っかかる。計画されている堰堤の位置は、小出・葎沢集落の上流の清津峡との間で、右岸は地元ではのげま(抜けるところと言う意味)と呼ばれている崩壊地の直下だ。この辺りは太古の昔マグマが冷えて固まった岩塊(清津峡側)とグリーンタフという海底火山の火山灰の堆積層(下流側)との境目で地質が不安定なのに…で更に左岸は公園トンネルを掘った土を積み上げたズリなのだ。堰堤を造ることで水位が上って、もろい山脚がやっかいなことになるんじゃないか? 素人の私でも心配になってしまう。土木の専門家はどう考えているか説明してほしい。
     でも私が特大の? マ
    ークをつけた疑問点は、「スリット堰堤と集落付近の護岸工事をセットにしないと治水効果がない」という説だ。実はこの堰堤のスリットの幅は4mもある。両端にコンクリートの壁があって真ん中は水も土砂も流木も流れる。はて? これ造る意味あるの? 同じことを河川工学の先生は言われていて、砂防ダムに頼らず護岸工事を主体にしたいと。どこかにこのセットでの治水方法の先駆的な例があったら見に行きたい。
     写真は大正時代の清津峡入り口付近。竿を使って飛び移っていた大きな岩は今ではとても小さくなっている。欠けたり砂利で埋まったからだ。うちの裏も以前は深い淵だったが今は随分浅くなっている。小出集落付近はどこも河床が上がっている。川の在り様はいつも同じでなく変化する。無限に運ばれてくる大量の砂利は速やかに下流に流したい。だから川を横断する構造物はできるだけ造らないでほしい。次回は他の治水手段はないの? の考察をしてみよう。

    2024年10月5日号

  • 大事なことは自分たちで決める

    再び、原発再稼働を問う

    斎木 文夫 (年金生活者)

     いつも好きなことを書いているように思われているらしいが、こちらはこちらで苦労がある。
     まず、これでも遠慮しながら書いている。2つ目には、原稿を書いてから発行日までのタイムラグによって的外れなものになることがある。3つ目に、「オピニオン」全体のバランスを見、私の個性が出ていて、読者から喜んで読んでいただけるものを書きたい。原発問題を3回続けて書いたくせに。4つ目に、年取って原稿を書くのに時間がかかる。まだまだあるが、本題である。
     私は「十日町・津南地域自治研究所」という小さな会の代表になっている。自治研で6月に「エネルギー問題連続講座」を開き、本紙でも大きく取り上げていただいた。
    講演後、一人の参加者から「学習会でなく運動を始める段階だ」と発破をかけられ、私は7月6日本欄で振り返り記事を書き、「柏崎刈羽原発再稼働は県民投票で」とタイトルを付けた。
     それがいよいよ実現する。11月から「柏崎刈羽原発再稼働の是非を県民投票で決める会」が各市町村で一斉に県民投票条例の制定を求める署名活動に入るのだ。十日町市・津南町でも態勢が整いつつある。
     昨年末に規制委が運転禁止命令を解除してから、国、東電による再稼働準備は急ピッチで進みつつある。柏崎・刈羽の再稼働同意はほぼ間違いない。残るは県の同意だけ。
     花角知事は「県民の信を問う」と繰り返すばかりで、その手法は明らかにしていない。県知事が迷っておられるのなら、県民投票をお勧めしたい。
     この4月、福島第一原発事故の現地を見てきた。大勢の人が故郷に戻れず、強制避難区域9町村の産業は立ち直れない。770㌧のデブリのほんの数グラムの取り出しでもたついているようでは廃炉の見通しは暗い。
    この重大事故を見れば、県知事一人の判断、専門家の答申、議会の意見など、空しいばかりだ。
     地方自治とは、自分たちのことは、自分たちで決めること。それには、県民投票しかない。県議会で県民投票条例を作らせるためには、圧倒的な数の署名が必要になる。どうかご協力を。
     また、自治研では11月4日に全国農民運動連合会会長の長谷川敏郎氏を招いて農業講演会を開催する。この地域では農業が主産業で、農業の発展なくして地域の未来はない。全国農民連会長とともにこの地の農業について考えよう。
     別途、ご案内します。

    2024年9月28日号

  • 「昔人間」の嘆きですが…

    言の葉あれこれ

    松崎 房子 (元ゆずり葉編集委員)

     8月31日号の、長谷川好文さんの原稿を読んで、思わず共感を覚えた。辛うじて『コクル』、『セカチュウー』は想像できたと思った。でもあとは早速PCで検索、フーン? そうなんだ!短縮、省略さっぱりわからん。
     言葉はその時代時代に生きている文化だから、時の流れと共に変化するのは当然なのは、頭ではわかっているが…こう何もかも短縮・省略、もう一つアルファベット・カタカナでは伝わらないのでは。いや私のような世代だけか。
     そもそも言葉はコミュニケーション(意思疎通)のツール(手段)では?
    意思の疎通ができているとは言い難い。
     過ぎてきた歴史の中では無かった出来事・無かった文化があふれかえっていて、それを言い表すのに言葉・文字が格段に増え、一字一句、正確に話していては、埒が明かぬのかもしれない。
     不確かだが昔、聖書の中の逸話として『バベルの塔』を聞いたことがある。奢り高ぶった人間は、天に届く塔を作り神々に近づこうとした。それを諫めるために、神々は、塔作りをしている人間の言葉をめちゃめちゃにし、話が通じなくした、ということであった。その結果、世界中の言語が、大いに別れ、各国の言語が出来たという。
     人間は頭脳を駆使し、より便利に、より快適に、労することなく、手軽に・楽に何かを手にしようとする。こんなことを続けていると、どんな報いを受けるのだろう。昨今の異常気象も、その一つではないのか。
     バベルの塔同様、天の諫めに思えて仕方がない。現代とは格段に、時の流れが緩やかだった昔が好きだなと思う。
     今年の大河ドラマの平安時代とまではいわないが、明治大正の時代は、人々の行いが穏やかに思える。
     乱暴な言葉を使えば、自ずと行動・暮らし方が乱暴になる。戦中戦後のすさんだ時代は、言葉も荒んでいた。言葉の使い方で、暮らしぶりも、品性も変わる。
     つい先日〈サクッと〉〈もふもふ〉〈まったり〉を使う人が多くなってきたと紙上にあった。世界がどんどん広がるのだから、表現も広がるということか?時の流れに乗れるとは到底思えない。
     唱歌〈椰子の実〉がこよなく好きだ。同じ情感を覚えるのは〈演歌〉の歌詞が胸を打つ。流行語は使えなくても、美しい日本語を大切に、心豊かに暮らしたいと思う。
     昔人間の時間は、ゆっくり流れているものね。

    2024年9月21日号

  • インターバル速足のすすめ

    健康寿命とは

    村山 朗 (会社員)

     日本人男性の平均寿命は81・41歳、健康寿命は72・68歳だそうです。後期高齢者間近の筆者にとっては毎日の健康が関心事ですし、やはり気になるのは健康寿命です。厚生労働省の定義では、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」とのこと。今のところ健康診断でいくつかイエローカードを出されてはいますが、日常生活が制限されることなく生活できています。 
     健康寿命を延ばすには、「①バランスの良い食事を意識する②運動習慣を持つ③検診で生活習慣病の早期発見・重症化予防に努める④喫煙をやめる⑤適正な体重を保つ⑥ストレスの少ない生活を目指す⑦社会的なつながりを構築する」だそうです。
     筆者はタバコを吸わないのでその点だけは問題ないですが、どれもこれも簡単にできそうにもなく、それだけでストレスです。特に難しいのが、運動習慣を持つこと。簡単そうに見えるウォーキングは、1日1万歩やらないと効果はないとこれまで言われており、そう思うだけで一歩が踏み出せません。ジムはお金がかかるし。
     そんな中で出会ったのが「ウォーキングの科学」という本です。信州大学元教授の著者・能勢博氏は前書きで「ウォーキングは健康に良い、ということは誰でも知っているが、どれぐらいの速度で、どれぐらいの頻度で、どれくらいの時間行えば、どんな効果が得られるのか、という疑問について明確に答えられる方は少ない」と述べています。詳しくは本書に譲るとして、「普通」に歩く1万歩はほとんど効果が得られない、という衝撃の事実も証拠に基づいて語られています。
     「インターバル速歩」とはごく大雑把に言うと3分間速足で歩き、そのあとゆっくりと3分間歩く、これを繰り返すこと。1日30分でいいのです。毎日でなくても構いません。著書の研究によれば「インターバル速歩」を行えば短時間で、体の負担も少なく、さほどお金もかけずに筋力の向上(体力の向上)が可能だそうです。
     著者は松本市と提携して「インターバル速歩」を実施群と非実施群に分け、1年以上の実証実験を行い、「インターバル速歩」が生活習慣病の防止に役立つことを証明しています。
     秋田県の由利本荘市では平成27年から「歩いてのばそう!! 健康寿命」を合言葉に「インターバル速歩」を導入し、その実施状況は由利本荘市のホームページで詳しく紹介されています。何でも三日坊主になりがちな筆者ですが、続けられるような気がします。

    2024年9月14日号

  • スリット堰堤より住居移転で集落活性化

    清津峡の護岸整備を考える

    藤ノ木信子 (清津川に清流を取り戻す会)

     原点に戻って考えよう。湯沢砂防事務所はスリット堰堤と集落付近の護岸整備をセットにする案だけを住民に提示している。で、やるのかやらないのかと問われれば、住民はイエスしか選択できない。
     本来は複数の案があってメリットデメリットを比較し、住民が考えて決めるのが河川自治だ。
     堰堤を造るとスリットがあると言っても、下流は河床が下がり、上流は流れが滞留し砂利が溜まり河床が上がる。一つの集落を二分するような案しか方法はないのだろうか?
     多くの山間地での共通問題だが、清津峡地区も高齢化が進んで世帯数が減り、もうすぐ地図上から消えるかも? と思うほど過疎化が進んでいる。
     私はこの治水の課題は集落存続のチャンスなのでは? と思っている。どうして? と聞かれるだろう。…ここからは単なる私の妄想だと読んでほしい。
     仮に湯沢砂防の計画通りスリット堰堤と護岸工事ができても、大きな台風が近づくとやっぱり川沿いの住人は心配で自主避難するだろう。安全度は上がっても災害は想定を超えてくる。川沿いの家は10軒くらいだ。もしできるなら川沿いの住民が地域内の少し川から離れた道上へ移るというのはダメだろうか?
     山の中でよく見る小さな砂防堰堤の費用は一基4~5億円と言われている。清津川本流に計画されているスリット堰堤はその何倍もある。土地確保と住宅建設や引っ越しその他の費用を10軒分見積もっても、堰堤を造るよりずっと安い。
     住民も十分な補償があれば、築50年超えの大きな家より、こぢんまりした耐雪、省エネ、バリアフリーの家のほうが暮らしやすいのではないだろうか? 高齢者世帯が後に家を手放す時が来ても、雪始末の楽な家は買い手が見つかり易く集落に新しいメンバーが加わる可能性もできる。古く大きな家は取り壊しにも費用がかかり空き家問題の原因になる。
     川沿いの土地は大切な生命財産を置かなければいいだけだから、護岸工事をして農地に転用してもいいし公園にしてもいい。漁協に協力頂いて釣り堀でもいいし、ウドやタラの木を植えて山菜農園にしてもいい。きれいな蓮の花を植えても、アヒルが泳いでいてもいい。
     村の形は変わるけど、年間何十万人も集客する清津峡の入り口だから、考えようで集落活性化になるのでは? 最もいいことは、堰堤を造るより移転のほうが早くできることだ。
     この国では近い将来、通貨危機や南海トラフや戦争といった大きな惨事が起こる可能性は否定できず、そうなったら国は地方の小さな清津川の治水などできなくなる…だから何年もかかる治水事業より早く確実な移転がいい。
     先祖代々住み続けた家、地域の内情、高齢化…代えがたいものがあるのはわかるけど…非力な私には提案しかできない。地域の人が自分で決めることだと思う。

    2024年11月16日号

  • 柏崎刈羽原発の再稼働は県民投票で

    県民投票署名が始まる

    齋木 文夫 (年金生活者)


     10月27日の衆院選では、自民・公明が大幅に議席を減らし、立憲、国民が躍進しました。気がかりなのは、「護憲、反戦・反核・反原発」を掲げる勢力が伸びなかったこと。本来、これらも大きな争点になるべきだったのに、「裏金」と「経済」に絞られてしまったのは、マスコミの責任でもあります。
     これを書いている11月6日夜、米国大統領選は、トランプ氏の当選が確実となったようです。どちらが勝っても、米国はガザで虐殺を続けるイスラエルへの支援を継続するでしょう。私が米国大統領選に興味を持てない理由はこれです。
     さて、新潟県内では柏崎刈羽原発再稼働の是非を県民投票で決めるため、条例制定を求める署名活動が始まりました。
    世界最大級の柏崎刈羽原発は、1~7号機とも運転停止中です。東京電力は2013年に6・7号機の再稼働の審査を原子力規制委員会に申請し、2023年12月にようやく再稼働準備ができるようになりました。
     再稼働にあたっては、規制委員会の審査のほか、柏崎市、刈羽村、新潟県の同意が必要です。柏崎市と刈羽村は、議会、首長とも再稼働に同意する意向のようです。
     一方、新潟県では、花角知事は18年に、柏崎刈羽原発の再稼働について「自ら判断し、県民に信を問う」と公約に掲げて当選しました。しかし、「信を問う」具体的な方法や時期は明確にしないまま今日に至っています。
     柏崎刈羽原発の再稼働は、県民のいのちや暮らしに関わる大きな問題です。県知事や県議会に任せるのでなく、県民の一人ひとりが、県政の主人公として意思表示するべきではないでしょうか。
     私たちは、地方自治法に基づき、「柏崎刈羽原発の再稼働の是非を問う県民投票条例」の制定を請求することにしました。請求のためには、新潟県民有権者の50分の1以上の署名が必要です。「条例を制定してください」という署名で、原発反対署名ではありません。
     ①県民のすべてが柏崎刈羽原発の再稼働の問題に向き合い、賛成・反対の立場を超えて話し合うこと、②柏崎刈羽原発の再稼働の是非を県民投票で問い、投票の結果を県の方針に反映させることが、新潟の民主主義を育て、未来をひらくことにつながると確信しています。どうか署名をお願いします。
     署名と署名集めをしてくださる方は、齋木までご連絡ください。電話090‒4946‒7570。

    2024年11月9日号

  • 敗戦体験79年、行動し続けることを我が身に

    日本被団協にノーベル平和賞

    松崎 房子 (元ゆずり葉編集委員)

     今年のノーベル平和賞を、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)が受賞することに決まった。驚愕し、それからだんだんに高揚した。
     10年ぐらい前、我が国の憲法九条をノーベル平和賞に推薦しよう、というムーブメントがあった。
     その発想に大いに共感し、実現すればいいなと願った。自衛隊を軍隊と明記したい政府の改憲を、何としても阻止しなければと強く願い、九条の会にも参加した。焦りを覚えたが進展しないまま低迷した。
     被爆後11年。語り始めた被爆者と被団協として結成以来68年。その間のニュース映像を見ると、国連本部で『ノーモア広島、ノーモア長崎、ノーモア被爆者』と演説した山口仙二さん。背中に追った火傷の写真を掲げながら、活動し続けた谷口稜曄(すみてる)さん。米大統領として初めて広島を訪れたオバマ大統領と握手した坪井直(すなお)さん。長い年月の間に何度も目にした方々のお顔が見に浮かぶ。 
     そして今年の受賞速報の場面で、高校生の平和大使たちと歓喜する箕牧智之(みまきとしゆき)さん、ニューヨークを、横断幕を掲げて、アピール行進する姿も記憶に新しい。
     永年の辛抱強い行動、具体的で目に見えるアピール行動が認められた。心からの敬意を奉げたい。 
     そうした一方で、授与を決定した委員会の委員長の年齢に感動した。若い世代もある意味、危機感を感じているのだろう。いやむしろ若い世代のほうが、危機感が強いかも。
     受賞の知らせを受けた場面でも高校生平和大使たちが同席していた。
     見るに見かねて行動に移し、長い年月、たゆまず、ひるまず、若い世代へも伝え・バトンを繋いで行動し続ける被団協の皆さんに頭が下がる。
     それを認めて、世界が注目するノーベル平和賞を授与してくれる世界の目がある事にも感動した。
     自分だけではだめだと九条の会に参加してはいるが、戦争は、だめだ、ダメだと叫んでいるだけでは、世界にはもちろん、日本政府にさえ届かない。
     敗戦を体験して79年、あきらめずに行動することを我が身に言い聞かせた。
     国として、核兵器使用廃絶の条約への批准を。世界が注目をしていますぞ‼

    2024年11月2日号

  • 比例代表は全国1区、重複禁止を

    改めて選挙制度を考える

    村山 朗 (会社員)

     衆院選も大詰めを迎えています。筆者は、毎回投票所に足を運んできましたが、重複立候補できるこの小選挙区比例代表並立制にすっきりしない感覚を持っておりました。今回自民党の裏金問題で、わが選挙区の一候補が重複立候補できなくなったということですが、重複立候補ということは一回の選挙に同じ人が、選挙区と政党の比例代表の両方に立候補できるということですよね。はて? これって、正しいやり方でしょうか。
     今更こんなことを持ち出すのは、ボケ老人もいいとこですが、今回の衆院選挙で重複云々が大きな話題になっているので改めて確認してみました。
     かつて中選挙区制(一つの選挙区で2人以上当選する制度)の下で、同じ選挙区で同じ政党から複数立候補すると、同じ党の支持者の票を候補者が奪いあうことになり、不正や買収行為が横行する汚い選挙になりがちでした。
     それを解消するために一つの選挙区で1人が当選する小選挙区制に時間をかけて制度改革をしたわけですね。そして、政党に投票する比例代表制は衆議院の場合、拘束名簿式(政党であらかじめ当選する順番を決めた名簿を作成)で、得票数に応じて名簿の上位から当選するという仕組みです。小選挙区での選挙活動は難しいが、政党にとって議員になってほしい人を名簿に載せるのが本来の姿でしょうが、現実には小選挙区で立候補している人も名簿に載せることができることができます。これが並立制ということなのでしょうか。
     またブロック単位の比例代表制では投票したい候補者と政党が別の場合、ブロックにその政党がない場合は1票が棄権と同じことになります。つまり小選挙区の候補者に1票、比例代表では別の党に1票と2票投票したいのに1票は投票する相手がいないことになります。
     この制度は、小党の乱立や売名行為の候補者を防ぐには有効だと思いますが、やっぱり並立というのが釈然としません。 比例代表制を全国1区にして重複立候補を禁止してはどうでしょうか。選挙区ではその地域の代表を選び、比例代表では政党の政策や理念で投票する。これが1人2票制のあるべき姿だと思います。
     289人が選挙区で選ばれ、176人が比例代表で選ばれる今回の衆議院選挙。裏金問題で公認されなかった議員や重複名簿に載らなかった候補者にとって、今までとまったく勝手の違う選挙です。我が新5区では1人が重複立候補、1人が選挙区のみの立候補です。さて結果はいかに?

    2024年10月26日号

  • 「Small is Beautiful」がある

    隠岐の島々を訪れて

    清水 裕理 (経済地理学博士)


     早いもので今年も残すところ2ヵ月半となり、夏の暑さがやっと和らいできたところ、島根県の隠岐の島々に行ってきました。
     新潟県の佐渡と同じように、奈良時代ごろから、天皇や公家の方々などが遠流された歴史を有します。この地がそのような地に選ばれたのは、都から遠く離れているだけでなく、貴人が食べ物に苦労したり生活に危険が生じたりしないところとして選ばれたという話があります。江戸時代には、北前船の寄港地としても栄えました。
     最近は、隠岐の島にIターンやUターンをする人々が増え、子供の数が増えていることが注目されます。5年位前は小学校の1学年に1〜2名しかいなかったのが、最近は5名を超えるようになってきているとのことでした。
     ここに住むと、ここで結婚をすると、ここで子供を授かると、それぞれの段階で自治体は支援金を準備し、そのような思い切った施策を行なってきたことも功を奏しているのでしょう。
     地域おこし協力隊として島にやってきた若者が、地域に溶け込み頼りにされている姿も至るところで見られました。
     釣り好きと島好きが島で出会って結婚し、夫婦で農業漁業や観光業の仕事をしながらの子育て中。年会費のアマゾンプライムに入っているので、おむつも送料無料で2日後に届き便利です、と話してくれました。
     さらに最近の島の話題は、フランス料理のレストラン、おしゃれな美容院、こだわりのパン屋さんが、新たにできたことです。
     飲食店や美容の業種は、今までも島にある仕事ですが、最近は、本土で一流の腕をふるっていた人たちが島にやってきて移住し、自分たちの小さなお店を持ち、提供するサービスのわりに良心的な価格で、島の住民と観光客から人気とのことでした。
     この話を聞いて、これらの方々に共通して「Small is Beautiful 」とよばれるような美学がおありになるのかなと、ふと感じてしまいました。
     「Small is Beautiful」は、欧州の経済学者が1973年に記した著書の日本語タイトルとして有名になった言葉です。
     大分県湯布院で温泉宿を営まれ、観光カリスマでいらした中谷健太郎氏は、町のあり様について、
    小さいから、身近に暖かい関係が生まれる。小さいから、個性的な価値を生み出せる。 小さいから、大きな資本を必要としない。と語られていたと、かつての勤務先の先輩から聞いたことを思い出し、島を後にしました。

    2024年10月19日号

  • カメムシ対策、農学部教授の教え

    ベンガラの効能

    長谷川 好文 (秋山郷山房もっきりや)

     秋山郷に来て30年近くが過ぎた。春と秋の二度ここでカメムシにいじめられ続けていた。伊勢湾台風後に、防風用に植えられ大きく成長した杉に囲まれた一軒家に昨年まで暮らし、中津川対岸の百㍍ほど先に昔からの旅館「仁成館」があるばかりで、川をはさんで共にカメムシには苦しめられていた。
     中津川右岸の宿は季節ごとの登山客、釣り客、湯治客で雪のない時期は忙しくしていた。私のところはひとり暮らしの古い家で、木端葺きの上にトタンを張った屋根で、秋口になると風のない穏やかな日、カメムシが湧き出すように飛んでくるのだ。ヤマトクサギカメムシと呼ばれていた。この虫が廊下一面にへばりつき触ろうものならとにかく臭く、皮膚に触れると痛く肝を冷やしたものである。
     そのうち「しょうがない」と観念すると、何となくどうにかなってしまうものなのか、その臭いにも慣れてしまったようで、まっ諦めたのだろう。この辺りの人と同じように掴まえた虫をストーブに放り込んだり、自家製のペットボトルに灯油を少し入れて投げこんだりしていた。虫が動く秋や春にはそれぞれ5、6㌔ほどの虫を取ったものである。
     近頃になって旧仁成館も住む人がいなくなると、どうにも中津川左岸の一軒家でのひとり暮らしが面倒になり、対岸の集落で家を探し、見つけて改修工事をし移転をしたのが昨年のことで、そこも同じように虫の多いところだと聞いていた。
    工事が終わって外壁のペンキを選んだのだが、目立たない小さな家でもあり、派手だったがベンガラの塗料を塗ることにした。家は小さな赤い家となって、それなりの存在感を嬉しく感じた。
     昨年の今頃だが、隣の人がやって来て「ここには虫がいないな! みんなワシのところに来てしまったようだ」と笑っていた。そう言われて、はて! と考えると、確かにここではカメムシを見ないと感じた。人とは勝手なもので、ここで虫に気がつかないことに気がついた。見ぬもの清である。外壁に塗布したベンガラの塗料を虫が嫌ったように思えた。
     さて、そうなると今年の秋に飛んでくる虫を強く意識することになる。そこで昨年のベンガラ塗料を取り寄せて考えるのだが、塗れば来ないと言うほど単純ではないだろと、科学する頭がない私にはその先が解らなかった。友人の農学部で教鞭をとる先生に訊くと「ベンガラは酸化鉄で、つまり鉄さびで木材を丈夫にし乾燥すると害虫やカビなどを防ぐ」と言う。塗布した表面が㏗12ほどのアルカリ性となるので酸性域を好む虫は寄り付きにくくなるとも言う。虫が酸性域を好むのかは分からないが、加えるに伝統技術的の柿渋と混ぜて使うとより効果的だろうとも御教授頂けた。
     それならハッカ油なども良いのだろうと検証をしてみることにした。大きめのタッパーに仕切りを立て、塗料を塗布した板と白木の板を別々に置くのだ。飛びくる虫を素手で捕まえては放り込んでおよそ50匹ほども入れて観察してみると、当日から虫は白木の方に集まってベンガラ色の板には数匹の虫を見るだけになった。
     まだまだ観察は続けるが確かにカメムシに対しては効果があるように思えた。昨年塗った外壁が今年も効果が続くのかと気を揉むのだが、な〜に虫が寄って来れば、またベンガラを塗るだけだ!こうなればひとつ、昔年の恨みを晴らしてみようと思った。
     ただ、その矢先2回目の脳梗塞の患者となった私がいた!

    2024年10月12日号

  • 「どうしてここに?」、崩壊地の直下

    清津峡 スリット堰堤計画

    藤ノ木信子 (清津川に清流を取り戻す会)

     前回の続き…湯沢砂防事務所の清津川治水事業は、私には「はて?」と引っかかる点が多くて困っている。ホームページには「清津峡渓流保全工の推進」として上がっているが、H26年の現地調査から10年過ぎても現地は何も変わっていない。つくば市の日本工営には流域住民が頼んだ訳ではないのに巨大な模型を作って実験し、住民に見学させてくれる。どうしてこんなに時間や手前をかけているのかな?  サクサク造ってしまうと大人の都合上うまくないのだろうか?同じ砂防事務所の他の現場のスピード感と違いが明らかなので、「そう(・・)いう(・・)案件」と私は思っている。この事業が完成するまでには更に5年はかかるとのこと。(その間ずっと住民の安全は現状のままだけど…)
     それにスリット堰堤を造る場所も「どうしてここ?」と引っかかる。計画されている堰堤の位置は、小出・葎沢集落の上流の清津峡との間で、右岸は地元ではのげま(抜けるところと言う意味)と呼ばれている崩壊地の直下だ。この辺りは太古の昔マグマが冷えて固まった岩塊(清津峡側)とグリーンタフという海底火山の火山灰の堆積層(下流側)との境目で地質が不安定なのに…で更に左岸は公園トンネルを掘った土を積み上げたズリなのだ。堰堤を造ることで水位が上って、もろい山脚がやっかいなことになるんじゃないか? 素人の私でも心配になってしまう。土木の専門家はどう考えているか説明してほしい。
     でも私が特大の? マ
    ークをつけた疑問点は、「スリット堰堤と集落付近の護岸工事をセットにしないと治水効果がない」という説だ。実はこの堰堤のスリットの幅は4mもある。両端にコンクリートの壁があって真ん中は水も土砂も流木も流れる。はて? これ造る意味あるの? 同じことを河川工学の先生は言われていて、砂防ダムに頼らず護岸工事を主体にしたいと。どこかにこのセットでの治水方法の先駆的な例があったら見に行きたい。
     写真は大正時代の清津峡入り口付近。竿を使って飛び移っていた大きな岩は今ではとても小さくなっている。欠けたり砂利で埋まったからだ。うちの裏も以前は深い淵だったが今は随分浅くなっている。小出集落付近はどこも河床が上がっている。川の在り様はいつも同じでなく変化する。無限に運ばれてくる大量の砂利は速やかに下流に流したい。だから川を横断する構造物はできるだけ造らないでほしい。次回は他の治水手段はないの? の考察をしてみよう。

    2024年10月5日号

  • 大事なことは自分たちで決める

    再び、原発再稼働を問う

    斎木 文夫 (年金生活者)

     いつも好きなことを書いているように思われているらしいが、こちらはこちらで苦労がある。
     まず、これでも遠慮しながら書いている。2つ目には、原稿を書いてから発行日までのタイムラグによって的外れなものになることがある。3つ目に、「オピニオン」全体のバランスを見、私の個性が出ていて、読者から喜んで読んでいただけるものを書きたい。原発問題を3回続けて書いたくせに。4つ目に、年取って原稿を書くのに時間がかかる。まだまだあるが、本題である。
     私は「十日町・津南地域自治研究所」という小さな会の代表になっている。自治研で6月に「エネルギー問題連続講座」を開き、本紙でも大きく取り上げていただいた。
    講演後、一人の参加者から「学習会でなく運動を始める段階だ」と発破をかけられ、私は7月6日本欄で振り返り記事を書き、「柏崎刈羽原発再稼働は県民投票で」とタイトルを付けた。
     それがいよいよ実現する。11月から「柏崎刈羽原発再稼働の是非を県民投票で決める会」が各市町村で一斉に県民投票条例の制定を求める署名活動に入るのだ。十日町市・津南町でも態勢が整いつつある。
     昨年末に規制委が運転禁止命令を解除してから、国、東電による再稼働準備は急ピッチで進みつつある。柏崎・刈羽の再稼働同意はほぼ間違いない。残るは県の同意だけ。
     花角知事は「県民の信を問う」と繰り返すばかりで、その手法は明らかにしていない。県知事が迷っておられるのなら、県民投票をお勧めしたい。
     この4月、福島第一原発事故の現地を見てきた。大勢の人が故郷に戻れず、強制避難区域9町村の産業は立ち直れない。770㌧のデブリのほんの数グラムの取り出しでもたついているようでは廃炉の見通しは暗い。
    この重大事故を見れば、県知事一人の判断、専門家の答申、議会の意見など、空しいばかりだ。
     地方自治とは、自分たちのことは、自分たちで決めること。それには、県民投票しかない。県議会で県民投票条例を作らせるためには、圧倒的な数の署名が必要になる。どうかご協力を。
     また、自治研では11月4日に全国農民運動連合会会長の長谷川敏郎氏を招いて農業講演会を開催する。この地域では農業が主産業で、農業の発展なくして地域の未来はない。全国農民連会長とともにこの地の農業について考えよう。
     別途、ご案内します。

    2024年9月28日号

  • 「昔人間」の嘆きですが…

    言の葉あれこれ

    松崎 房子 (元ゆずり葉編集委員)

     8月31日号の、長谷川好文さんの原稿を読んで、思わず共感を覚えた。辛うじて『コクル』、『セカチュウー』は想像できたと思った。でもあとは早速PCで検索、フーン? そうなんだ!短縮、省略さっぱりわからん。
     言葉はその時代時代に生きている文化だから、時の流れと共に変化するのは当然なのは、頭ではわかっているが…こう何もかも短縮・省略、もう一つアルファベット・カタカナでは伝わらないのでは。いや私のような世代だけか。
     そもそも言葉はコミュニケーション(意思疎通)のツール(手段)では?
    意思の疎通ができているとは言い難い。
     過ぎてきた歴史の中では無かった出来事・無かった文化があふれかえっていて、それを言い表すのに言葉・文字が格段に増え、一字一句、正確に話していては、埒が明かぬのかもしれない。
     不確かだが昔、聖書の中の逸話として『バベルの塔』を聞いたことがある。奢り高ぶった人間は、天に届く塔を作り神々に近づこうとした。それを諫めるために、神々は、塔作りをしている人間の言葉をめちゃめちゃにし、話が通じなくした、ということであった。その結果、世界中の言語が、大いに別れ、各国の言語が出来たという。
     人間は頭脳を駆使し、より便利に、より快適に、労することなく、手軽に・楽に何かを手にしようとする。こんなことを続けていると、どんな報いを受けるのだろう。昨今の異常気象も、その一つではないのか。
     バベルの塔同様、天の諫めに思えて仕方がない。現代とは格段に、時の流れが緩やかだった昔が好きだなと思う。
     今年の大河ドラマの平安時代とまではいわないが、明治大正の時代は、人々の行いが穏やかに思える。
     乱暴な言葉を使えば、自ずと行動・暮らし方が乱暴になる。戦中戦後のすさんだ時代は、言葉も荒んでいた。言葉の使い方で、暮らしぶりも、品性も変わる。
     つい先日〈サクッと〉〈もふもふ〉〈まったり〉を使う人が多くなってきたと紙上にあった。世界がどんどん広がるのだから、表現も広がるということか?時の流れに乗れるとは到底思えない。
     唱歌〈椰子の実〉がこよなく好きだ。同じ情感を覚えるのは〈演歌〉の歌詞が胸を打つ。流行語は使えなくても、美しい日本語を大切に、心豊かに暮らしたいと思う。
     昔人間の時間は、ゆっくり流れているものね。

    2024年9月21日号

  • インターバル速足のすすめ

    健康寿命とは

    村山 朗 (会社員)

     日本人男性の平均寿命は81・41歳、健康寿命は72・68歳だそうです。後期高齢者間近の筆者にとっては毎日の健康が関心事ですし、やはり気になるのは健康寿命です。厚生労働省の定義では、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」とのこと。今のところ健康診断でいくつかイエローカードを出されてはいますが、日常生活が制限されることなく生活できています。 
     健康寿命を延ばすには、「①バランスの良い食事を意識する②運動習慣を持つ③検診で生活習慣病の早期発見・重症化予防に努める④喫煙をやめる⑤適正な体重を保つ⑥ストレスの少ない生活を目指す⑦社会的なつながりを構築する」だそうです。
     筆者はタバコを吸わないのでその点だけは問題ないですが、どれもこれも簡単にできそうにもなく、それだけでストレスです。特に難しいのが、運動習慣を持つこと。簡単そうに見えるウォーキングは、1日1万歩やらないと効果はないとこれまで言われており、そう思うだけで一歩が踏み出せません。ジムはお金がかかるし。
     そんな中で出会ったのが「ウォーキングの科学」という本です。信州大学元教授の著者・能勢博氏は前書きで「ウォーキングは健康に良い、ということは誰でも知っているが、どれぐらいの速度で、どれぐらいの頻度で、どれくらいの時間行えば、どんな効果が得られるのか、という疑問について明確に答えられる方は少ない」と述べています。詳しくは本書に譲るとして、「普通」に歩く1万歩はほとんど効果が得られない、という衝撃の事実も証拠に基づいて語られています。
     「インターバル速歩」とはごく大雑把に言うと3分間速足で歩き、そのあとゆっくりと3分間歩く、これを繰り返すこと。1日30分でいいのです。毎日でなくても構いません。著書の研究によれば「インターバル速歩」を行えば短時間で、体の負担も少なく、さほどお金もかけずに筋力の向上(体力の向上)が可能だそうです。
     著者は松本市と提携して「インターバル速歩」を実施群と非実施群に分け、1年以上の実証実験を行い、「インターバル速歩」が生活習慣病の防止に役立つことを証明しています。
     秋田県の由利本荘市では平成27年から「歩いてのばそう!! 健康寿命」を合言葉に「インターバル速歩」を導入し、その実施状況は由利本荘市のホームページで詳しく紹介されています。何でも三日坊主になりがちな筆者ですが、続けられるような気がします。

    2024年9月14日号