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妻有新聞掲載記事一覧

  • 『サッカーに、農業に、芸術祭に』

    小林舞さん(1990年生まれ)

     真っ青な空に真っ赤な『鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館』が映える。大地の芸術祭の人気拠点の十日町市鉢には、芸術祭開催年ではない年もたくさんの人が訪れる。運営スタッフのひとり。横浜から移り住み5年目の春を迎えた。小林さんにはもう一つの顔がある。「動く大地の芸術祭作品」である女子サッカー『FC越後妻有』
    のゴールキーパーだ。今日11日、松本市でリーグ3戦目を松本山雅レディースと対戦。これまで負けていないが「どのチームもレベルを上げています。アウェイですが、妻有の皆さんの応援を受け、勝ちにいきます」。

     妻有の地に至るプロセスを振り返ると「引き寄せられる」繋がりを感じる。横浜の進学高時代、172㌢余の長身を生かしハンドボールのキーパーで活躍。クラスメイトの多くは「有名難関大学をめざすなか、私は部活に集中でしたから、志望大学には残念ながら…でした」。
     幼少期から小学、中学時代、両親とミュージカルや映画などによく行った。母は中学時代、ミュージカル劇団に所属しており、我が娘も生の舞台の鑑賞に連れて行った。「そうした下地があったんでしょうか。志望大学に入れず浪人時代、『自分が本当にやりたいことは?』と疑問を抱き、その時、母から日藝(日本大学藝術学部)のことを聞き、方向転換しました」。そのアドバイスを受け、日大藝術学部映画学科監督コースに入った。
     小さな頃から見て来た舞台や映画、その分野への関心は大学進学と共にさらに増し、在学中は様々な映像製作や美術系に取り組む。越後妻有で開く大地の芸術祭を知り「こへび隊に入りたい、とずっと思っていましたが、なかなか実現できませんでした」。
     日藝の卒業作品は、自分のオリジナル脚本『坊ダンス』。お寺の息子と教会の娘の恋バナ。ロミオとジュリエットをベースに、30分のミュージカル作品を仕上げた。子どもから大人までキャスト30人ほど。卒業後、東京の映画制作会社に入り美術スタッフで働く。
     「4年ほど在職し、その後フリーランスになったんですが、その時、芸術祭のこへび隊に入り初めて妻有を訪れました。人が良く、この空気感が最高で、いい所だなぁ、が実感でした」。
     
     事はそこからとんとん拍子で進んだ。こへび隊で、まつだい農舞台で働く時、女子サッカーのFC越後妻有選手募集のチラシを見た。「地元スタッフの樋口さんに話すと、俺が監督に話してやるとなり、すぐに監督から連絡が来て、ハンドボールをしていたんですが…と話したんですが、やってみようよ、とすぐにメンバー入り、なにかに引っ張られるようでした」。
     その練習拠点、奴奈川キャンパスで、大地の芸術祭に作品出展している日藝の鞍掛純一教授と出会う。「学生時代、芸術祭に関わっておられることは知っていましたが、お会いしたことはなかったです」。これも巡りあわせか。

     FC越後妻有は、小林さん入団時には6人、いまは12人の選手に。FC越後妻有は、存在そのものが大地の芸術祭作品であり、その活動は「まつだい棚田バンク」など地元農業を手伝いながら、芸術祭スタッフとして拠点作品の運営に関わり、さらにサッカーのリーグ戦に参戦するという文字通りオールラウンドプレイの「女子サッカーチーム」。一昨年は2部リーグ初優勝、昨年は北信越女子サッカーリーグ3位と、上位の常連チームになっている。毎週4日、それぞれの仕事を終え、練習に集まる。ホームグラウンドは奴奈川キャンパスのグラウンド。試合では地元応援団オリジナルの応援旗がなびき、これもオリジナルな応援歌がグラウンドに響く。

     サッカーも初めて、農業も初めて、妻有も初めて。「でも、初めては面白いです。年に一度くらい横浜に帰りますが、ここに来ると落ち着きますね。友だちも両親も来てくれます。こちらでは知り合いがどんどん広がっていき、こちらがホームになりつつあります」。

    ◆バトンタッチします。
     「北野一美さん」

    2024年5月11日号

  • 「よくわからない、どちらともいえない」、無関心層が問題

    5月3日、憲法記念日

    村山朗 (会社員)

     好天に恵まれたきものまつり。まだコロナが2類から5類に移行する直前だった昨年に比べると人出が何倍も増した気がします。往時にくらべ着物姿はほんとに少なくなった感があります。1970年代後半にきものまつりが誕生した時の「着物を着て楽しむ祭り」の趣旨は薄れても、キッチンカーや様々な飲食スタンド、各所で行われた音楽演奏など家族づれで楽しめる春の一大イベントに変身したことは歓迎すべきことだと思います。着物姿が殆どいないじゃないか、などと野暮なことは言いっこなし。
     閑話休題、5月3日は憲法記念日。ある調査では憲法を変えたほうが良い、という意見がかつてより増えてきたという結果が出ていましたが、よくわからない、どちらともいえない、という答えも多数を占めていました。 
     日本の憲法は世界の中でも、戦争放棄をしているまれな憲法だ、と言われてきましたが、この平和条項は世界の憲法でも大多数の国が採用しているそうです。わが国でも憲法解釈で自衛権としての戦争は認められるということらしいです。らしいというのは明記されていないからです。自衛隊の存在も明記されていません。
     こんな不完全な憲法を77年も放置してきた立法府の怠慢の原因は国民の多数を占める「よくわからない、どちらともいえない」という無関心層のせいではないでしょうか。災害となれば自衛隊を頼るくせに、明記していない憲法を変えるな、と叫ぶ一部の人たちも同様です。
     自民党が自壊しているというのに、護憲派の立憲民主党の支持率は一向に上向きません。改憲であれ、護憲であれ、国会で議論もしないというのはとてもおかしな話しです。各政党の案を公開し議論したうえで国民投票をする、という手順を早急に踏んでもらいたいです。議論に入るのをサボタージュしている政党は、国民投票で負けるからとでも思っているのでは、と勘繰りたくなります。 
     そうはいっても改憲派がドイツは何回も改憲した、と引き合いに出す同じ敗戦国のドイツ基本法と日本国憲法の建付けはまったく違うので、同じ土俵に上がるのは無理があります。
     アメリカの占領下にバタバタと作られたわが国の現行憲法は、改憲が難しい憲法です。しかしながら、現在の我が国を取り巻く安全保障環境は20世紀とは比較できないほど厳しさを増しています。少なくとも入隊に際して「命を賭してでも国を守る」と誓った人たちの存在を、憲法に明記すべきではないでしょうか。

    2024年5月11日号

  • ヤマナラシ綿毛

    中沢 英正(県自然観察保護員)

     5月初めの晴れた日、宙を舞うたくさんの綿毛を見ることがある。タンポポのとはちょっと違う、それを飛ばしているのは「ヤマナラシ」という樹木の仕業である。
     この樹木はヤナギの仲間で、高さ20メートル、径50センチほどになる。すっくと立つ樹姿がいい。
     花をつけるのは3月、まだ降雪のある頃だ。雌花と雄花があり、別々の株につく。雌花は新葉が広がる頃に結実し、綿毛をまとった種子を飛ばすのである。
     種子の寿命は短く、数日程度といわれている。一本の雌株から夥しい数の種子が飛び立つが、運命は風任せなのである。
     そこで、この樹木は確実性の高い繁殖手段も生み出した。地中にのびた根から芽を出して(根萌芽)新株を増やす方法だ。6月頃、親株の周りに幼株がポツポツと顔を出す。
     大仕事を終えたこの樹木は、夏には大きな木陰と、葉をすり合わせて作り出す音(山鳴らし)で涼しさを提供してくれる。

    2024年5月11日号

  • 婚活支援の「移住婚」とは

     5月8日午前10時30分発信のプレスリリースに、思わず目がいった。『自治体向け結婚支援サービス』の題目で、「婚活協会の『移住婚』2024年5月より『長野県飯綱町』受入れ開始」。婚活協会とは、一般社団法人日本婚活支援協会。聞き慣れない『移住婚』とは「移住希望者と地方在住者をマッチング」「コロナ禍で高まった若者の地方移住を後押し」「オンラインを活用したマッチング、面談・お見合い」「移住しても結婚できるか不安といった悩みを解消」「地方の男女比(女性不足)による結婚難を改善」「高齢化・後継者不足といった自治体の課題を解決」「移住希望者は登録費無料、自治体は低コストで導入可」…。このプレスリリースと同時に、同じ内容で岐阜県飛騨市と白川村が同様の受入れを開始したと流している。
     一般社団法人日本婚活支援協会は2010年設立。婚活は有料登録が多いなか、同協会は移住希望の独身者は無料で「移住先と結婚相手を同時に見つけることをサポート」するという。登録者に受入れ自治体を紹介し、結婚後の働き方や子育て環境など、移住先でのライフスタイルの選択肢を提案する、としている。4月から受入れ開始しているのは長野・伊那市、信濃町、高知・四万十町など。
    同協会サイトによると、2020年募集開始から今年3月までに全国8道府県の受入れ自治体に、1087人の移住・結婚希望者を紹介しているとする。これまで20組以上のカップルが誕生し、登録者は女性7割、男性3割という。協会が流す情報は、その自治体の移住者や結婚への補助金・支援金も合わせて情報提供している。
     事は、ここまで情報化しており、自治体の人口政策に直結する活動になっている。そのものズバリの「婚活支援の移住婚」、時代の要請なのか。さて、我が自治体はどう動く。

    2024年5月11日号

  • 多彩なガイド106人がご案内

    認定10年目の苗場山麓ジオパーク

    最年少の小学4年生2人、こへび隊も合格

     津南町と栄村が県境を超え協働し事業展開、日本ジオパーク(GP)認定10年目を迎えている「苗場山麓」。その活動の要となるのが「ガイド」。毎年認定試験を行うなか、第9回は20人が受検し、16人が合格。最年少記録タイとなる小学4年生2人、大地の芸術祭ツアーに協力する十日町市や東京在住のこへび隊、さらに中国出身者から合格者が出るなど、多彩な人材が揃いつつある。認定ガイドは今回で百人を超え106人となる。実際にどうガイドがGP案内や研究を深めていくかに関心が集まる。

    2024年5月4日号

  • 職人技活きる、国内シェア8割製品も

    十日町市中条「ホクホク機械」

    製菓機械製造、メロンパン用カットやタルト成形など

     生産額600億円を誇った1970年代の十日町織物を織機などで支えてきた十日町機械工業が織物の衰退とともに1997年(平成9年)に姿を消したが、どっこい製菓機械製造会社として事業を引き継いでいるのがホクホク機械(髙橋政隆社長)。経営的に厳しかったコロナ禍を乗り越え、順調に製菓・食品機械の製造に取り組んでいる。「メロンパン用カット機械は国内シェア8割。その一方で1、2台だけの機械といった受注も多い」と髙橋社長。雪国から全国お菓子づくりの『縁の下の力持ち役』を担っている。

    2024年5月4日号

  • 自民の敗北、金融政策への影響は

    やはり気になる金融政策の行方

    清水裕理 (経済地理学博士)

     今年もゴールデンウィ
    ークを迎え、気温差がまだあるものの、草木が芽吹き、一緒に桜の開花も楽しめる妻有の風景を想像しています。新潟県や長野県の中山間地域では、桜の花のピンクがより色濃く、美しさを増しているように感じます。
    そのようなゴールデンウィークのさなか、国内の政治経済に目を向けると、衆議院補欠選挙が3地域で行われ、その全てで与党・自民党が議席を得ることができませんでした。この結果を受けて、岸田政権はどうなっていくのでしょうか。東京と長崎の選挙区は自民党議員の不祥事による補欠選挙だったため、候補者をたてられませんでしたが、島根は自民党と立憲民主党の一騎打ちに。
    島根出身とすぐに思い浮かぶ苗字の自民党の錦織氏と、地元での政治活動を熱心に行ってきた立憲民主党の亀井氏との戦いで、応援の大物政治家が現地入りする様子がニュースでさかんに流れました。自民党王国の島根での敗北を自民党がどう総括するか注目されます。
     今年も変わらない美しい春の訪れを自然は見せてくれていますが、政治経済の話になると、気になることが頭をよぎります。
     もう一つの気になることに、4月末に開かれた日本銀行の金融政策決定会合があります。世界の水準に合わせる方向で利上げが示されるのか示されないのか、どのようなメッセージが出されるのか注目されましたが、現状維持とのことでした。
     中央銀行の金融政策の目的は、どの国においても「物価の安定」です。それと一緒に「景気対策」を目的に加えるか否かは国によって、或いはその時の状況によって異なります。
     「物価の安定」と「景気対策」は、効果を発揮するまでの期間も違いますし、効果を図る指標も違うので、それらを両立する金融政策をいかに実施するかは、まるで複雑な方程式を解くことのように思います。果たして、そのような複雑な方程式を解くことができるでしょうか…。
     そのせいか分かりませんが、最近は日本銀行も米国の中央銀行も、分析に基づいた方向性を示すことが少なくなり、その代わりに、時々の情勢により判断する、という言い方が多くなっているような気がします。
     いま、対ドルなどの円の為替相場の動向に、人々の関心が大きく向いており、円安がどこまで進むのか、その議論の際に、国際金融のトリレンマ(国は自由な資本移動、金融政策の独立性、為替相場の安定の3つを同時に実現することはできず、2つしか実現できないこと)が言われています。今後の行方を気にしてゆきたいと思います。

    2024年5月4日号

  • 埋もれた軌道跡

    小林 幸一(津南案内人)

     昨年秋に前倉の阿部利昭さんから、前倉上の三叉路付近で残雪期に軌道跡らしき平坦な道が見えるとの情報を頂き、早速探索に向かいましたが、軌道の痕跡が見えるのは最初だけで、あとは急斜面の連続でした。まさかこんな所を電車が走る訳がないと一旦は探索を諦めていましたが、先日阿部さんから今の時期なら分かるかもしれないと連絡を頂き、再度向かってみました。
     今回は友人と二人で送水管の横坑前から探索を始めましたが、やはり急斜面の連続で人の手が入ったような場所は発見できず、一旦林道までよじ登り、林道上から下を探す作戦に切り替えました。また今回から地図上の等高線を頼りに電車の通ったルートを想定し、横坑と同じ標高を重点的に探したところ、断片的ですが軌道跡らしきルートを見つけることが出来ました。
     軌道跡には斜面に石垣を積んだ場所もあり、此処が電車道であることが分かります。思うに、秋山林道を切り開いた時に大量の土砂を崖下に落とし、軌道跡の大半が土砂で埋まってしまったのではないのでしょうか?
     後日、阿部さんと前倉の聖徳太子碑の上部で石垣と完璧な軌道跡を発見し前倉の砕石場から秋山林道までの軌道跡が繋がる日も近いと思いました。

    2024年5月4日号

  • 心揺さぶられる「二十歳の言葉」

     我が身を考えた。二十歳の時だ。この紙面に載る「二十歳の言葉」をフィードバックし、あの日、あの時を思い起こしても、蘇るのはアウトサイダーな自分だ。お膳立てされた成人式に出て、なんになるのか、そんな自分がそこに居た。成人式の出欠ハガキを親に転送してもらい、結局、出さずじまいだったあの日。青臭い、甘っちょろい、ささくれ立った、ささやかなアンチテーゼだったのだろう、いま思うと。
     社会人2年目、『学ぶ』ことは多いだろう。勤務する職場の先輩、皆わが師だろう。このひと言に、すべてが込められている。『挑戦』もその通りだ。齢を重ねても、つねに挑む気持ちが求められ、それがエネルギーになっている自分を、この言葉が鼓舞してくれる。『オレの生き様』は決意表明か。バスケットで「食っていく」ことをあえて口にし、さらに自分を鍛えるために16歳で東京へ引っ越し、通信制高校に転入し、実業団チームの下部組織に入り、プロをめざす思いを抱くも、生き様を求め、経営学を学ぶ道へ。いま「人生は一度きり」が、自分を動かすエネルギーになっている。
     『好きの追求』は、幼少期から好きな絵を通じて、さらにクリエイトな分野へとの自分を導く魔法の言葉だ。古来より、好きこそものの上手なれ、という。その好きを貫く自分を、追求する自分が俯瞰し、創造という世界へと導いてくれる言葉だ。『思うは招く』は、本当にそうだなぁと実感する。良いことも悪いことも、どう思うかによって結果は変わる…。だが、現実は思いと裏腹の場合が多いが、この言葉も事態を変えるマジック・ワードなのだろう。
     あの日、あの時から数十年、早や終活の言葉が脳裏に浮かぶ年代に入ったが、「二十歳の言葉」に心を揺さぶられる。この感覚が我が身を鼓舞するエネルギーなのだろう。二十歳を迎えた人たち、ひとり一人に「言葉」がある。

    2024年5月4日号

  • 「今はタイミングではない」、明言避ける

    JR東・宮中ダム維持流量発電、「将来の大規模改修時」示唆

    4期の関口芳史市長 任期来年4月30日

     任期満了(来年4月30日)まであと1年余の十日町市・関口芳史市長(65)。現在4期在職中で、次期について明確な態度は表明していない。23日の定例会見で記者団が次期市長選の出馬意思があるかを質問。関口市長は「今はまだそういうことを考えるタイミングではない。目の前の課題をしっかり解決するために全力をつくしたい」と明言を避けた。一方でJR東日本の水利権更新を来年6月30日に控え、「いずれ来る宮中ダム改修時、維持流量発電を検討することになっている」と初めて明かした。来春の市長選には樋口明弘氏(76)が出馬表明し、宮中取水ダムの水利権更新に合わせ『発電電力の地元還元』を求め企業誘致をはかる考えを示している。会見の主な質疑を掲載する。

    2024年4月27日号

  • 『サッカーに、農業に、芸術祭に』

    小林舞さん(1990年生まれ)

     真っ青な空に真っ赤な『鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館』が映える。大地の芸術祭の人気拠点の十日町市鉢には、芸術祭開催年ではない年もたくさんの人が訪れる。運営スタッフのひとり。横浜から移り住み5年目の春を迎えた。小林さんにはもう一つの顔がある。「動く大地の芸術祭作品」である女子サッカー『FC越後妻有』
    のゴールキーパーだ。今日11日、松本市でリーグ3戦目を松本山雅レディースと対戦。これまで負けていないが「どのチームもレベルを上げています。アウェイですが、妻有の皆さんの応援を受け、勝ちにいきます」。

     妻有の地に至るプロセスを振り返ると「引き寄せられる」繋がりを感じる。横浜の進学高時代、172㌢余の長身を生かしハンドボールのキーパーで活躍。クラスメイトの多くは「有名難関大学をめざすなか、私は部活に集中でしたから、志望大学には残念ながら…でした」。
     幼少期から小学、中学時代、両親とミュージカルや映画などによく行った。母は中学時代、ミュージカル劇団に所属しており、我が娘も生の舞台の鑑賞に連れて行った。「そうした下地があったんでしょうか。志望大学に入れず浪人時代、『自分が本当にやりたいことは?』と疑問を抱き、その時、母から日藝(日本大学藝術学部)のことを聞き、方向転換しました」。そのアドバイスを受け、日大藝術学部映画学科監督コースに入った。
     小さな頃から見て来た舞台や映画、その分野への関心は大学進学と共にさらに増し、在学中は様々な映像製作や美術系に取り組む。越後妻有で開く大地の芸術祭を知り「こへび隊に入りたい、とずっと思っていましたが、なかなか実現できませんでした」。
     日藝の卒業作品は、自分のオリジナル脚本『坊ダンス』。お寺の息子と教会の娘の恋バナ。ロミオとジュリエットをベースに、30分のミュージカル作品を仕上げた。子どもから大人までキャスト30人ほど。卒業後、東京の映画制作会社に入り美術スタッフで働く。
     「4年ほど在職し、その後フリーランスになったんですが、その時、芸術祭のこへび隊に入り初めて妻有を訪れました。人が良く、この空気感が最高で、いい所だなぁ、が実感でした」。
     
     事はそこからとんとん拍子で進んだ。こへび隊で、まつだい農舞台で働く時、女子サッカーのFC越後妻有選手募集のチラシを見た。「地元スタッフの樋口さんに話すと、俺が監督に話してやるとなり、すぐに監督から連絡が来て、ハンドボールをしていたんですが…と話したんですが、やってみようよ、とすぐにメンバー入り、なにかに引っ張られるようでした」。
     その練習拠点、奴奈川キャンパスで、大地の芸術祭に作品出展している日藝の鞍掛純一教授と出会う。「学生時代、芸術祭に関わっておられることは知っていましたが、お会いしたことはなかったです」。これも巡りあわせか。

     FC越後妻有は、小林さん入団時には6人、いまは12人の選手に。FC越後妻有は、存在そのものが大地の芸術祭作品であり、その活動は「まつだい棚田バンク」など地元農業を手伝いながら、芸術祭スタッフとして拠点作品の運営に関わり、さらにサッカーのリーグ戦に参戦するという文字通りオールラウンドプレイの「女子サッカーチーム」。一昨年は2部リーグ初優勝、昨年は北信越女子サッカーリーグ3位と、上位の常連チームになっている。毎週4日、それぞれの仕事を終え、練習に集まる。ホームグラウンドは奴奈川キャンパスのグラウンド。試合では地元応援団オリジナルの応援旗がなびき、これもオリジナルな応援歌がグラウンドに響く。

     サッカーも初めて、農業も初めて、妻有も初めて。「でも、初めては面白いです。年に一度くらい横浜に帰りますが、ここに来ると落ち着きますね。友だちも両親も来てくれます。こちらでは知り合いがどんどん広がっていき、こちらがホームになりつつあります」。

    ◆バトンタッチします。
     「北野一美さん」

    2024年5月11日号

  • 「よくわからない、どちらともいえない」、無関心層が問題

    5月3日、憲法記念日

    村山朗 (会社員)

     好天に恵まれたきものまつり。まだコロナが2類から5類に移行する直前だった昨年に比べると人出が何倍も増した気がします。往時にくらべ着物姿はほんとに少なくなった感があります。1970年代後半にきものまつりが誕生した時の「着物を着て楽しむ祭り」の趣旨は薄れても、キッチンカーや様々な飲食スタンド、各所で行われた音楽演奏など家族づれで楽しめる春の一大イベントに変身したことは歓迎すべきことだと思います。着物姿が殆どいないじゃないか、などと野暮なことは言いっこなし。
     閑話休題、5月3日は憲法記念日。ある調査では憲法を変えたほうが良い、という意見がかつてより増えてきたという結果が出ていましたが、よくわからない、どちらともいえない、という答えも多数を占めていました。 
     日本の憲法は世界の中でも、戦争放棄をしているまれな憲法だ、と言われてきましたが、この平和条項は世界の憲法でも大多数の国が採用しているそうです。わが国でも憲法解釈で自衛権としての戦争は認められるということらしいです。らしいというのは明記されていないからです。自衛隊の存在も明記されていません。
     こんな不完全な憲法を77年も放置してきた立法府の怠慢の原因は国民の多数を占める「よくわからない、どちらともいえない」という無関心層のせいではないでしょうか。災害となれば自衛隊を頼るくせに、明記していない憲法を変えるな、と叫ぶ一部の人たちも同様です。
     自民党が自壊しているというのに、護憲派の立憲民主党の支持率は一向に上向きません。改憲であれ、護憲であれ、国会で議論もしないというのはとてもおかしな話しです。各政党の案を公開し議論したうえで国民投票をする、という手順を早急に踏んでもらいたいです。議論に入るのをサボタージュしている政党は、国民投票で負けるからとでも思っているのでは、と勘繰りたくなります。 
     そうはいっても改憲派がドイツは何回も改憲した、と引き合いに出す同じ敗戦国のドイツ基本法と日本国憲法の建付けはまったく違うので、同じ土俵に上がるのは無理があります。
     アメリカの占領下にバタバタと作られたわが国の現行憲法は、改憲が難しい憲法です。しかしながら、現在の我が国を取り巻く安全保障環境は20世紀とは比較できないほど厳しさを増しています。少なくとも入隊に際して「命を賭してでも国を守る」と誓った人たちの存在を、憲法に明記すべきではないでしょうか。

    2024年5月11日号

  • ヤマナラシ綿毛

    中沢 英正(県自然観察保護員)

     5月初めの晴れた日、宙を舞うたくさんの綿毛を見ることがある。タンポポのとはちょっと違う、それを飛ばしているのは「ヤマナラシ」という樹木の仕業である。
     この樹木はヤナギの仲間で、高さ20メートル、径50センチほどになる。すっくと立つ樹姿がいい。
     花をつけるのは3月、まだ降雪のある頃だ。雌花と雄花があり、別々の株につく。雌花は新葉が広がる頃に結実し、綿毛をまとった種子を飛ばすのである。
     種子の寿命は短く、数日程度といわれている。一本の雌株から夥しい数の種子が飛び立つが、運命は風任せなのである。
     そこで、この樹木は確実性の高い繁殖手段も生み出した。地中にのびた根から芽を出して(根萌芽)新株を増やす方法だ。6月頃、親株の周りに幼株がポツポツと顔を出す。
     大仕事を終えたこの樹木は、夏には大きな木陰と、葉をすり合わせて作り出す音(山鳴らし)で涼しさを提供してくれる。

    2024年5月11日号

  • 婚活支援の「移住婚」とは

     5月8日午前10時30分発信のプレスリリースに、思わず目がいった。『自治体向け結婚支援サービス』の題目で、「婚活協会の『移住婚』2024年5月より『長野県飯綱町』受入れ開始」。婚活協会とは、一般社団法人日本婚活支援協会。聞き慣れない『移住婚』とは「移住希望者と地方在住者をマッチング」「コロナ禍で高まった若者の地方移住を後押し」「オンラインを活用したマッチング、面談・お見合い」「移住しても結婚できるか不安といった悩みを解消」「地方の男女比(女性不足)による結婚難を改善」「高齢化・後継者不足といった自治体の課題を解決」「移住希望者は登録費無料、自治体は低コストで導入可」…。このプレスリリースと同時に、同じ内容で岐阜県飛騨市と白川村が同様の受入れを開始したと流している。
     一般社団法人日本婚活支援協会は2010年設立。婚活は有料登録が多いなか、同協会は移住希望の独身者は無料で「移住先と結婚相手を同時に見つけることをサポート」するという。登録者に受入れ自治体を紹介し、結婚後の働き方や子育て環境など、移住先でのライフスタイルの選択肢を提案する、としている。4月から受入れ開始しているのは長野・伊那市、信濃町、高知・四万十町など。
    同協会サイトによると、2020年募集開始から今年3月までに全国8道府県の受入れ自治体に、1087人の移住・結婚希望者を紹介しているとする。これまで20組以上のカップルが誕生し、登録者は女性7割、男性3割という。協会が流す情報は、その自治体の移住者や結婚への補助金・支援金も合わせて情報提供している。
     事は、ここまで情報化しており、自治体の人口政策に直結する活動になっている。そのものズバリの「婚活支援の移住婚」、時代の要請なのか。さて、我が自治体はどう動く。

    2024年5月11日号

  • 多彩なガイド106人がご案内

    認定10年目の苗場山麓ジオパーク

    最年少の小学4年生2人、こへび隊も合格

     津南町と栄村が県境を超え協働し事業展開、日本ジオパーク(GP)認定10年目を迎えている「苗場山麓」。その活動の要となるのが「ガイド」。毎年認定試験を行うなか、第9回は20人が受検し、16人が合格。最年少記録タイとなる小学4年生2人、大地の芸術祭ツアーに協力する十日町市や東京在住のこへび隊、さらに中国出身者から合格者が出るなど、多彩な人材が揃いつつある。認定ガイドは今回で百人を超え106人となる。実際にどうガイドがGP案内や研究を深めていくかに関心が集まる。

    2024年5月4日号

  • 職人技活きる、国内シェア8割製品も

    十日町市中条「ホクホク機械」

    製菓機械製造、メロンパン用カットやタルト成形など

     生産額600億円を誇った1970年代の十日町織物を織機などで支えてきた十日町機械工業が織物の衰退とともに1997年(平成9年)に姿を消したが、どっこい製菓機械製造会社として事業を引き継いでいるのがホクホク機械(髙橋政隆社長)。経営的に厳しかったコロナ禍を乗り越え、順調に製菓・食品機械の製造に取り組んでいる。「メロンパン用カット機械は国内シェア8割。その一方で1、2台だけの機械といった受注も多い」と髙橋社長。雪国から全国お菓子づくりの『縁の下の力持ち役』を担っている。

    2024年5月4日号

  • 自民の敗北、金融政策への影響は

    やはり気になる金融政策の行方

    清水裕理 (経済地理学博士)

     今年もゴールデンウィ
    ークを迎え、気温差がまだあるものの、草木が芽吹き、一緒に桜の開花も楽しめる妻有の風景を想像しています。新潟県や長野県の中山間地域では、桜の花のピンクがより色濃く、美しさを増しているように感じます。
    そのようなゴールデンウィークのさなか、国内の政治経済に目を向けると、衆議院補欠選挙が3地域で行われ、その全てで与党・自民党が議席を得ることができませんでした。この結果を受けて、岸田政権はどうなっていくのでしょうか。東京と長崎の選挙区は自民党議員の不祥事による補欠選挙だったため、候補者をたてられませんでしたが、島根は自民党と立憲民主党の一騎打ちに。
    島根出身とすぐに思い浮かぶ苗字の自民党の錦織氏と、地元での政治活動を熱心に行ってきた立憲民主党の亀井氏との戦いで、応援の大物政治家が現地入りする様子がニュースでさかんに流れました。自民党王国の島根での敗北を自民党がどう総括するか注目されます。
     今年も変わらない美しい春の訪れを自然は見せてくれていますが、政治経済の話になると、気になることが頭をよぎります。
     もう一つの気になることに、4月末に開かれた日本銀行の金融政策決定会合があります。世界の水準に合わせる方向で利上げが示されるのか示されないのか、どのようなメッセージが出されるのか注目されましたが、現状維持とのことでした。
     中央銀行の金融政策の目的は、どの国においても「物価の安定」です。それと一緒に「景気対策」を目的に加えるか否かは国によって、或いはその時の状況によって異なります。
     「物価の安定」と「景気対策」は、効果を発揮するまでの期間も違いますし、効果を図る指標も違うので、それらを両立する金融政策をいかに実施するかは、まるで複雑な方程式を解くことのように思います。果たして、そのような複雑な方程式を解くことができるでしょうか…。
     そのせいか分かりませんが、最近は日本銀行も米国の中央銀行も、分析に基づいた方向性を示すことが少なくなり、その代わりに、時々の情勢により判断する、という言い方が多くなっているような気がします。
     いま、対ドルなどの円の為替相場の動向に、人々の関心が大きく向いており、円安がどこまで進むのか、その議論の際に、国際金融のトリレンマ(国は自由な資本移動、金融政策の独立性、為替相場の安定の3つを同時に実現することはできず、2つしか実現できないこと)が言われています。今後の行方を気にしてゆきたいと思います。

    2024年5月4日号

  • 埋もれた軌道跡

    小林 幸一(津南案内人)

     昨年秋に前倉の阿部利昭さんから、前倉上の三叉路付近で残雪期に軌道跡らしき平坦な道が見えるとの情報を頂き、早速探索に向かいましたが、軌道の痕跡が見えるのは最初だけで、あとは急斜面の連続でした。まさかこんな所を電車が走る訳がないと一旦は探索を諦めていましたが、先日阿部さんから今の時期なら分かるかもしれないと連絡を頂き、再度向かってみました。
     今回は友人と二人で送水管の横坑前から探索を始めましたが、やはり急斜面の連続で人の手が入ったような場所は発見できず、一旦林道までよじ登り、林道上から下を探す作戦に切り替えました。また今回から地図上の等高線を頼りに電車の通ったルートを想定し、横坑と同じ標高を重点的に探したところ、断片的ですが軌道跡らしきルートを見つけることが出来ました。
     軌道跡には斜面に石垣を積んだ場所もあり、此処が電車道であることが分かります。思うに、秋山林道を切り開いた時に大量の土砂を崖下に落とし、軌道跡の大半が土砂で埋まってしまったのではないのでしょうか?
     後日、阿部さんと前倉の聖徳太子碑の上部で石垣と完璧な軌道跡を発見し前倉の砕石場から秋山林道までの軌道跡が繋がる日も近いと思いました。

    2024年5月4日号

  • 心揺さぶられる「二十歳の言葉」

     我が身を考えた。二十歳の時だ。この紙面に載る「二十歳の言葉」をフィードバックし、あの日、あの時を思い起こしても、蘇るのはアウトサイダーな自分だ。お膳立てされた成人式に出て、なんになるのか、そんな自分がそこに居た。成人式の出欠ハガキを親に転送してもらい、結局、出さずじまいだったあの日。青臭い、甘っちょろい、ささくれ立った、ささやかなアンチテーゼだったのだろう、いま思うと。
     社会人2年目、『学ぶ』ことは多いだろう。勤務する職場の先輩、皆わが師だろう。このひと言に、すべてが込められている。『挑戦』もその通りだ。齢を重ねても、つねに挑む気持ちが求められ、それがエネルギーになっている自分を、この言葉が鼓舞してくれる。『オレの生き様』は決意表明か。バスケットで「食っていく」ことをあえて口にし、さらに自分を鍛えるために16歳で東京へ引っ越し、通信制高校に転入し、実業団チームの下部組織に入り、プロをめざす思いを抱くも、生き様を求め、経営学を学ぶ道へ。いま「人生は一度きり」が、自分を動かすエネルギーになっている。
     『好きの追求』は、幼少期から好きな絵を通じて、さらにクリエイトな分野へとの自分を導く魔法の言葉だ。古来より、好きこそものの上手なれ、という。その好きを貫く自分を、追求する自分が俯瞰し、創造という世界へと導いてくれる言葉だ。『思うは招く』は、本当にそうだなぁと実感する。良いことも悪いことも、どう思うかによって結果は変わる…。だが、現実は思いと裏腹の場合が多いが、この言葉も事態を変えるマジック・ワードなのだろう。
     あの日、あの時から数十年、早や終活の言葉が脳裏に浮かぶ年代に入ったが、「二十歳の言葉」に心を揺さぶられる。この感覚が我が身を鼓舞するエネルギーなのだろう。二十歳を迎えた人たち、ひとり一人に「言葉」がある。

    2024年5月4日号

  • 「今はタイミングではない」、明言避ける

    JR東・宮中ダム維持流量発電、「将来の大規模改修時」示唆

    4期の関口芳史市長 任期来年4月30日

     任期満了(来年4月30日)まであと1年余の十日町市・関口芳史市長(65)。現在4期在職中で、次期について明確な態度は表明していない。23日の定例会見で記者団が次期市長選の出馬意思があるかを質問。関口市長は「今はまだそういうことを考えるタイミングではない。目の前の課題をしっかり解決するために全力をつくしたい」と明言を避けた。一方でJR東日本の水利権更新を来年6月30日に控え、「いずれ来る宮中ダム改修時、維持流量発電を検討することになっている」と初めて明かした。来春の市長選には樋口明弘氏(76)が出馬表明し、宮中取水ダムの水利権更新に合わせ『発電電力の地元還元』を求め企業誘致をはかる考えを示している。会見の主な質疑を掲載する。

    2024年4月27日号