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妻有新聞掲載記事一覧

  • 宿泊拠点、その求められる行政の戦略

     観光産業のポイントの一つは「宿」だろう。先の十日町市議会一般質問で観光客入込数が公表された。2022年282万人余、昨年2023年は246万人。一方、宿泊数は公表の2022年は21万人という。観光来訪者の宿泊は1割余りだ。地域に宿泊受入れキャパが少ない実態が分かる。一方、津南町の2023年は観光来訪者39万人余、うち宿泊数は未公表だが、宿泊拠点のニュー・グリーンピア津南は5万4千人余と先週の株主総会で公表された。この津南町の観光拠点が来年9月末、現経営者との10年間の業務委託契約が満了になる。どうする津南町、である。
     「まだまだ、やれることがある。ようやくコロナ前に戻りつつあるが、新たな取り組みが求められている」。この観光拠点は津南町が所有し、地元関係者などの共同出資の現地法人・津南高原開発が経営する。いわゆる「公設民営」。ファミリー層の利用はようやくコロナ前の状態に少しずつ回復しつつあるというが、「新たな取り組み、誘客戦略が必要」という。自立を選択した津南町、その町所有の観光拠点施設は、いわば津南町の「営業戦略拠点」でもある。外部への「町としての営業」が手薄ではないか。
     インバウンドを取り組むなら25年前に友好交流締結している韓国・ヨジョ市との関係性の密度を濃くする戦略が必要だ。『頼もしき応援団・日本食研』との連携もさらに太くできる。特に日本食研・大沢一彦会長は東京農大の名誉教授。農業立町の津南町にとって、東京農大との連携は大きな意義がある。大沢会長の存在は津南町にとって重要な意味を持つ。東京・世田谷区の保坂区長は津南町と縁深い。祖父が町内大井平出身となれば、世田谷区との関係性、さらに連携事業が見えてくる。
     可能性の要素はある。どう動くか、動く気があるのか、ここだろう。

    2024年6月29日号

  • 降水ゼロ30日超、深刻度増す

    干ばつ懸念、津南町大谷内ダム断水も

     水不足が深刻だ。例年ならば梅雨時期に入っているにも関わらず6月は10日間以上降水確認がなく、久しぶりに18日は少しまとまった降水があったが「まだ全然足りない」と農家は悲鳴を上げる。田植えを終えたばかりの水田に水が入れられず、水不足で苗が枯れ始めている場所が散見。特に天水田作の松之山や松代の棚田は深刻。昨年の干ばつでできたヒビが埋まらず水漏れし作付けできないケースが続出しており、水不足と合わせ24㌶以上の天水田が作付けできていない状況が判明している。十日町市は水稲渇水被害応急対策事業を17日からスタート。補助対象者は農業者個人や団体。渇水対策で水路掘削、ポンプ・発電機のリース、ポンプ等運転の電気料など、水田面積5㌶以上で最大40万円の支援を始めている。対象期間は12日から。ただ農業者から「棚田はポンプで水を上げたくとも水源がない場所が多いので使いにくい。水不足が続きまた夏に干ばつになると、2年連続で農家に大打撃となる」危機感が高まっている。(関連記事2面)

    2024年6月22日号

  • 五感、視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚を刺激

    一粒のレーズンを10分かけ食べる

    Vol 100

     「新潟で雪が降っている匂いがする」。埼玉で大学時代を過ごしていた私が、雪国育ちなんだなぁと実感した瞬間でした。私が過ごしていた埼玉は、最寄り駅には数時間に1本ディーゼル車が通り、森の中の神社の境内で流鏑馬が行われるような所でした。 
     でも、田舎といえどそこは埼玉、年に数回しか降らない雪にみんなてんてこまいでした。そこにいると、はっきりと新潟で雪が降っている匂いが分かるのです。十日町から離れて初めて知った感覚でした。そして、「今日は雪」という天気予報で心配している同級生に「大丈夫、降らないよ。雪になる匂いがしないもん」と言って当てるため、びっくりされたものでした。
     最近自分が元気でいるため、そして自分を忘れないために何が必要かを考えたとき、自分の五感を刺激することが重要ではないかと思いました。
     まず視覚(見る)。意識的に見るのです。自分の好きなもの、美しいと感じるもの、そこに多くの色彩とそれを輝かせる光があることを脳みそ全体で感じます。
     そして聴覚(聴く)。早朝散歩がマイブームの私は、あえて車通りの無い方へ向かいます。靴底が土をとらえる音、木々の梢を風が揺らす音、田んぼに引かれる水の流れる音、鳥のさえずり、大きな欅の木の声など。静寂すらそれも音。外に出る時はイヤホンで音楽を聴かないのが私は好きです。
     味覚(味わう)。長年の癖で早食いになってしまうので、ひとりでご飯を食べる時ほどゆっくりと味わって食べたいと思っています。
     嗅覚(嗅ぐ)。職場の同僚がある日、「玄関を出てクサッ! と思ったら、栗の花がすごかった」と。自分が感じ切れていない匂いはまだまだあるのだなと思いました。四季を感じる匂い、これを読んでいる皆さんの方がたくさん知っているのではないでしょうか。
     触覚(皮膚で感じる)。私は「土に触れる」、これをしたいがために田舎に戻ってきたと言っても良いくらいです。昨日、今年初めて我が家の猫の額ほどの家庭菜園できゅうりの収穫をしました!やったー。
     米国のある博士が仏教の瞑想を医療の分野に持ち込み、宗教的要素を取り除いて科学的に効果を実証させたものに、マインドフルネスがあります。マインドフルネスにはレーズンを食べる瞑想があるのですが、手の上の一粒のレーズンを見て耳元で音を聴いて匂いを嗅いで唇で触って、そして口に入れしばらく舌の上で転がした後に噛むのです。(一口で食べられるものなら何でもよく、甘納豆や焼き甘栗などで代用可)。
     レーズンがどんなところでどんな人の想いで作られ自分のところにやってくる過程を想像し、また自然の恵みに感謝する気持ちを巡らす、そうすると幸福感で満たされる、と。
     まさに五感を刺激する食べ方です。一粒食べきるのに最低10分はかかるでしょう。たかき医院にも五感を刺激する工夫が沢山あります。診察が無くても是非体と心を休めにお立ち寄りください。
     (たかき医院・仲栄美子院長)

    2024年6月22日号

  • 『みんな違います。だから面白いんです』

    水品 直子さん(1955年生まれ)

     水品家の「農業カレンダー」は2月下旬から始まる。電熱線を地中に回した苗床ハウスでの播種からスタート。外はまだ雪の山。「ナスとピーマンは発芽まで時間がかかるんです。5月の苗販売までに間に合わせるには、この時期からなんですよ」。 春耕というにはちょっと早いが、
    水品家の営農は雪の中から動き出す。

    2024年6月22日号

  • なんでもかんでも医者へ、変でしょ

    健康診断の結果

    村山 朗 (会社員)

     齢七十をすでに超え、後期高齢者となる日がすぐそこまで近づいている筆者としては、定期的な健康診断の結果がとても気になります。でも、はて? と首をひねる基準があります。
     ボディーマス指数、通称BMIというものがあります。筆者はその数値が19前後で、特に肥満もしていません。ですが腹囲が85㌢を少し超えただけでいわゆるメタボと判定されました。この腹囲の数字は身長を全く考慮していないように見え、身長が180㌢近くある筆者としては大いに疑問のある数値です。
     血圧も最高血圧が140台前半で高血圧症と判定されました。同年代にはいわゆる降圧剤を処方されている友人が多く、血圧がいくつぐらいになったら薬を処方されたん? と尋ねると130超えたぐらいから、と複数の人から答えが返ってきました。
     七十歳前後で、最高血圧が130や140ってほんとに薬を飲まなければならないほどのことでしょうか。中性脂肪などもわずかに基準より高く、これも高脂血症との判定です。糖尿病の疑いもありということで「健康診断のお知らせ」はめでたくD判定をいただき、早く医者に診てもらって治療を開始しなさいとのご託宣でした。
     念のためお医者さんに診てもらうと、食生活に注意、と一言だけ。転ばぬ先の杖は必要だと思いますが、転ばぬように身動きできないようにしているのではないのではないでしょうか。 
     数値は数値として結果を示していただければいいのであって、あとは余計なお世話というものです。健康のためにあれはダメこれはダメと苦心をし、呑みたい、呑んじゃダメと家人とけんかをし(笑)、挙句の果てはサプリに頼ってかえって病気になってしまう、という笑えない現象も起きています。
     家族や周りに迷惑をかけるような生活をし、暴飲暴食をグルメと称するような生活にはまったく賛成できませんが、ちょっとした数値のオーバーで治療せよ、というのではたまったものではありません。
     日本の平均寿命は世界一で84・1歳です。国民全体のBMIは20台前半で世界でも最もスリムな国の一つだそうです。スリムな体型を国を挙げて推奨するのはよいとして、筆者も含め何でもかんでもお医者さんに駆け込むという過剰な反応を生み出しているのではないでしょうか。
     日本の保健医療費の大半が高齢者に費やされています。医者に通う回数はスウェーデンの4倍にもかかわらず、平均寿命はほぼ同じです。数値基準は年代に合わせた、きめ細かなものにすべきです。

    2024年6月22日号

  • 豊かな水と赤いマグカップ

    照井 麻美(津南星空写真部)

     今も古い水道施設が残るT字路にちょこんと赤いマグカップが目に止まる。
     初夏の暑い日差しから木陰に入ったこの場所ではキンと冷えた水が今も道行く人の喉を潤している。
     少し行って国道に出ればキンキンに冷えた自動販売機の飲み物も買うことができるが、マグカップの様子からすると多少なりこの水を利用している人がいるのであろう。
     今では上水が完備され、山から引いた水も滅菌したものが水道から出てくることが当たり前になっているが、こうした雪解け水や清水が豊富にあるこの地域の水資源の豊かさにはいつも驚かされている。
     しかし、20年以上前から叫ばれていた地球温暖化により大きな気候変動が起こることによって、今まで当たり前だったものが少しずつ、いや、大きく変化してきている。
     今年は雪も例年より少なく梅雨入りも遅いため、世間ではすでに貯水池の水不足が心配され、豊かだと思われていた水資源はとても貴重なものだったと再認識させられる。
     移住してきた身としてはこれから暑さも厳しくなってくると思うと、まだ朝晩涼しさを感じられる山間地には住むことができても、昼夜問わず猛暑の東京には「もう住めない」と思ってしまうのである。

    2024年6月22日号

  • 「たんじゅん農法」でアスパラ栽培

    滝沢総一郎さん(栄村)

     あえて農作物の成長に必要とされる窒素分を抑え、もみ殻や落葉を用土に混ぜる「炭素循環農法」でアスパラ栽培に取り組む滝沢総一郎さん(74、栄村程久保)。滝沢さんのアスパラ畑は出荷のピークを迎え、「安全安心」と注目を集めている。「やっぱり『たんじゅん農法』だと虫も寄り付かないし、味もおいしい。雪がとけ新緑が芽吹く同じ時期にアスパラも芽を出し、ほかの野菜より早く収穫できるのは魅力の一つ。ずっと家にいてもしょうがないし、何より皆さんがアスパラを待っているので、体が動く限りは管理できる範囲をしっかりとしていきたいね」と話す。

    2024年6月22日号

  • 関口市長に感じる「続投」、だが…

    雰囲気で考えるなら、これは「続投」だろう。事実の積み重ねが基本の基本の新聞だ。雰囲気などという曖昧な根拠はそぐわないが、公の場での発言を求める関口市長の立ち位置から見ると、来春の改選期への姿勢は、すでに固まっている、そういう印象だ。
     6月市議会では「多選」への疑問符が投げかけられた。想定内の質問だったろう。いや、公式の場を意識する関口市長にとって、その場を提供してくれたことは意味あることで、多選批判への言葉は、常に考えているであろう言葉がそのまま出た印象だ。
    多選の弊害は、そのトップより、トップを取り巻く人による部分が多い。それを利害関係者と呼ぶ。1期でも2期でも、その種の人が回りを囲めば、常に弊害は付いて回るのが現実だ。
     新聞人は、とかく批判的な視点で物事を見る。ある種の性だろう。換言すれば「問題意識」となる。改選期を迎えるトップを見る時、プラス材料より、マイナス要素を見る。実績を披歴したいトップはいる。関口市長の場合、それは周りが流布する役目を担い、当事者の口から率先して出ることは稀だ。
    この4期目の3年間、いや4期16年を見る時、マイナス材料は何かである。すでに来春の市長選に出馬表明している新人は「十日町市は何も良くなっていない。それは何も出来ないから」と厳しく指摘する。だが、一般市民が見る目の価値観はどうだろうか。それは現職が「5期出馬」を表明した時、その評価が表出してくる。
     5期ならば20年である。オギャーと生まれた人が二十歳になる歳月だ。今度の市長選、選挙戦は確実だが「第三の候補」は出るのか。選挙は住民を成長させるという。今の路線継続か、大改革か、あるいは新・十日町市か。選択肢の幅広さは、価値観の多様性であり、それは時代が求めるあらゆる分野の多様性でもある。

    2024年6月22日号

  • 「24時間体制は必須」

    十日町署管内 3駐在所統合計画

    赤沢防連協に県警地域課長と十日町署長

     「津南交番との統合で24時間365日勤務体制を取れる。駐在所は平日夜間、原則土日は休みなのがデメリット。防犯体制強化が再編の大きな柱となっている」、十日町署の太刀川弘栄署長は住民に統廃合への理解を求めた。
     来年3月末での廃止・統合計画が出ている十日町署管内の3駐在所。津南町赤沢駐在所は津南交番に、十日町市中里地域の倉俣駐在所は田沢駐在所に、同土市駐在所は十日町駅前交番管轄になる再編計画が進んでいる。
     「駐在所があることが犯罪抑止力になっている」と、駐在所存続要望書を出していた赤沢地区防犯連絡協議会(草津進会長)。総会の7日、十日町署・太刀川署長、さらに県内の再編計画を取りまとめる県警本部地域部・渡邉幸治地域課長ら県警職員らが出席。赤沢駐在所統廃合の計画説明を行った。

    2024年6月15日号

  • 地域医療支える拠点エリア

    10年かけ完工、総事業費150億円で

    県立十日町病院が核

     10年余かけ総事業費150億円余で新築整備した地域中核病院・県立十日町病院(275床)が完工。同エリアには十日町市が建設の市医療福祉総合センター(建築費14億3300万円)があり、同センター内には県立十日町看護専門学校や地元医師会、訪問看護ステーションおむすびなど地域医療や介護・福祉に関わる8機関が入る。一帯は医療・福祉・教育の連携拠点として、住民の命を守り続ける責務を背負う。一方で、県立病院の事業決算は昨年度23億円の最終赤字を発表、今年度はさらに厳しい見通しが出ており、県立病院経営改革は必至の状況。地元の医療機関や市町村などと県立病院のさらなる連携が求められるなか、同エリアに集中の関係機関の役割が増す。

    2024年6月15日号

  • 宿泊拠点、その求められる行政の戦略

     観光産業のポイントの一つは「宿」だろう。先の十日町市議会一般質問で観光客入込数が公表された。2022年282万人余、昨年2023年は246万人。一方、宿泊数は公表の2022年は21万人という。観光来訪者の宿泊は1割余りだ。地域に宿泊受入れキャパが少ない実態が分かる。一方、津南町の2023年は観光来訪者39万人余、うち宿泊数は未公表だが、宿泊拠点のニュー・グリーンピア津南は5万4千人余と先週の株主総会で公表された。この津南町の観光拠点が来年9月末、現経営者との10年間の業務委託契約が満了になる。どうする津南町、である。
     「まだまだ、やれることがある。ようやくコロナ前に戻りつつあるが、新たな取り組みが求められている」。この観光拠点は津南町が所有し、地元関係者などの共同出資の現地法人・津南高原開発が経営する。いわゆる「公設民営」。ファミリー層の利用はようやくコロナ前の状態に少しずつ回復しつつあるというが、「新たな取り組み、誘客戦略が必要」という。自立を選択した津南町、その町所有の観光拠点施設は、いわば津南町の「営業戦略拠点」でもある。外部への「町としての営業」が手薄ではないか。
     インバウンドを取り組むなら25年前に友好交流締結している韓国・ヨジョ市との関係性の密度を濃くする戦略が必要だ。『頼もしき応援団・日本食研』との連携もさらに太くできる。特に日本食研・大沢一彦会長は東京農大の名誉教授。農業立町の津南町にとって、東京農大との連携は大きな意義がある。大沢会長の存在は津南町にとって重要な意味を持つ。東京・世田谷区の保坂区長は津南町と縁深い。祖父が町内大井平出身となれば、世田谷区との関係性、さらに連携事業が見えてくる。
     可能性の要素はある。どう動くか、動く気があるのか、ここだろう。

    2024年6月29日号

  • 降水ゼロ30日超、深刻度増す

    干ばつ懸念、津南町大谷内ダム断水も

     水不足が深刻だ。例年ならば梅雨時期に入っているにも関わらず6月は10日間以上降水確認がなく、久しぶりに18日は少しまとまった降水があったが「まだ全然足りない」と農家は悲鳴を上げる。田植えを終えたばかりの水田に水が入れられず、水不足で苗が枯れ始めている場所が散見。特に天水田作の松之山や松代の棚田は深刻。昨年の干ばつでできたヒビが埋まらず水漏れし作付けできないケースが続出しており、水不足と合わせ24㌶以上の天水田が作付けできていない状況が判明している。十日町市は水稲渇水被害応急対策事業を17日からスタート。補助対象者は農業者個人や団体。渇水対策で水路掘削、ポンプ・発電機のリース、ポンプ等運転の電気料など、水田面積5㌶以上で最大40万円の支援を始めている。対象期間は12日から。ただ農業者から「棚田はポンプで水を上げたくとも水源がない場所が多いので使いにくい。水不足が続きまた夏に干ばつになると、2年連続で農家に大打撃となる」危機感が高まっている。(関連記事2面)

    2024年6月22日号

  • 五感、視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚を刺激

    一粒のレーズンを10分かけ食べる

    Vol 100

     「新潟で雪が降っている匂いがする」。埼玉で大学時代を過ごしていた私が、雪国育ちなんだなぁと実感した瞬間でした。私が過ごしていた埼玉は、最寄り駅には数時間に1本ディーゼル車が通り、森の中の神社の境内で流鏑馬が行われるような所でした。 
     でも、田舎といえどそこは埼玉、年に数回しか降らない雪にみんなてんてこまいでした。そこにいると、はっきりと新潟で雪が降っている匂いが分かるのです。十日町から離れて初めて知った感覚でした。そして、「今日は雪」という天気予報で心配している同級生に「大丈夫、降らないよ。雪になる匂いがしないもん」と言って当てるため、びっくりされたものでした。
     最近自分が元気でいるため、そして自分を忘れないために何が必要かを考えたとき、自分の五感を刺激することが重要ではないかと思いました。
     まず視覚(見る)。意識的に見るのです。自分の好きなもの、美しいと感じるもの、そこに多くの色彩とそれを輝かせる光があることを脳みそ全体で感じます。
     そして聴覚(聴く)。早朝散歩がマイブームの私は、あえて車通りの無い方へ向かいます。靴底が土をとらえる音、木々の梢を風が揺らす音、田んぼに引かれる水の流れる音、鳥のさえずり、大きな欅の木の声など。静寂すらそれも音。外に出る時はイヤホンで音楽を聴かないのが私は好きです。
     味覚(味わう)。長年の癖で早食いになってしまうので、ひとりでご飯を食べる時ほどゆっくりと味わって食べたいと思っています。
     嗅覚(嗅ぐ)。職場の同僚がある日、「玄関を出てクサッ! と思ったら、栗の花がすごかった」と。自分が感じ切れていない匂いはまだまだあるのだなと思いました。四季を感じる匂い、これを読んでいる皆さんの方がたくさん知っているのではないでしょうか。
     触覚(皮膚で感じる)。私は「土に触れる」、これをしたいがために田舎に戻ってきたと言っても良いくらいです。昨日、今年初めて我が家の猫の額ほどの家庭菜園できゅうりの収穫をしました!やったー。
     米国のある博士が仏教の瞑想を医療の分野に持ち込み、宗教的要素を取り除いて科学的に効果を実証させたものに、マインドフルネスがあります。マインドフルネスにはレーズンを食べる瞑想があるのですが、手の上の一粒のレーズンを見て耳元で音を聴いて匂いを嗅いで唇で触って、そして口に入れしばらく舌の上で転がした後に噛むのです。(一口で食べられるものなら何でもよく、甘納豆や焼き甘栗などで代用可)。
     レーズンがどんなところでどんな人の想いで作られ自分のところにやってくる過程を想像し、また自然の恵みに感謝する気持ちを巡らす、そうすると幸福感で満たされる、と。
     まさに五感を刺激する食べ方です。一粒食べきるのに最低10分はかかるでしょう。たかき医院にも五感を刺激する工夫が沢山あります。診察が無くても是非体と心を休めにお立ち寄りください。
     (たかき医院・仲栄美子院長)

    2024年6月22日号

  • 『みんな違います。だから面白いんです』

    水品 直子さん(1955年生まれ)

     水品家の「農業カレンダー」は2月下旬から始まる。電熱線を地中に回した苗床ハウスでの播種からスタート。外はまだ雪の山。「ナスとピーマンは発芽まで時間がかかるんです。5月の苗販売までに間に合わせるには、この時期からなんですよ」。 春耕というにはちょっと早いが、
    水品家の営農は雪の中から動き出す。

    2024年6月22日号

  • なんでもかんでも医者へ、変でしょ

    健康診断の結果

    村山 朗 (会社員)

     齢七十をすでに超え、後期高齢者となる日がすぐそこまで近づいている筆者としては、定期的な健康診断の結果がとても気になります。でも、はて? と首をひねる基準があります。
     ボディーマス指数、通称BMIというものがあります。筆者はその数値が19前後で、特に肥満もしていません。ですが腹囲が85㌢を少し超えただけでいわゆるメタボと判定されました。この腹囲の数字は身長を全く考慮していないように見え、身長が180㌢近くある筆者としては大いに疑問のある数値です。
     血圧も最高血圧が140台前半で高血圧症と判定されました。同年代にはいわゆる降圧剤を処方されている友人が多く、血圧がいくつぐらいになったら薬を処方されたん? と尋ねると130超えたぐらいから、と複数の人から答えが返ってきました。
     七十歳前後で、最高血圧が130や140ってほんとに薬を飲まなければならないほどのことでしょうか。中性脂肪などもわずかに基準より高く、これも高脂血症との判定です。糖尿病の疑いもありということで「健康診断のお知らせ」はめでたくD判定をいただき、早く医者に診てもらって治療を開始しなさいとのご託宣でした。
     念のためお医者さんに診てもらうと、食生活に注意、と一言だけ。転ばぬ先の杖は必要だと思いますが、転ばぬように身動きできないようにしているのではないのではないでしょうか。 
     数値は数値として結果を示していただければいいのであって、あとは余計なお世話というものです。健康のためにあれはダメこれはダメと苦心をし、呑みたい、呑んじゃダメと家人とけんかをし(笑)、挙句の果てはサプリに頼ってかえって病気になってしまう、という笑えない現象も起きています。
     家族や周りに迷惑をかけるような生活をし、暴飲暴食をグルメと称するような生活にはまったく賛成できませんが、ちょっとした数値のオーバーで治療せよ、というのではたまったものではありません。
     日本の平均寿命は世界一で84・1歳です。国民全体のBMIは20台前半で世界でも最もスリムな国の一つだそうです。スリムな体型を国を挙げて推奨するのはよいとして、筆者も含め何でもかんでもお医者さんに駆け込むという過剰な反応を生み出しているのではないでしょうか。
     日本の保健医療費の大半が高齢者に費やされています。医者に通う回数はスウェーデンの4倍にもかかわらず、平均寿命はほぼ同じです。数値基準は年代に合わせた、きめ細かなものにすべきです。

    2024年6月22日号

  • 豊かな水と赤いマグカップ

    照井 麻美(津南星空写真部)

     今も古い水道施設が残るT字路にちょこんと赤いマグカップが目に止まる。
     初夏の暑い日差しから木陰に入ったこの場所ではキンと冷えた水が今も道行く人の喉を潤している。
     少し行って国道に出ればキンキンに冷えた自動販売機の飲み物も買うことができるが、マグカップの様子からすると多少なりこの水を利用している人がいるのであろう。
     今では上水が完備され、山から引いた水も滅菌したものが水道から出てくることが当たり前になっているが、こうした雪解け水や清水が豊富にあるこの地域の水資源の豊かさにはいつも驚かされている。
     しかし、20年以上前から叫ばれていた地球温暖化により大きな気候変動が起こることによって、今まで当たり前だったものが少しずつ、いや、大きく変化してきている。
     今年は雪も例年より少なく梅雨入りも遅いため、世間ではすでに貯水池の水不足が心配され、豊かだと思われていた水資源はとても貴重なものだったと再認識させられる。
     移住してきた身としてはこれから暑さも厳しくなってくると思うと、まだ朝晩涼しさを感じられる山間地には住むことができても、昼夜問わず猛暑の東京には「もう住めない」と思ってしまうのである。

    2024年6月22日号

  • 「たんじゅん農法」でアスパラ栽培

    滝沢総一郎さん(栄村)

     あえて農作物の成長に必要とされる窒素分を抑え、もみ殻や落葉を用土に混ぜる「炭素循環農法」でアスパラ栽培に取り組む滝沢総一郎さん(74、栄村程久保)。滝沢さんのアスパラ畑は出荷のピークを迎え、「安全安心」と注目を集めている。「やっぱり『たんじゅん農法』だと虫も寄り付かないし、味もおいしい。雪がとけ新緑が芽吹く同じ時期にアスパラも芽を出し、ほかの野菜より早く収穫できるのは魅力の一つ。ずっと家にいてもしょうがないし、何より皆さんがアスパラを待っているので、体が動く限りは管理できる範囲をしっかりとしていきたいね」と話す。

    2024年6月22日号

  • 関口市長に感じる「続投」、だが…

    雰囲気で考えるなら、これは「続投」だろう。事実の積み重ねが基本の基本の新聞だ。雰囲気などという曖昧な根拠はそぐわないが、公の場での発言を求める関口市長の立ち位置から見ると、来春の改選期への姿勢は、すでに固まっている、そういう印象だ。
     6月市議会では「多選」への疑問符が投げかけられた。想定内の質問だったろう。いや、公式の場を意識する関口市長にとって、その場を提供してくれたことは意味あることで、多選批判への言葉は、常に考えているであろう言葉がそのまま出た印象だ。
    多選の弊害は、そのトップより、トップを取り巻く人による部分が多い。それを利害関係者と呼ぶ。1期でも2期でも、その種の人が回りを囲めば、常に弊害は付いて回るのが現実だ。
     新聞人は、とかく批判的な視点で物事を見る。ある種の性だろう。換言すれば「問題意識」となる。改選期を迎えるトップを見る時、プラス材料より、マイナス要素を見る。実績を披歴したいトップはいる。関口市長の場合、それは周りが流布する役目を担い、当事者の口から率先して出ることは稀だ。
    この4期目の3年間、いや4期16年を見る時、マイナス材料は何かである。すでに来春の市長選に出馬表明している新人は「十日町市は何も良くなっていない。それは何も出来ないから」と厳しく指摘する。だが、一般市民が見る目の価値観はどうだろうか。それは現職が「5期出馬」を表明した時、その評価が表出してくる。
     5期ならば20年である。オギャーと生まれた人が二十歳になる歳月だ。今度の市長選、選挙戦は確実だが「第三の候補」は出るのか。選挙は住民を成長させるという。今の路線継続か、大改革か、あるいは新・十日町市か。選択肢の幅広さは、価値観の多様性であり、それは時代が求めるあらゆる分野の多様性でもある。

    2024年6月22日号

  • 「24時間体制は必須」

    十日町署管内 3駐在所統合計画

    赤沢防連協に県警地域課長と十日町署長

     「津南交番との統合で24時間365日勤務体制を取れる。駐在所は平日夜間、原則土日は休みなのがデメリット。防犯体制強化が再編の大きな柱となっている」、十日町署の太刀川弘栄署長は住民に統廃合への理解を求めた。
     来年3月末での廃止・統合計画が出ている十日町署管内の3駐在所。津南町赤沢駐在所は津南交番に、十日町市中里地域の倉俣駐在所は田沢駐在所に、同土市駐在所は十日町駅前交番管轄になる再編計画が進んでいる。
     「駐在所があることが犯罪抑止力になっている」と、駐在所存続要望書を出していた赤沢地区防犯連絡協議会(草津進会長)。総会の7日、十日町署・太刀川署長、さらに県内の再編計画を取りまとめる県警本部地域部・渡邉幸治地域課長ら県警職員らが出席。赤沢駐在所統廃合の計画説明を行った。

    2024年6月15日号

  • 地域医療支える拠点エリア

    10年かけ完工、総事業費150億円で

    県立十日町病院が核

     10年余かけ総事業費150億円余で新築整備した地域中核病院・県立十日町病院(275床)が完工。同エリアには十日町市が建設の市医療福祉総合センター(建築費14億3300万円)があり、同センター内には県立十日町看護専門学校や地元医師会、訪問看護ステーションおむすびなど地域医療や介護・福祉に関わる8機関が入る。一帯は医療・福祉・教育の連携拠点として、住民の命を守り続ける責務を背負う。一方で、県立病院の事業決算は昨年度23億円の最終赤字を発表、今年度はさらに厳しい見通しが出ており、県立病院経営改革は必至の状況。地元の医療機関や市町村などと県立病院のさらなる連携が求められるなか、同エリアに集中の関係機関の役割が増す。

    2024年6月15日号